宇多丸 2018年アイドルソングベスト15を語る

宇多丸 2018年アイドルソングベスト15を語る アフター6ジャンクション

(宇多丸)それでは、第5位はこちらです。

5位:脇田もなり『Gozigen Lover-Joi』

(宇多丸)はい。脇田もなりさん。これもこのコーナーでもかけましたし、あとは脇田さんは番組でもスタジオライブしていただいて、その音源をリリースなんかもしていただきましたけども。まあ、もうここ数年、脇田もなりさんとか星野みちるさんとか、ヴィヴィド・サウンド勢っていうのは本当に……もともと音楽好きのためのレーベルみたいなね。

(森田秀一)そうですね。

(宇多丸)心ある音楽好きのための音源を出しているようなヴィヴィド・サウンドっていうレーベルから、アイドル的なというか、女性歌手みたいなのを手がけるようになって。なので品質は折り紙付きなんですけども。特に脇田もなりさんはブラックミュージック的なリズム感と歌声のバネですね。ちょっと少年っぽいニュアンスとちょっとしたリズムの取り方に来るすごいダンサブルなセンスの良さっていうか。タイム感がめちゃめちゃいいっていうのもあるし。

あとはちょっと時々入るヤンチャな感じっていうか。それが本当に魅力なんですけども。本当に歌手として素晴らしいと思うんですけど。その脇田もなりさんの『AHEAD!』というセカンドアルバム。こちらも素晴らしかったんですが、そこからこの『Gozigen Lover-Joi』という曲。これはコーザ・ノストラの佐々木潤さんが……非常にコーザ・ノストラ的な感じっていうか、渋谷系っていう感じのサウンドですね。ああ、森田くん、完全に青春のサウンドっていうか。

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(森田秀一)そうですね。90年代渋谷系はもうがっつりハマっていたんで。

(宇多丸)そういう感じですかね。どんどん行きましょう。第4位はこちら!

4位:Negicco『She’s Gone』

(宇多丸)はい。ということでNegiccoです。Negiccoのアルバムはもう毎回ね、これも……。

(森田秀一)参加しているメンツがすごいですもんね。

(宇多丸)悪いわけがないっていう。しかもNegiccoが重要なのはやっぱりそれこそ嵐じゃないですけども、アイドルがここまで年齢を重ねてもキャリアを続けるっていうのはもう前例がない時代に入っているんですよね。で、要するにアラサーになっても女性アイドルで。なおかつ、アイドル性っていうのを失わず、でもちゃんと大人のポップスとして成立させるっていうちょっと未踏の領域にここのところNegiccoは入っていて。『MY COLOR』はさらにそのキャリアを更新したアルバムなんですけども。

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そこから、シャムキャッツさん。LIVE & DIRECTでもライブを来ていただきました。そしてまさにこの曲、セルフカバーという形でやっていただきましたけども。この曲のこの歌い方のさ、なんというか素の感じというか。本当にアラサーぐらいの、まだ結婚はしていない、で、働いている女性の昼休みにフッと思う感じみたいな。でも、それが全然ネガティブな感じじゃないわけ。みたいな感じで本当に素晴らしい1曲じゃないでしょうか。Negicco『She’s Gone』が第4位でした。第3位はこちら。

3位:寺嶋由芙『君にトロピタイナ』

(宇多丸)寺嶋由芙さんの『君にトロピタイナ』。これはみなさんご存知NONA REEVES西寺郷太さんプロデュースということで。まあ、とにかく80’sテイストっていうか。80年代ポップミュージックを知り尽くした男ですから。特にこれはミネアポリス色をてんこ盛りにしていて。このさ、サビの「テンテンテンテンテーンテンテン……♪」ってこれ、譜割り、メロディーのマイナーコードとメジャーコードの違いはあるけど、シーラ・Eの『The Glamorous Life』ですよね。

(森田秀一)うんうん。

(宇多丸)っていうところもミネアポリスが入っているという。本当に忍び込ませているっていうか。知り尽くした男・西寺郷太ならでは。そして寺嶋由芙さんのなんて言うか学級肌正統派アイドルっていうのかな? そういうスタンスとも相性がよくてマジックが起きた1曲じゃないでしょうかね。3位でございます。やっぱり上位になるとどんどん上がってくるな。いい曲ばっかりで。これな!(笑)。

(森田・熊崎)フハハハハハハッ!

(宇多丸)そして第2位はこちら!

2位:RYUTist『無重力ファンタジア』

(宇多丸)フゥーッ! RYUTistさん、スタジオライブにも来ていただきました。で、RYUTistはもう名曲量産期なんですよ。本当に。熊崎くんにもおすすめしたい曲はあるんですけど、本当に聞いているだけで涙が出てくるような……いつぐらいからですかね? とにかくRYUTistっていい曲ばっかりじゃね?っていう。

(森田秀一)毎回ですからね。

(宇多丸)それこそNegiccoの妹分にあたるような新潟発のアイドルなんだけど、またNegiccoとは違う……これ、すごく端正なメロディーの繊細な歌声の……っていう感じで素晴らしい曲が多いんですよ。で、RYUTistは素晴らしい曲を去年、いっぱい出していて。特にTWEEDEESプロデュースの名曲『青空シグナル』とかね。これはいま流している『無重力ファンタジア』はそのカップリングなんですけど。あともう1曲、『黄昏のダイアリー』。これも素晴らしかったな。なんですけど、いまお聞きのこの『無重力ファンタジア』。これはインドネシアのIkkubaruがプロデュース。

(森田秀一)うんうん。

(宇多丸)インドネシアのグループなんだけど、日本のシティポップのツボをおさえまくったプロデュースをしていて。もう、なんて言うの? 本当に『無重力ファンタジア』っていうタイトル通り、なんかもうフワーッと夢心地で聞いてられるというような。第2位でございます。そしてさあ、2018年度の私の連載マブ論のベスト15。栄えある第1位は、こちらです!

1位:つばきファクトリー『春恋歌』

(宇多丸)1位はつばきファクトリー『春恋歌』。これ、熊崎くんね、ライブを直で見たじゃないですか。この距離で。

(森田秀一)ああ、生で見ているんですね!

(宇多丸)そうそう。ここで顔を真っ赤にしながらおじさん2人で見ていたんですよ。

(熊崎風斗)かっこいいし、かわいいし。

(森田秀一)それはまた違いますよね。やっぱり。

(宇多丸)これはもうなんて言うのかな? そのいまどきのダンス・ミュージック色とかそういうことではないアイドルソングのアップデートというか。でも、まあ言っちゃえばキャンディーズの『春一番』っていうさ、曲。本当にアイドルソングの古典中の古典がありますけども。それをなんて言うのかな? あらゆる面で現在にふさわしく、でもその現代風ダンス・ミュージックとかそういうことではないアップデートというか。逆に言えば、いま2018年にもこういうクラシカルな名曲って全然作れるんじゃん! みたいな感じで。これはもうね、歌詞の1個1個も素晴らしいし。もっと言えば振り付けとかもパーフェクトですしね。ハロプロの、モーニング娘。で言うと『セカンドモーニング』あたりっていうか。

(森田秀一)ああ、そうですね。

(宇多丸)そこに入っていそうな感じの曲なんだけど。ハロプロのこういうタイプの名曲って本当にたまらねえな!っていうかね。

(森田秀一)鈴木俊介さんでしたっけ? あの時代の感じですよね。

(宇多丸)ねえ。鈴木俊介さんの編曲も素晴らしいし。あとこれね、もうひとつ、僕が……特に僕の1位である理由は春にこの曲をすごい聞いていたんだけど、この春ってやっぱり『アフター6ジャンクション』が始まったりして。僕にとってもすごく人生の一大転機になった時で。その頃にすごく……だから『アフター6ジャンクション』が始まったあの2018年の春っていうのを永遠に記憶に刻み込まれているっていうか。

(熊崎風斗)この曲とともに、なんですね。

(宇多丸)そうなんですよ。この曲とともに熊崎くんの顔を……第1回の熊崎くんの顔を思い出すっていう(笑)。

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(熊崎風斗)ああーっ!

(宇多丸)そういう1曲でもあって。なので僕のベストっていう意味ではこれ、外せなかったあたりでございます。ということで、時間いっぱいかけてまいりましたが。すいませんね、森田くんね。この他にもアルバムベストテンも挙げていますし。あとはやっぱり僕の場合、往生際が悪く次点以下にいっぱいね。

(森田秀一)もう欄外にいっぱい情報が詰め込められているという。

(宇多丸)いっぱい書いてありますので、そちらも参照してください。BUBKA3月号は1月31日(木)発売です。他の記事の紹介とかはありますか?

(森田秀一)この番組で言っていいかわからないですけども。細かいところだとR-指定さんが日本語ラップについての愛を語るコーナーをやっていたりとか。それこそRHYMESTERにハマった理由も書いていたりするんで。

(宇多丸)おお、そうですか。

(森田秀一)結構面白いエピソードが載っているんで。まあ、メインは乃木坂の特集だったりするんですけども。

BUBKA (ブブカ) 2019年3月号
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(宇多丸)BUBKAはなにげにさ、ヒップホップ時事ネタ記事、見逃せないよね。BAD HOPの武道館レポートとかさ(笑)。

(森田秀一)アハハハハハハッ! そうですね(笑)。

(宇多丸)なんでこんな磯部涼の本格的な記事が載っているんだ? みたいな。

(森田秀一)R-指定さんのは定期イベントになっているんで。興味を持たれた方は一度来ていただきたいなと。

(宇多丸)楽しみでございます。というわけで森田さん、ありがとうございました。

(森田秀一)はい。ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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