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町山智浩 『アリー/スター誕生』を語る

町山智浩 『アリー/スター誕生』を語る たまむすび
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(町山智浩)そう。『ハングオーバー!』っていうアルコールで酔っ払った二日酔いの映画に出てスターになるまで、彼はなかなか売れなくて。その前も少しずつは売れていたんですけど、売れない期間が長くて、その時にアルコール依存症になっているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だから、一切飲めないんです。もう。小田嶋隆さんとかもそうですけど、依存症に1回なった人はその後、もう飲めないんですよね。それ以降ね。だから彼は一滴も飲めないんだけど、過去になった時の記憶で演技をしているんですよ。

(山里亮太)その引き出しで。

(町山智浩)そう。すごいですよ。本当に酔っぱらいにしか見えないですよ。すごいんですけど。で、こんなにひどい酔っぱらいになっていて、なんでこんなになったのか?っていう話を会ったその日にアリーに打ち明け話でするんですけども。で、「実は父親もアルコール依存症で、ひどい目にあった上に両親ともに僕が子供の頃に死んでしまった。だから歌しか助けがなかったんだ。それで歌うようになったんだ」って言うんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それを聞いてアリーは、「このジャクソンという彼は心の中にすごい空っぽがあるんだ」ということを理解して、彼のために歌を作るんですね。それがね、『Shallow』っていう歌なんですけども。ちょっと聞いていただけますか?

Lady Gaga, Bradley Cooper『Shallow』

(町山智浩)はい。これはね、このアリーがジャクソンのために作った曲で、彼とアリーのデュエットなんですけど、「お互いに、この世の中で私たちはどうも居場所がないじゃないか。だからお互いになにかを探しているのよね」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、この「Shallow」っていうのは「浅いところ」っていう意味なんですけど、具体的にはプールの浅くて足がつくところのことを「Shallow」って言うんですよ。「でも、もう私たちは出会ってしまって、お互いの求めているものを知ってしまったから。私たちはもう足がつかない深みに来ちゃったのよ」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからこれで、もう2人はいままで求めていたけども世の中に求め切れないものをお互いの中に見つけて。この会ったその日に完全に恋に落ちて、パズルが合体したみたいになったのがこの歌なんですよ。

(赤江珠緒)じゃあもう本当に出会うべくして運命の人に出会ったみたいな?

(町山智浩)そうなんですよ。これで彼も助かるのかな?って思わせるんですね。ここのところ、この歌を作っていく過程ががいちばん泣かせるんですけども。で、これ、撮影がすごくて。このあたりの撮影がね。これ、前も話したんですけど、この映画はずーっとカメラが2人から離れないんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)50センチぐらいの距離で撮影し続けているんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ひどい時は20センチぐらいまで寄っていますね。すごいですよ。これ、撮影のメイキングを見てもカメラがずっと2人の横にくっついて撮っていますから。

(赤江珠緒)「ここで演技をするって……近い、近い、近い!」とか思いそうですけどね。

(町山智浩)そう。これね、マシュー・リバティークっていう撮影監督なんですけども。このおっさんがすぐ横にいるところでキスしたり、大変だろうなって思いましたよ(笑)。

(赤江珠緒)ねえ!

(町山智浩)だって「愛しているわ」とか言うところ、カメラに向って言っているわけでね。このおっさんに向かって言っているわけですからね。このリバティークっていう人にね(笑)。名カメラマンですけども(笑)。

(赤江珠緒)これ、演技力が本当に求められますね。

(町山智浩)そう。目の前にはレンズしかないんですからね。実際には(笑)。でもこれね、だから観客に向かって言っているように聞こえますよ。「愛している」っていうのが。「愛しているわ」って。で、2人がこう、キスしたりするところとかも、本当に横から割り込んで見ている感じなんですよ(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハッ!

(町山智浩)自分もしちゃう感じです(笑)。

(赤江珠緒)そんなに近い感じ? へー!

(町山智浩)ものすごい近い。これもすごくて。だからお互いカメラがすごくピントが浅いレンズで撮っているんですよ。だからお互いの顔以外が全然見えないんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)要するに、2人の世界に入っちゃう。で、他はみんなボケボケ。だからね、本当に恋している2人の気持ちに観客を無理やり引きずり込むんですよ。カメラワークが。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)でね、しかもこれ、ブラッドリー・クーパーの演出なんですけども、ほとんどがアドリブで撮っているんですね。ほとんどアドリブで撮っているから、言い間違いとかが多いんですよ。言い間違いとか聞き直しとか、あとはセリフがかぶっちゃうのが多いんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そう。あとね、思わず笑っちゃったり。あと、角とかにぶつけたりね、物を落としたりするシーンもすごく多いです。

(赤江珠緒)ああ、それを自然に使っているんですか、もう。

(町山智浩)そうなんですよ。普通それって、映画とか演劇だと絶対に見せないものですよね。でも、そうじゃなくて。その本当にリアルな失敗したり噛んだりしているところとかも全部そのまま使っているんで。ドキュメンタリーみたいです。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)だから本当にこの2人が俳優じゃなくて、アリーとジャクソンっていうのがいるような気持ちになってくるんですよ。見ていると。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)この人たちの友達になったみたいな感じになってくるんですよ。3P感覚ですね、はい!

(赤江珠緒)いやいやいや……。

(山里亮太)「友達」で伝わってましたよ、町山さん!(笑)。

(町山智浩)すいません、違いました(笑)。ただね、これで2人がこの歌を作って完全に一致するわけですね。2人で合作をするわけですから。一緒の歌を歌って。ところが、アリーはそこから大スターになっていくんですよ。どんどんどんどん。すると、めちゃくちゃ忙しくなってきますよね。そうすると、せっかく見つけたアリーが手の届かないところにどんどん行っちゃうんですよ。ジャクソンにとっては。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、取り残されてまた酒とドラッグに溺れていくんですよ。

(赤江珠緒)あらー!

(町山智浩)で、つなぎとめようとして結婚をするんだけど、アニーの人気上昇は止まらないんで。するとね、奥さんに嫉妬をし始めるんですね。

(赤江珠緒)ええっ、自分が見出したのに?

(町山智浩)そう。で、「お前はあんなエレクトロ・ポップなんか歌いやがって。商業主義に身を売りやがったな!」とか。あとね、「本当のことを言うとね、お前はブサイクだと思うよ」とか言っちゃうの。

(赤江珠緒)うわっ! ええーっ! さっきまでの恋のロマンチックなあの感じはどうだったの?

(町山智浩)そう。だからグチャグチャになっていくんですけど。これね、最初の第一作の1937年の段階でこれ、もともと本当の話をベースにしているんですよ。で、これはバーバラ・スタンウィックっていう女優さんとフランク・フェイっていうコメディアンの夫婦がいて。そのバーバラ・スタンウィックが大スターになるにつれて、その夫の方はどんどんアルコール依存症に落ちていって滅んでいったっていう実話がありまして。で、似たような実話がたくさんハリウッドにあるんで、この『スター誕生』っていう映画が作られたんですね。

(赤江珠緒)そうか。

(町山智浩)ただね、奥さんの方が稼ぎがいいとかで夫が嫉妬でおかしくなるっていうの、その逆っていうのはないでしょう?

(赤江珠緒)あんまり聞かないですね。

(町山智浩)ねえ。ああ、これはいま、最後の曲がかかっていますけども。

Lady GaGa『I’ll Never Love Again』

(町山智浩)結局ね、これも男と女の問題なんですね。奥さんが仕事で忙しいと夫はかまってもらえないって駄々をこねたりするって、おかしいですよね?

(赤江珠緒)本当ですよね。

(町山智浩)だからこれ、ハリウッドの話なんですけど、どの夫婦にも当てはまることですよね。あとね、アルコール依存症もひどいんですよ。だって最近ね、ブラッド・ピットはアルコールが原因でアンジェリーナ・ジョリーに離婚されましたからね。

(赤江珠緒)そうか!

(町山智浩)ねえ。これもハリウッドに蔓延している問題で。まあ、だから依存症だったり女性が働く夫婦の話だったり、いろいろといま言ったような3つの問題はいまも昔も変わらないので。それこそが問題だっていう。この映画が作られ続ける限り、その問題は消えていないんだっていうことなんですよ。

(赤江珠緒)なるほどね! これが認められて普遍的なテーマになっちゃっているというところですね。

(町山智浩)だからここを乗り越えられないと、世の中は変わらないんだろうなと。これはだから、ハリウッドだけじゃなくて世界で大ヒットしているということから考えると、そこらじゅうで起こっていることですよね。

(赤江珠緒)そうかー。

(町山智浩)ねえ。だからね、これを不滅の問題にすべきではないと思うんですけども。

(赤江珠緒)そうですね。日本でも間もなく公開です。『アリー/スター誕生』は2018年12月21日公開です。

(町山智浩)この歌が非常に素晴らしい歌なんですけど、このスター自体、スターが本当に誕生するのは彼女が本当になにもかも、愛する人を失った時なんですよ。だからこういう悲劇はなくなった方がいいんですけど、こういう悲劇とか愛する人を失う経験こそが本当の芸術家を作るんですよね。スターが完成するのはまさに、彼女が大事なものを失った瞬間なんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)だからそこも芸能の皮肉なんですね。

(赤江珠緒)じゃあ今日はこの曲を聞きながら、町山さん。お別れになります。

(町山智浩)はい。最後にかかる『I’ll Never Love Again』というレディ・ガガの歌です。歌は全部レディ・ガガが作詞・作曲していますね。今回ね。

(赤江珠緒)今日は『アリー/スター誕生』を紹介してもらいました。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

<書き起こしおわり>

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