町山智浩『THE MOLE(ザ・モール)』を語る

町山智浩『THE MOLE(ザ・モール)』を語る たまむすび

町山智浩さんが2021年10月18日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『THE MOLE(ザ・モール)』を紹介していました。

(町山智浩)先週はですね、10月15日にものすごいたくさんの映画が公開されるんで、一気に紹介したんですが、まだ足りてなくてですね。15日に既に公開された映画なんですけれども、余っちゃって、あふれちゃって。今日紹介しなきゃならなくなっちゃったんですけど。『THE MOLE(ザ・モール)』という映画をちょっと紹介します。「MOLE」っていうのはですね、「モグラ」っていう意味ですね。動物のモグラね。ただ、これは英語ではスラングで「スパイ」とか「潜入捜査員」っていう意味があるんですよ。で、これは北朝鮮の武器密輸と覚醒剤密輸に潜入捜査したただのおっさんの話です。

(赤江珠緒)いや、それが信じられないんですけど。ええっ?

(町山智浩)ただのおっさんです。これ、赤江さん、ご覧になりました?

(赤江珠緒)まだ拝見してないんですけど。今、この内容、あらすじを簡単に聞いて「えっ、北朝鮮に自主的に潜入しちゃうの?」みたいな。

(町山智浩)そう。なんかほとんど趣味のように潜入しちゃうというね。

(山里亮太)ええっ? 命の危険、あるでしょう?

(町山智浩)そう。プロのスパイでもなんでもなくて、シェフだったみたいですね。

(赤江珠緒)シェフ?

(町山智浩)それがですね、まずこの映画の監督はマッツ・ブリュガーという人で。これ、デンマークの人で、デンマーク映画なんですね。で、彼のところにいきなりですね、ウルリクという名前の頭つるつるのおじさん……30代の人が来て。「北朝鮮に潜入して隠しカメラとか隠しマイクとかでどんどんいろんな情報を取ってくるから、手伝ってくれ。それを映画にしてくれ」って言うんですよ。それで「なんで?」とか思ったら、マッツ・ブリュガーさんが過去に作った『ザ・レッド・チャペル』という映画がすごかったんで。それは彼が北朝鮮に潜入する話なんですね。マッツ・ブリュガー自身が。で、「あなたにお願いしたいんだ」っていう。

『ザ・レッド・チャペル』で北朝鮮に潜入

(町山智浩)それでマッツ・ブリュガー自身は潜入した後で、北朝鮮からもマークされて。2度と北朝鮮の取材ができなくなっちゃうんですよ。で、まずその『ザ・レッド・チャペル』っていう映画もこの『THE MOLE(ザ・モール)』の後に公開されるんで、その話をしますと……北朝鮮が文化交流として外国のアーティストとかを招待するということをしているのを知るですね。このマッツ・ブリュガーが。で、マッツ・ブリュガーっていう人、この人はデンマークのテレビジャーナリストみたいな人で、テレビ番組とかをやってる人なんですけども。で、「じゃあこれは文化交流っていうことだったら、めったに入れない北朝鮮に入れる! じゃあ北朝鮮でいっぱい映像を撮ってこれる。潜入撮影ができる」っていう風に彼は思って。「じゃあ文化って何をやろうか?」ってなって。

ところが、そこにデンマークに韓国から養子に取られてデンマーク人に育てられた2人の青年がいたので、この2人にパフォーマンスアーティストとして演技をしてもらって。それで公演をやるっていうことで北朝鮮に招待してもらえないか?っていうことを考えるんですね。で、その2人は韓国語もできないし。幼い頃にデンマークに連れてこられたんでね。基本的にはギターは弾けるんだけど、素人で。1人の方は先天性の脳性麻痺で。ちゃんと一生懸命しゃべってもほとんど聞き取れないっていう状態なんですが、この2人にコントをやらせて。そのコントを北朝鮮で公演させるということを考えて申し込んだら、北朝鮮が「来ていいですよ」って言うから。このマッツ・ブリュガーを含めて3人と、あともう1人。カメラマンも入れて計4人で北朝鮮に入るんですよ。

(赤江珠緒)へー! そのコントは何語で? デンマーク語で?

(町山智浩)デンマーク語か英語がしゃべれるんですね。この2人は。ところがですね、どういった芸なのかを全く確認しないで北朝鮮が彼らのことを招待するんですよね。

(赤江珠緒)すごいですよね。そんな行き当たりばったりで作ったものを……。

(町山智浩)でも、それは国立劇場でやるっていうんですよ。国歌的イベントとしてやるっていうんで。「まず、どんなものなのか出し物を見せてください」って言われて、見せるですが……完全にど素人の素人コントなんですよ。で、それを見た北朝鮮側が本当にもうびっくりしちゃって。「これは国立劇場で見せられるレベルのものではない!」ってなって。「どうしよう?」って。でも、そういう人たちを呼んじゃったことで、彼らも処罰されるかもしれないわけですよ。で、しょうがないから北朝鮮側とみんなで一生懸命、人に見せられるレベルの出し物を作っていくという……。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ! ええっ? なんか北朝鮮が成長をさせてくれるみたいな?

(町山智浩)そうそうそう(笑)。とんでもない内容の、もう北朝鮮を完全にバカにしたコメディドキュメンタリーになってるんですよ。ただね、やっぱりその潜入した2人の韓国系デンマーク人の青年は「たしかに北朝鮮っていうのは悪い国だけど、この人たち自身はそこに従って生きてるだけのただの庶民なんだから。この人たちを騙すのまずいんじゃね?」みたいなことを言うんですけど。マッツ・ブリュガーは「そんなの、知らねえ! 北朝鮮でどれだけの北朝鮮国民が虐殺されてるか、考えてみろ!」って言うんですけど。

なんか「それはそれ、これはこれ」みたいな気もするわけですが(笑)。で、そういうね、なんていうか半分お笑いで半分非常に厳しいドキュメンタリーで両立するんですけど。それが不思議なことにね。それが『ザ・レッド・チャペル』という映画だったんですね。「ザ・レッド・チャペル」っていうのはこのマッツ・ブリュガーが組んだコントコンビの名前なんですよ。それで結局、とんでもないお笑いドキュメンタリーにして全世界で公開したために、北朝鮮側が怒って大変なことになってですね。「騙された!」っていうことになって、彼らはもう北朝鮮に接触できなくなったんですけれども。

ただ、これね、通訳とかやってた人たちは処罰されてるんじゃないかと思って、非常に怖いんですが。「騙されやがって! 恥をかかせやがって!」みたいなことになってるんじゃないかなと思うんですけど。で、今回の映画『THE MOLE(ザ・モール)』っていうのは、それを見たウルリクという元シェフが「僕は北朝鮮に潜入しようと思うんです」「どうやって潜入するんだ?」っていうと、北朝鮮を支援するヨーロッパ人の会という団体があるんですよ。これね、結構謎の団体なんですけれども。そこにKFA(朝鮮親善協会)というものがあって。ヨーロッパ各地にいろんな会員がいて、みんなでその北朝鮮を応援している団体なんですね。そこに彼が潜入するんですけど。

そこにいる人たちはなんていうか、変な人ばっかりなんで。このウルリクは最もまともなんで。そのKFA(朝鮮親善協会)の会長から目を付けられるんですよ。「彼はなんか仕事ができるんじゃないか?」ということで。で、この会長はアレハンドロという名前のスペイン人なんですね。で、彼から「俺の仕事を手伝え」っていう風にウルリクが言われるんですよね。その仕事というのは何かというと、北朝鮮はご存知のようにミサイルを作ってるわけですよね。それで日本も攻撃できるし、それこそアメリカのグアムまで届くミサイルを作ったりしてるわけですが。「そのミサイルを売りたいんだけど」っていう話なんですよ。

(赤江珠緒)ほうほう。ええっ?

(町山智浩)でも、北朝鮮っていうのは国際的に国連から制裁を受けていて。ビジネスが他の国とはできないようになっているんですよ。ましてや、武器を輸出するっていうこともできないわけですよ。もちろんね。「どうやってそれをやるの?」っていうことがこのウルリクの潜入捜査で明らかになっていくっていう話がこの『THE MOLE(ザ・モール)』なんですね。で、これ、まずどういうビジネスをするのか?っていうことになった時に、まずそのKFAの会長のアレハンドロが「北朝鮮の武器を買うという人を連れてきてほしい。見つけろ」っていう風に言うんですね。でも、そんなのウルリクは知るわけないですよね? ただのシェフだから。

(赤江珠緒)そうですよね。

(町山智浩)で、前科者のジェームスという男を雇って、彼を謎の大富豪に仕立てるんですね。このジェームスというのは刑務所にちょっと何年も……8年ぐらい入ってた人なんですけど。元々、フランス人の傭兵……つまり、雇われる兵隊で。アフリカのいろんなところでクーデターを起こしたり、ゲリラを指導したりしてた、はっきり言って兵隊ヤクザなんですよ。こういう人はアフリカにいっぱいいるんですよ。だからアフリカっていろんな国家がすぐ転覆されたり、政府関係者が暗殺されたりするのはこういう戦争屋さんたちがいっぱいいて、そこでビジネスをしてるんですよね。で、彼は捕まっちゃって、出てきたところで雇われるんですよ。そこで。マッツ・ブリュガーによって大金持ちの大富豪のジェームスとして。

で、「彼がそのビジネスにお金を出したいって言ってる」とアレハンドロに紹介するんですね。そしたら「じゃあ2人で北朝鮮に行ってこい」っていうことで、北朝鮮に行くんですよ。で、北朝鮮に行くとなぜかすごく誰もいないような、ただビルだけが立ってるところに連れていかれて。「なんだ、これ? 殺されんじゃないか?」と思うんですけど。その地下になぜか接待場があって、パーティールームみたいのがあるんですよ。それは何か?っていうと、兵器工場なんですね。兵器工場の下に海外から兵器を買いに来た人たちを接待する接待ルームがあるんですよ。で、そこに隠しカメラを持って入って、撮りまくっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)めちゃくちゃ危ない!

秘密の兵器工場を隠しカメラで撮りまくる

(町山智浩)めちゃくちゃ危ない。これ、見つかったら……だって北朝鮮って、この番組でも紹介しましたけど。『わたしは金正男を殺してない』っていうドキュメンタリーを紹介しましたけども。外国に行ってね、暗殺をして。それで、逃げちゃうんだもん。

町山智浩『わたしは金正男を殺してない』を語る
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(赤江珠緒)ねえ。で、北朝鮮に入ったとしても、撮っていい場所とかってすごい監視されたり、管理されるでしょう?

(町山智浩)すごい管理されて監視されているのに、彼ら隠しカメラでいろんなところに行って。秘密の武器工場の内部撮影してるわけで。これ、バレたら絶対殺される。殺されて、もう何も出てこないですよね。

(山里亮太)でも映画にするっていうことはバレちゃいますね?

(町山智浩)ねえ。というか、この2人は北朝鮮に入っていること自体がほぼ誰も知らないんですよ。これ、ウルリクという人は奥さんにも黙ってるんですよ。

(赤江珠緒)それは反対しますよね。

(町山智浩)そう。この2人、北朝鮮で殺されても何も出てこない。消えるだけなんですよ。そんなところに行ってるって、すごい怖いと思うんですけど。でもなにか、非常に間抜けで。その北朝鮮の武器密輸業者たちはカラオケで楽しそうに歌ったりしていて。なんか妙な間抜け感が全編に漂っているのがこの『THE MOLE(ザ・モール)』っていうか、マッツ・ブリュガー監督作品すべてに通じるところなんですよね。本当だったらこれ、『007』ですよ。

(赤江珠緒)本当ですね! それ級の、国家レベルのスパイですよ。

(町山智浩)でしょう? だって今、すごく北朝鮮の武器密輸問題が大問題になってるのは、要するに世界中のテロリストがいるじゃないですか。ISとかね。そういう人たちに武器を売っている可能性があると言われていて。あと、シリアが反政府の人たちに対して毒ガスを使用した時もそれに北朝鮮が関与していると言われてたりしたわけですよ。で、北朝鮮は核も持ってるわけだし。それでまた、すごい大陸間弾道弾みたいなものまで開発しているわけで。これ、『007』の敵ですよね。スケール的にはその敵のスケールは『007』の敵と同じなんですよ。この映画では。ただ、その潜入捜査している側はただのおっさんなんですよ(笑)。

(赤江珠緒)一シェフが。へー!

(町山智浩)そう。ジェームズ・ボンドじゃなくて、ただのおっさんがボランティアでやってるんですよ。ギャップ……暴かれることのスケールのデカさと、その暴いてる側の非常にずさんな感じ。ものすごくずさんなの。で、びっくりしたのはね、この大富豪ってことになってジェームスが行くわけじゃないですか。で、「ビジネスしましょう」って言うんですけど。「ところで、あなたの会社の名前は?」って聞かれるんですが、ジェームスはね、考えてないんですよ。

(赤江珠緒)やだーっ! ええっ? それぐらいは詰めていかないと……。

(町山智浩)「それぐらいは考えておけよ!」と見てて思いましたよ。それで突っ込みどころがありまくりなんですよ。このスパイの側が。

(赤江珠緒)でも、プロじゃないからね。何のノウハウもないしね。

(町山智浩)でもいくらなんでもさ、そんな偽会社ぐらい考えて。普通だったらウェブサイトとかを作ったりするじゃないですか。調べられたらさ、だって「そんな会社はない」ってバレちゃうんだからさ。名刺を作ったするじゃない? 普通ね。日本の普通の詐欺師だってやるじゃないですか。でも、そうそういうのを全然用意していなくて。

(赤江珠緒)なんでそんな無防備で入っていけるんです?(笑)。

(町山智浩)そう(笑)。で、北朝鮮の武器密輸の人たちから「で、お宅の企業は何という会社なんですか?」って言われて「しまった! 考えてなかった!」って(笑)。「アホか、お前ら!」っていうね。すごい映画ですよ、これ。

(山里亮太)というコメディじゃなくて、ドキュメンタリー?

(町山智浩)状況的にはコメディなんだけど、これ下手したら殺されてるっていうものすごいサスペンスでもあるんですよ。とんでもないですよ。笑いながらぞっとするという、奇妙な奇妙な映画ですね。これね。

(赤江珠緒)でも全然バレることなく、それで内部にどんどん入っていけるんですか?

(町山智浩)そう。だから北朝鮮側も大ボケなんですね。それこそ何万人も殺せるような武器を取引してるのに、スパイする方もスパイされる方もみんな大ボケというですね。もう、ボケしかいなくてツッコミがいないスパイ戦というね。ボケしかいない『007』になっていますけども。で、これがすごくて。その後、じゃあその工場とかから武器を作って海外に持ち出すとしても、そんなもの、密輸なんて不可能じゃないか?って。要するに、北朝鮮って世界中から監視されているから。CIAとか国連からね。ただ、これには抜け道があるっていうんですよ。機材や資材だけ、密かに北朝鮮から出して。で、技術者も出して。海外に秘密工場を作って、そこで作った武器を売ればいいんだっていうんですよ。

(赤江珠緒)ああ、うんうん。

(町山智浩)で、これがまたすごいのは「武器と一緒に覚醒剤も作りましょう」っていうんですよ。覚醒剤も売ってるんですよ。北朝鮮って。

(赤江珠緒)うわあ、どんどん闇の部分に入っていってる……。

(町山智浩)「じゃあ、その工場を作るところ探さなきゃ」っていう話になって、今度はこのジェームスとウルリクのインチキコンビがアフリカに行って……まあジェームスはアフリカにコネがあったりするんでね。で、ウガンダに行って、ウガンダの島を買って、その島にリゾートホテルを作って。そのリゾートホテルの地下にミサイルや麻薬の工場を作ろうって話になるんですよ。

(赤江珠緒)大掛かりな……すごい!

(町山智浩)ものすごい大掛かりですよ。それこそ、何億円、何十億円っていうお金をジェームスが動かすっていうことで、そのウガンダの人も巻き込んでいくんですけど……こいつら、一銭も持ってないんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)一銭も持ってないんですよ。ハッタリだけ。

(赤江珠緒)それは絶対にバレるでしょうよ!

(町山智浩)これはバレるだろう?って思うんですよ。で、これ、ウガンダ政府の要人も出てきて。「政府としてこの工場誘致、非常に歓迎します」とか言って。それとまあ、偉そうに取引してるんですけど。「こいつら、一銭も持ってねえぞ!」っていうね。もう画面を見てるとものすごく突っ込みを入れたくなる、変な映画なんですよ。

(赤江珠緒)でもその、ウルリクさんですか? とかが全くビクビクしていないのかな? だから?

(町山智浩)ビクビクしていないの。この2人。堂々としているっていうか、ただボケなのかも分からないですけど。全然堂々としてて。1回ね、このアレハンドロから疑われて。「お前、隠しカメラとか隠しマイクとか持ってるんじゃねえか?」って言われて、電波探知機で探される時もね、淡々としているんですよ。すげえヤベえのに!って思うんですけども。

(赤江珠緒)なんていう肝の据り方なの?

(町山智浩)なんて肝が据わっているやつなんだ!って思うんですけどね。で、また今度は武器を……武器とか資材を海外に出して、そのお金をどうやって渡すか?っていうと、北朝鮮にお金を送るっていうこと自体がまたものすごく監視されてるんですよ。取引ができないんですね。じゃあ、どうするか?っていう話で、それでもう1人の大金持ちが出てくるんですよ。ヨルダンの謎の大金持ちが。で、彼が北朝鮮に密かに石油を売りたがってるんですよ。

取引の仕組み

(町山智浩)で、北朝鮮には石油を売っちゃいけないんですよ、今は。制裁をしているから。世界が北朝鮮に対して。だからどうするか?っていうと「人道的支援物資」に見せかけて石油を送り込む。で、その石油は事前にジェームスがそのヨルダンの石油王から買って。で、北朝鮮に武器やその覚醒剤の工場の代金として石油を払うんだっていう。で、そこに石油を運んでいった船が帰りにミサイルや覚醒剤の資材や材料を積んでウガンダに行くんだっていう計画を立てるんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だからロンダリングみたいなもんですね。密輸のね。すごい話ですよ、これ。

(赤江珠緒)すごい話ですよ。何も持っていない2人が?

(町山智浩)そう。これ、CIAとかがそれこそものすごい人数で、ものすごいハイテク技術で探らなければいけないようなことを、このただのおっさん2人でやっちゃってるんですよ。とんでもない話ですよ。これ。で、これね、マッツ・ブリュガー監督が言ってるのは、「こんなことが可能なのは北朝鮮が全然ちゃんと調べないからだ」って言ってるんですよ。

(赤江珠緒)まあ、そういうことですね。

(町山智浩)「まあ、何でもいいんだろう。とにかく金が入れば。あまりにもずさんだ」っていうことを言っているんですけども。でも「お前な、もし北朝鮮がちゃんと調べたら、この2人は死んでるよ?」って思うんですけど。まあとんでもない。信じられない。どこまでが本当なのか?って疑いたくもなってくるんですよ。見てると。というか、北朝鮮側の武器密輸人とか本人が本当に出て映ってますし。なにしろ北朝鮮内部で撮影してるシーンがあるんで、やっぱり本当なんですよね。というね、本当に信じられないような映画が『THE MOLE(ザ・モール)』で。

(赤江珠緒)しかも今、この後ろを見るとかなり長い時間をかけて?

(町山智浩)そう。10年ぐらい潜入しているんですよ。まあ、ここまでスケールがデカくて大変な内容なのにもかかわらず、間抜け感がずっと消えない映画っていうのも珍しいと思いますよ。思わず笑うシーンが何ヶ所かありますけども。

(赤江珠緒)ちょっとにわかには信じがたい内容ですね。

(町山智浩)ということで『THE MOLE(ザ・モール)』はもう既に公開中ですね。

(赤江珠緒)10月15日から公開。そしてその前の『ザ・レッド・チャペル』も11月27日から公開となっております。

(町山智浩)はい。日本のマスコミもこんな怖いことじゃなくていいですから。賄賂を政治家に持っていくふりをして隠し撮りするとか、そういうことはしてもいいと思いますよ。

(赤江珠緒)なにを勧めとるんですか(笑)。いや、本当にね、これはもう決死のでございますね。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

『THE MOLE(ザ・モール)』予告編

<書き起こしおわり>

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