宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で『フリースタイルダンジョン』のモンスターたちのユニットDungeon Monsterが『ミュージックステーション』に出演した件についてトーク。その素晴らしさについて話していました。
(宇多丸)本日、6月17日。まあ世の中的にもいろいろね、あんなね、強行というか……共謀罪なんちゃらとかね。こういうのはあとはもう選挙の時までちゃんとみなさん覚えておきましょうねとしか言いようがないんですけども。とか、いろいろありましたけど、僕的にはですね、後ほどチラッと言いますけど、先週の放送が終わった翌日に吉田大八監督の舞台を見に行かせていただいたりとか。その翌日月曜日には仙台の東京エレクトロンホール宮城というところにスキマスイッチとRHYMESTERの対バンで行ってね。これがまた大半がスキマスイッチのお客さんが多い中で……要はヒップホップとか親しんでいない。なんなら、ちょっと嫌だなぐらいに思っているかもしれないぐらいのお客さんの前で、こういうところでね。やっぱりアウェイ戦は私どもRHYMESTER、非常に得意とするところで。で、まあ、めちゃくちゃ盛り上がって。
あと、最後にスキマスイッチと一緒にやった『ゴールデンタイムラバー』のRHYMESTERバージョンのみならず、ちょっとスキマスイッチ側の『re:Action』という企画。他のアーティストが彼らをプロデュースするという企画のリアクション返しということである曲のカバーというかマッシュアップというか。これは見に来た人は得したやつじゃないですかね。はい。次、新潟でまた来週ですか? やりますけども。こちら、ソールドアウトとなっております。おつかれさまでーす。で、一方では昨日ね、私、本業は先ほどから言っているようにRHYMESTERというラップグループ。まあヒップホップ界ではまあ、毎回言いますけども(笑)。ヒップホップの歴史ではRHYMESTERの名前が入らない歴史というのは別に誇張ではなく、それはないであろうというぐらいの、まあそこそこの大御所なわけですけども。「自分で言うな」っていうことですけど、まあこれ嘘じゃないんでね。この口調と「大御所」というフィット感が悪いだけで、事実です(笑)。
で、ヒップホップ的にはテレビ朝日系列『ミュージックステーション』に、ご存知と言っていいでしょうね。ここ数年ずっとブームを巻き起こしてきました『フリースタイルダンジョン』の出場者を迎え撃つ側であるモンスター軍というね。要するに、日本のヒップホップシーンで特に即興のトップオブザヘッドのフリースタイルが上手いとされている人たちがモンスター、受けて立つ側としてやっていて。それの第一期性。モンスターはこれから入れ替えがあるみたいですけどね。一期生たちがもうようやくという感じで『MONSTER VISION』という曲を作って、それを『ミュージックステーション』で公開するというので。まあ僕ら界隈では大騒ぎだったわけです。
いままでも『ミュージックステーション』に出たアーティスト、いますよ。もちろん。たとえば、KICK( THE CAN CREW)とかクレちゃん(KREVA)は出ているのかな? あのへんはまあ出ていてもわかる。RIP( SLYME)なんかも全然出ているし。だし、たとえばハードコアめな人たちならずいぶん前ですけどもキングギドラが出てきて、レゲエダンサーを並べてね。いま考えたらなかなか大胆なことをやっていたりとか、そういうことはあるんだけど、久々のということもあるし、僕は見ていて……リアルタイムでは実は見れなくて。『ローガン』を見に行っていて(笑)。『ローガン』を見に行って帰ってきてから見たんですけど……やっぱりそりゃあ私、感無量なものが当然あったし、めちゃめちゃかっこいいなとも思ったし。
なにが素晴らしいのか?
なにがいいか? もちろん1人1人のラッパー、キャラクターもあって、ラップが上手くてっていうのは当然なんだけど、なにがよかったかって、やっぱり『MONSTER VISION』という曲自体がいわゆるポッセカットという、マイクリレーものというか。要するに、それぞれのラッパーが自分の持ち場の16小節なりなんなりっていうのをどんどんどんどん回していって。で、自分のスキルを誇示するという、そういうやつなんですね。で、要はこれってすごく……ものすごいヒップホップっぽい、ヒップホップならではのというか、曲のあり方だと思うんですよ。だってさ、いろんなグループの有名なボーカリストが……たとえば、『We Are The World』とかがあるにしても、あれは歌詞はちゃんと1本、決まったラインがあるけど。そうじゃなくて、いろんな有名な歌手が出てきて、好き勝手に自分のパートを歌ってどんどんマイクを回していくなんて、そんな形式は他の音楽ではないわけで。
まあ本当にヒップホップならではの、要するにそのラッパー個人個人のスキルでありキャラクターっていうのを立てて、それ自体がエンターテイメントだと。しかもそれがガッと合わさった時の化学反応がまた面白いというような、とてもヒップホップらしい形式の曲であるということが僕はよかったなというか、画期的だなという風に思いました。なので、たとえば普通の曲みたいにAメロがあってBメロがあってサビとか。1番と2番がちゃんと構造的に対応していますよとか、そういうんじゃないやり方ね。これって、たとえばRHYMESTERがいま作っている……RHYMESTERっていうのはもともと日本語ラップとかヒップホップの方法論を使いながら、これは僕らのグループコンセプトでもあるからしょうがないんだけど。まあ、割りとユニバーサルな表現を心がけるというか。要するに、ポップスとしての構造もきっちりと作るというようなところがもともとグループとして目指している部分でもあるので。
これってある意味、要するに「ヒップホップ的であること」にはちょっと反する動きでもあるんですね。これはもう完全に意図的にやっている活動、スタンスなんだけど。でも、そういうのとは違う、本当にもう言っていることも多少ブレがあるかもしれないし。あと、あの曲なんかは明快なサビなんかはなくてさ、ボンボンボンボン回していって。で、最後にラスボスの般若が出てきて……っていう、そういう構造しかないという。とにかく、他の音楽ではあり得ない、ヒップホップならではの構造と、もちろんアティチュードと、みたいなところでドーン! とやって。なんか、カメラワークというか、カメラに向かって1人1人が出ていったみたいなのも僕は演出的に全然よかったなと思うし。あとやっぱり、とはいえ多少のさ、浮いてる感というか違和感というかさ。
浮いている感・違和感
たとえば見ている人、お茶の間にいる人が「なんか、やだな」って思うようなところがあるのもまた良し!っていうか。異物感があってナンボでしょう、そんなのっていうね。ヒップホップとかラッパーなんてのはね、世間様から嫌われているぐらいがちょうどいいんでね。ほとんど、こんな人たちをテレビに出していいのか?っていう人たちが出ているのも含めて、とっても、だから長年やってきた人間として感無量であると同時に痛快でした。なんかヒップホップがお茶の間を食い破る瞬間というか。だし、まあ自分とはまた違うスタンスで……僕はやっぱりああいうスタンスじゃないわけだからさ。そういうのも含めて、「ああ、やってくれた!」っていう感じで、快哉をテレビの前で叫んでおりましたということですね。
一方、その後やった『タモリ倶楽部』にはですね、『ババァ、ノックしろよ!』。単行本担当。そしてこの間の推薦本特集にも出てもらいました、リトル・モア編集部の加藤さんがなぜか出演しているとか(笑)。その後には『サイタマノラッパー』をやっているとか、いろんな不思議な感じがしている昨日の夜の地上波でございました。
<書き起こしおわり>