菊地成孔と韓東賢 映画『お嬢さん』を語る

菊地成孔と韓東賢 映画『お嬢さん』を語る 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんと韓東賢さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で韓国映画『お嬢さん』について話していました。

(菊地成孔)まあ、そうですね。回を追うごとに、我々最高会議の3人の幹部ですら各々の情報が共有できなくなってきているほどのカルチャーの細分化ですよね。いまや私は「韓流」といえばテレビドラマしかなくなって。

(韓東賢)テレビドラマ、好きですよね。

(菊地成孔)映画とテレビドラマだけになって。

(韓東賢)映画は私も。

(菊地成孔)でも韓さん、オーバーグラウンドは見てないでしょう? あんまり。

(韓東賢)オーバーグラウンド? どういうの?

(菊地成孔)たとえば、パク・チャヌクが久しぶりに撮った……。

(韓東賢)ああ、私、『お嬢さん』は大ファンです。『アガシ(原題)』。

(菊地成孔)『アガシ』ですね。

(韓東賢)『アガシ』はちょっと、いいです。仕事をやるので、あまり言えない(笑)。

(菊地成孔)僕も仕事をやるんで、ちょっと言えないですけど。あれは絶対に見ないとダメですよね。

全方位的に素晴らしい

(韓東賢)いや、絶対に見ないとダメです。素晴らしいですね。全方位的に素晴らしいです。

(ヴィヴィアン)公開しているんですか?

(韓東賢)いまやっている。

(菊地成孔)ピーター・グリーナウェイですよね。英・韓・日の折衷様式のエロ映画ですね。久しぶりのポルノ映画。

(韓東賢)インテリジェンスがエロに炸裂しているみたいな。なんて言うのかな?

(菊地成孔)まあ、昔の映画だからね。結局ね。パク・チャヌクって僕と同い年なんだけど。ちょっと年上なのが今回の『お嬢さん』のホン・サンス。ホン・サンスはちょっと上じゃない。で、パク・チャヌクは同い年なんだけど、やっぱり80年代青春っていう感じ、すごいしますよね。80年代サブカル感っていうか。相当ピーター・グリーナウェイから取っていると思いますね。原作が英国の小説でね。

(韓東賢)だからすごいのが、菊地さん的な見方もありの……もちろんそこがベースなんですけど。すごいある種の、政治的じゃないふりをして、ものすごい政治的なものをエンターテイメントでぶっこんでいるっていうのがすごいなと思って。

(菊地成孔)最近の韓国のオーバーグラウンドのエンターテイメント映画で日帝時代が舞台になっていて。セリフの半分がカタコトの日本語っていうのがだいぶ増えているんですよ。

(韓東賢)ただ『暗殺』の100倍いいですよね。『アガシ』は。

(菊地成孔)まあ、もちろんそうだけど。『暗殺』と『アガシ』は映画の方向性が違いますからね。『暗殺』は『暗殺』で面白いんだけど、まあファミリー向けになっているじゃないですか。でも『アガシ』は相当ですよ。

(韓東賢)まあ18禁ですからね。

(菊地成孔)エロいっていう意味で完全なポルノ映画ですからね。しかも、変態映画ですよね。あれは江戸川乱歩とかの世界も入っているわけだけど。1939年が舞台だから、太平洋戦争開戦の前の年にあんなことがあったっていう……まあ、この映画の話ばっかりしているわけにはいかないんだけど。

(韓東賢)(笑)。でも、なんていうのかな? 誰が見ても全方位的に素晴らしいんで。ある種フェミニズム映画でもあるし、変態映画でもあるし。

(菊地成孔)原作者がレズビアンでね。LGBT映画でもある。

(ヴィヴィアン)へー!

(韓東賢)あと、植民地映画でもあるし。そのうち、ゆっくり語りますけども(笑)。ここで語っているわけには行かないんですけど、とにかく見てほしいです。あと、俳優が素晴らしいし。ぜひ『お嬢さん(アガシ)』、見てください。

(菊地成孔)はい。いまリアルサウンドの私の連載のいちばん新しいのがこれですね。

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(韓東賢)私もちょっと違う仕事で、ぜんぜん違う角度から語ると思うので。

(菊地成孔)まあ、その前が『ラ・ラ・ランド』で。『ラ・ラ・ランド』は「いいね」が4000を超えているんですけど、『アガシ』はまだ「いいね」が18ぐらいなんで(笑)。

(ヴィヴィアン)すごい違いじゃないですか(笑)。

(菊地成孔)まあ、それはともかく……。

<書き起こしおわり>

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