町山智浩 アメリカ人の映画鑑賞の楽しみ方を語る

町山智浩 日本人が誤解しているアメリカ像を語る J-WAVE

町山智浩さんがJ-WAVE『Others』にゲスト出演。電話をつないだリスナーからの質問に答え、日米の挨拶に関する考え方の違いや、アメリカ人の映画鑑賞の際の楽しみ方について話していました。

(ふかわりょう)さあ、電話がつながっていますでしょうか? こんばんは。

(リスナー)こんばんは。

(ふかわりょう)さあ、今日は町山さんを迎えてアメリカの話をいろいろしていますが。それにまつわる質問、相談でしょうか?

(リスナー)そうです。職場の人と以前、挨拶について話をしたことがあって、その時に日本人は「お互い気持ちよくなるから」とか、「常識だから」っていうことで挨拶をするけど、アメリカ人はそうでなくて、自分が挨拶をした時に相手の受け答えによって「この人は危険な人じゃないな」っていうのを判断するためにやっているから、全然挨拶に対して考え方が違うんだっていうことを聞いて、「本当にそうなのかな?」っていう風に不思議に思ったので。

(ふかわりょう)ひいては、銃社会っていうのがベースにあり、その身の安全を守るための術としてっていう要素が挨拶に含まれているのか? と。

(リスナー)はい。

(ふかわりょう)いやー、意外な質問が来ましたが(笑)。

(町山智浩)考えたこともなかったですね(笑)。

(ふかわりょう)あの、「ハウディー(Howdy)」っていう言葉は、メキシコでしたっけ?

(町山智浩)あ、テキサスですね。

(ふかわりょう)テキサス。「How do you do?」を稲垣さん、「ハウディー」って言うんですよ。これは「How do you do?」って言うと、あれでしたっけ? 埃っぽいから口に砂が入るからとかっていうのを聞いたことがあるんですけど……

(町山智浩)テキサスの人たちのしゃべり方っていうのはカウボーイ言葉なんですけど。口をあんまり開けないでモゴモゴモゴ……ってしゃべるんですよ。「Howdy」って感じで。

Howdy

(ふかわりょう)はい。で、それはなんかテキサスの人たちって銃を割と日常的につけているイメージがありますけども。「How do you do?」って長く言うよりは、「ハウディー」って短く言う方が、銃社会の中で身を守る術なのかな? とも思ったんですけども。こういう挨拶って、どうなんですか?

(町山智浩)挨拶ね。でも、「How do you do?」って言うのは日本で学校で教えるじゃないですか。あれ、使っているのを見たことがないですよ。

(ふかわりょう)(笑)

(稲垣えみ子)ええーっ?

(町山智浩)あれ、ほとんど現在死語。使われていないですよ。

(ふかわりょう)ああー……

(稲垣えみ子)ちょっとすごい衝撃な……私が知っている数少ない英語のひとつ(笑)。

(町山智浩)「How do you do?」っていうのは言わないですよ。あれは本当、よくないなっていう。生きた英語じゃないですね。

(ふかわりょう)これは、リスナーさんが言っているほどじゃないにしても、無意識にしろ、やっぱりそういうのはありますか? どういう人種かわからないじゃないですか。日本にいると、基本みんな日本人っていうそういう風な意識があると思うんですけど。何人かわからないっていう……

(町山智浩)わからないですね。はい。でも、挨拶でそこまでその……西部の決闘じゃないんだから。そんなに緊張しないですけどね。

(ふかわりょう)それはちょっと、リスナーさんね。ちょっと考えすぎっぽいですね。

(町山智浩)(笑)

(リスナー)ああ、なるほど。そうでしたか。

(ふかわりょう)そう。むしろ海外の人はね、僕はアメリカじゃないですけど、海外で服を選んでいたら見知らぬ外国人から「この靴、サイズ違いありますか?」って聞かれたんですよ。普通にこの「ど」のつく日本人を見て、そのショップで働いていると思っていたっていうのはつまり、あんまり気にしてないっていうのもあるんですよ。

(町山智浩)だから、何人だろうとその国の人である可能性が高い。

(ふかわりょう)っていうことですよね。

(リスナー)ああ、なるほど。

(ふかわりょう)リスナーさんはどこか行ったことがあるんですか? 海外は。

(リスナー)いえ、まだありません。

(ふかわりょう)どこにも行ったことがない?

(リスナー)はい。

(ふかわりょう)どこか行きたいっていうのはあるんですか?

(リスナー)ええと……

(町山智浩)なにが趣味ですか? 好きなことや物は?

(リスナー)映画と野球が大好きです。

(町山智浩)ああ、じゃあアメリカに行った方がいいですね。野球は。

(ふかわりょう)そうですね(笑)。

(町山智浩)野球はすごいですよ。

(ふかわりょう)ちなみに、リスナーさんがいまいちばん行きたいところはどこなんですか?

(リスナー)そうですね……

(ふかわりょう)国内も含めてもいいですよ。いちばん行きたいところ。

(リスナー)ええと、福岡に行ってみたいです。

(一同)(笑)

(ふかわりょう)福岡もいいところですよね! 福岡は美味しいものも全て揃いますから。いや、私はニューヨークよりも福岡の方が楽しめると思います(笑)。じゃあ、福岡に行って、その後に海外へ……

(町山智浩)福岡に行って、帰りにアメリカに寄るといいですね(笑)。

(ふかわりょう)アメリカ(笑)。でも、本当にその海の向こうの世界って肌で感じるものが半端ないので。ぜひ一度ね。だから僕が学校の先生だったら、「どんな教科書よりも海外の空気を吸ってこい」って思うタイプなんで。

(町山智浩)野球は面白いですよ。本当に。観客がもう一体になるんですよ。カメラがバンバン観客を映して。で、観客がキスしてたりすると、それをバーッ!って映して(笑)。美人がいるとそれを映して……っていう。

(ふかわりょう)だから球場っていうよりもテーマパークのような印象。

(町山智浩)そう。みんな参加して。

(ふかわりょう)リスナーさん、「映画好き」って言ってますけども。町山さん、やっぱり映画館に行く習慣もアメリカ人は日本とはちょっと違うわけですよね?

アメリカ人は映画館に騒ぎに行く

(町山智浩)そうですね。アメリカ人は映画館に騒ぎに行くところがあるんで。だからまあ、悪いやつが出てきたらみんなで「こいつが悪いんだ!」って言ったりしますよ(笑)。

(リスナー)(笑)

(町山智浩)「志村、後ろ!」とか言ってますよ、みんな(笑)。

(ふかわりょう)「志村、後ろ!」(笑)。

(町山智浩)そう。もう主人公の後ろから悪いやつが近づいてくると、「後ろだ、後ろ!」ってみんな言いますからね(笑)。

(ふかわりょう)あの、「この映画を見に映画館に行く」っていうのが日本人の習慣ですけど、アメリカ人……まあ欧米の人たちはとりあえず劇場に行く習慣があります。

(町山智浩)そうなんですよ。

(ふかわりょう)「あ、いまこれやってるんだ」と。で、仮に面白くないものがあった場合は?

(町山智浩)面白くないものもね、みんなで騒いで楽しむところがあるんですよ。だから、たとえば真面目な映画なんかでもそうなんですけど。『ブラック・スワン』っていう映画を見た時は、ナタリー・ポートマンが「女として性的に目覚めてないからダメだ」っていう風にバレエのコーチに言われて、したことないのにオナニーしているとそれをお母さんに見られていたっていうシーンがあった時に、観客がみんな「イエーイ!(拍手)」って喜んでましたから(笑)。「なに喜んでるんだ、こいつら?」って思いましたけども(笑)。

(ふかわりょう)もうね、声を出したら顰蹙を買うような感じですけども。

(町山智浩)そう。日本だったらそういうところ、みんな黙っていたでしょ? アメリカ人はもう大喜びでしたよ(笑)。

(ふかわりょう)お口に合わない映画を見た時も、スポーツ観戦で好きなチームが負けたぐらいな気持ちで劇場を後にするらしいので……

(町山智浩)そうなんですよ。だからまあ、あんまり面白くない映画の場合はみんなで最後に「Refund! Refund!」って歌を歌うんですよ。

(ふかわりょう)えっ、なんですか?

(町山智浩)「金返せ~、金返せ~♪」って。

(ふかわりょう)ああ、それ自体も楽しむっていうね。

(町山智浩)それ自体も喜んでいるという。

(ふかわりょう)ということなんでね、福岡の後はぜひ。ご一考ください。

(リスナー)はい、ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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