町山智浩さんが2022年10月25日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『『マッドゴッド』』を紹介していました。
(町山智浩)で、もう1本の方はですね、全くそれ(『ONI ~ 神々山のおなり』)と逆でですね。血みどろで内臓ぐちゃぐちゃで、うんこがブリブリ漏れるっていうとんでもないアニメなんですけど。人形アニメで。『マッドゴッド』っていうタイトルで。「狂える神」っていうタイトルなんですね。で、これは人形アニメです。これは監督はフィル・ティペットという人で。この人はうちから車で8分ぐらいのところに住んでいます。
(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!
(町山智浩)で、このフィル・ティペットという人は伝説の人形アニメーターなんですよ。ストップモーションアニメーターで。『スター・ウォーズ』をご覧なった方々だったら覚えてると思うんですけど。主人公のルーク・スカイウォーカーがミレニアム・ファルコンに乗って、すぐにテーブルの上でチェスをするシーンがあるんですね。
(赤江珠緒)あるある! はいはい。
(町山智浩)ちっちゃい怪物がね。
(赤江珠緒)ボワーンと浮かび上がってきて。
(町山智浩)そうそうそうそう。ホログラフで。それでちっちゃい奇怪な怪物たちがプロレスをするんですけど。あれを作った人です。
#HBD #PhilTippett#フィル・ティペット生誕祭
September 27, 1951デジャリック(Dejarik)
ホログラム・チェス『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』
Star Wars: Episode IV A New Hope pic.twitter.com/JELoLR982N— みやん3号 (@1aelTopo) September 27, 2022
(町山智浩)で、いろんなものを作ってる人ですね。『ロボコップ』に出てくるあのロボットとか。『スター・ウォーズ』だと『帝国の逆襲』に出てくるあの巨大な象のような戦車とか。ああいうのを作ったり。あとはアカデミー賞を取ってるんですけども。アカデミー賞を取ったのはですね、『ジュラシック・パーク』の恐竜です。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)あれ、一般的にはCGだと思われてるんですよ。でもあれは、そのフィル・ティペットがまずティラノザウルスのモデルを人形で作って。で、それを動かして。動く時にその関節部分にセンサーを取り付けて。それで動きをコンピュータに取り込んで、コンピュータグラフィックス内のティラノザウルスを動かしてるんですよ。
(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。
(町山智浩)だから人形アニメ、ストップモーションアニメとCGの合体なんですね。それをやって、フィル・ティペットはアカデミー賞を取ったんですね。本当にすごい天才なんですよ。彼は。まあ、とにかく上げるとキリがないんですけど。『スターシップ・トゥルーパーズ』っていう映画で、もう何万もの数の怪物がですね、宇宙軍を襲うというシーンがあって。それも同じ方式で撮ってるんですけど。
とにかくフィル・ティペットという人はすごい人なんですが。今、CGの時代になって。ここ20年ぐらい、そういう彼のストップモーションの作品がなかったんですね。やっぱりなんていうか、商業映画は全部CGに行っちゃったんでね。ところがその間、30年間コツコツと1本の映画を彼は作り続けてきたんですよ。それが『マッドゴッド』なんですよ。で、要するに1コマずつ撮るやつだから、ものすごく時間がかかるんですね。
(赤江珠緒)これ、CGじゃなく、もう全部1コマずつ?
1コマずつ30年かけて撮る
「スター・ウォーズ」「ロボコップ」「スターシップ・トゥルーパーズ」など誰もが知る名作SFで特殊効果を手がけてきたフィル・ティペットが監督を務めたダークファンタジー。地獄と化した世界をめぐる物語を、ストップモーションアニメで描いた。#tama954
マッドゴッド https://t.co/shpyQ71IP1 pic.twitter.com/XJ63lYGEEl
— もりかわゆうき (@Yu_Mori) October 25, 2022
(町山智浩)1コマずつ、撮っているんです。これ、1本で30年かかってます。大変なんですよ。で、彼のスタジオに行ったんですけど、もう全部これになってましたけどね。もうコツコツコツコツと作り上げてきたのがこの『マッドゴッド』で。内容は地獄巡りです。セリフ、ないです。
(赤江珠緒)地獄巡り(笑)。
(町山智浩)地獄巡り。もう世界が完全な地獄になって。人間たちはみんな、うんこから作られて。で、うんこ人間たちが一生懸命働くんですけど、次々と踏み潰されていくという、もう本当に地獄なんですよ。これはね、オランダの画家でヒエロニムス・ボスという人がいるんですね。ブリューゲルよりもさらに前の人なんですけども。そういう地獄絵図ばっかり書いてた人なんですね。で、その人の絵を、このフィル・ティペットが10歳の頃に見て。それからずっと頭の中に積み上がってきたイメージを30年間で吐き出したっていうものなんですよ。
(赤江珠緒)これまたすさまじいですね。
Hieronymus Bosch. Christ's Descent into Hell. 1550 pic.twitter.com/YqJ9tTpZKZ
— Sunbursts666 (@Sunbursts666) October 22, 2022
“Baying hordes of Tory MPs in hell by Hieronymus Bosch” pic.twitter.com/vYHXja84gH
— aragoto ?? ? ? (@aragoto) October 19, 2022
(町山智浩)ボスの絵っていうのは知ってる人だったらわかるんですけど。もう本当に地獄大パノラマなんですよ。で、この怪物の数々を全部1人で手作りしてます。
(赤江珠緒)これ、自分で手作りで?
(町山智浩)手作りで全部作って。
(赤江珠緒)で、それを少しずつ動かして?
(町山智浩)そうそう。少しずつ動かして。そういう執念の作品がこの『マッドゴッド』で。彼は現在、71歳なんですけども。いろいろと大変だったみたいですよ。この30年間は。
(赤江珠緒)いや、そうでしょうね。そりゃあ30年かかるだろうなっていう感じですもんね。
(町山智浩)で、これがとにかく天才の技なんで。『マッドゴッド』っていうタイトルはまさにこのフィル・ティペットさん自身だということで。まあ、すさまじい映像体験ですので、ぜひご覧いただきたいと思います。
(赤江珠緒)でもやっぱりCGができるようになっても、そういう技術で作ったものはやっぱり違うんですか?
(町山智浩)やっぱり全然違いますね。それは。それは……芸術作品に近いものですね。本当に。この人自身のそのイマジネーションから出てきた、このフィル・ティペットさんの脳に入っていくような体験を味わうことができると思いますけども。ということで、お二人ともご近所なんでね。近所贔屓なだけです(笑)。いや、そんなこともないですけども。
(赤江珠緒)ちょっとね、ご近所に鬼才が多いな、みたいな(笑)。
(町山智浩)大変なことになっていますけども。八百屋さんとかで会ったりする人たちですけどね(笑)。
(赤江珠緒)『ONI ~ 神々山のおなり』はNetflixで配信中でございます。そして『マッドゴッド』は12月2日、日本公開となります。
(町山智浩)ということでバークレー町内会の皆さん、ぜひよろしくお願いします(笑)。
『マッドゴッド』予告
<書き起こしおわり>