松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でファンテイジアの『When I Met You』を紹介していました。
(松尾潔)「So」で始まる曲。この番組でちょっと前にファンテイジア(Fantasia)の『So Blue』っていう曲をご紹介しました。
『So Blue』を含みます彼女の5枚目となるアルバム『The Definition Of…』。これはね、ファンテイジアのアルバムっていつもそうなんですけども。アルバムリリースされて、まず聞いてみます。「うーん、いつものファンテイジアぶり。好調だな」。2回、聞きます。3回、聞きます。5回ぐらいまで聞いて、ちょっと間を置いてもういっぺん聞いてみると、フワッと浮かび上がるように、「ああ、アルバムの中のベストトラックはこれだった!」っていうのが後でわかってくるんですね。僕の場合今回は『When I Met You』っていう曲。これが僕にとってのベストでしたね。
改めて、『The Definition Of…』の中からご紹介したいと思います。ファンテイジアで『When I Met You』。
Fantasia『When I Met You』
ファンテイジアの『When I Met You』をお届けいたしました。5枚目のアルバム『The Definition Of…』に収録されていました。これはね、久々に使うフレーズですけども、なかなかに滋味深い曲ですね。プロデュースを手がけていますロン・フェア(Ron Fair)という人。この人はまあ女性ボーカルの名手と言って差しつかえがないですね。キーシャ・コール(Keisha Cole)ですとか、古くはクリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)、こういった人たちに代表曲と呼べるようなものをもたらしてきたロン・フェア。ボーカル録りが上手いんですよね。本当、ボーカルの引き出し方が上手いし。
彼自身、もともとワイルド・オーキッド(Wild Orchid)っていう女性ボーカルグループのメンバーを奥さんにしているぐらいですから、本当に女性シンガーのね、機微みたいなものが身体でわかっているんじゃないかな?っていう風に思いますね。大ベテランですけども、今回のファンテイジア。本当に素晴らしい仕事を見せてくれました。
で、この『When I Met You』の作者の1人であります女性に注目したいと思います。最近のこういった曲っていうのは数人でチーム制で作ることがほとんどでありまして。そういうのを我々は「コ・ライト(co-write)」って呼んでいます。共同作曲、共同作詞みたいなことをコ・ライトって言ったりしますけども。この『When I Met You』のコ・ライトのスタッフに名前を連ねていた女性にプリシラ・レネイ(Priscilla Renea)という女性。そのプリシラ・レネイの2009年のアルバム『Jukebox』の中から『Lovesick』を続けてご紹介いたしました。
Priscilla Renea『Lovesick』
このプリシラ・レネイっていうのは現時点でコ・ライトの女王の1人ですよ。この番組でプリシラの名前を僕、はじめてご紹介するかもしれませんけども。88年生まれでまだ――今週の水曜日、9月14日に彼女は誕生日らしいんですけども――28才になると。まだ若い。現時点で27才の彼女がこれまでに残したコ・ライトの傑作と言うと、たとえばマライア・キャリー(Mariah Carey)の『Infinity』とかね。
この番組でご紹介したところで言うと、K・ミッシェル(K. Michelle)の『V.S.O.P.』とか。
ああいった曲に当時、20代前半だったりしたプリシラが詞を書いたりメロディーを書いてきたりしたんですね。で、そういったチームをまとめて楽曲としての完成度を高めてきたのがロン・フェアということも言えるわけで。まあ、ね。いまチームワークで作り上げるR&BというのがいまのR&Bの現状であり、最前線であり、もしかしたらソウルミュージックの時代から聞いている人たちからすると、「だからつまんなくなったんだ」みたいな。そういう厳しいご意見もあるでしょうが、僕はそういった作り方が変わっても、やっぱりそこからこぼれ落ちる、昔と変わらぬ旨味成分みたいなのを見出して喜ぶタイプなんで。プリシラのね、活躍とかっていうのはうれしいんですよね。
本人がね、シンガーとしてはいまひとつ成功しなかった人で。最近はこういう裏方に回っての仕事が多いんですけどもね。本人の再浮上も期待したいと思います。男性の場合ですとね、もちろんニーヨ(Ne-Yo)とか、そういうコ・ライトから本人がスターになったっていう人もたくさんいますからね。プリシラもそういう風な道を歩むといいんじゃないでしょうか。
<書き起こしおわり>