菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で雑誌『ユリイカ』の日本語ヒップホップ特集についてトーク。誌面上で鼎談をしたOMSBさん、MOEさんとともに『フリースタイルダンジョン』などの話をしていました。
(菊地成孔)今日はたぶん音源がいっぱいあるんで。紹介をしているうちに終わっちゃうと思うんでですね(笑)。そこで、細かい話は『ユリイカ』を読んでくれっていう。
(OMSB)たしかに。
(菊地成孔)あのね、『ユリイカ』っていう雑誌があるんですよね。これは何と言うか「サブカル」とも呼べない、もっと本当にメインカルチャーに近い、アカデミズムに近い……もともとは詩の雑誌だったんですけど。最近は何でもやりますけどね。『ユリイカ』も軟派になって。『ユリイカ』が日本語ヒップホップ特集をやるんだという。で、原稿の依頼が来まして。で、「うーん……」っていろいろ考えたんですけど。他のコンテンツなんか読んでも、大先輩の方や、逆に言語学者の方とか。
(OMSB)ああー。
(菊地成孔)そういう人たちがいっぱい出てきて。「これはひょっとすると、よくあるインテリが不良の文化を語りたガール、みたいなパターンだったらクソだな」と思って。まあ原稿を書くのを止めて提案したんですよ、編集部に。「ラジオをやっていて……」って。まあ、編集部も当然聞いているんですけど。「あの3人で鼎談して。3人とも、ある意味現状のヒップホップ界から言うとボーダーライナーっていうか、どこにも属さないところで力を生み出しているタイプだと思うんで。その3人の鼎談なんか、どうですか?」って言ったら、もう大喜びで。「えっ、集まっていただけるんですか?」って感じでですね(笑)。
(OMSB)(笑)
(菊地成孔)『ユリイカ』で鼎談をしております。
(MOE)イエーッ!
(菊地成孔)結構長くしゃべりましたよね。
(MOE)そうですね。
(菊地成孔)話のテーマはあっちゃこっちゃ、随分話したけど。まずはとにかく、『ユリイカ』とか言ってるけど、『フリースタイルダンジョン』でしょ?っていうことで(笑)。
(MOE)なんで、そもそもね。
結局『フリースタイルダンジョン』でしょ?
(菊地成孔)そうそうそう(笑)。『フリースタイルダンジョン』だろ? そんな、アカデミズムの雑誌が『TV BROS』みたいなことをしていいのかな?っていう(笑)。という、問いかけから始まってですね。まあいまはですね、この『HHHH』。その前の『日本語ラップ特集』から勘定したら3、4年たちますよね?
(MOE)そうですね。たしか、日本語ラップ特集は2014年とか。2年前か? 随分、変わりましたね。
(菊地成孔)そうですね。変わりましたね。あの時の状況っていうのは、MOEさんが全然まだ、「新譜を出してくださいよ」「出しますよ」「でも、ぜってー出さねえだろうな」っていう(笑)。
(MOE)もうお決まりの問答でしたね(笑)。
(OMSB)そう考えたら、早いんだか……っていう気がしますね。
(MOE)2年やで?
(菊地成孔)2年ですからね。ほいでもって、まあ時代の趨勢としては、なんかあの頃、ちょうど文化系ヒップホップみたいなのが。まあ、あの本を書いたのは共著の本だけど、主筆っていうか。大和田(俊之)くんっていう私の学生ですけどね。っていうか、私の学生って言いながら、大変な世界中飛び回っている(ハーマン・)メルヴィルの研究家の米国文学者ですけど。
(OMSB)へー。
(菊地成孔)まあ、あの時はギャングスタ・ラップ対文化系ラップっていうのがひとつの二大勢力としてこれからしのぎを削っていくのかな? と思われていたのが前号までのあらすじだったんですけど(笑)。実際にフタを開けてみたら、この2年で全然そんなことにならなくて。何が起こったか?っていうと、『フリースタイルダンジョン』の……前口上でも言いましたけど。関係者全員の予想を超えるヒットですよね。
(OMSB)うんうん。
(菊地成孔)それでもう、なんていうかいままでDQNとかGラップとか、「怖い」もしくは「嫌い」もしくは「ダサい」とか思っていた人たちが、みんなR-指定さんの神業に触れてすっかり陸サーファーならぬネット不良みたいなのが何万人か生まれたんじゃねえかな?っていう。まあまあ、それはいいことでもあるけど……とか何とかっていう話を『ユリイカ』でさんざん3人でしております。
(OMSB)そうです。
(菊地成孔)ので、5月27日にその『ユリイカ』が出ます。我々のページだけでも相当読み応えがあると思うんですけど。他にも相当なメンツ。ZEEBRAさんから、下は俺たちだけど(笑)。
(OMSB・MOE)(笑)
(菊地成孔)「下は」っていうか、横は俺たちで(笑)。
(OMSB)斜めぐらいじゃないですか?(笑)。
(菊地成孔)斜め横が俺たちじゃないかと。若い方だと……
(MOE)KOHH。KOHH。
(菊地成孔)ああ、KOHHさんね。まあでも、KOHHさんもすでに中堅と言っていい、ねえ。年齢こそ若いですけどね。という状況ですので。最近、あの番組でヒップホップを知ったという方や、この番組のリスナーの方なんかは非常の面白いと思いますので。ぜひ、チェックしていただくとして……
(中略)
(菊地成孔)はい、どうも。『菊地成孔の粋な夜電波』。ジャズミュージシャンの、そしてですね、『フリースタイルダンジョン』の話は『ユリイカ』でさんざんしてるので、それは読んで頂きたいのですが。いろんな、やっぱり大きな動きは功罪あるとは思うんですけど。まあ、基本的には素晴らしい。どのぐらい素晴らしいか?っていうと、『TOKYO TRIBE』で日本人のヒップホップ観が変わるより1億倍はいいよねっていう(笑)。
(OMSB・MOE)(笑)
(OMSB)まあ、間違いないっすね。
(菊地成孔)間違いない。と、思っている菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今週はSIMI LABのOMSB’eats、そしてMOE AND GHOSTSのMOEさんをゲストに迎えての『HOLY HIP HOP HOUR(4H)』をお送りしております。
(中略)
(菊地成孔)じゃあ、そうだな。もうちょっとしゃべってもいいんだけど。ちょうどいいところに来たんで。細かい話は『ユリイカ』に回してもらうことにして(笑)。ラジオのリスナーに「本を買え」っていうのもどうかと思いますけどね。しかも、字のちっちゃい。
(OMSB)(笑)
(菊地成孔)すんげーちっちゃい。どうかと思いますけど、まあ結構そこではね、チャラく楽しんでいるっていうより、比較的真面目に話しているので。すごい真面目よね。でもまあ、日本はいま、とにかく最初に言った通り、『ユリイカ』だっていろんな屁理屈……「屁理屈」って言っちゃいけないけど、屁理屈だけどさ。「屁理屈をでっち上げてるけど、結局『フリースタイルダンジョン』に興奮したんでしょ、編集部が?」としか言いようがない(笑)。
(OMSB)ぶっちゃけ言うと。
(菊地成孔)ぶっちゃけだからね。まあ、それに対するコメントも入ってますんで。『ユリイカ』で読んでいただくとして。じゃあまあ、Hi’Specの作品を聞いて、今日はお別れしますかね。SIMI LABの2DJ。
(OMSB)そうですね。DJ ZAIと。
(菊地成孔)DJ ZAIとHi’Spec。Hi’Specの方が古参というか、オリジナルメンバーかな?
(OMSB)あ、オリジナルメンバーは俺しかいないんで(笑)。
(菊地成孔)(笑)
(MOE)1人で背負ってんねん(笑)。
(菊地成孔)そうだね(笑)。それを言ったら、あとからみんな来たんだ。
(OMSB)そうですね。
(菊地成孔)SIMI LAB全体の調子はどうなんですか? ラジオを聞いてる人で、「SIMI LAB、どうなのよ?」っていう人も随分いると思うんですけど。
(OMSB)まあ、いい感じですよ(笑)。なんとも言えない感じで。
(菊地成孔)なるほど(笑)。まあ、SIMI LABも捲土重来っつーんですか? 今年ぐらいにはありそうですか? 来年ぐらいになりそうですか?
(OMSB)うん、いや、まあ来年にはあるんじゃないですか?
(菊地成孔)なるほど。まあ、来年、何がどうなっているかわからないですからね。わかんないもんはわかんないもんね。来年、『フリースタイルダンジョン』に大谷(能生)くんが出てる可能性もあるからね。
(OMSB・MOE)(笑)
(OMSB)バトルで見たいですね(笑)。
(菊地成孔)「クリティカルヒット」!
(OMSB)「クリティカルヒット」(笑)。
(菊地成孔)ヤバいでしょ(笑)。いや、でも大谷くんは言えないよな。人のあれは。人の急所は突かない人だよね。
(OMSB)まあ、酒を飲んで……
(MOE)ああ、酔拳。
(菊地成孔)酒乱だからね。酒を飲んでいる大谷くんには、ここにいる3人、全員ディスられてる(笑)。
(OMSB)全員ディスられてる(笑)。
(MOE)洗礼を受けてます、はい(笑)。
(菊地成孔)激しくディスられてるんで(笑)。「菊地さんはなっちゃないよ!」って言われたからね(笑)。まあ、ディスられてますけどね。グイグイひっかけていってほしいっていうね。
(OMSB)そうですね。
(菊地成孔)ただまあ、何を言ってるかわからなくなると思いますけども。
(OMSB)「ヒップホップなんか余裕っしょ!」っつってたから(笑)。「できた、できた」とか言って。
(MOE)ほんまね、お酒飲んでる時のメンタル最強やからな、大谷さん(笑)。
(OMSB)「余裕っしょ!」って。
(菊地成孔)まあ、そんな感じですけども。
<書き起こしおわり>