菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』で日本語ラップを特集。SIMI LABのOMSB、Moe and ghostsのMoeさんをゲストに迎え、日本語ラップについて1時間丸々語り合いました。
(菊地成孔)はい。菊地成孔の粋な夜電波。ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。本日は番組、もう4年目ですけども。始まって以来の日本語ラップ特集ということでですね。まあまあ、HIPHOP、R&Bはやたらと流してきたわけですが。日本語ラップだけの1時間というのは珍しいというか、番組初ですね。というわけで、2人の素晴らしいゲストを。もうなんて言うんですかね?『素晴らしいゲスト』なんて言うと白々しいですけど。個人的な知り合いでもあるので、どの程度の力量で紹介していいのかわからないので。紹介用のスキットを作ってみました。まずはこの方です。
<OMSBスキット>
(質問)あなたのクルー名とラッパー名は?
(OMSB)SIMI LAB、OMSB(オムスビ)です。
(質問)あなたの本名は?
(OMSB)加藤ブランドン。旧姓が、ブランドン・アレクサンダー・ジョーダンです。
(質問)あなたの年齢は?
(OMSB)25才です。
(質問)最初にラップにヤラレたのはいつ?何才の時?
(OMSB)13才ぐらい。中学生。
(質問)誰の、なんていう曲?
(OMSB)50 Centの『In Da Club』です。
(質問)いちばん尊敬するラッパーは誰?
(OMSB)50 Cent。
(質問)いちばん好きな人は誰?家族?恋人?自分?
(OMSB)家族、恋人、自分です。
(質問)ヴァースは手書き?それともスマートフォン?
(OMSB)スマホメインです。
(質問)今夜この番組を聞いているHIPHOPの愛好家たちへ一言。
(OMSB)僕のことを忘れないでください。
(質問)今夜この番組を聞いている、HIPHOPをあまり聞かないリスナーに一言。
(OMSB)僕のことをよく知っておいてください。
(質問)ラッパーとしての夢は?
(OMSB)ハワイにスタジオとクラブを作ります。
<スキットおわり>
(菊地成孔)はい。ハワイが好きなんだ。
(OMSB)ハワイ、めっちゃ好きですね。
(菊地成孔)あの、すごい意外っていうか。意外じゃないというか。本当に?
(OMSB)そうっすね。1回しか行ったことがないんですけど。その1回で・・・
(菊地成孔)ヤラレた?
(OMSB)本当にヤラレちゃって。
(菊地成孔)どこにヤラレましたか?
(OMSB)いや、もうなんていうんだろうな?歩いてて、一歩がめちゃくちゃ遅くなる感じっていうか。後はもう、なんだろうな?過ごしやすいじゃないですか。やっぱり。そのまんまなんですけど。
(菊地成孔)(笑)。なんかさ、ハワイってなんか俗っぽくてダメだって思っている人にこういう話、いくらしてもさ。『ハワイ過ごしやすい』とかさ。『足の一拍が遅くなる』とかさ。何いってんだ?って感じで。
(OMSB)通じない。
(菊地成孔)行かないとわからないよね?俺もね、行く前はね、『行くやつバカだ』と思ってたの。でね、何年か前に行って、もう『「行くやつバカだ」って思ってたやつばバカだ』って思ったね(笑)。
(OMSB)本当、損しますよね。その先入観だと。
(菊地成孔)これもね、言っても言っても空を切るんだけど。老後はハワイで生きたいよね。
(OMSB)本当、そう思います。
(菊地成孔)そんな、SIMI LABの中心人物ですね。OMSB’eats。
(OMSB)OMSB’eatsです。
(菊地成孔)今日、最年少ですね。一応ね。じゃあ、お姉さまも来ておりますので。こちらの方です。
MOEスキット
(質問)あなたのクルー名とラッパー名は?
(Moe)Moe and ghostsのMoe(モエ)です。
(質問)あなたの本名は?
(Moe)宇都宮萌。
(質問)あなたの年齢は?
(Moe)29才です。
(質問)最初にラップにヤラレたのはいつ?何才の時?
(Moe)大学卒業して、23・4才の時に。カーステレオから。
(質問)誰の、なんていう曲?
(Moe)Sugarhill Gangの『Rapper’s Delight』。
(質問)いちばん尊敬するラッパーは誰?
(Moe)バスタ・ライムズですね。
(質問)いちばん好きな人は誰?家族?恋人?自分?
(Moe)他人だけど、自分と似ている人が好きです。
(質問)ヴァースは手書き?それともスマートフォン?
(Moe)細かいラインは携帯とかiPod touchで貯めていて。で、それをPCで編集して、印刷して、書き込んで完成させています。
(質問)今夜この番組を聞いているHIPHOPの愛好家たちへ一言。
(Moe)はじめまして。ラップは聞くのとやるのとの溝がすごく低いと思うので、1回やってみてください。
(質問)今夜この番組を聞いている、HIPHOPをあまり聞かないリスナーに一言。
(Moe)HIPHOPという言葉に抵抗がある人へ。HIPHOPという言葉は口に出していて単純に楽しいので、1回言ってみてください。
(質問)ラッパーとしての夢は?
(Moe)こないだ、JAZZDOMMUNISTERSのレコ発に出て思ったんですけど、フリースタイルができるようになりたいなって思いました。
<スキットおわり>
(菊地成孔)はい。Moe and ghostsのMoeさんです。どうも。よろしくお願いします。
(Moe)はい、こんばんは。
(菊地成孔)Moeさんってもう・・・もうって言ったら失礼ですけど、29なのですね。
(Moe)そうなんですよ。27で初めてCD出して、はい。で、2年たちましたね。
(菊地成孔)ですよね。どっちかって言うと、謎めいている系じゃないですか。あっちゃこっちゃ行くっていうより。
(Moe)ただ、活動してないだけ(笑)。
(菊地成孔)いやいや、そんなことはないと思いますけどね。その少ない活動歴を、俺や、相方の大谷(能生)くんや、OMSBなどと過ごしてますけども(笑)。
(Moe)私、CD発売していままで3回しかライブしたことないんですけど。1回目に大谷さんが出て、2回目に菊地さんとやって。で、3回目は菊地さんと大谷さん両方(笑)。
(OMSB)(笑)。すげー。
(菊地成孔)そうですね。まあ、2人とも私と、いま名前を挙げた相方の大谷くんがやっているJAZZ DOMMUNISTERSっていうクルーに客演で入ってもらって。2人の客演がなかったら、あのアルバムは成り立たなかったであろうっていうぐらいの(笑)。素晴らしい、あの・・・感じなんですけどね。そうですか。フィーメールラッパーって、どのぐらいいるんですかね?日本に。
(Moe)ねえ。私もよく知らないんですよ。会ったことがない。
(OMSB)ローカルとかだと、結構。意外と、どこ行っても1人はいるみたいな。
(菊地成孔)でも、DJやさ、ビートメイカーの方が多いよね。いま。女の子ってね。
(Moe)そうなんですね。
(OMSB)DJ、めちゃくちゃ多いですね。
(菊地成孔)DJ、めちゃくちゃ多いね。JAY-Zのいちばん新しいアルバムでね、1人女子高生いるでしょ?ビートメイカー(Wondagurl)。あれ、ヤバいよね。そういう時代だよね。
(OMSB)そうっすね。
(菊地成孔)あのね、こういうお葉書がきてるんですよ。『菊地成孔さま、OMSB’eats from SIMI LABさま、Moe from Moe and ghostsさま、粋な夜電波のみなさま、こんばんは。毎週楽しく聞かさせていただいております。愛知県在住の20代の男性です。さて、この度は約2年ぶりの本格的HIPHOP特集が組まれるということで・・・』。まあまあ、2年前にHIPHOP特集やったんだけど。それは日本語じゃなかったんで。『で、大変楽しみにしております。先日の放送では、リスナーの中のHIPHOPの人気が低く、友人をお誘い合わせの上といった旨のことをおっしゃっていたので、にわかには信じがたかったのですが、それはいけないと思い立ちまして、まずは1票と思い、お便りさしあげております。残念ながら組織票を持ちあわせておりませんが、HIPHOP党として頭数に入れていただきますよう、お願い申し上げます。HIPHOP歴は短く、リテラシーも低いものではありますが、楽しんでいます』と。
(OMSB)いや、もうありがたいっすね。
(菊地成孔)たくさんメールをいただくんですね。ラジオ番組ってね。今回、『HIPHOP好きです。がんばってください』っていうメールは、これ一通だけでした。
(一同)(笑)
(OMSB)がんばんなきゃなー。俺。マジで。
(Moe)がんばってー(笑)。
(菊地成孔)かなりアウェイなことはアウェイ。あのね、特殊事情。もちろんもちろん、これはあの、なんていうかモニターとしてはかなり偏っていて。AMラジオのさ、やっぱり・・・いま、ずっと長い間夕方の7時からやっていて。このシーズンから夜の12時になったとはいえ、メインは4・50代の人だからね。もっと上もいるの。おじいさんとかも聞いているからさ。『ラップってなんじゃ?』みたいな人も、聞いているわけ(笑)。で、まあ番組4年もやっていると、わかるじゃないですか。で、まあこういうモニターポイントでもわかるのは、やっぱりロックだよね。日本でマジョリティーは。
(OMSB)ああー。そうっすね。
(菊地成孔)まあ、アイドルを除けばね。アイドルはもう、圧倒的。あとは、あるとしたらロック。で、その下ぐらいにR&Bとかがあって、HIPHOPもまあ、ちょっとあって。『ファレルみたいなのもいいね』っていう人もいて。で、日本語ラップってなると、またグンと下がるんですね(笑)。
(OMSB)そうですね。
(Moe)うん。
(菊地成孔)もう、今日はすごいリスナーの層ががっぷり2つに分かれていて。めちゃめちゃジャパニーズHIPHOPのヘッズの人々と、あとはもう聞いたことがないっていう。『へー、日本語のラップかね。女の子が出るのかね』っていう。『だよねー』っていう(笑)。
(OMSB)DA.YO.NE(笑)。
(菊地成孔)『DA.YO.NEってあったよねー』みたいな人たちの2種類だと思うんですよね。で、まあいろいろ話していければなと思うんですけど。あ、しまったしまった。ええと、私も実はラッパーでして。スキットをお願いします。
N/Kスキット
(質問)あなたのクルー名とラッパー名は?
(N/K)JAZZ DOMMUNISTERS、N/K(エヌ・スラッシュ・ケー)です。
(質問)あなたの本名は?
(N/K)ええと、非公開だけど、戸籍上は菊地成孔です。
(質問)あなたの年齢は?
(N/K)来月で51才。
(質問)最初にラップにヤラレたのはいつ?何才の時?
(N/K)ええと、たしか86年だから23才の時にテレビをつけたらちょうどラッパーが出てきた。
(質問)誰の、なんていう曲?
(N/K)RUN-DMC『Walk This Way』。
(質問)いちばん尊敬するラッパーは誰?
(N/K)ええと、本当は50(Cent)だけど、日本人だったらSOUL SCREAMのE.G.G.MANがいちばん好きです。
(質問)いちばん好きな人は誰?家族?恋人?自分?
(N/K)育ての母と、産みの母。
(質問)ヴァースは手書き?それともスマートフォン?
(N/K)ライフ社のプレインカラーっていう白紙ノートと、ぺんてるのサインペンでやってます。
(質問)今夜この番組を聞いているHIPHOPの愛好家たちへ一言。
(N/K)ええと、ライムスターの番組もかならずチェックしてほしい。
(質問)今夜この番組を聞いている、HIPHOPをあまり聞かないリスナーに一言。
(N/K)HIPHOPは非常に豊かな芸術で、ヤンキーのシュプレヒコールじゃないんで。いじめられた記憶から身をすくめたり、過度に軽蔑しなくてもいいということをわかってもらいたい。
(質問)ラッパーとしての夢は?
(N/K)全員が唇の脇とかに超小型マイクを埋め込む時代が来ても、自分はマイクロフォンを握っていたいです。
<スキットおわり>
(菊地成孔)まあ、単に手術が嫌だっていうだけなんですけどね。
(OMSB・Moe)(笑)
(OMSB)それ、怖いっすよね。
(菊地成孔)埋め込むの、嫌だよね。でもたぶん、埋め込まれるよね。このまま行ったら。
(OMSB)結構あり得る話だから。
(菊地成孔)結構あり得るでしょ?まあ、歯ぐらいいくかもね。インプラントで入れて、それでライブの時はグッと上げてさ(笑)。
(Moe)でも、マイクは握っている(笑)。
(菊地成孔)そうそう。そうすると、両手が使えるみたいな、感じだと思うんですけど。まあ、たったこれだけの質問ですけど、驚きの連続ですよね。OMSBがさ、50が好きっていうのはぜんぜん驚かないよね。ちゃんと成功したから、とかもあるでしょ?
(OMSB)も、あるし。やっぱり、なんだろうな?夢があるっていうのですよね。
(菊地成孔)まあ、ある。ラップ自体もいいしね。フロウもすごいし。何の文句もない。俳優としても、ちょっとしたもんだしね。
(OMSB)そうっすね。かなり役作りもいい感じだし(笑)。
(菊地成孔)そうだよね。この間もさ、飲んでて言ったと思うんだけど、シルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーのダブル主演の映画にオタクのコンピューターマニアでハッキングを防止するっていう役で50が出てたの。メガネかけて。ちっちゃいわけ。その2人の前で。50が(笑)。なんか、小男がいるんですよ。ナード役みたいな感じで。で、カシャカシャカシャッてやってて。後からみたら、50 Centって出てきて、すげーびっくりして。
(Moe)へー。
(菊地成孔)あの50ですらね、シュワルツェネッガーとスタローンの前ではチビに見えるっていう(笑)。アメリカ、やっぱりケタが違うよね。
(OMSB)スケール、違いますね。本当。
(菊地成孔)違うよね。OMSBだってデカいでしょ?平均的に見て。
(Moe)大きい。
(OMSB)そうですね。でも、たぶん外人としてはちっちゃい方っすね。
(菊地成孔)身長はそうかもね。
(OMSB)横幅は結構、あるっすけど。
(菊地成孔)筋肉の幅がすごいよね。やっぱり。
(Moe)腕とかもすごいですよね。
(菊地成孔)いや、上腕筋とかすごいよね。
(OMSB)これはマズいっすよ(笑)。これは脂肪ですね。
(菊地成孔)背筋も・・・(笑)。腕(かいな)だよ、腕(かいな)。いやー、なんかたまにさ、後ろからラップしたりDJしたりするの見てると、背筋の動きもものすごくてさ。いまからボクシングやったら、チャンピオンなれるんじゃないか?(笑)。まあまあまあ、ラッパーとしてチャンピオンになってほしいですけど。
(OMSB)そうっすね。殴られるの、怖いんで(笑)。
(菊地成孔)あ、殴られるの、怖いですか?
(OMSB)結構怖いっすね。
(菊地成孔)さっきもチラッと言ったんだけど、まだね、日本ってラップがDQNっていうの?要するに、私の世代ではわからない言葉ですけど。要するに、不良のなんかさ、シャコタンの不良みたいな感じで。それで嫌われてしまうっていうようなところがまず、もったいないじゃないですか。
(OMSB)そうですね。
(菊地成孔)OMSB、ぜんぜんヤンキーじゃなかったでしょ?
(OMSB)ぜんぜんヤンキーじゃなかったですし、どっちかって言うと、本当オタクサイドっていうか。なんだろうな?気持ち的には。外にそういうのをアピールしてたつもりはなかったですけど。
(菊地成孔)もちろんもちろん。でも、素行を見てると、完全にそうだよね(笑)。ゲーム、SNS、マンガ、映画みたいな。部屋にいがちだよね。結構ね。
(OMSB)そうっすね。部屋にいるのが、いちばん楽しいです(笑)。
(菊地成孔)(笑)。すごいよね。なんかこう、いかつい感じで外を歩いているっていうことは、あんまりないっていう。
(OMSB)そうですね。なるだけ・・・
(菊地成孔)だしね。Moeさんに至っては、ぜんぜん。昔、ヤンキー・・・(笑)。聞くのもばからしいけど。
(Moe)HIPHOPは怖かったですもんね。やっぱり。
(菊地成孔)あ、そっち側。
(Moe)菊地さんが言っていたことがわかる。やっぱりなんか、本当小市民だったので。怖いですよ。
(菊地成孔)まあ、小市民じゃないでしょうけどね。
(Moe)やっぱりなんか、得体のしれないもの、カルチャーっていう感じがして。怖かったですね。
(菊地成孔)僕は、幸か不幸か、もうHIPHOPっていう音楽がこの世に生まれたっていう時にもう、大人だったんで。大人っていうか、まあ20代だったんで。『あ、こういうもんが出てきたのね』っていう感じだったんですね。パンクだとかテクノとかニューウェーブっていうのは、大人になってから出てきたもんなんで。特にHIPHOPがその・・・後にGラップみたいになっていたのはね、見てたけど。そんなの言ってたら、ニコニコしてるジェームズ・ブラウンだって裏ではめちゃめちゃおっかないからね(笑)。ピストルの世界ですよ。
(OMSB)そうですよね。
(菊地成孔)アメリカ行ったら、ビッグバンドジャズの『さあ、楽しくどうぞ!』っていうのの裏行ったら、ピストルとナイフの世界。言っちゃあ、みんな怖いわけで。別にHIPHOPだけがさ、別に特別怖いわけじゃない。ぜんぜんさ。
(OMSB)限ったことじゃない(笑)。
(Moe)表に出てこない。
(菊地成孔)だからまあ、昨今の趨勢はしょうがないですよね。ただ一方で、それのアゲインストで文化系HIPHOPのための・・・ってなんかあるじゃないですね。
(Moe)ああ、言ってますね。
(菊地成孔)あの本を書いた大和田さんって、元々私の生徒なんですけど。
(Moe)へー!
(菊地成孔)ああいうのとかね。Moeさんとか。Moe and ghostsって、だいたい『文化系ラップの』ってかならず付きますよね。
(Moe)でも、なんですけど、私ぜんぜんあんまり文化、享受してなくて。実際。
(菊地成孔)(笑)。本当ですか?
(Moe)そうそうそうそう(笑)。そうなんですよ。まあでも、いちばん読んでいるのがマンガとか。だから本当、ぜんぜん他の20代と。OMSB’eatsさんと変わらない。
(菊地成孔)なるほど。しかし、バスタ・ライムズには腰が抜けました(笑)。
(OMSB)ちょっと、アガったっすね。
(菊地成孔)アガった。俺も。
(Moe)いやだって、どんな隅っこの方にいる人にも届く眩しさみたいな。
(OMSB)あ、ありますね。
(Moe)そう!もう眩しくて。どんななんか目をそむけても、なんか光が入ってくるみたいな。
(OMSB)最高のエンタメですよね。
(菊地成孔)いや、本当。
(Moe)ポテンシャルが、だってただでさえフロウとか声質とかも、ラッパーに必要なものが全てこの人、持っている!って思って。なおかつ、その裏にまだポテンシャルがありそうな感じがするから。なんか、憧れ(笑)。
(菊地・OMSB)(笑)
(菊地成孔)Moeさん、バスタ・ライムズに憧れてるってすごいですけどね。そうですね。そしたら、今日、1人ずつ自分の作品をちょっとずつ聞いていきましょうか。ね。まずじゃあ、私から行きましょう。JAZZ DOMMUNISTERSっていうのが私のクルーで。大谷能生くんとやっているもんですが。この『DRIVE』っていう曲ですね。OMSBが入っているので。OMSB終わりまで聞いてみようかな?じゃあ、JAZZ DOMMUNISTERS feat.OMSBで『DRIVE』。
(菊地成孔)はい。JAZZ DOMMUNISTERS feat.OMSBで『DRIVE』でした。
(OMSB)イエーッ!
(菊地成孔)いやー、OMSBかっこいいね、これね。
(OMSB)ありがとうございます。
(Moe)かっこいい。
(菊地成孔)OMSBって若いのに、もうスタンダードな味があるよね。
(OMSB)スタンダードな味ですか?
(菊地成孔)スタンダードっていうか、本格派のさ。
(OMSB)ああ、うれしいっす。
(Moe)なんか、バスタ・ライムズみたい(笑)。
(菊地成孔)本当本当。
(OMSB)本当っすか?
(Moe)うん、思った(笑)。
(OMSB)それ、すごいうれしいっすね。本当に。
(菊地成孔)これもね、お陰様でそこそこ評判良く。まだ注文が来てるんですけど。ええと、2000枚しか作ってないので。あと30枚ぐらいしか残りがないんですよ。まあ、いま聞いてほしいという方は、まだなんとか在庫をかき集めますので。ビュロー菊地まで送ってください。はい。そして1曲(SIMI LAB『Dawn』)、もうすでに聞きましたけども。今年、それこそさっきちょっと俺がQ&Aで言っていた『ライムスター宇多丸さんの番組も聞いてください』って言ったのは、まあ、あの人はなんていうのかな?もちろんMCなんだけど、TBSラジオのパーソナリティーとしてパイセンなわけですよね。私の。もうすっごい長くやってるからね。で、まあ言うまでもないけど、それだけじゃなくて、ラッパーとしてももちろんパイセンなわけなんだけども。
(OMSB)うんうん。
(菊地成孔)もうすでに先週、オンエアーが終わってるんだけど。ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフルっていう番組で5月17日。もうオンエアー終わってるんですが、サタデーナイトラボ『最新日本語ラップ特集』。なにが特集されているのでしょうか。『Page2:(Mind Over Matter)』は避けて通れないと思うんですけどね。
(OMSB)そうっすね。避けて通らないでほしいっていう(笑)。できれば(笑)。
(菊地成孔)まあ、とにかくもう、あらゆる・・・これは一般向けのセリフになりますけど、とにかくHIPHOPのヘッズは日本語聞く人、聞かない人に限らず、このSIMI LABの2枚目ですね。『Page2:Mind Over Matter』が、ほぼ今年、まくっちゃうんじゃないかな?っていう完成度で、突如ドカン!と出てきましたね。これ、待ちに待ったというか。
(OMSB)はい。相当気合入れて作ったんで。
(菊地成孔)相当気合入れたよね。俺、作っている過程をつぶさに横からチラ見してたわけですよ。ほぼOMSBが、結構な長期間にわたってシリアスな人物になって(笑)。
(OMSB)そうですね。相当シビアになったっすね。
(菊地成孔)あれ、なったよね。1曲、いきましょうか。じゃあ、曲紹介をお願いします。
(OMSB)ええと、『Kommunicator』です。
(菊地成孔)はい。USOWAのラップでフェードアウトしてしまいましたが。まあ、素晴らしいですね。一言ね。
(Moe)すごい。
(OMSB)自分のビートでいちばん好きなんですよね。これ。リリックもそうっすね。
(菊地成孔)(笑)。リリックもすごいよね、これね。やっぱ、そうね。一般的な地方で聞いてらっしゃるお母様方とか、いまのMARIAさんをMoeさんと思ったと思うんですよ(笑)。と、思うぐらいの感じですよね。いまのは、MARIAさんっていう方ですけどね。まあ、日本を代表するフィーメールラッパー。SIMI LABの方です。まあ、そうですね。他にも、今日はこの後半、みんなでリコメンを持ってくるんだけど。そん中からは、あらかじめ漏れちゃったのはわかっちゃってるんだけど。PUNPEEとかね。あと、SALUくんも出たばっかり。
(OMSB)はい。そうっすね。
(菊地成孔)Fla$hBackSも去年出て。要するに、もうなんて言うの?怖い音じゃないっていうね。全体的にね。お洒落でクールな音っていうのに、動いてきているね。これってさ、セールスの話とかって聞いちゃっていいのかな?
(OMSB)セールス?初週ぐらいしかわからなかったっすけど。
(菊地成孔)初週、何枚?
(OMSB)初週で・・・あれ?いくつだっけな?でも、1600枚とか。
(菊地成孔)初週で1600。まあ、でもこれ言っちゃって大丈夫だと思うけど。SUMMITだから。5000刷ったでしょ?
(OMSB)あ、そうです。
(菊地成孔)売り切るよね。きっとね。
(OMSB)売り切りたいですね。
(菊地成孔)まあ、『Mind Over Matter』とはおっしゃいますが(笑)。Mind Over Matterとは言え・・・
(OMSB)とは言えですね。
(菊地成孔)やっぱりあれでしょ?ハワイに家建てるには、相当な額が必要じゃないですか。
(OMSB)そうっすね。かなり(笑)。
(菊地成孔)いわゆるHIPHOPドリームっていうか。こうさ、有名になって、お金を儲けたいっていうような思いは強くあったりする?
(OMSB)そうですね。かなりあります。こんなアルバムを出しておきながら。やっぱり、そうですね。自分がその、お金を持って、本当のところではどうだかわからないけど、豊かになったことを聞いている人に僕が見せて。で、なんかそれでやってみよう!って思わせるのが、いちばんなんか自分にとって理想なんで。
(菊地成孔)うん。SIMI LABって全員、それ言うよね。
(OMSB)あ、本当?そうでしたっけ?
(菊地成孔)みんなそう言うよね。俺、ファンだからつぶさにインタビューとか読んでてもさ。『ちゃんと後に続く人のために学校を作りたい』とかショウくんが言ったりして。ホロッと泣いたりするんだよ(笑)。
(OMSB・Moe)(笑)
(菊地成孔)まあでも、そこはなんというか。言わせんなっていう感じですよね。ガチのね。Moeさんはどうですか?さっき、フリースタイルできるようになりたいみたいなの、ありましたけど。Moeさんって元々、なんていうかお仕事は・・・そこらへんはあんまり公表できないでしょうけど。もう、有能な方で。お忙しいんですよね?
(Moe)あの、まあ社畜みたいな感じで(笑)。
(菊地成孔)社畜なんですか?Moeさん、社畜なんですか!?
(Moe)社畜(笑)。
(菊地成孔)社畜だとは、知らなかったな。言っちゃあ、文化系のお仕事ですよね。
(Moe)あ、そうですね。してますね。そう。で、ちょうど私あの、2012年の8月のお盆の時期に出したんですけど。それを作っていた時は、無職だったんですよ。
(菊地成孔)あー、なるほど。
(Moe)で、作ってたんですけど。いざ発売して、仕事を始めたら急になんかご無沙汰になってしまったみたいな。
(菊地成孔)まあ、なんか現在、『鮮やかでショッキングなデビューを飾った後、沈黙中』って書いてありますね(笑)。
(Moe)活動休止と、呼ばれている(笑)。
(菊地成孔)で、たまに出てくると、JAZZ DOMMUNISTERSと・・・(笑)。
(Moe)そうそうそう(笑)。
(菊地成孔)ですよね。
(Moe)ですね。
(菊地成孔)今後の予定とかはないんですか?
(Moe)そうですねー。今年中になにか、できればいいなと思って。それで、この間、JAZZ DOMMUNISTERSが結構私にとって久しぶりで。こう、なんか流れができたと思ったら、フー・・・っとなって。そう。で、またここに呼ばれて、1曲ラップ作って、ってなったと思ったら、またたぶんフー・・・ってなる気がするんですけど(笑)。まあ、かなり。それこそハワイの歩みじゃないけど。ゆっくりですね。
(菊地成孔)こう、だからOMSBは要するに、バイトを辞めたわけでしょ?
(OMSB)辞めちゃいました。
(菊地成孔)音楽で食うことを決めたんだよね。ヤバいよねー!かっこいいねー!(笑)。
(OMSB)できないんですけどね(笑)。正直、大変っす。
(菊地成孔)眩しいよね、もう。
(Moe)うん。
(菊地成孔)本当に。そうか。だからずーっとHIPHOP創世から見ていて、ジャズミュージシャンになって、50になってちょっとラップもやろうかな?っていう人と、2年前にラッパーになって、それから仕事が始まってから活動が止まっている人と、いよいよバイトを辞めてラップだけで食っていって、ハワイに家を作ろうとしている人がしゃべっているんですね(笑)。
(OMSB)むちゃくちゃですよね(笑)。
(Moe)(笑)
(菊地成孔)いろんな生き方があるっていうことですね。Moeさんの、聞いてみましょうか。ええと、解説お願いします。
(Moe)はい。Moe and ghostsで、これは配信だけなんですけど。『新世紀レディ』です。
(菊地成孔)はい。もうMoeという名前は出来すぎなんじゃないか?っていうぐらいの。いま、N系って言われる、ニコニコ・ネット系と言われるのがあったりして。クールジャパンとかね。あるいはジャパン・クールとかね。言われてますけども。そこへの対応も、十分なのでは?と思わせるラップですけどね。まだまだ聞きたいという方は、配信で買ってください。CMです。
(CM明け)
(菊地成孔)はい。菊地成孔の粋な夜電波。ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今週は、SIMI LABのOMSB’eatsと、Moe and ghostsのMoeさんをゲストに迎えて、日本語ラップ特集でございます。最近、注目っていうか。こいつヤバいな!みたいなのを今日、持ってきてもらったんで。それをみんなで聞いてみることにしましょう。まあ、この番組を聞いて、さっきも言ったけど、ヘッズの人たちは『もっと聞きてえな』って思っているだけだと思うんですよ。あの・・・(笑)。だから、この企画をまだ続けたいっていう人は、メールをください。数が多かったら、お二人を呼んでやろうと思いますんで。話の続きを。はい。で、まあ一般の方もね、『結構面白かった。あの子たち、いいじゃない』みたいな(笑)。
(OMSB・Moe)(笑)
(菊地成孔)好感を持ってね。『ハワイに家買って、なんて夢があっていいじゃない!』っていうようなお母様方もいると思いますし。男の人で、『ヤバい!なに、いまの?』っつってね。さっそく検索している人もいると思いますから。まあ、そういう方ももし希望される方は、『日本語ラップ特集継続希望』というメールをいただければ、継続させていただきます。
(OMSB)是非!お願いします!
(菊地成孔)はい。俺はね、レペゼン札幌。
(OMSB)イエーッ!札幌は間違いないですね。
(菊地成孔)札幌とね、やっぱね、これ言っちゃうとギリギリなんだけど。やっぱどう考えてもね、北海道と沖縄はちょっと日本とは言えないね。いい意味でね。当然、もちろん行政上も歴史上も日本なんだけど。やっぱね、おかしいよ。やっぱ。俺は本当にヤバいなって思うものって、札幌と沖縄から出てくることがすごい多くて。このね、MCしりアスっていう人がいて。名前がね、川尻くんっていうの。苗字に『尻』がついていることから、まあ、よくある話だけど、小学校時代にいじめられるわけだね(笑)。それをバネにラッパーになったのね。
(OMSB)ああ、間違いないですね。
(菊地成孔)間違いないでしょ?
(OMSB)サクセス。
(菊地成孔)サクセス。そうそうそう(笑)。『俺を尻とバカにしたやつらを!』。
(OMSB)そして、しりアスに。
(菊地成孔)しりで、後ろ『アス(ASS)』になってるからね。それでね、このチームの特徴は、DJじゃなくてバンドとやってんの。
(Moe)ああ、生音。ふーん。
(菊地成孔)生音。ドラマーもいる、エレクトロニクスを駆使したエレクトロの即興バンドと一緒にやっている、まあ演奏型ですよね。DJ・MC型じゃなくて演奏型なんですよ。それが、Olololopリズム制作所っていうんだけど。彼らのリズムは本当にヤバい。ので、アルバムはちょっとおとなしいんだけど、動画サイトとかでライブ見ると、結構なヤバさがありますので。ちょっとそれを・・・これね、直接送ってきたの(笑)。川尻くんが。なんで、さっそく聞いてみたいと思います。MCしりアスとOlololopリズム制作所のアルバム『発見』から、『オーバーボーズ』(実際にかかった曲は『ダブるファンタジー』)。
(菊地成孔)まあちょっと、時間の都合上、おろしちゃいますけどね。これ、演奏が結構すごいポリリズムで。どんどん変わっていくでしょ?まあ、全曲この調子なんですけど。まあ、いま比較的わかりやすい、ポップなのを使いましたけどね。ちょっとじゃあ、Moeさんの最近気になるものを。
(Moe)そう、私最近っていうのをちょっと拡大して、ここ数年っていうことでいうと、もう紹介していいですか?
(菊地成孔)大丈夫です。はい。
(Moe)HIBAHIHI+SILENT POETS。
(OMSB)イエー!
(菊地成孔)これは素晴らしいですね。間違いないです。
(Moe)『Nine』っていう曲です。Here we go。
(菊地成孔)はい。残酷残酷っていうかね。番組の時間ってので切っちゃいましたけどね。ヤバいですね、これね。
(OMSB)クソかっこいいよね。
(菊地成孔)これは、かっこいいですよ。まあ、日本だけの用語ですけど、ミドルスクーラー、ここにありっていう輝きがね。すんごいですよね。いやー。
(OMSB)いまもかっこいいですもんね。
(菊地成孔)うん。いま聞いても、やっぱすごいね。それこそ、まださんぴんキャンプの話とかね。単純にオールドスクーラー、ミドルスクーラー、ニュースクーラー。まあ、俺個人の区分では、OMSBはブランニュースクーラーなんだけど。
(Moe)(笑)
(OMSB)本当っすか?
(菊地成孔)ニュースクーラーの次っていう感じなんだけど。そういう話とかね、丁寧にラジオでしていって。聞く人がだんだん興味を持ってくれると、うれしいなって思うんですけど。えー、OMSBおすすめ、聞いてみましょうか。解説を、お願いします。
(OMSB)ええと、俺はいま自分が一緒に作っているやつを。で、野崎りこんっつって、ニコニコ動画に曲をアップしているニコラッパーっていう。で、たまたま聞いたらヤバいな!ってなって、いま一緒に作っているんですけど。そこで初めてできた曲がこれで。で、まあ俺はこの人はMCとして全部揃っていると思うんで。
(菊地成孔)うんうん。これは、ビートメイクは誰が?
(OMSB)あ、自分です。
(菊地成孔)ああ、OMSBがビート。なるほどね。そういうことか。じゃあ、マイクは回していないと。
(OMSB)そうっすね。回してないです。
(菊地成孔)もうさ、NIPHOPとかさ、YIPHOPが出てくるよね。要するに、ニコニコ動画でしかアップしない人や、YouTubeでしか。YouTubeの中に、もう全部が入っている人たちがいる。レーベルが全部YouTubeの中にいる人たちがいるから。
(OMSB)そうですね。
(菊地成孔)とりあえず、OMSBにあらためて曲のタイトルを。
(OMSB)ええと、仮なんですけど、野崎りこんの『地球人』。
(曲がかかる)
(菊地成孔)これは聞いちゃうね!
(Moe)すっごいスキル。
(菊地成孔)持っていかれた人は、ニコニコ動画で、『野崎りこん』。
(OMSB)はい。がっつり上がってるんで。
(菊地成孔)いっぱいいるよね。いま、若い人で。
(OMSB)そうですね。
(菊地成孔)まあ、そうね。いまにそのうち、『OMSBももうおっさんだから』っていう年になる勢いも感じられる若さの人、いるよね。
(OMSB)いますね。なんかもう、すでに思っちゃう時があるっす(笑)。
(菊地成孔)(笑)
(Moe)え、そんなに後進が育っている?
(OMSB)なんかキアノ(・ジョーンズ)っていう・・・
(菊地成孔)キアノねー。
(OMSB)若い、本当生意気なやつがいて(笑)。同じ黒人のハーフで。でもそいつもやっぱ、『わかんないっすねー』ってぜんぜんラフなノリなんだけど、やっぱラップかっこいいし。『ああ、すごいな。俺もなんかおっさんだな』って思っちゃって(笑)。
(菊地成孔)まあ、OMSBはDCPRGで。最初、DCPRGでなんだっけ?ええと、ageHaやったりとかね。いろいろやったよね。なんか野音とかね。もう忘れかけちゃっているけど。あんなような話とかも含めて、なんかいろいろ話し足りないところもあるんですが。まあ、今日のところはまずは、声が聞けただけでもたぶんすごい情報だと思うんで。お二人の。とても良かったです。ありがとうございました。
(OMSB)こちらこそ、ありがとうございます。
(Moe)ありがとうございました。
(菊地成孔)もし、日本語HIPHOP特集継続希望のメールが多かった場合、またきっと来ていただけるでしょうか?
(Moe)はい、是非。
(OMSB)っていうか・・・ね、またやりたいです。
(菊地成孔)またやりたい。
(OMSB)是非、メールを下さい。
(菊地成孔)というわけで、ジャズミュージシャンの菊地成孔がお送りしてまいりました菊地成孔の粋な夜電波。お別れの時間となりました。来週はですね、ソウルバーです。
<書き起こしおわり>