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菊地成孔『粋な夜電波』最後の言葉と選曲・書き起こし

菊地成孔『粋な夜電波』最後の言葉と選曲・書き起こし 菊地成孔の粋な夜電波
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TBSラジオ『粋な夜電波』最終回、菊地成孔さんの最後の言葉と選曲の書き起こしです。

(菊地成孔)あの、番組本の後書きの二重売りになっちゃいますけどね。二重売りはあんまりしたくないんだけど(笑)。引退された元漫才師の上岡龍太郎さんが、もうオブセッションみたいにずっと言っていたの「もうテレビに出始めたら、劇場でどんな腕を持ってるか、どんだけ回せるかなんてもうどうでもようなる。テレビに出たらもうそいつは『テレビに出てる人』であって、それ以上でも以下でもあらへん。もう僕は劇場で漫才師としてどれだけの腕があったかなんていう余計なプライドは捨てた。そんなもん持ちながらテレビに出とったら、テレビにも劇場にも失礼や」ってね。

私はシャレじゃなく、オギャーと生まれた時からさまよい続けてますから。さまよえるジャズミュージシャンなんです。だからいままでも「ルパンの人になっちゃったらどうしよう?」とかね、「ガンダムの人になっちゃったらどうしよう?」「東大の先生がジャズミュージシャンみたいになっちゃったらどうしよう?」といった上岡さんのウィズダムに自問する機会っていうのは周期的にあって。

しかし、それらはまあ全部杞憂に終わったんですよね。だけど、まあここから先の話はお分かりになると思うんですけど。そのうち、その最大のものがこの番組になったんですよ。「このまま俺はラジオの人になっちゃうのかな? そんでいいのか?」という葛藤は正直、ずっとありました。でもね、アートのイベントに出ても、映画のイベントに出ても、ジャズクラブでも、普通のクラブでも、タクシーに乗っていても、キャバクラ嬢に乗ってても、遊園地で木馬に乗っていても、「ラジオ聞いてます」って言われるとね――木馬は言わないですけど(笑)――言われると、ものすごくうれしくなっちゃって。

だからこの8年間、「ラジオを聞いています」って言われて内心うんざりするとかちょっと困るなんてことはコンマ1秒もなかったです。だからこそのね、私の内部の葛藤はくすぶり続けたんだと思います。うんざりできてりゃ良かったんですね。もうそのうち、苦しくて葛藤だか何だかわかなんないぐらいまで葛藤した結果、ある時完全に吹っ切れた瞬間っていうのが来たの。「もういいや。もう俺……わかった、もういい。もう俺、ラジオの人でいいわ。俺、菊地成孔の人生の最高傑作が『粋な夜電波』でいいわ」って腹をくくった瞬間があったの。

その瞬間は目の前に『ソウルバー菊』を録り終えた水野アナがいました。「よし、もう決めた。もう60になっても70になっても、水野さんとソウルバーをやろう。そんでいいわ。そんでいいや」って。そしたら次の瞬間に、水野さんと入れ違いで(プロデューサーの)長谷川さんがわなわな震えながらブースに入ってきたんですよ。私に目を合わせないような感じで。

何が起こったのかを理解するのに1秒かかりませんでした。私は特定の宗教は持ちませんけど、造物主。神の存在を信じてます。だってこんなストーリーライン、自分1人で引けるわけがないもん。この番組が始まるっていうことになって、まあその前だってラジオやっていたんですよ。で、この番組が始まるってことになって、まあ名前が決まって。戯れた名前になったんですよ。『粋な夜電波』とかって。そしたらもう待ってましたとばかりに番組にでっかいミッションが課せられたか。なんで……そして、こんなに上手くいっていたのに、なんでみなさんの前で打ち切られるように去るところを見せなきゃいけなくなったのか?全部、説明がつくじゃない。「造物主の意思」ですよ。

全てに意味があるの。「番組が終わる」と発表されてから今日までの約2ヶ月ぐらいですかね? 私、何人の人々に会っかはわかりません。どっちかっていうと、いっぱい会う方だからね。その人々全員、本当に1人残らずが「番組が終わるのが悲しい。終わらないでくれ」と言いました。ファンの人だとか関係者とかじゃないですよ。タクシーの運転手さんやコンビニのレジの人や通りすがりの人まで言われたんですよ。こんな経験、したことないよ。しようと思ってできるわけがない。

この番組が終わってしばらくすると、まあ、もう最後だから言っちゃいますけども、あの悪手ばっかり打つ、筋も見栄も冴えねえオリンピックがやってきて、この国はいままで経験したことがないぐらいの鈍い打撃を受けるはずです。みなさん、喪失は喜ばなきゃいけない。鍛わるから。強くなるの。でも、そこはまあ私の考えではやっぱり音楽がなっていないとダメですね。ただの喪失には折れちゃう時があるから。だからまあ、少なくとも私はそういう感じであらゆる喪失……いままで、いろんなものをなくしてきましたけども。そのたびに音楽と一緒に大きなものを得てきました。

だからこの番組が終わってもみなさん、どうか音楽を聞き続けてください。そしたら喪失とケミストリーを起こして、みなさんちょっと強くなっているから。混迷の現在のやつの方も本気出してくるけど、やっつけられます。造物主の意思ですよ。全てに意味があるの。さて、最終回の最後の曲の時間になっちゃいました。まあまあ、こういう時にね、8年間続いた番組の重みとかね、そういうことを言い出して。究極の1枚」とかね、「至高の1曲」とかね。シーズンいくつから『美味しんぼ』になったんでしたっけ?っていう感じですけども(笑)。そんなもん、いちばん野暮ったい話ですからね。こういう時に軽くサラッとことを決められない方は、一言で申し上げて申し訳ないですけどご苦労さんですよ。

てめーの服、伊勢丹にさえ生えれば3分で決められる私ですら、そこそこご苦労さんなんだから。ええと、変な話なんですけどね。これもフラグの一種ですかね? この夏に映画を見に行ったの。うーん、言っちゃえ、もう。ガールフレンドと。「なんかすげー流行っている映画があるから、行かない? 面白そうじゃん」とかって言って。で、これを言うとバレちゃうんだけど、まあどうせバレるからいいか。「低予算のゾンビ映画なんて俺、いちばん嫌いなんだけどさ、なんか仕掛けがあるんだよ、きっと。だってすげー話題になってるし」とかって。

そしたら、最後にボロ泣きしちゃったんですよね。恥ずかしながら。まあ、泣かす映画だからさ、別にとびっきり変わった反応とかじゃないんですけど。ただ、私が決壊したのはね、もうエンディングもエンディング。主題歌が流れてる間に全部泣いちゃったの。今年の夏ですから、まだTBSの偉いさんが編成に着手する前じゃないですかね? わかんないですけど。でもね、思ったの。っていうかもう、ほぼ決めたんですよ。いつかこの番組が終わる日っていうのが、まあ来るでしょう。いつかわからないけど。いずれにせよ。そん時は、最後にいま聞いてるこの曲を流そうって。

楽曲はもうね、解説みたいに「何が何して、ほら、なんとやらですよ」って話は、これこそする方が野暮っていう曲で、みなさんお聞きいただければわかりますよっていうやつです。ただ、詞がね、あんまりにもなんかもう、こういうのは引きの強さだけですな。もう出会いっていうかね。この番組の最終回用に書かれたみたいに一字一句がきれいにぴったり当て書きになっているんで、ある意味もう逃げられないわけ。フラグですね。

とにかく、さっき言った通り、それが何年後になるかわかんないけど……って。ずっと決めていたんですよね。ただ、こんなに早く流すなんて、その年のうちに流すことになるとは思いもよらなんだけども。はい。その時にはね、要するに「ずっと昔、平成最後の夏っていうのがありましたよね。あの時に流行った映画、ありましたよね。あれの主題歌を覚えている方、いまどれぐらいいらっしゃいますでしょうか?」なんてね、ちったあ熟成させようと思ってたんだけど、文字通り未熟のままプレイすることになっちまった未熟者でございます。すいません。

というわけで、これまた番組が始まって以来、日本語の歌詞をそのまま日本語で朗読したいと思います。

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菊地成孔・歌詞朗読

「いつも通りに」ってなかなか難儀
そういうの困るわ
伝わらないの
テレビみたいにうまくいかない
思い通りにならないノンフィクション
1、2、3、4 止めないで
見つめ合い崩れそう
時間だけ狂わないの
ないものだってやめないで
見抜けない気持ちも繋がって離れないな
誰だってやわれたって
からかって笑ったって
1、2、3、4 ほしいの
Study Time
誰にも変われないなら
そばにいる君でいいからつないでよ
ちょっとだけできるでしょ
なんとなくやめちゃダメ
回れ回れ
もう時間はね 止まらないの
1、2、3、4 受け止めて
離れ離れでも
少しも目そらさないわ
1、2、3、4 止めないで
見つめ合い崩れそう
時間だけ狂わないの
なんとなくやめちゃダメ
回れ回れ
もう時間はね 止まらないの
1、2、3、4 照れないで
君は似てるの
忘れても忘れないの
1、2、3、4 止めないで
回せ回せ そう時間はもう止まらないわ

(菊地成孔)はい。そう。番組の掉尾を飾るとはなにか? 映画『カメラを止めるな!』の主題歌です。一時的にあらゆるサブスクリプションの洋楽を全部抜いて1位になった曲なんかで締めていいのか? いいに決まってるじゃん! ということで、謙遜ラヴァーズ feat.山本真由美で『Keep Rolling』。

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謙遜ラヴァーズ feat.山本真由美で『Keep Rolling』

<書き起こしおわり>

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