菊地成孔 いま新宿でヤバい場所 珈琲貴族エジンバラを語る

菊地成孔 いま新宿でヤバい場所 珈琲貴族エジンバラを語る 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中でいま、新宿でいちばんヤバい場所、珈琲貴族エジンバラの話をしていました。

(菊地成孔)あの、たぶんこれ、前も話してカットされてオンエアーされなかったと・・・されたかな?この間、『俺、ディープ新宿楽しんじゃった』とかっていうのを。二丁目に行ってオカマちゃんにキツいことを言われて楽しんで、ゴールデン街に行って、最後に三丁目のお洒落バーに行ってぐらいでディープ新宿楽しんじゃったとか言われたくねえっていう。本当にヤバいのは区役所通り沿いの雑居ビルの中のスナックに行かないとディープ新宿を楽しんだってことにはならねえ!っていう話をしたと思うんですよね。

それで私とMC漢さんが『キャベツ』っていう名前の双子のおばあさんがママさんをやっているスナックに行って。私と漢さんがエサを与えられる小鳥のように、爪楊枝の先に突き刺さったカマンベールチーズとかを『はい、あーん』って言われて、2人で『あーん』って言いながら食ったっていう話をね、したと思うんですけども。

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まあまあ、キャベツに行くかどうかはともかく、いま新宿でいちばんヤバいプレイスはどこなのか?と。番組の初心に戻ってね。いちばんヤバいプレイスがどこか?っていうことなんですよね。それはですね、本当は言いたくないです(笑)。っていうのは、まあまあ、日本語だから大丈夫か?ええとね、珈琲貴族エジンバラなんですよ。いまは。これはね、行かないでください。警告しておきますけど。警告ですよ、これは。行ってはいけないです。

いま、いちばんヤバい新宿のプレイス

新宿という文化の環境がね、荒れてしまうんで、行かないでください。あのね、ロイヤルホストの話を散々したでしょ?初期の頃ね。あのロイヤルホスト東新宿店はもう、ヤバい場所じゃなくなっちゃったんですよね。それはどうしてか?というと、ホテルのフロントと直結しているんですね。この話も初期のヘビー級のリスナーの方ならみなさんご存知だと思うんですけど。直結してるんで、宿泊されている海外旅行者の方がロイヤルホストに来るの。

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で、もうあの店いま、私が行く時間は・・・これ、断っておきますけど。本当にデリケートなところなんですけど。私は、インターナショナルな人間で、言葉が通じまいとなんだろうと、どこの国にも何の偏見もないです。スーパーフラットな人間で、我ながらそこはちょっと狂気じゃないかな?と思うぐらいフラットなんですけど。いまから言うのは、中国人の観光客の方をディスろうっていう話じゃぜんぜんないんですよ。ぜんぜんないんですけど、もう東新宿店はヤバい店ではなくなってしまったので、あそこからは伝説は生まれないと思います。

まあ、メニューはね、社長がまた後方支援に回ってですね、表に出るのをやめて。メニューを社長決定で動かしていることによってメニューのクオリティーは変わってないんですけど。お客さんに関してね、全員中国人になっちゃったの。もう。で、全員中国人になっちゃうと、もう面白くないんですよ。なんでかっていうと、中国人の方はひとり残らず全員面白いからなんですよね。そこにいる全員が面白いっていうことは、もう面白くないってことと同義ですから。あそこに面白いやつを見つけたっていう場所じゃなくなっちゃいましたね。もうね。

まあ、時は流れてってことですね。他の街は知りません。私のフッドだから言いますけどね。少なくとも、新宿と銀座はとにかく中国からの観光客の方によってですね、接客のみならず厨房の方も疲れ始めていて。これ、ディスではないんですよ。本当に。あのね、大陸の方はね、強烈なのよ。もう。おとなしくて慎ましやかな、波風立たさない我々に比べると。どんなに我々が不良ぶってみたところでね、ワルぶったところで、もう本当に大陸の方の太さにはぜんぜん、相手にならないですから。だからまあ、残念ながら。残念な報告という感じなんですが、ロイヤルホスト東新宿店ではまあ、いまも行きますけどね。腹が減ったらね。あそこは聖地ではなくなりました。

で、まあこれから日本っていうのは、ある時期とパリと同じことを試されているんだと思うんですよね。パリは本当に・・・私がね、パリをお洒落で、文化的に素晴らしいところで憧れていて、好きだと勘違いしている方がすごいいっぱいいるんだけど。ぜんぜんそんなことはないですよ。パリは、汚くて、ひどい街なんで懐かしくて好きなの。だから、歌舞伎町とおんなじなんですよね。そんでパリが好きなんですよ。

パリのひどさと二枚舌

いまごろ私のことをね、スノッブとかね、町山智浩さんとか言ってますけど。まあ、5、6年古いですよね。間違っている上に古いからもう手がつけられないんですけど。それはともかく、あのね、パリは二枚舌で、ここは私はパリの嫌いなところなんですけど。でもまあ、巧みだなと思うの。要するに、いっぱいビストロが並んでいるわけ。で、そのうち一軒がね、日本語なんか要するに、当時の観光客。日本も農協旅行とかありましたよね?パックとかね。ああいうのでパリを訪れた人たち。

日本だけじゃないです。世界各国からパリに集団で旅行に来たりする方たちに対して、日本語のメニューが置いてあるブラッセリーとかキャフェが何軒も並んでいるうち、何軒目って決まっているの。で、それはもうね、とぼけているわけ。他の三軒は日本語メニューがないから入らないわけ。観光客が。で、他の三軒は美味しいわけ。これが汚えな!と思うんですけど(笑)。で、その観光客を入れる店。つまり、すっとぼけてやっているわけ。

で、その店は観光客が来るから、儲かるわけですよ。他の店は土地の人が来るのね。で、クオリティーが高いわけ。この二枚舌をして観光食堂っていうジャーゴンね。ジャーゴンっていうのは哲学なんかの難しい用語っていう意味ですけども(笑)。まあ、観光食堂という素晴らしいジャーゴンを使って、この事実をあからさまにしたのは玉村豊男大先生ですけどね。もうね、パリでいちばん古いビストロであるシャルティエなんてもう、本当にひどいですからね。

観光食堂の極地ですよ。もうグルッと35周ぐらいして、ひどくて行きますけどね。私も。詣でるようにして。もう、パリに行ったんだから行くしかない!っていう感じで。行ったら、テーブルに相席にされるんだけど。もうドイツ人、ハンガリー人、日本人、タイ人とかが座ってんの(笑)。そんで、まあ思い出話したら長くなっちゃうんで。曲がかかんなくなっちゃうんですけどね。ある時ね、ハンガリー人の女の人。おお、まさに今日の1曲目の人と一緒だ。

ハンガリー美人の女の人が、『エスカルゴを食べたい』って言ったんだけど。『エスカルゴの意味がわかんない』っつって、もうみんなで・・・(笑)。私とか、カタツムリの絵とか書いたりしてですね。『これ、知らないか?』っつって、みんなでその女性に、『これはカタツムリをバター焼きにしたものなんだ』っていう説明をするのにてんやわんやとかね。そんなのが観光食堂ですよ。

で、まあ日本はね、パリにこれから・・・あの当時っていうのはつまり、6、70年代でしょうね。アジア人やいろんな各国の人たちが自分たちのお金を持って世界旅行に出れるっていうことのゲートが開いた。まさにいま、中国がそれを迎えているわけなんですけども。それによって起こるひとつの街の環境の変化ですよね。それに対する対応がパリは本当に上手い具合に観光食堂を作って二枚舌でやっているわけ。だけど日本人はね、二枚舌にもなれないと思うんですよね。なんでかっていうと、全ての店が美味しいんで。

あの、もう最低でも美味しいわけよ。もう。だから、マズく作れないわけ。味によって。観光食堂じゃないところは美味しくて、これは東京の人が行くんだけど、中国人の観光客やタイ人の観光客はここに突っ込んでおけ。で、そこはマズくてもいいっていうようなことは日本人はできないと思いますよね。どうやっていくのか、本当にすごい昔のパリのことをよく考えますね。自分の家の近所を歩いているとね。だいぶ話が逸れました。

とにかくね、新宿はどこにでもね、中国人と韓国人が入ってきちゃうんで。だからガチのウェルカムかフェイクのウェルカムかね。まあ、お金は落としていってくれるんで、そういう意味では全部ウェルカムなんだけど。気持ちの上でガチのウェルカムなのか、フェイクのウェルカムなのかが問われるわけ。で、パリ市民みたいなえげつないところは日本人はないんで、無理じゃないかな?って思いますよね。

まあ、いずれにせよね、なにが言いたいか?っていうと、そういう状況の中、純血区。つまり新宿なら新宿の人間しか集まらないっていう場所が、小さく小さく出来上がるんですよね。それは、ひとつの隠れ家なんだけど、そこはヤバいことになるわけ。で、いま、新宿の完全純血版のひとつが珈琲貴族エジンバラなんだっていう話なんですね。珈琲貴族エジンバラの話はまだまだ続きます(笑)。次の楽曲に行きたいと思いますけどね。

<書き起こしおわり>

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