町山智浩 チャドウィック・ボーズマンを追悼する

町山智浩 チャドウィック・ボーズマンを追悼する たまむすび

町山智浩さんが2020年9月1日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で亡くなった俳優のチャドウィック・ボーズマンさんを追悼していました。

(町山智浩)あ、そうだ。音楽(Kendrick Lamar, SZA『All The Stars』)がかかってきた。

(町山智浩)今日ね、ちょっと言っておきたいことがあって。『ブラックパンサー』の主演男優のチャドウィック・ボーズマンさんがこの間、亡くなったんですよ。今、『ブラックパンサー』の曲がかかってますけど。彼、43歳で大腸がんで亡くなったんですが。あの『ブラックパンサー』に出た時、実はすでにがんのステージ3だったんですね。

(赤江珠緒)ええっ? 『ブラックパンサー』は2018年か。

(町山智浩)そう。それであんなに筋肉もりもりで戦っていてね、実はがんと闘病をしていたなんて、誰も知らなかったですね。で、このチャドウィック・ボーズマンさんという俳優さんはすごく明るい、天真爛漫な無邪気な笑顔の人なんですよね。僕、このたまむすびで彼の映画ばっかり紹介してますよ。『42 〜世界を変えた男〜』で大リーガーで初めての黒人選手、ジャッキー・ロビンソンを演じてね。あとは、『ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男』ではジェームス・ブラウンを演じて。アメリカの黒人にとっての歴史的偉人ばかりを演じている人なんですけども。

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(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)彼、顔が若くて43には見えないでしょう? で、『ブラックパンサー』ってアフリカの王子様の役なんですよね。で、本当に王子様っぽい明るい屈託のない感じなんですけど、実際はこの人は結構苦労していて。大学に行く時には、お金をデンゼル・ワシントンに出してもらったりしてるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!

ありとあらゆるチャリティーをする

(町山智浩)彼、優秀だったんで。で、それなりに苦労してる人なんですけど。この人、ずっとチャリティーをしまくってたんですよね。この4年間の闘病の間。ありとあらゆるチャリティーをして。特にその黒人の男の子たちを応援していたんですよね。で、『ブラックパンサー』ってのはアメリカの黒人にとってはものすごく重要な映画なんですよ。というのは、スーパーヒーローものなんですけど、悪党をぶん殴ってめでたし、めでたしというのではなくて。その最後にブラックパンサーは僕の住んでるオークランドという、貧困と殺人の非常に多い犯罪地帯に施設を作って。それでその街をよくしようとするところで終わるですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから、スーパーヒーローとは一体何か?っていうと、これは悪党ぶん殴るんじゃなくて、世の中をよくして、人のために戦う人が本当のヒーローなんだというメッセージを出して。それこそ、アメリカ中の貧しいところでギャングになるしかないような子たちがみんなそれを見たんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)それで人の心、子供たちの心を変えたんですよね。このチャドウィック・ボーズマンという人は。それは本当に大きなことだし。彼がその映画の中で行った言葉はね、「何か人が対立してたり困ってる時に、愚か者が壁を立てて、人々を遮る。分断するけれども、本当に賢い人は橋を架けて人々をつなぐんだ」って言ったんですよね。だからまさに、チャドウィック・ボーズマンの残した名言としてね、アメリカの黒人たち、世界中の人たちの心に残っていると思います。はい。

「本当に賢い人は橋を架けて人々をつなぐんだ」

(赤江珠緒)そうですね。本当に名言ですね。素晴らしいです。

(町山智浩)本当に惜しい俳優でしたね。

<書き起こしおわり>

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