町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で日本に上陸したばかりの動画配信サービス、Netflixを紹介。そしてNetflixのおすすめドラマ『オレンジ・イズ・ニューブラック』について話していました。
(赤江珠緒)さあ、それでは今日の本題、行きましょうか。
(町山智浩)あのですね、映画の話をしなきゃならないお仕事なんですけども。ちょっとね、いまの時期、新作映画がほとんどないんですよ。
(赤江珠緒)そうなんですよね。アメリカはね。うん。
(町山智浩)それはまあ、ちょっと『ない』って言うと、『お前がちゃんと仕事してねーから見つかんないんだろ?』みたいに思われると困るんで、説明します。ちょっとまず、事情をね。
(赤江珠緒)はい。
アメリカの映画公開事情
(町山智浩)アメリカ映画、昔はそれほどでもなかったんですけど、最近は5月から8月まで、子供でも誰でも楽しめる、外国人でも楽しめるアクション大作だけになりました。アメリカ映画は。5月から8月まで。
(赤江珠緒)へー。わかりやすい映画。はい。
(町山智浩)それで、10月から3月まではアカデミー賞とかをとれる文芸作品になります。で、その間に挟まれる4月と9月は作品が基本的になくなります。
(山里亮太)はー。ないんだ、もう。
(町山智浩)もうこの時期に公開しても、どうせ客来ないし・・・ってことでもって、捨て公開みたいな。ようするに、何も当たることを狙ってない映画がボソボソと公開されるだけになっちゃうんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、これはどうしてか?っていうと、特に最近ひどくなったのは、5月から8月まではですね、全世界で公開できる映画。特に中国で公開できる映画中心になります。
(赤江珠緒)まあ、市場がね。
(町山智浩)で、お金は中国から得て、そういう大作を100億、200億円ぐらいで作って全世界で公開するっていうのが、ひとつのビジネスになりました。5月から8月まで。で、9月から3月にかけてアカデミー賞とかをとれるような文芸作品を作ってはいるんですが、そのお金はほとんど、ヨーロッパから来ます。
(赤江珠緒)へー。
(町山智浩)そういう映画を見るのは、ほとんどヨーロッパ人なんですよ。で、ヨーロッパの特にケーブルテレビとかからお金をもらって、それを集めて投資したものがアメリカ映画として公開されるっていう感じになっています。
(赤江珠緒)ふーん!
(山里亮太)そうなんだ。谷間なんだ、いま。
(町山智浩)これ聞いていると分かるんですけど、アメリカが出資してアメリカ人のために作っている映画、いま現在ほとんどない状態です。
(山里亮太)はー、そうなんだ。
(赤江珠緒)アメリカ、出資しないんですか?
(町山智浩)まあ、これはアメリカっていうビジネスの上手さなんですけどね。自分たちはお金を出さないっていうね(笑)。人に出させるっていうところが上手いんですけど。で、がっつり儲かるのはやるけれども、中途半端に儲かる文芸映画とか。文芸映画って当たったり当たらなかったりするようなものは危険だから手を出さないっていうことですよね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、このせいで、僕は仕事なくなっちゃっているわけですよ。9月は。ただ、もうひとつ、なくなって困っている人たちがいるんですよ。仕事が。要するに、文芸映画でもなければ、アクション大作でもない、普通の映画を作りたい人たちです。
(赤江珠緒)ほうほう。
(町山智浩)つまり、芸術映画にしたくない、娯楽映画なんだけど、大人向けの娯楽映画を作りたい人は、仕事がなくなっちゃったんですよ。
(赤江珠緒)ああー。
(町山智浩)要するに、中くらいの予算。まあ10億円から50億円くらいの映画が中予算映画なんですね。アメリカでは。それで完全に大人向けのコンテンツ。だから、政治があったり、大人の恋愛があったり。子育ての話とかそういうのをテーマにした作品が、映画館では劇場映画として作られない状態なんですよ。現在。
(赤江珠緒)ええーっ!?
(町山智浩)アメリカでは。
(赤江珠緒)そうなんですね。
(町山智浩)そうなんです。それは、マーケティングの問題と、出資の問題なんですけども。そのせいで、その手のものを受け皿としていまアメリカの有料テレビがすごい面白くなっているんですよ。
(赤江珠緒)うんうんうん。
ネットフリックスの大成功とオリジナルドラマ制作
(町山智浩)っていう話で、今回の本題に結びつけて行くんですけども。アメリカはまあ、ケーブルテレビとかで大人向けのコンテンツをずっとやっていたんですが。まあ、ネットフリックス(Netflix)が始まったんですね。それは2007年からなんですけども。で、まあこれがいま、もう大成功しているんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、もともとネットフリックスっていうのはね、僕、入っていた時はDVDを郵便で配達するっていうシステムだったんですよ。
(赤江珠緒)へー。ええ、ええ。
(町山智浩)で、そのせいでレンタルビデオ屋が潰れちゃったんですけど。そのネットフリックス側もあんまり商売が上手く行かなくなっていったんですね。で、ネット配信にしたんだけれども、なかなかビジネスが上手く行かないっていう状態で、2007年ぐらいから、自主作品を作り始めて。それでまあ、決定的に大成功したのは『ハウス・オブ・カード』なんですよ。
(山里亮太)ああ、はいはい。
(赤江珠緒)『ハウス・オブ・カード』ね。面白いですもんね。
(町山智浩)自分たちでお金を集めて作って。そのネットフリックスだけで放送するっていうのをやって、これが大当たりしたんですね。で、日本にも今度、来るんですよね?あ、もう来たのか。
(山里亮太)もう来ました。9月に。
(町山智浩)はいはい。で、まあこれでどうなるだろう?っていうところなんですけども。今日はそのネットフリックスの話を中心にやるんですけども。まあ、『ハウス・オブ・カード』っていうのは前も紹介しましたけれども。要するに、アメリカの大統領の話ですね。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)ただ、大統領だけれども、殺人は平気でするし。神様は信じてないし。で、男でも女でもイケちゃうっていう。
(山里亮太)すっごい、ケビン・スペイシー。
(町山智浩)これ、いままでだったらアメリカでは、地上波では絶対に放送できないわけですよ。どうしてできないか?っていうと、スポンサーに対してボイコット運動が起こっちゃうからなんですよ。
(山里亮太)なるほどね。
(町山智浩)だから、たとえばGMとかがこういう映画にスポンサーしてると、『GMっていうのは何て会社だ!』って言われるから、まあお金を出せなくなると。だからこういうドラマっていうのは、もう基本的にスポンサーを持っていて、スポンサーのイメージが悪くなるっていうことを恐れるような状況では作られないんですよ、絶対に。
(赤江珠緒)うん。まあ、構造上そうですね。
(町山智浩)構造上、絶対にできないんですよ。スポンサーに被害が行っちゃうから。でも、直接お金を見る人が払うっていう風にすれば、基本的に問題がないっていうのと、あと抗議する人がいなくなるんですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)ねえ。だって、見なきゃいいんだもん(笑)。嫌だったら。
(赤江珠緒)そうですね。うん。
(町山智浩)これでアメリカのテレビは、2000年代後半に入って、もう画期的に良くなって行ったんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)もういままでみたいに無理やりいい話にしなくていい。もう、どんなものでもできる。で、見たくない人は見なきゃいいよ!と。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)っていうことで、どんどんどんどんドラマが先鋭化していって面白くなっていって。まあ、『ハウス・オブ・カード』っていうのはその典型的なものですよね。大統領が男とチュッチュしちゃうんですからね。
(赤江珠緒)そうですね。で、本音と建前と両方言っちゃうっていうね。うん。
(町山智浩)しかも、奥さんと男のシークレットサービスと3Pするシーンがありますからね(笑)。
(赤江珠緒)ええっ!?
(山里亮太)そこも、普通の映画だったら無理ですけど(笑)。
(町山智浩)まだシーズン、そこまで行ってねーか?ダメか、これは?なに言ってるんだ?
(山里亮太)いま、ネタバレしました?まさか!?
(赤江珠緒)(笑)
(町山智浩)ネタバレ野郎ですね。すいませんでした(笑)。すいません、まあ、それは置いておいて。
(山里亮太)置いておきましょう。
『デアデビル』
(町山智浩)ということでね、まあ『ハウス・オブ・カード』だけじゃなくてネットフリックス、他にもあってですね。『デアデビル』っていうのももう、放送始まっているのかな?
(山里亮太)あ、やってますね。はい。
(町山智浩)あれはね、マーベルコミックスの人気漫画が原作なんですけども。これもすごく面白くて。弁護士が主人公なんですよ。でもやっぱり、裁判だけじゃ勝てないわけですよね。悪っていうのは本当に悪いやつだから。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)だからそれをですね、法で裁けぬ悪を闇で倒すっていう弁護士の話なんですけど。
(赤江珠緒)仕置人じゃないですか。
(町山智浩)そう。それは弁護士としてどうなの?っていう問題がすごくあるんですけどもね(笑)。それ、法で倒せよ!とか思うんですけどね(笑)。
(山里亮太)法で倒せないから暴力で(笑)。
(町山智浩)そう(笑)。ただね、これすごくそれでも許せちゃうのは、主人公がね、盲目なんですよ。完全に目が見えないんですけど、ものすごく耳がよくて。それで、暗闇で敵を倒すんですね。
(赤江珠緒)ほー。
(町山智浩)で、完全な真っ暗闇にすると、自分の方が有利なんですよ。だから、まさに闇の仕置人っていう感じで、すごくよくできた話になっていますね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)はい。それがまあ、『デアデビル』っていうやつなんですけど。なんでこれ、普通の・・・これはでも、内容的に普通のテレビ局でやってもいいのになと思って見てたんですけど。お父さんがね、ボクサーで。まあ、あんまり売れてなかったボクサーで。で、息子。主人公のデアデビルがちっちゃかった頃に、ウィスキーを飲ませるっていうシーンがあるんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)『もうお前も男にならなきゃな。アイルランド人だから』みたいなことを言って、ウィスキーを飲ませるシーンがあって。もうこれ、絶対にテレビで放送できないんですよ。アメリカは(笑)。
(山里亮太)ああ、そうか。子供にそういうのを飲ましている。
(町山智浩)そう。で、『あっ、こんなところまでネットフリックスの利点を使ってるんだ』と思ってね、面白かったですけどね。ちなみに、アイルランドに行くと本当に子供がビール飲んでいるんで、びっくりしますけどね。はい(笑)。まあ、それはいいんですが。
(赤江珠緒)そうですか。へー!
(山里亮太)法律上はダメなはずですけど・・・
(町山智浩)飲んでますよー、向こうの子たちは。僕、リバプール行った時に、パブに連れて行かれて。『このパブはジョン・レノンが高校時代によく来たパブだよ』って言われたんですよ。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)『高校時代に』はおかしいですね。飲めるはずがないんですが・・・
(町山智浩)なんなんだよ!って思いましたけど。それがまあ、イギリス人クオリティーってやつですね。それはいいんですが(笑)。
(山里亮太)(笑)
女子刑務所の内部を描く『オレンジ・イズ・ニューブラック』
(町山智浩)で、ネットフリックスでアメリカですごく人気があるもので、3つ目なんですけども。3つ目は今回中心で紹介する『オレンジ・イズ・ニューブラック(Orange Is the New Black)』っていうドラマなんですよ。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)で、これも日本でも見れる状態になっていると思うんですけども。これはね、女子刑務所の話なんですよ。
(山里亮太)ふんふんふん。
(町山智浩)で、『オレンジ』っていうのはアメリカの刑務所の囚人の服ってオレンジ色なんですね。基本的に。これね、いちばん目立つ色だからなんですね。アメリカのほら、フィールドジャケットとかも裏地がオレンジ色になっていたりするじゃないですか。
(赤江珠緒)ふーん。
(町山智浩)えっ?知らない?
(赤江珠緒)知らないです。フィールドジャケット?
(町山智浩)知らない?えっ、いまの人たちはMA-1とか、知らないんでしたっけ?
(山里亮太)あ、MA-1のこと。わかりました。中、オレンジですね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)MA-1ってオレンジじゃないですか。ねえ。あれはケガした時に、動けなくなった時にオレンジ色の方を外側にして倒れていると、遭難した人たちを助けに来た人たちがヘリコプターから見えるんですよ。
(山里亮太)そういう意味があったんですね、あれ。ああ、そうなんだ。
(町山智浩)それで裏側、オレンジなんですけど。普段からそのオレンジ色の方を表側にして着てた人とか、昔いて。90年代に。『お前、怪我人か?』とか思いましたけど。まあ、それはいいんですが(笑)。
(山里亮太)(笑)。あ、本当にわかっている人だったら、すぐね。
(町山智浩)そう。わかってない人がいるんですね。たまに。まあ、それはいいんですが、『オレンジ・イズ・ニューブラック』っていうのは、『○○ is new black』ってい言い方がアメリカにはあるんですね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それはね、『Black』っていうのは『黒』。で、『服の定番』っていう意味なんですよ。とりあえず、黒いのを着てればダサくないっていうの、あるじゃないですか。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、その『オレンジ・イズ・ニューブラック』っていうのは『オレンジが今度のファッションの定番よ』っていう意味のタイトルなんですよ。
(赤江珠緒)ああ、なるほど。
(町山智浩)でも、囚人服なんですけどね(笑)。で、これがね、すごくアメリカで人気があるのは、作ったドラマじゃなくて、本当に女子刑務所に入っちゃった人の手記をもとにしてるからなんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、これね、原作者がパイパー・カーマン(Piper Kerman)っていう人なんですけども。この人はすごくインテリで、立派な大学を出てですね、その後もビジネスをして成功してるんですけども、ある日、突然逮捕されちゃうんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、『なんで!?』っつったら、『あんた、何年か前に運び屋をやってただろ?』って言われるんですね。で、実はその、大学を出てしばらくした若い頃に、彼女は、いま男性の婚約者がいるんですけど、ちょっとレズビアンだった頃があるんですよ。パイパーさんは。
(赤江珠緒)ほうほうほう。
(町山智浩)で、ノーラっていう自分のレズビアンの相手の恋人からですね、『ちょっと麻薬の運び屋をやってくれないか?』って。アフリカの麻薬王からヘロインを買ってベルギーまで飛行機で運ぶっていうのをちょっとだけやったんですね。
(山里亮太)うんうん。
(町山智浩)で、そんなことを忘れていて。もう男性と結婚する予定もできて、婚約もして、ビジネスも成功してて。ところが突然、逮捕されて、『どうしたの?』っつったら、『ノーラっていう、あなたの恋人だった人が逮捕されました。で、証言したんで、あんたも同罪です』と。チクりやがったんですね。要するに、昔の恋人が。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)っていうのは、アメリカの問題って、日本もそうなのかもしれないですけど、アメリカっていうのは司法取引がすごくあってですね。共犯者を言えば言うほど、罪が軽くなるんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)そう。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の中でも出てきましたけどね。で、芋づる式に捕まえていくっていうことをやるんで、こういうことが起こっちゃうんですけども。で、彼女は懲役15ヶ月の刑でコネチカットの刑務所に入ったんですけども。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)その刑務所に入ったところから、このドラマは始まるんですよ。で、もうほとんど、まあ白人で金持ちの子っていうのは彼女だけなんですね。ほとんど。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、もう入ってくるとみんな、ジローッと見るわけですよ。『なに?この変なの、入ってきた』っていう感じで。で、もう居場所がない感じなんですけど。でも、なんとかニコニコとして、食事をするんですね。で、そこでちょっと言っちゃうわけですよ。『ああ、私もこのいわゆる「臭い飯」っていうのを食べることになっちゃったわね』みたいなことをちょこっと、ジョークで言うんですね。
(赤江珠緒)ふんふん。
(町山智浩)ところが、その刑務所では料理を作っているのは受刑者の1人なんですよ。アメリカの刑務所っていうのはほとんど自給自足しててですね、内部の管理とか運転手とかも全部受刑者がやってるんですね。
(赤江珠緒)えっ?運転手とかも?へー!
(町山智浩)そうなんですよ。で、その『臭い飯ね』みたいなことを言ったら、『アタシが作ったんだよ!』って目の前のおばさんに言われちゃうんですよ。
(山里亮太)ああー、気まずい・・・
(町山智浩)で、その翌日からですね、出てくる料理は血まみれのナプキンになっちゃうんですね。
(赤江珠緒)ええーっ!?
(山里亮太)料理に入れてくるんだ、そういうのを。
(町山智浩)そう。そういうね、まあいじめとかを切り抜けていくっていう話になっていくんですけど。ただ、この『オレンジ・イズ・ニューブラック』が面白いのは、刑務所の中で生きていくスキルとかを少しずつ身につけていくんですよ。そのお嬢さん育ちの主人公のヒロインのパイパーが。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、最初はどんどんみんな拒否したりして。たとえば、刑務所に入ると、これ、男性もそうらしいんですけども。恋人を見つけないと安全じゃないっていう問題があるらしいんですよ。
(赤江珠緒)ふんふんふん。
(町山智浩)男性の方の刑務所は、たしか『アンコ』とか言うんですけども。刑務所内の恋人を見つけないといけないんですよね。
(赤江珠緒)あ、誰か実力者と。
(町山智浩)同性愛じゃなくても。で、それを拒否したりすると、もういられなくなっちゃうんですよ。いじめとかで。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)で、それをどう切り抜けていくか?みたいな話とかね。あと、やっぱりちょっとした女の人はお化粧品がほしかったりするじゃないですか。スキンケアのものとか。でも、それ持ち込めないんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それをいかにして持ち込むか?みたいな。そういう細かいテクニックがどんどんどんどん描かれていくんですね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)だからすごくリアルで。その作られてないドラマ。本当に中で生活していた人の、もう正直なドラマなんですよ。あとやっぱりね、男の看守がいて。いるんですよ。スケベな看守が。
(山里亮太)うん。
(町山智浩)で、要するに『俺に○○すれば、タバコをやるよ』みたいなのがいるんですよ。
(赤江珠緒)はー!
(山里亮太)絵に描いたような悪いやつが。
(町山智浩)そう。『おっぱい触らせてくれ』みたいなやつがいて。どうやって上手く利用していくか?とかですね。
(山里亮太)なるほど。ただ単に拒絶するわけでもなく。
(赤江珠緒)そうかそうか。でも、いまなお、こんな感じなのか。そうか・・・
民営化されたアメリカの刑務所
(町山智浩)そうなんですよ。まあ、アメリカの刑務所っていうのはまたもうひとつ、問題があってですね。ほとんど、いま民間経営になってきてるんですよね。
(山里亮太)民間の経営なんだ。
(町山智浩)民間なんです。要するに、全部民営化してくから。で、民営化、民営化でやっちゃってるから、どんどん要するに金儲けのために。どうしてもこれって、お金がほとんど入らない商売じゃないですか。刑務所っていうのは。だからどうやってお金を、利益を増やすと思います?
(山里亮太)どうやってだろう?
(町山智浩)経費削減ですよ。
(山里亮太)ああー。だからそうか。さっきみたいに、料理を作る人とか。
(町山智浩)だからどんどん劣悪な状況になっていくんですよ。アメリカの刑務所、もうすごいですよ。劣悪で。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)だって税金からだから、お金は絶対、利益はそこから出ないわけですからね。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)したら、安く安くするしかないですよね。合併したりね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)だからそういうものも描かれていくんでね、この『オレンジ・イズ・ニューブラック』って、基本的にコメディーなんですが(笑)。
(赤江珠緒)コメディー!?
(町山智浩)さっき言った変なものが食事に出てくるシーンとかも、暗くどよーんとした音楽じゃなくて、ちょっとコミカルに見せたりするところが面白いんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)ただ、ものすごくリアルなドラマで。たとえば中に入っている、女性刑務所ですから、入っている人のほとんどが、ちょっとした、たとえば万引きであるとか、麻薬、覚醒剤、あと詐欺ぐらいなんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、軽い罪の人ばっかりなんですけども。なんでこの人たちを入れなきゃ行けないのか?っていうことになってくるんですよね。みんな子供とかいるんですけど、子供はみんな取られちゃって。里親に出されちゃってるんですけど。まあ、ほとんど不良になったりして犯罪者が増えていくだけなんですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、いまこのパイパーさんっていう人はこのドラマを通してですね、非暴力犯の収監を止めよう!っていう運動をしてるんですよ。ずっと。
(山里亮太)なるほど。
(町山智浩)刑務所に入れても、なんの意味もないと。監視して、それで彼女たちが普通に暮らせるように教育していくことが大事なんだと。それだと、手間がかかって面倒くさいから、やりたがらないんですよね。誰もね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)全部檻のところに入れて放っておけばいいんだと思うから。だからどんどん犯罪が増えるし、どんどん税金が無駄になるし、どんどんかわいそうな子供たちが増えていくだけなんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、こん中でいちばん泣けたのが、母の日っていう回でね。女子刑務所なんですけど、母の日には子供たちがみんな来るんですよ。で、あと親が来たりね。で、あと誰も来ない人もいたりとかして。ものすごい悲しい話だったですよね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)でもね、普通のプリズンドラマのように、誰かが殺人が起こって、その犯人は誰か?とか、そういうミステリーはないんですよ。
(赤江珠緒)だって写真を見ても、割と笑っているイメージの写真が多いですもんね。
(町山智浩)そう。そういう中でも、なんとか楽しみを探そうとするというね、非常にリアルないいドラマなんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)で、ほとんどの女性収監者は、受刑者は日本でもそうですけど、被害者ですよね。ひどい旦那によっておかしくなっちゃった人とか。貧乏によっておかしくなっちゃった人。ひどい男に覚醒剤をやられちゃった人。日本にもいっぱいいますが。
(山里亮太)あ、そうなんですね。
(町山智浩)ほとんどが被害者ですよ。ほとんどが被害者なのに、なぜこの人たちを檻に入れなきゃいけないのかっていう問題にもなっていって。まあ、笑わせながらね、非常に考えさせるいいドラマがこの『オレンジ・イズ・ニューブラック』ですね。
(赤江珠緒)へー!そうか、たしかに入れられても、なんか更生するような感じにね、なっていってないっていう。人格をただただ否定されてむちゃくちゃになっていくっていうようなところ、ありますね。
(町山智浩)で、結局刑期が終わって出た後も、復帰できなくて帰ってきたりする人も出てくるんですね。仕事なんか見つからないし、食えないし。しかも、いま民営なんで、刑務所内でかかった経費っていうのは借金になって返さなきゃならないんですよ。受刑者は、釈放された後。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)ひどいでしょ?
(山里亮太)ひっどいなー。大変だ。で、これがネットフリックスで。
(町山智浩)というのがね、普通知らないことがいろいろ知れて、すごいんですけどね。
(赤江珠緒)たしかに。
(山里亮太)制限ないから、そこらへんもリアルにどんどん見せてくれるわけですもんね。
(町山智浩)そう。だからこれをスポンサー有りじゃできないでしょ?これ。
(赤江珠緒)いや、そうですね。
(町山智浩)ねえ。だから日本も、本当にもうスポンサーに頼るのはやめて。もう、何でもできる、こういう有料ドラマの方に移ると、もうたくさんの俳優とたくさんの映画監督、たくさんのスタッフが救われると思いますよ。
(赤江珠緒)うーん、なるほど。
(町山智浩)で、質も良くなって。もう、これしかないなと。
(山里亮太)さすが、ネットフリックス!
(町山智浩)ネットフリックスじゃなくてもいいんですよ(笑)。
(赤江珠緒)山里さん、絡んでるからって(笑)。
(町山智浩)地上波の局とかも、やればいいんですよ。同じようなことを。
(山里亮太)何も恐れずにね。
(町山智浩)スポンサー、いらない!っていうのをね。はい。日本最大のスポンサーの大会社も、次々とおかしくなっていってますからね。もうそれに頼っても、しょうがないですよ。
(赤江珠緒)はー。どこかしら?まあいいや(笑)。
(町山智浩)ラジオでは答えられないことを言ってしまいました。すいませんでした、はい(笑)。
(山里亮太)僕らはモゴモゴするばかりです(笑)。
(赤江珠緒)はい。今日はネットフリックスで配信されているドラマ『オレンジ・イズ・ニューブラック』についてお話いただきました。いや、ちょっとこれ、見たいですね。興味深いですね。
(町山智浩)すぐ見れますよ。はい。
(赤江珠緒)町山さん、ありがとうございました。
(山里亮太)ありがとうございました。
<書き起こしおわり>