菊地成孔 MC漢 ヒップホップ・ドリームを夢中で読んだ真夏の夜の話

菊地成孔 MC漢 ヒップホップ・ドリームを夢中で読んだ真夏の夜の話 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中でMC漢 a.k.a GAMIさんの著書『ヒップホップ・ドリーム』を絶賛。真夏の深夜にファミレスをハシゴしながら夢中になって読んだ話をしていました。

(菊地成孔)はい。『菊地成孔の粋な夜電波』でございます。いやー、涼しくなってきたっていうのがね、こんなにリアルな夏も久しぶりでございますな。私のタイ人の友達が新宿に遊びに来て。『日本ってドバイぐらい暑いね』っつって(笑)。外に出ませんでしたからね。『日本ってドバイぐらい暑いね』ってタイ人に言われるっていうのもなんとも言えない気分ですけどね。一緒にキャバクラ行こうって約束してたのにね、出てきませんでした。

この番組が始まった2011年の夏っていうのがどのぐらい暑かったか。っていうかそもそも、去年の夏ってどんなだったっけ?って感じですよね。しかし、です。今年の東南アジアの人々さえ倒れさせ、クーラー部屋に閉じ込めさせた酷暑も、きっと来年の夏にはリアルに思いだせなくなってしまうんじゃないですかね。それが夏という季節が持つ並行宇宙の力だと思うんですよね。夏っていうのは、なんて言うのかな?遍在しているわけだね。偏在。わかりますか?あまねく存在しているわけだね。

もっと厳密に言うと、宇宙がこう、遍在していて。しかもこう、我々がトコトコ歩いているこの空間っていうのがその遍在性の中にあるので、多層的にこう、なっているというね。理論物理学上の事実ですけども。これを最も我々の五感に強くアピアーする状態。これがつまり夏っていうことだと思いますね。まあ、要するに先祖の霊魂が戻ってくる。これは、世界的に見て寒い時期に絶対設定されません。我々が夏にパセティックになるのは・・・なりすぎるぐらいですね。なってしまうのは、やっぱりこう、過去と未来と現在。それが遍在しながらずーっとミックスされっぱなしになるからではないでしょうか。

今日、いまからお話するのは大した話ではありません。今年の夏。猛暑日が1週間だか10日だかね。まあ、『一週間に十日来い』っていう小唄がありましたけども。まあ、そういった、未熟なガキにはわかりゃしない。五月みどりさんの話は、まあ、ともかく。そんな酷暑のまっただ中ですね、猛暑5日目ぐらいかな?もう、いちばん人々、野良犬、ネズミ、コヨーテ、カンムリワシなどがもう、こぞってグタっている日の話です。

現実逃避に本を読む

その日、まあこんな私でも、こんなに辛いことがあるんだな、この歳になっても・・・っていうぐらい辛いことがありまして。合衆国産のポルノビデオとどっちにしようかな?って。かなり真剣に悩んだ挙句、僅差で本を読んで現実逃避することにしました。机の上を見る。そこには謹呈本が4冊並んでいたんですね。珍しいことじゃないんです。こういう仕事をしてますってーと、著者さんから直接。あるいは編集者の方から。出版社から、等々。まあまあ、いろんな形でですね。なんか、手紙が添えてあったりして。『菊地先生にお読みいただけると幸甚の至りです』とか言っちゃったりなんかして。

まあ、完全に私の兄貴。愚兄とですね、私を間違えているわけなんですけども。謹呈本がいっぱい来るんですね。とにかくね。私がその、なんか立派な物書きかなんかと誤解して。まあ、菊地秀行先生でしょうね。菊地秀行先生はちなみに、今年にご自分の誕生日にご自分が何のコスプレをするのか?それをTwitterでクイズにして出していたという事実を、まあ風の噂で知りまして。もうガクッと肩をうなだれたわけなんですけども(笑)。まあ、兄貴の話はともかく。

まあ、謹呈本がたくさん来ます。ありがとうございます。しかもですね、なんとこれぞ夏の魔法か。机の上を二度見するならばですね、そこは4冊、全部が音楽家の自伝でした。しかも全員、その人の音楽をよく知っているという人ばっかり。こいつ、誰だっけ?みたいなのが1人もないんですね。なかったんです。普通だったら、うっはー!とか言って椅子から転げ落ちるところなんでしょうけど、まあなにせね、辛いことがあったんで。『ああ、自伝だ。現実逃避にはぴったり』ぐらいの感じで。1冊、端から手に取っていったんですけど。

並んだ端から、まず『ハービー・ハンコック自伝 新しいジャズの可能性を追う旅』。すげー!知ってる話ばっかり出てきそう!

次が、『ミシェル・ルグラン自伝 ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモロウ』。タイトルがものすごい微妙じゃないの?っていう。あの、いくらルグランがアメリカ風で英語が堪能でも、ここはやっぱりファンにはフランス語にすべきだったのでは?でも、『ビトゥイーン・イエスタデイ・アンド・トゥモロウ』をフランス語にしても、多くの読者が読めない。うーん、すごい微妙。編集者の方の煩悶が伝わってくるようであります。

そして、沖野修也さん。DJですね。ジャズDJの沖野さん。これは直接いただきました。『自伝 職業、DJ、25年』。これもヤバいっすね。腰巻に曰く、『無理だと言われたことを実現して、悪意に満ちた人々を裏切るのが好きだ』。まあ、ここまではいいんですけど。その後がカッコで『Twitterより』(笑)。どれも面白そう!

でも、ぜんぜん読む気にならない。暑すぎて。ですんで、私が手にとったのは4冊目でした。著者はアンダーグラウンドヒップホップのファンなら全員が知っている。そうじゃない人は全員知る由もないMC漢 a.k.a GAMIの『ヒップホップ・ドリーム』でした。

私は、私にとって夕方程度である深夜25時にこの本と財布。そして熱中症にならないようにエビアンのボトルを2つ、ポケットの中に突っ込んでですね。あと、部屋の鍵ですね。鍵も持って。だから財布と本とエビアンのボトルと鍵だけを持って外に飛び出しまして。都内を転々としながら。都内っつったって、近所ですけどね。読み続け。日が昇る直前。つまり深夜のうちに全て読了したんですが。結果としてこの本は、私がここ数年で、まあそんなに読んでないですけどね。とは言え、私がここ数年で読んだ本のうち、中原昌也氏の『知的生き方教室』。

菊地成孔 中原昌也『知的生き方教室』を絶賛する
菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で、中原昌也さんの新刊『知的生き方教室』を絶賛。夢中になりすぎてしまったという話をしていました。 (菊地成孔)この間、あの、最近ちょっと、また仕事が立てこんでまして。散歩したりする時間が減ってたん...

まあ、中原昌也さんも最後の文学者とか言われてね。この間、トークショーをやって大いに盛り上がりまして。まあ、映画『セッション』の話なんかで盛り上がったんですけどね(笑)。あの方も素晴らしいですけども。の、『知的生き方教室』とベスト1、2を僅差で争う、超越的に素晴らしい本でした。私は、ああ、やはり神とはこうした、本当に素晴らしい・・・この経験が今日は伝えたい感じなんですけどもね。この素晴らしい経験を、やっぱり艱難辛苦という対価を支払わなければ与えてくださらないのだなと。

まあしかし、『ジーザスはいるけど、なんもしないよね』とカーティス・メイフィールドが言うような、まあそんなことを考えながらですね、とりあえず私、むせ返るような新宿通りに立ちまして。鍵を閉め、帝都タクシーさんに乗り込むと、24時間営業のジョナサン中野坂上店に向かうべく、颯爽と後部座席に座ると、親子携帯のCMに出てくる綾野剛さんのモノマネでですね、『青梅街道を山手通りの直前まで』と言い放ち、全く似てないことに我ながら愕然としてですね。

しょんぼりしてしまい。それに引き続き、『あの、すいません。冷房を少しゆるめていただけますか?』と普通の自分に戻りまして。と、言って、後部座席のライトをつけ、まずは適当にページを開いたんですね。そしてそこには、『小中の頃はサッカーをやっていたし、高校ではアメフトも本気になった。もちろん、街で悪さをするのも楽しかった。だけど、俺は完全にアウトドア派で。だから、インドア派の音楽は全く興味がなかった』。これはヒップホップのことをインドア派の音楽とおっしゃっているわけですね。『おふくろが言うには、ガキの頃にマッチやトシちゃんの真似をして踊っていたらしいけど』と書いてあり、瞬く間に持っていかれたわけです。本に持っていかれる経験。素晴らしいですね。本日の1曲目。ジミ・ヘンドリックスで『Foxy Lady』。68年3月18日マイアミポップフェスティバルのライブ音源です。

『小中の頃はサッカーをやっていたし、高校ではアメフトも本気になった。もちろん、街で悪さをするのも楽しかった。だけど、俺は完全にアウトドア派だから、インドア派の音楽は全く興味がなかった。が、おふくろが言うには、ガキの頃にはマッチやトシちゃんの真似をして踊っていたらしい』。

はい。というわけで菊地成孔の粋な夜電波。今年は夏の終わりに夏の思い出を一席。1ネタ1時間勝負で参りましょう。面白かったのは本だけではない。CDは株券ではない。ジミヘンは単なるロックンロールではない。というわけで、東京は港区赤坂。力道山刺されたる街より、本日はさまよえるジャズミュージシャンの面目躍如。移動しながら深夜の読書体験をお伝えいたします。事実上の主人公であるMC漢をしらないY-BOY。すなわち、いい子ちゃんたちはCMの間に速攻で検索して1ヴァースだけでも聞いておくように。地球上で何万人が漢の顔を初めて認識する夜のために。CMです。

(CM明け)

はい。菊地成孔の粋な夜電波。ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今夜はですね、1ネタ1時間勝負ということでですね。まあ、とにかくMC漢 a.k.a GAMIさんの『ヒップホップ・ドリーム』。この本、本当に素晴らしいんですけど。本当はね、読んで聞かせて終わらせようかな?っていうぐらいの。まあ、総ページ数231ページがヒップホップの用語で言うとパンチラインの嵐でですね。私がチラッと読んだところはそのほんの、氷山の一角にすぎないんですけど。

まあただね、本を読むとその分、ちゃんと読んだ分の使用料を支払わなければ行けないんで。読み聞かせはできないんで。どんだけ面白い本か?っていうのが伝わるように、伝わるように持って行きたいんですけど。どうやって伝わったらいいのかな?私、もう歌舞伎町からはとりあえず出まして。まあ、新宿ですけどね。まだね。歌舞伎町には歩いて行ける距離にはいるんですけども。まあ、ど真ん中っていうか歌舞伎町の出口に住んでいて。北の出口ですね。

まあ、もういまは出ちゃったんで言っても大丈夫ですけど。すしざんまいがあるんですよね。職安通りに。そこの11階と10階に2つ部屋を借りて住んでいたんですけど。2004年からなんですよね。で、このMC漢。日本のギャングスタスタイル。Gラップですよね。ギャングスタラップの第一人者ですけども。MSCっていうクルーを持っていて。レペゼンが新宿なんですよ。まあ、この方は今年、37ぐらいになるのかな?37だな、たぶん。で、私は歌舞伎町歴、たかだか住んでも10年かそこらですけども。こちら、生まれた瞬間としばらくだけ新潟で。あとはもうずっと、高田馬場から大久保、新宿にかけてずーっと、いまも住んでらっしゃる。

レペゼン新宿

要するにレペゼン新宿。レペゼンっていうのはね、ヒップホップの用語で『その街を代表する』。新宿がフッドなわけですね。フッドは、まあその、『縄張り』っていうか。を、代表する方なんで。で、特にMSCっていうチームがいちばんガンガンガンガン行っていた頃。まあ、どんなミュージシャンにもね、人生山あり谷ありで。ちょうどこの番組が始まる11年。その前の10年あたりが、この本を読む限り、ちょっとこの方もご自分では『暗黒の氷河期』って書いてますけども。まあ、いわゆるヒップホップ用語で言うところの調子が悪かった。で、またいま、調子がいいんですね。めちゃめちゃ。で、まあ本が出たんですけど。

この本、本当面白いです。これはまあ、別になんの得にもならない。私が宣伝するとお金がもらえるとかでもなんでもない話なんですけど。で、まあその、こういうすごい極端なパーソナリティーが書く本っていうのは面白いわけなんだけれども。まあ、MSC。本当に素晴らしい作品がいっぱいあるんですが。いちばんガンガン行っていた頃がだいたい2004年。まあ、3、4、5年ぐらいにピークが1回、あるんですよね。

なんで、そんなこと誰にも言ったこと・・・マスメディアで言うの、初めてじゃないかな?ブログにもそんな書いたこと、さほどないんですけど。『菊地さん、歌舞伎町に住むんだったら・・・』。まあ、私が歌舞伎町の住人ってことをメディアとかはね、まあもちろん自分でも言ってましたけど。もちろん住んでいたわけなんで。ただもう、メディアは過剰に取り上げますよね。歌舞伎町の住人という属性が一般的に知られてくるにつれて、いまではほとんどないんですけど、当時、まだファンメールボックスにファンメールッツって。SNSなき時代ですからね。メールをいっぱい頂いていたんですね。ファンの方から。

で、もうその中に、『菊地さん、歌舞伎町の住人っていうことになってますよね?そしたら、MSCに挨拶に行かなきゃ』っていうメールがだいぶ来ました。私、もちろんあの、『あなたの管』。動画サイトによってですね・・・『によってですね』って言っちゃうと、なんかね、タダ聞きしてることになっちゃうんで申し訳ないんですけど。多くのジャパニーズヒップホップ。まあ、11年にSIMI LABの『WALKMAN』に出会って、ものすごい衝撃を受けて。

そっから先のことは、この番組が始まってからのことですからね。ご存知の方も多いと思うんですけども。それまでの間もずっと、見てたんですよね。で、まあ気に入った盤は買ったりして。で、まあずっとチェックしてて。で、『挨拶行った方がいいですよ』みたいなね。Gラップ、ギャングスタラップっていうのはつまり、バッドボーイ。悪い人たちってことで、この『ヒップホップ・ドリーム』にも、『これ、本当に書いちゃって大丈夫なの?』っていうぐらい。言葉こそ濁してますけども、本当に非常に男気のある。もう、オーラもあるし男気もあるし。いま、いちばんリアルってことを貫いている方だと思うんですけど、とにかく絶対にリアルじゃないと行けないのね。MS哲学としては。

で、まあ本当にあったことを全部書いているんだけど。大変な方ですよ。で、『漢があんたに会いたがっている』っていうメールも当時、よくいただきました。で、まあ結局それらは全て、嘘っていうか噂・・・噂じゃねえや。作りですよね。レベルで。まあ、実際に私が歌舞伎町にいる間は、相当いろんなところフラフラしましたけど。歌舞伎町内をね。あるいは、周辺ね。2丁目から大久保あたり。まあすごいリアルに書いてあるんで。その界隈のことを。『本当、そうだよな。そうだったよ!』っていう、歌舞伎町や大久保に関する描写も生々しいんですけど。なにせ、漢さんのフッドですからね。

なんですけど、路上でも、いろんな店内っていうかね、お店でも、一度も遭遇しなかったですね。10年間ね。まあ、ただいま、読了して思っているのは、会っていればよかったなっていうことですね。会って話してみたいです。いまも思ってます。はい。で、特にラッパーに・・・私、50才を機会に。いま、52ですけどね。まだグリーンボーイですけど。2年目の。オムス兄さんです。OMSB’eats兄さんですね(笑)。MOE姉さんですけども(笑)。あの、ラッパーになってからはもう、MSCのファンの方からでしょうね。もう、『カチこまれんぞ、ジャズメン。テメーのヴァースはリアルじゃねえ』っていう。まあまあまあ、やんちゃなメールもいただいたり。

もちろん、ファンの方からですよ。ご本人からではないです。いただいたりなんかして。で、まあそのメールには、『上等だよ。もしそんな面白いことしたら、ラップも商売もできねえ体にして、俺の部屋でリードつけて飼ってやる。楽しみだ。早く来い』とか言って。まあ、ぜんぜんあれですよ。いまのは単なるチャンバラですけどね。まあ、一応そのぐらいはパッと反射的に出ないとラッパーとは言えないんで。シュシュシュシュッと書いて。まあ、お送りしたり、返信したりさせていただいたんですけど。まあぜんぜん。

ただね、アメフトとは知らなかったですね。ガタイがいい方だとは思ってましたけど。アメフトに敵う喧嘩用のスポーツっていうのはないです。紳士的に生活してて本当よかったと思いますよね(笑)。52になって何を言ってるんでしょうね。2曲目に行きましょう。夏の終わりに、ダリル・ホール&ジョン・オーツですよ。これなんか、クラシックスですよ。クラシックスっていう言い方だって、まあどっちかっつーとヒップホップの用語にいまはだいぶ傾いてますよね。

クラシックスっていうのはクラシック音楽のことではなくて、そのジャンルの定番。殿堂入りっていう意味ですけども。まあ、さながらこのアルバム。『Private Eyes』っていうね。ブルー・アイド・ソウルっていうか、っていうより80’sニューウェーブ寄りのポップ、ロックの名盤。まあ80’sミュージックですね。の、クラシックスですね。このアルバム、1曲目が『Private Eyes』。そして3曲目があの有名な『I Can’t Go For That』。2曲目なんか誰も聞かないですよね。聞いてみましょう。ダリル・ホール&ジョン・オーツで『Privae Eyes』と『I Can’t Go For That』の間に挟まれている曲。『Good Sign』。


※動画3:30よりスタートします

はいはい。『何日たっても、ラチがあかない お前の合図、グッドサインを待っているのに、何がしたいのか?お前は何がしたいんだ?何を考えているんだ?』というね。まあまあまあ、このクラスの曲止まりだったら、ホール&オーツはこれ以上いかなかったでしょうね。はい。まあ、それはともかく(笑)。とにかく本はめちゃめちゃ面白いんですよ。もう、読み始めたら止まらなくなっちゃって。

もう寝食も忘れてっていう経験を久しぶりにしましたね。あの、歩きながらも読んじゃうっていう。カラマリフリット食いながらも読んじゃう。カラマリフリットはあの、ジョナサンのおつまみ。ジョナサンっていうのはドリンクバーでカクテルができますよっていう流れをね。まあ、先週そういう番組に出ましたけども。

結構最初に意図的に打ち出したところだと思うんですよね。なんて言うのかな?ファミレス式飲茶って言ったらいいんですかね?酒のおつまみ的な小皿がものすごい充実させたのがジョナサンなんですよ。で、あれは結局ね、ドリンクバーでいろんなお茶を混ぜたり、ソフトドリンクを混ぜたりしながら、イカの揚げたのとか、小粒のソーセージにじゃがいもだとか、ほうれん草とベーコンを炒めたのだとかをちょっとずつ。だから言ったらタパスですよね。飲茶っちゅーか。で、まあそれで飲み物がすすむっていう、夏にはぴったりのファミレスですよね。ジョナサンね。まあ、夏だけじゃないですけども。

まあ、それでもう本当ね、昨日もね、『サウダーヂ』の富田(克也)監督と私、2人でメシ食っていて。『いやー、漢の本、めちゃめちゃ面白いよ』っつって。したら、富田監督があの甲高い声で『えー、本当ですか?読んでみたいな、それ。あ、それで鎖グループ作ったんだ』って。このへん、ちょっと何を言ってるかわからないと思いますけどね。この本は途中で、自分が所属していたレーベルとの告発。『これは単なるチャンバラじゃねー。本当のビーフだ。だからガッツリ食うぜ』って言ってるんですけど。まあ、告訴するわけね。告訴の準備が整ったって本が出るんだけど。

で、まあその後ね、鎖グループっていうのを作って。いま西早稲田でカフェ建てたりしてるんですけどね。まあまあ、その話はともかく。もう本当、本が面白くて。それで私、行きました。で、カラマリフリットとドリンク作って。でもね、もうドリンクなんか作れないんですよ。いつもだったらドリンク作るのにすごい時間がかかっちゃうんですけど。あの、想像してみて欲しいんですけど。片手に本を持ってね、それでそれを熱心に黙読しながらドリンクバーでドリンク、作れますかね?氷はあふれちゃうわね、お茶は一段違ったところから出てきちゃうわね、もうぜんぜん上手くいかないんですけど。

まあとにかく、ガンガン本を読んで。もう、のめり込むように。ほいで、席について。それでもう、片手がお茶とカルピスでビショビショになっているような状態で。それでちょっとイカの唐揚げをつまみながら、読んでいたんです。したら、向かいの席に2人の男女が入ってきたんですね。まあ、こっからサブタイトル『鉄道員(ぽっぽや)』っていうね(笑)。『ぽっぽや』としか言いようがないことが始まるんですけど。

『鉄道員(ぽっぽや)』

最近、久しく呼び込んでなかったですね。ファミレスの面白い人たち。あの、斜向かいに男女が入ってきたんですね。2人ともスーツでした。女性もスーツでした。まず最初に男性が座って。その隣に女性が来て。『はい、お待たせー』って、まあコーヒーを持ってきたんですね。で、まあ2人ともスーツなんで、会社の同僚だなと思ってたんですね。したら、男性の方が『俺、今日もう帰るつもり、ないよ。お前んところ、泊まるから』っておっしゃったんですよ。

ヤバい。なんか、面白そう(笑)。俺、なんか久しぶりに呼んだ気がする!だけど、もう目の前の本が面白い。もう、引き裂かれちゃって。目の前の1行、もうすんげー早さで読んでますから。もうセリフは面白いしね。だけど、こっちで始まっちゃって。もう二元中継久しぶりと思って。『もう、本当やめてください。そういうの。いちばん嫌なんで』って。まあ、要するに恋人ではないんですよね。男性の方が口説いているわけですね。スーツなんですけどね。

で、『なんで私にばっかりそういうこと、言うんですか?』『いや、だってお前、もう・・・えっ、知らないの?会社でもう、そういうキャラになってるよ』とかって。『ええっ?どこでですか?どっちでですか?青山ですか?』とかって言って(笑)。出た!謎の、俺にわからない話!と思って。わからない話きたら、もうワクワクしますからね。青山に会社があるのかな?でも、そのスーツは・・・ごめんなさいね。本当に。青山の会社っていうイメージとちょっと、私が思っているのと違うんだけど・・・と思ったんですけど。まあまあ、話を聞いて。

『えっ、でも私、敬礼とかもちゃんとしてるし。一番線、二番線の区別なくやってるし』って。ヤバいな!と思って(笑)。出た!ぽっぽや!と思ってですね(笑)。で、これ、実名じゃないですよ。変えてますけども。『田口さんなんか、敬礼とか、超適当ですよ!』って(笑)。面白いキレ方だな!と思って。で、男の方がそのキレ方にタジタジされてるんですけど。まあまあ、時間も時間だし。1時45分。2時近いですから、まあ、これはもう口説きですよね。もう本当に、泊まりに行きたいんだっていう感じで。

男の方、結構ね、まあちょっとね、悪いスケベなんですよ。いいスケベと悪いスケベ、いるじゃないですか。楽しいスケベとね、ちょっと楽しくないスケベと。で、悪いスケベで。で、女性の方も、ぜんぜん、ないないない!っていう感じなんですけど。悪いスケベの方が懲りないんですよね。ほいで、まだ。『いや、俺、ないと思うから。ハミガキ粉と歯ブラシは買ってきたから。さっきコンビニでちょっと寄ったんで。安心して』とかまだ言ってるんですよ。

そしたらもう女性の方、ただ逆上してきてですね。それはまあ、ぜったいにないんだけど。ドーン!ってやられたわけですよね。でももう、ぜんぜん諦めないんですよ。まだ言ってんの。『まあとにかく泊まるんで。よろしく』みたいな感じで。で、『ええっ?乗務員ですか?そんな話してんの。それとも、駅員?』とか言って。あ、駅員と乗務員、違うんだと思ってですね(笑)。

『まあ、それはいいよ。別に誰が言ってるとか。そういうことはさ。錦糸町かもしんないし。田町かもしんないし』とか(笑)。『でも、いいですよ。どっちにしても私、もう先輩と2人で会うこともないんで。あと、田町の駅員とももう、会う必要ないんで。ああー、もう本当嫌だ。辞めてー、こんな会社!』って。もう逆上が終わって、辞めてーノリになっちゃって。もうぜんぜん話、わかんないなと思って。わかるんだけど、わかんないんだよね。いちばん楽しいところですよね。

で、『もう本当、嫌だ』とか言って。フォークでポテトフライをグシャグシャに潰し始めたんですよ。『もう本当、嫌だ。本当、やめてくださいね。私、今日言っときますけど、帰りますからね!』とか言って。ああ、もうなんで・・・気がついたら遺憾ながら、『ヒップホップ・ドリーム』を閉じてるんですよ。私。もうさっきまでは開きながら聞き耳を立てたんですけど、もう閉じちゃってて。ヤバいな、ここ、出ようって思って。それで私、お勘定を済ませて移動したんですね。

次の曲、行きましょうか。あ、そうそう。気がつけば、MC漢かけてないじゃないですか。ねえ。リスペクトになんないですよね。MC漢、聞いてみましょう。こういうラップをする方です。MC漢で『I’m a ¥ Plant』。

はい。Gラップ。ギャングスタラップのことをGラップって言いますけども。フロウとか、そのトラック。いろんなことありますけども。Gラップなんかぜんぜん関係ないっていう態度もあるんですけども。やっぱりね、どんなもんでも、私、番組でやる時、『ラップはヤンキーのシュプレヒコールじゃない。芸術だ』って言ってますけど。ヤンキーのシュプレヒコールである側面もあります。もちろん。全部が違うって言ってるわけじゃないのね。全てもう文化系になったんだという話じゃないわけなんですけども。

特になにが言いたいか?っていうと、いまのフロウなんかは、たとえばオムスなんかは、自分で言ってますけどもオタクサイドの人間で。Gラップなんかは縁のないっていう。しかも、黒帯ですよね。ものすごい、上手い。

この間、フリースタイルの大会で優勝したばっかりですし。でも、そんなオムスが、じゃあ洋楽のオーバーグラウンダー。あるいは日本のもっとモテる系のもの。あるいはこう、音楽オリエンテッドなもの。すごく凝ったものばっかりの影響しかないか?っていうと、もう、いまの漢のフロウとかからもだいぶ入ってますよね。まあまあまあ、そんな、いまラップした人の書いた本を読んでたんですよ。これ、ものすごい面白いんで。とにかくおすすめします。『ヒップホップ・ドリーム』。とまあ、本のCMみたいですけどね、番組のCMです。

(CM明け)

はい。菊地成孔の粋な夜電波。ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。まあ、本日はなんて言うんですかね。真夏の夜の夢というか。夢じゃないんですけどね。一夜の出来事っていう感じで話しております。そして私は、そのぽっぽやの物語を見終えてですね。まあまあ、河岸を変えようということで外に出まして。気がついたら2時半ぐらいになっていました。

そうですね。東京の地理にお詳しくない方はちょっと難しいかもしれない。青梅街道のジョナサンを出まして、そこからトコトコトコトコ歩いてですね、気がいい方に・・・『気』っていうのは運気の『気』ですね。気がいい方向に、気がいい方向に歩いていくと、まあまああそこからだったらそうですね。都庁の裏ってことになりますかね。LOVEっていう有名なインスタレーション、ありますよね。あれが置いてある三井のビルがあって。で、1階がローバーで、2階がデニーズのビルがちょうど新宿の俗名 西口公園。実際は中央公園っていうんですけど。その都庁のところの公園の通り、方南通り沿いにあります。

私がたのんだのは、ビーフシチューと、まあ、黒いもんが食いたいと思いまして(笑)。それは『ヒップホップ・ドリーム』を読んでいたからっていうのもあるんですけど。ビーフシチュー。それからチョコレートブラウニーサンデー。それからアイスコーヒーですね。ここのデニーズはドリンクバーのマシンがないんで、ドリンクは自分でたのむのね。つまんないかな?ねえ。ドリンクバーが好きな方にはつまんないかな?と思うと、そうでもない。意外と、座って一杯だけたのむっていうのも、ドリンクバー慣れしちゃうと、これまたちょっとしたエレガンスみたいに楽しいもんですね。

ビーフシチューと、ここだけの話ですけどね、行儀悪い話、しますけど。ビーフシチューにチョコレートブラウニーサンデー、ちょっと入れるっていうのは悪くないですよ。あの、ビーフシチューのコクが足りないなっていう時に。実際ね、イタリアなんかでジビエなんかはチョコレート。イタリアだとチョコラータって言いますけども。イノシシの頬肉あたりはチョコラータで煮るのが、煮込みとしてはいちばん普通だったりするぐらいチョコレートは煮物に合うので。

で、ちょっと入れたりしてね。フォークの背で潰したりして。『おっ、ちょうどいい味になった』なんて言って。まあ、ドリンクがカスタマイズできない代わりに、ビーフシチューをカスタマイズしたわけですけど。そしたらですね、まあ、また呼んじゃったんですね。今度は、さっきとは逆の角度。後方左斜め・・・だから左斜め後方っていうのか。に、2人組が座りました。ルックスは見えませんでしたけど、2人ともなんか、打って変わっておしゃれさんだったんですよね。チラ見した時にね。

まあ、いまついさっきセッションに駆り出されて大友良英さんと一緒にセッション(22)のジングルを作るのに参加しろって言われて。うん。なんかセッションのジングルとテーマ曲は最初俺が全部作ったのにな・・・っていう(笑)。一抹の寂しさのまま、いまスタジオにいることから、そのデニーズ。まあ、冗談ですよ。デニーズの私の左斜め後方にいた男性の方が、なにかしらどことなく長谷川Pに見えたっていうようなところをちょっと添えておきますけどね。タイトルは、『いまどきここまで嫌なやつらが?むしろ、爽やか』っていうタイトルなんですけど。

『いまどきここまで嫌なやつらが?むしろ、爽やか』

えー、かき氷食ってるのね。その2人はね。まあ、私はカスタマイズしたビーフシチューをちょっとずつちょっとずつ口に入れながら『ヒップホップ・ドリーム』の続きを読んでまして。また再び、本にのめり込んだんですね。ところが、阻害されちゃうわけです。この、いまどきここまで嫌なやつらがっていう人たちにね。どちらも小柄でおしゃれで爽やかなんですよね。で、恋人同士かな?って思ったんですよ。最初。

したら、あんま見ちゃいけないですけどね。人のテーブルね。唐揚げなどのサイドディッシュをいくつかたのみ、大きめのグラスビアー。ジョグはついていたかね、ついてないグラススタイルだか覚えてないですけど。まあ、結構大きめのを飲んで。で、それと別に、デカンタのワインがだんだんそのテーブルに運ばれてきたんですよ。で、最初に聞こえたセリフがね、『赤ワイン350円、安っ!』っていうセリフが聞こえてきたんですね。

あ、なるほどと。だいたいね、最初からは面白くないの。一言目は普通のセリフなんですよね。ただね、その一言目に全てがあるんで。自分がフックしたかどうかは。で、フックしたなって確信しまして。で、『前さ、恵比寿のガーデンプレイスにあったんだけど、今度渋谷のナントカ町に移ってさ・・・』。それはその方が女性に自分の友達がやっているレストランが美味しいし話題になっているから、今度一緒に行こうっていう。また悪口説きなんですよね。

今度はね、違う悪口説きで。さっきみたいな、ぽっぽやさんのこう、昭和的な悪口説きじゃなくて。平成っていうかね、バブル期的な悪口説きなんですけど。要するに、お互いね、好きじゃないの。見栄が張りたいだけの会話で、いまどき?っていう感じだったんですけど。『ああ、あっちの方ね』『いや、ちっげーよ!』。要するに、どっちかがなんか言うと、『いや、違うよ』っていうのを繰り返す人間関係、ありますよね。あれが始まったんですよ。

『あ、そうかそうか。それだったら、松濤とか神泉の方になっちゃうもんね。じゃあ、どのへん?』『いや、だから渋谷から六本木方面に向かったナントカ町の・・・』。私、ぜんぜんそっち、フッドじゃないんで。わかんないんですけど。『○丁目の方だよ』っつったら、『ああ、警察署の方?』『だからちげーよ!だから六本木の方のさ・・・』とか言って。で、まあお互いいかに六本木から渋谷あたりの道に、裏道事情に詳しいか?っていう自慢と、それを阻害してこっちの方が詳しいっていう膠着が5分ぐらい続いて。またしても本をね、閉じてしまった自分がいたんですよね。残念ながら。

こんな会話に耳を貸している場合じゃない!って思いながらも、まあつい貸してしまったんですよね。まあ、『ガーデンプレイスと言えば、ロブション、あるじゃん?』って。ガーデンプレイスの話になったんでしょうね。あ、ロブションはジョエル・ロブションです。日本で一番ミシュランで星をとっている、いちばん高いフレンチでしょうね。フォーマルフレンチですけど。

『まあ私、結構行くから』『えっ?俺だって行ったことないよ』って(笑)。『俺だって言ったことがない』ってどんだけ偉いんだよ!?っていうセリフなんですけど。したら、『うーん。でも私だってそんなに行ってないよ。2回か3回かな?2回が友達で、1回がまあ、仕事かな?』とかって。『ああ、モデルの仕事?』『いや、ええとね、それはモデルじゃなくて、司会業の方』。その言い方はまあ、どっちもやるよね?的な言い方で。出たー!もうなに?この嫌な人たち?って思ったんですけど。で、『ああ、すごいね』っつって。

で、まあとにかく、ステイタスノリっていうんですかね。全体に、ただ単に相手に燃えている、性欲でもうパンパンになっています、あるいは本当にガチで好きとかじゃなくて、まあ、俺に釣り合う女、俺に釣り合う男的な世界ですよね。まあ、私が心の中で思ったのは、『俺、思春期でお前ら見たよ。東京中で』っていう感じだったんですけど(笑)。バブル期にね。で、まあさすがバブル期終わっているっていうか。こういう会話でも、間抜けなセリフが出てくるんですよね。

男の方が『高くない?あそこ』って。高いに決まってるじゃないか!って思うんですけど(笑)。『高くない?あそこ』って言ったんですよ。で、まあ女の方が、『でも普通より、高いは高いけどね』っつって。で、話かわって・・・みたいな感じで。『もう、ご飯食べた?』って。まあ、だから呼び出してるんですよね。デニーズ新宿中央公園店。ローバーの上ね。『もう、ご飯食べた?』っつって。で、家が近所なんでしょうね。『今日は、食べてないかな?』とかって。『えっ?だってこんな時間だよ?』って。3時すぎてますからね。『うん、まあ・・・』っつって。

『大丈夫?って感じになっちゃうんだけど。心配になっちゃうよね。だってさっきから、肌とか見てると、ちゃんと食べてる?って思っちゃうんだよね』って、ずいぶん失礼なこと言うなって思うんですけど。なんか女子も意外と平気で。釣り合ってるんでしょうかね。なんか。『ああ、まあ、うん。ぜんぜん大丈夫だけど』っつって。で、まあ会話してくんですよね。その時思ったのは、とにかく速記の技術を学ぼうかしら、これから。学ばないと!っていう。番組が、もし継続するならばですけどもね。学ばないと間に合わないなって思ったんですけど。

男が・・・いま、私ノート見ながらですけど。もうノートの字がグシャグシャでね。まあ、ほとんど絵みたいになってるんですけどね。で、『赤にしよっか?赤ワインにはポリフェノールが入っているから』って(笑)。なんだ、これ!?と思って(笑)。私、もう口をおさえてしまってですね。吹き出して目立たないように。で、とにかく男性はだんだんだんだん性欲が出てきました。時間もあったし、もうビールと、デカンタのさっきは白を飲んでましたからね。で、今度それから赤にしようって話ですから。で、ワイン談義ちょっとあって。お互いね、ワインに詳しいぞ的な話するんですよ。生意気に。ねえ(笑)。

『まあ、俺がいままで飲んだのでいちばん美味かった白は甲州だよね、結局』なんつって。何年前のパンチラインだよ!?って思ったんですけど。したら女子の方が、『いやー、でもまあ五大シャトーとか。フランスの。1万円ぐらいの飲むんだったら、ぜったいにイスラエルの2500円の美味しいやつがCPいい』とか言って(笑)。全てが4年ぐらいズレてるよ、貴様ら!って思ったんですけども(笑)。まあ、こんなに美味しい話してくれるってことは、ひょっとしたら、チラッと見て、『あそこにいるの、菊地成孔?だったら1ネタ提供しようか?』ぐらいの親切な人たちだったらどうしよう?って思うぐらいだったんですよね。

で、『へー、すごいね!』って。でも、話を持って行きたいんです。とにかく。もう、男の方で1回、性欲が決壊しちゃったらもう、蓋閉まんないですからね。言葉は悪いですけどね、抜けるまで閉まりませんから。で、『もう食べていない苦労がにじみ出てるよね、ぶっちゃけ』とか言って、相手の仕事がモデルだとか司会だとか。ロブションで司会とか言って華やか風だけど、実は貧乏でしょ?みたいな感じによって相手のプライドを傷つけることで自分の部屋に呼び寄せようとするっていう、相当悪い状態になってですね。こいつ、悪いな!と思ってね。さっき、長谷川さんって言っちゃいましたけどね。ぜんぜん違いますけどね。

あの・・・ただ単にシャツの着方がおしゃれだったっていう一点だけですけどね。で、『うーん。なんか時々、痩せすぎとか言われるけど、別になにも?』とか言って、女性はかわしてるんですよ。女性は、まあ相手の性欲の決壊を見て、勝った!と思ったんでしょうね。まあ、そこで勝った!と思う女性も女性ですけどね。で、勝ったと。余裕が出てきます。今度。『いや、別になにも?』とか言って。で、男性の方は翻弄されちゃって。言うことがあっちゃこっちゃになっちゃって。

『でもさ、すっぴんキレイだよね』って(笑)。最初からすっぴんじゃねーか!って思うんですけど。家から来てるんだから。だって。で、まあ言ったんですよね。『家から来たんだから、最初からすっぴんに決まってんじゃん』みたいなことを女子が言ったんですよ。したら、『いや、でもすっぴん、うげー!ってやつもいんじゃん?』とかって、どこまでも悪いやつだな、こいつ!って思ったんですけど。

『ええっ?そんな人、いる?』とかって。『いるじゃん。でも、キレイだからいいよね』って。さっき、プライドを傷つけて。要するに引っかいてこっちに持ってこよう思ったら余裕を出されちゃったんで、一転して褒め殺しに出てるんで。ものすごいクイックなやつだな!と思ったんですけど。『まあ、いるじゃん。でも、キレイだからいいよ。そっちは』『うん。自分じゃあ、なんかキレイとかそういうの、わかんないけどね。なんか特別になんかしてるわけじゃないけど』とかって。

で、『隣、行っていい?』っつって(笑)。もうさ、お前スタイリッシュなやつじゃないんか!っていう感じだったんですけど(笑)。突然、青春時代に退化しちゃって。『隣、行っていい?』とかって。『いやいやいや、そんな隣、座るわけないし。座れるスペース、ないよ。ほら、これ』とかっつって。で、その次に言ったセリフによって、まあこいつのことは、いままで相当悪いと思っていたんですけど、全部許すって決定したセリフが出たんですけど。

『いやいやいや、隣、座るところ、ないよ。ここ、ほら。だって座るスペース、ないでしょ?』って言ったセリフに対して、『イタリア男みたいになっちゃって、いい?』っつったんですよね(笑)。で、やっぱりこいつ、夜電波のリスナーかも?って思ったんですけど。まあ、違うと思いますけどね。いやー、出たな、このセリフ!と思って。で、さすがにその女性もね、吹いたの。ビールがベッ!って、口の脇からビールがベッ!って出たんですね。

『じゃあ、イタリア語で「そっちに座りたい」って言えたら、座ってもいいよ』って言ったんですよね。で、『ええーっ?イタリア語で?イタリア語、わかんないよー!』って、だんだんいいやつになってきちゃって。まあ、最初いやなやつ。次にすげーいやなやつ。で、極点越えて、やりたいやつになって、さらにその後翻弄されて、どんどんどんどんいいやつに向かっていくっていうね。あの、やっぱね、人間最後までつけないとわかんないですね。途中で席を立っていたら、『いやなやつに会った』で終わりですからね。

『イタリア語、わかんないよー!』とかって。で、『愛してるぐらいは言えるよね?』って女子に言われて、言えないもんだからグッと詰まって。『やっぱ、隣行っていい?』『いやいやいや!』『じゃあ、今度、いつ?どうなの、これから?』っつって。『だから次の休みに会えば、いいんじゃないの?』って女子が、ね。『っていうか酔っ払っているし。今日は』とかって。そしたら、男の方が『結構、段階踏む方だよねー』っつったんですよね(笑)。

これは、いまの月9ドラマ『恋仲』の・・・私、それ見てるんですけど。あまりにすごすぎて、毎週見てるんですけど。『恋仲』のダイアローグを超えた!と思ってね。もういいやと思って。家に帰ってゆっくり読もうと思って、そこを出ましたとさ。と、いうわけで意外と早く1時間はたつものですね。今日、最後の曲です。えー、まあおそらく一生忘れないであろうあの夏の日にこの曲を捧げたいと思いますね。ザ・ビートルズです。ホワイトアルバムに入っています。『Back In The U.S.S.R.』。ソビエト連邦に帰ってきたぜ!っていう曲なんですけども。

まあ、ああいったことがあると、ファミレスを夜中2軒移動しながらMC漢の本を読む。ちょっとクレイジーな夜。人たち。食べ物。まあ、そうした、ものすごい、もうヤバいな!っていうぐらいの暑さ。まあ、こんな夜に私もソビエト連邦に帰ったぜ!っていう気持ちになりますね。この曲によって、この日のお話を締めさせていただきたいと思います。ジャズミュージシャンの菊地成孔がお送りしてまいりました、菊地成孔の粋な夜電波。そろそろお別れの時間です。本日は夏の思い出ということでしたね。それでは、また来週。金曜深夜0時にお会いしましょう。お相手は菊地成孔でした。ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました