菊地成孔と高橋源一郎「教えること」を語る

菊地成孔と高橋源一郎 同世代の人々を語る NHKすっぴん!

菊地成孔さんがNHKラジオ第一『すっぴん!』にゲスト出演。高橋源一郎さんと教えることについて話していました。

(藤井彩子)菊地さんを語る上での重要なキーワード、2つ目にまいりましょう。こちらです。

(高橋源一郎)「先生」。

(藤井彩子)教えていらっしゃるという立場についてお話をうかがいたいなと思います。

(高橋源一郎)これがすごくて。本当にいろんなところで、実際に講師とか……。

(菊地成孔)全部非常勤ですけどね。

(藤井彩子)たとえば東京大学、東京藝術大学、国立音楽大学などで非常勤講師をなさっていました。

(菊地成孔)慶応もやりましたね。

(高橋源一郎)あと、もうひとつ。私塾みたいに。いま、募集をされていますよね。だって、そもそもものすごい忙しいでしょう?

(菊地成孔)そう、ですね……まあでも、そこそこですよ。

(高橋源一郎)でも、僕も先生をやったりしているんでわかるんですけども。大変じゃないですか? 読んでいたら、たとえばサックスなんかも個人教授とか……もうされていないんですか?

(菊地成孔)個人はやっていないですね。

(高橋源一郎)でも、最初は個人もされていたでしょう?

(菊地成孔)いちばん最初ね。はい。

(高橋源一郎)教えるのが、好き?

(菊地成孔)はい。教えるのは好きですね。

(高橋源一郎)だからそこがね、僕は菊地さんのすごいところで。いまもずっとされている……あ、時間がなくなってきました?

(藤井彩子)はい。このお話は後半で続きをお聞きしたいと思います。

(菊地成孔)フフフ、わかりました(笑)。

(中略)

(藤井彩子)さあ、「先生」というキーワードで前半からうかがっているんですけども。教えるということもお好きでしょう? でなければ、あんなにできないと思うんですよね。

(高橋源一郎)僕、実は「ゼロからの音楽文法」っていうのを……。

(菊地成孔)ああ、それは有料のブログマガジンじゃないですか。

(高橋源一郎)それを購入してるんですけども。僕ね、音楽ファンですけど、聞くだけなんですね。で、もちろん音楽理論とかわからないんですけども。ものすごく丁寧に……本当に何にも知らない人にも。

(菊地成孔)はい。全く何も知らないっていう人です。

(高橋源一郎)いや、僕は本当に嬉しいんですけども、その情熱はどこから来るんだろう?っていう。

「音楽を教える」ということ

(菊地成孔)情熱……そうですね。ちなみに、聞いて誤解する方もいるかと思いますけども、一般大学は僕、いま全て辞めているんで。いまだに「東大の先生をやってる人だ」とか思ってる人、いるんですよ。Wikipedia時代だから、そう書いてあっても辞め時は書いてないじゃないですか。だから一般大学はもうとうの昔に全部辞めていて。私塾といま言ったブロマガのコンテンツだけでやってますけど。すごく簡単に言うと、音楽はたとえばスポーツ見る時にルールがあるじゃないですか。

僕なんか、たとえば拳闘。ボクシングが大好きで、細い動きもわかるわけですよ。「いまの右フックがヤバかった」とかって。そうするとスロー再生をされて「やっぱりな!」とか。で、その一方で僕はアメリカンフットボールとか全くわかんないんですよ。それ以前にサッカーが全くわからないので。「ワーッ!」って合戦みたいなね。ただ「ワーッ!」って人が動いているようにしか見えないの。

だけど、細かいところを見ているわけじゃないですか。「いま、バスが通った」とか。だからああいう聞き方……ああいう楽しみ方を音楽は全くしないで、完全につまり、魔法の領域っていうか。ルールを知らなくても楽しいわけですよ。

(藤井彩子)「いいよね」っていう感じだけで。

(菊地成孔)そうそう。相撲なんかもなにがなんだかわからなくても、見たら楽しいわけじゃないですか。ボクシングも全くわからなくても、行ったら興奮するし。サッカーもたぶんワールドカップみたいなのだったら、ルールを何も知らなくたってめちゃくちゃすごいっていうか。で、音楽はそこで固まっちゃってるんですよね。ルール知ってて「ここがね……」っていうところで鑑賞するっていうことが音楽にはないので。定着したらいいなとかっていう風に何十年か前に考えたんですよね。

(高橋源一郎)知ったらもっと楽しいよね。何事もね。

(菊地成孔)知ったら失うこともありますけど、知識や教養はなんでもそうで。知らないうちが華だっていうこともありますけど。料理なんかね、レシピがわかんなくて彼女が作ってくれたものがなんだか知らないけど美味いっていうのがいちばんいいわけで。自分が作る側に回っちゃうと、うるさ型になると地獄が待っているわけですけども。でもまあ、なんでも得るものもあるので。そうですね。

<書き起こしおわり>

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