菊地成孔 SNAIL RAMPとの思い出と竹村哲の王座獲得を語る

菊地成孔 SNAIL RAMPとの思い出と竹村哲の王座獲得を語る 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中でSNAIL RAMPの竹村哲さんがキックボクシングのチャンピオンになったニュースに言及。SNAIL RAMPとの忘れられない思い出を語りました。

(菊地成孔)あ、そうね。このことを番組で・・・届くかな?もうすでにニュースソースとしては古いっていうか。竹村哲っていうキックボクシングの選手がNKB(日本キックボクシング連盟)ですね。の、ウェルター級の王座につきました。42才です。大変なことだと思います。42才でウェルター級とはいえですね。一部の方なら、もうこれで何を私が申し上げたいか、忖度していただけたと思うんですが。えー、竹村哲さんは元々ミュージシャンでSNAIL RAMPというバンドをやっていました。SNAIL RAMPっつったって、もういまの若い方はね、ご存知ないかも。どうなんだろう?まあ、一時代。ある活気をもたらしたバンドなんですけど。

まあ、興味のある方はこういうご時世ですので検索していただければと思いますけどね。ネットビーガンの方もね。『SNAIL RAMP』って入れれば出てくると思いますけど。私はそのバンドでホーンセクションのアレンジとライブのサポートをしてたんですね。で、彼らはまあ私よりはるかに若く。まあ、はるかにって言ったって10才ぐらいですけど、若く。とても、まあWBOですよね。まあ実際はNKBなんですけど(笑)。WBOね。WBOは『ワルくてバカで面白い』ってことなんですけど。非常に素敵な子たちで。大変仲良くなりまして。

ティエリー・ミュグレーのエンジェル

私、いま柄にもなく女物の香水をつけてるんですね。ティエリー・ミュグレーのエンジェルという香水を、もう10年以上愛用しています。いろんな方に、まあまあ昔からのご贔屓筋の方にはもちろんお馴染みなんですけど。最近、一見さんとかね、ご新規のファンの方に『その香水なんですか?』とかね、聞かれるんですが。フランスのティエリー・ミュグレーというメゾンのエンジェルっていう香水で。もう東京だとね、路面店で買えるところがないんで、私、大阪の阪急まで買いに行くんですけど。いや、本当ですよ。買いに行くんですが。

この、それまで私はカルバン・クラインをつけてたんですね。普通に。メンズの。で、これは別に面白くもなんともないことなんですよ。ジャズミュージシャンが、野郎がカルバン・クラインのメンズつけてるっていうのはね。で、ある時、SNAIL RAMPがですね、当時すごい人気で。JではじまってWAVEで終わる局でですね、番組を持ってたんですよね。それで、その番組にゲストで出たんです。私が。で、その番組はいまで言うと『お持たせ』ですよね。ゲストの方がSNAIL RAMPにお土産をあげるっていうのがその番組の通し企画になってたんですよね。で、私はその時、その収録の日にスケジュールがすごくジャミングして。こう、絡み合っていて。こんなん言うとかっこいいみたいですけど、別にぜんぜんかっこよくないんだけど。偶然なんですけど。

パリのシャルル・ド・ゴールから成田行きに乗って。で、成田に着いた足でJ-WAVEに・・・あー(笑)。成田に着いた足で、まあいいや。J-WAVEに直行すると。で、直行してお土産渡さなきゃいけないんだけど、お土産をあげなきゃ!って気がついたのが、もうその時忙しくてですね。あまちゃんの大友良英さんのバンドで世界中を回っていた頃だったんで。もう大変で、今日はパリ、明日はロンドン、明後日ローマっていう暮らしだったのね。それで、ド・ゴール空港で気がついたんですよ。で、『あっ、ヤベー!』と思って。俺、これで成田着いて東京まで行って局まで入ったらお土産ねえや!って思って。どうしよう?どうしよう?どうしよう?って思って。免税店の中をですね、意味もなくフラフラと歩きまわったんですよね。

そしたら、そこにティエリー・ミュグレーのエンジェルがあったんですよ。それで、まあいわゆる試供品。空中にピュピュッとやりますよね。香水は。テスターでシュシュシュシュッて。で、片っ端からね、そん時私が漠然と考えていたのは、いまではもう当たり前になりましたけど、ああいう若くて、ちょっと不良っぽい男の子。ワイルド系の男の子たちがフランスのマダム用ね。マドモアゼル用じゃなくて。年配の女性がつけるエレガントな女性用の香水を、しかも甘めの香りのやつをつけたら相当モテるだろうなって思ったんですよ。私はカルバン・クラインでしたけどね。さっき言ったように。柑橘系だったんですけども(笑)。柑橘系がかっこいいみたいに思ってたんですけども(笑)。

それで、シュシュッていろいろやったら、ノーマークだったんですよ。私、その頃恥ずかしながらティエリー・ミュグレー、服のブランドとしては知ってましたけど。まさか香水作っているとは思ってなくて。『あ、ミュグレーの香水があるんだ』って。シュシュッてものすごいいい香りで。これはもう全部後付けですけど。後々ね、香水に関する評価本みたいな。ワインにおけるパーカーポイントみたいなやつの本があって。世界香水辞典っていうのがあって。すんごい辛口の本なの。大抵のものをメッタ斬りにしてるんですけど、ティエリー・ミュグレーのエンジェルだけは85かなんかで。もうほとんどね、90近いんですよ。滅多にないんですよ。めちゃくちゃ高評価で。

あ、やっぱり自分の・・・まあ、飲んだり食ったりがね、好きですから。味覚・嗅覚はやっぱり正しかったんだなって。まあ、それだけですけどね。思ったんですが。これを彼らがつけたら絶対かっこいいに違いないと思って。やったー!いいもん見つけた!っつって。ギリギリに出るアイデアがやっぱり最高、さすがジャズメンとか。まあ、そんなこと思いませんでしたけど。ド・ゴールでバカバカ買ってですね、それですぐ成田に向かう夜行便に乗ったんですよね。それで着きまして。で、彼らに『これ、お土産です』って渡したの。そしたら・・・(笑)。これ、ダメだと。香りが甘すぎるから、菊地さん、ありがたいんだけどウチらつけられないんで。つけませんけど、いただきものですから、事務所に飾りますって言ってくれたのね。

で、『ああ、そう』って言って。うーん・・・って考えて、ここらへんは相当昔なんで、細かいやり取りは私、記憶が捏造しちゃっている可能性もあるんですけど。その場で、私の記憶ではですよ、その場で『じゃあお土産なしになっちゃって申し訳ないんだけど、俺、それ引きとるわ』って言って。で、お土産ゼロになっちゃいますよね。でも、それでも彼らは苦笑して。まあ、面白かったっていうことで。オンエアー中にスタジオでまいたら、みんながむせたんですよね。甘すぎる!ゴホ、ゴホって。むせて(笑)。まあ、私のプランニング、思いついた、これはいいや!っていうのは、彼らには成立しなかったの。

で、以降、私がつけるようになったんですよね。だから、ずっと愛用しています。ので、まあ自分が身につける・・・私は服も変わりますし、帽子も、メガネもどんどん変わりますけど。靴もどんどん変わります。ウェアリング、やっぱり変わっていくのがね、あれですけども。香水だけはあれ以来、ずーっと一貫して他のものを使ってないですから。ティエリー・ミュグレーのエンジェルなんですよ。それとの出会いをもたらしてくれた子たちなのね。SNAIL RAMPっていうのは。で、その後まあいろいろあって。若い子たちだったらケンカとかしたり、なんか分裂騒動みたいなの、ちょっと軽くあったのかな?なんかそこらへんもよく覚えてないですけど。

竹村くんね。キックボクサーに転向されて。で、私ね、試合見に行ったことあります。1回だけ。それはまだぜんぜん、相当前ですけど。で、もう辞めちゃったのかな?どうなのかな?まあ、ルックスなんかめちゃくちゃかっこいいですからね。で、あんな子がキックボクシングやってチャンプになったら大変なスターだ!って思って。後楽園ホールまで行きましたよ。で、まあ私が見た試合では負けちゃったんですけど。それ以降、行ってませんでした。で、もうそれこそ幾星霜ってやつで。私はティエリー・ミュグレーの香水を毎日つけながら、SNAIL RAMPのことは絶対、こうなったら忘れるわけがないですよね。

で、ある日、数少ない私のネット活動であるヤフーニュースを見たところですね、『ミュージシャンがキックボクシングでチャンプに』って。ひょっとして?って思ったら、あ、竹村くん!っていうね。竹村くんがチャンプになっていたっていうんで、おおーっ!と思って。ただ、なにせ私、SNS一切やりませんから。伝わるか全くわからないのね。いやいやいや、ラジオはマスメディアでしょ?って言われてますけどね。数字、どんどん下がってますからね(笑)。まだわかんないですけど。この間の調査をね、調査結果を待ちましょう。ね。待ちますけども。まあまあまあ、いまどっちがさ、AM番組で数字が・・・まあ、うちらだけじゃないらしいんですけどね。

いろいろまあ、AM番組が不遇らしいんですけど。まあまあ、そんな中ですね、SNSとどっちが伝わるのかわかりませんけども。私の方法はこれしかないんで、やらしていただきますけども。竹村選手、おめでとうございます。うれしいですよね。42才っちゅーのがまたね、うれしいところで。大変な苦労だったと、努力だったと思いますけど。闘争心みたいなのがね、もう目に出ている人でね。言っちゃあね、こんな、『俺はわかってたぜ』みたいなことを言うのはダサいですけど。なんの不思議もないですよ。キックボクサーとして後にチャンプになっても。そういうミュージシャンでした。彼は。本当にこれからの、防衛していくんだよね、これからね?はい。もう本当に心から、おめでとうございますと。そして、ありがとうございます、ですよね。香水の件に関してはね。もう100%忘れていると思いますけど。なんかの形で届けばいいなと思って、いま話させていただきました。

<書き起こしおわり>

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