ジェーン・スーさんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。『中年と中年に関係のない春のあれこれ』と題して、卒業や上京、自己紹介などについて話していました。
(ジェーン・スー)っていう中年って言うとね、やっぱり春はもうね・・・
(赤江珠緒)いちばんは花粉症の話題ですか?
(ジェーン・スー)花粉症の話題なんですよ。今回のテーマはですね、そういう話ばっかりだと少しね、鼻もすっきりしないので、『中年と中年に関係のない春のあれこれ』をさせていただきます。
(赤江珠緒)はい。
(ジェーン・スー)はじめにですけども、春は出会いと別れの季節と申しますけども、中年になると、それすらもあまりメリハリないですよね?
(博多大吉)まあ、出入りは少ないですね。
(赤江珠緒)そうですね。
(ジェーン・スー)ぼんやりしてきますよね。昔みたいにね。
(赤江珠緒)入学式!とか卒業式!みたいな華やかなことがないです。
(ジェーン・スー)転勤とか転職っていうのが、だんだん時期がそんなに定まんなくなってくるじゃないですか。だから学生時代の卒業式とか、覚えてますか?初めて勤めた会社の新人研修とかね。そういう初々しい思い出とは程遠い。あのね、思ったんです。春って新陳代謝の季節なんですよね。冬の間、じーっと我慢してた体が、春になって芽吹いてきて。季節も変わって。まあでもね、中年。全身、人生単位で滞っていると。
(赤江珠緒)(笑)
(ジェーン・スー)ぜんぜん代謝していない。
(赤江珠緒)代謝、悪くなってますか。
(ジェーン・スー)なってますよね。なので、今回は失われた春の思い出っていうのを半径50メートルで調べてまいりました。まず、思い出の卒業式。
(赤江珠緒)あらー、いいですね。卒業式。
(ジェーン・スー)ねえ。あの、こんな曲もありました。『卒業だけが理由でしょうか?』。これね、かかってきました。懐かしいですね。
(博多大吉)『春なのに』。
(ジェーン・スー)ねえ。『春なのに』。これね、柏原芳恵さん、歌ってらっしゃったの、1983年。
(赤江珠緒)うわー!
(ジェーン・スー)そう。1983年って聞くと、『ああ、そんな感じ?』みたいな感じなんですけど。計算するとね、30年以上前。
(赤江珠緒)そうなるんですね。結構、ねえ。物心ついている年が、30年前。
(ジェーン・スー)相当ついてますよ。あの時、いい曲だなって思って、いまだに聞かれたりしますけど、中島みゆきさんの作詞作曲曲なんですね。アイドルってやっぱりその時代その時代のこう、すごいソングライティングの才能のある人に発注が来たりするんで、これが残っているんだと思いますけども。まあ、あとね、『卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう』って、斉藤由貴さんが歌っていたのが、これですね。
(赤江珠緒)ああー。
(ジェーン・スー)キュンとしますよね。いまだに聞くとね。あれが1985年。こちら、松本隆さんが作詞で筒美京平さんの作曲と。
(博多大吉)うん。ゴールデンコンビ。
(ジェーン・スー)本当に。どちらも後世に歌い継がれる作品なんですが。まあですね、甘酸っぱい思い出、たくさんございますけども。それぞれ、みなさん昔の思い出っていうのを掘り起こしていただきたいと思います。まず、私の周り、半径50メートルのお話をさせていただきましょう。これに合いますよ。この曲に。『仲良しの友達と卒業アルバム制作委員になったんだけど、作っている間に大喧嘩をしてしまった。お互い意地を張って一言もしゃべらずに卒業式を迎え、このままお別れも嫌だなと、勇気を持って話しかけた。顔を見た途端、自分も相手も感極まって大泣きしてしまい、何も言わずに仲直りできた。人前であんなに泣くことは、もうなさそう』。38才女性。
(赤江珠緒)うわー!なんかいいですねー!学生してますねー!
(ジェーン・スー)キューッ!っとなりますね。
(博多大吉)卒業アルバム制作委員って、あったね。
(赤江珠緒)あった!
(ジェーン・スー)そうそう。あれ以来、なんの委員にもなってないですよ。
(赤江珠緒)私、小学校の時なんか、ガリ版でしたもんね。卒業アルバムが。
(ジェーン・スー)ああ、たしかに。そうだ・・・卒業アルバムが?
(赤江珠緒)はい。卒業アルバムがガリ版で文集みたいな。
(ジェーン・スー)文集ですよね。びっくりした。
(博多大吉)アルバムはアルバムでね、業者がやってると思いますけども。
(赤江珠緒)そうそうそう。
(ジェーン・スー)そしてまあこれでね、卒業式と言えばボタンですよ。男性で言うと。
(博多大吉)まあ、僕らの時代はそうでしたね。大半が学ランでしたからね。
(ジェーン・スー)42才男性の方のエピソードをお話しましょう。『中学の卒業式。下級生の女子にはそこそこ人気の先輩だったので、「第二ボタン、来るな、これは」と予備のボタン2個まで家から持参して卒業式に出席。ニヤニヤしていたら、午前中からボタンをボロボロ取られている同級生男子を横目に、自分は誰からもボタンをねだられなかった。ポケットの中で予備のボタンを2個、カチャカチャともてあそびながら、式の後も1時間以上残っていたが、結果的に予備のボタン2個とともに帰宅』と。
(赤江珠緒)うーん・・・
(ジェーン・スー)これねー、もらいに来た後輩っていらっしゃいました?
(博多大吉)私はもう、最初からあげる気がなかったので。
(ジェーン・スー)あ、そうなんですか?
(赤江珠緒)(笑)
(博多大吉)まあまあ、誰も来ないだろうなっていう以前に、いやいや、あげませんよ!と。
(ジェーン・スー)ああ、なるほどね。俺のもんだと。
(博多大吉)大事な思い出なんだから。僕のっていうね。でもこの、式の後、帰るタイミングって、いま思えば難しいですよね。だって解散!ってなって、すぐ帰ってもいいわけじゃないですか。で、実際に帰るやつもいたけど。
(赤江珠緒)まあちょっと写真を撮り合ったりしてね。
(ジェーン・スー)そうそう。
(博多大吉)でも、その輪に入れないと、もう帰るしかないんですよね。
(赤江珠緒)(笑)。切ない話ですね。
(博多大吉)で、なんかお母さんがこっちを見てるとか。
(ジェーン・スー)あー!親がね。
(赤江珠緒)そうだそうだ。
(博多大吉)親がいるから。もうそろそろ帰ろうか?みたいな。
(赤江珠緒)ああ、そうでしたね。
(ジェーン・スー)高校になると、みんなと一緒にどっかに出かけたりとか。その後、しますけど。中学ぐらいはね・・・
(博多大吉)高校も直帰ですね。
(ジェーン・スー)マジですか!?
(赤江珠緒)(笑)
(博多大吉)うん。直帰しましたね。自転車でビャーッ!って帰りましたね。
(ジェーン・スー)私、高校の時は終わった後、女子校だったんですけど、みんなで学年の仲いい子たちと20人か30人ぐらいでカラオケボックスを借りきって。大きい部屋を。で、みんなとカラオケやったんですけど。卒業式の引き出物が、すあまだったんです。紅白すあま。
(博多大吉)まんじゅうみたいな。
(赤江珠緒)ええ、ええ。
(ジェーン・スー)で、私すあまが大好きだったんですけど。まあ女子高生って乱暴じゃないですか。『いらなーい、こんなの』みたいになって。『あげる!あげる!』ってなって、目の前にすあまが20箱ぐらいたまって。
(赤江珠緒)(笑)
(ジェーン・スー)で、もっと恐ろしいことに、家に帰るまでに食ったんですよ、私(笑)。
(赤江・大吉)(笑)
(赤江珠緒)若さでね。本当。
(ジェーン・スー)若さ。
(博多大吉)持ち込み自由のボックスでよかったです。
(ジェーン・スー)そう。本当に。バクバクバクバク。白とピンクのを。
(博多大吉)あれさ、卒業式でもらうあれって、あんまり美味しくない。大量に作っているから。
(ジェーン・スー)そうそうそう。
(赤江珠緒)でも、すあま好きですけどね。けど、いまになったらそんなにいけないですね。さすがに。
(ジェーン・スー)いまちょっと、喉。嚥下がちょっと障害あるかな?っていう感じがしますけど。
(赤江珠緒)(笑)。ねえ。でも、ボタン磨いたりしてましたよ。なんか袖のボタンを、ブレザーだったんですけど。中学の時。みんな磨いて、なんか銀色っぽいボタンが金色っぽくなるんですね。磨くと。そうすると、上級生っぽくなるっていうので、磨いて磨いて、なんか後輩にあげるみたいなのとか。
(ジェーン・スー)ああ、ちょっと制服の差別化とか、ありましたよね。
(赤江珠緒)ありましたね。
(ジェーン・スー)で、ですね。まあその、ボタンがらみなんですけども。もうひとつ、エピソードをいかせていただきます。『本人含め、先輩にも同級生にも大ファンであることがバレバレだった中学時代のA先輩。この先輩に卒業式の日、第二ボタンもちろん貰うつもりだった。本人にもそれとなく、それを伝えていたので、まあ大丈夫だろうと余裕をぶちかまして、フラーっと行ったところ、すでに他の女子がボタンを持っていった後でした。なんとその女の子、この方の同じクラスの女子だったのに、A先輩のファンだということをおくびにも出さず、一切言わず。逆に言うと、その人が散々、「A先輩好き好き好き」って言ってやっていたのを尻目に、「あ、だったらちょっと早く行けば取れるかな?」と思ったのかどうなのか』。
(赤江珠緒)ええっ!?
(ジェーン・スー)『A先輩はA先輩で、私からなんとなく来ると思っていたのに・・・』。
(赤江珠緒)『私』って言ってますよ!?これ、スーさんの話?
(ジェーン・スー)あ、言っちゃいました。ごめんなさい。これ、私の話です。
(赤江珠緒)(爆笑)
(ジェーン・スー)あの、人の話として話そうとして失敗するパターン、来ました。これ、私の話です。本当に。中学時代の三田先輩。
(赤江珠緒)(笑)
(ジェーン・スー)持っていったの、市川さん。コンニャロー!
(赤江珠緒)(爆笑)
(博多大吉)なんかさ、中学時代の女の子ってみんな、なんて言うの?協力しあうでしょ?
(ジェーン・スー)そうなんですよ。
(博多大吉)だから、『あの先輩は私のもんだから、みんな、よろしくね』みたいな感じで。『わかった、わかった』みたいになるのに、スーさんの場合は、1人裏切り者が出たみたいな。
(ジェーン・スー)びっくり!おとなしい子だったんですよ。本っ当におとなしい子で。だから怖いですよね。おとなしい女の子の情念というか。出し抜く女っていうのを初めて知りました。
(赤江珠緒)(笑)
(博多大吉)えっ?その出し抜いた方。別に知らなかったっていう可能性はないですか?
(ジェーン・スー)ないです!もうさんざん、私がその先輩のことを大ファンってことはみんな・・・
(赤江珠緒)そんな広めていたスーさんもすごいと思うけど。
(ジェーン・スー)まあとにかく、『手、つけんなよ!』みたいな。先輩の方の意思、まるでなしですよ。本当に。
(赤江珠緒)へー、そうか。
(ジェーン・スー)で、その先輩もちょっと悪そうに、『あ、ごめんね。なんか他の子、来ちゃって。すごいたのまれちゃって・・・』みたいな。で、私も『ええっ!?』って。
(赤江珠緒)『ここ、リザーブかかってるから』みたいな。
(ジェーン・スー)でも、付き合っているわけじゃないから。かわいい後輩ぐらいの感じだったんで。まあ、その時の三田先輩が、もう大吉先生そっくりなんですよ。
(赤江珠緒)ええっ!?
(ジェーン・スー)本当に。
(赤江珠緒)あら。
(博多大吉)三田先輩。
(赤江珠緒)今日、写真持ってくればよかった。
(ジェーン・スー)で、私、見たら今日、ボタンねえ!と思って(笑)。
(博多大吉)今日、Tシャツで。
(ジェーン・スー)無念を晴らそうと思ったんですけど。なかったですよ(笑)。
(赤江珠緒)そうですか。えー。でも、その三田先輩は・・・
(博多大吉)赤江さんは貰ったこと、あるんですか?
(赤江珠緒)うーん、あのね、中学ぐらいの時ってあんまりね、男子に目が行ってなくって。女子の先輩にすっごい憧れているような。
(ジェーン・スー)バスケ部の部長とか、そういう感じのね。ありますね。
(博多大吉)あるある。そんなの。
(赤江珠緒)で、女子の先輩から貰って、自分の制服と付け替える見たいな。
(ジェーン・スー)ああー。
(赤江珠緒)そういうの、流行ってたんですよ。
(ジェーン・スー)なんかもう、脳がジワジワ変なところが溶けてくるっていうか(笑)。あったあった!
(赤江珠緒)ちょっと男子に行ってなかったんですね。その時は。
(ジェーン・スー)まあそして大学になりまして、今度女子大とかだと、バーン!と袴で卒業式、やったりするじゃないですか。あの時に、すごい話を聞きました。なんと、某マンモス女子大。卒業生、女子大で1000人。で、大多数が大学の生協でレンタルの振り袖とか袴。着付けをするそうなんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(ジェーン・スー)どういうことになるか?って言うと、卒業生たち。式当日、普段着で登校して、着替え用にデカい部屋がドーン!と用意されていて。そこに着付けのおばちゃんがダーッ!っといて。
(赤江珠緒)そうですよね。
(ジェーン・スー)もう5分おきにバンバン入っていって。『はい、かわいいね!はい、着替えた!はい、写真!』っていって。やっていくんですって。
(赤江珠緒)はいからさんが通るみたいな、あの格好がバンバンできていく。量産。
(ジェーン・スー)で、その子はなんかお手伝いかなんかをしてたらしいんですけど。完全に家畜の出荷だったって。
(赤江珠緒)(笑)
(ジェーン・スー)あの光景が忘れられないって。
(赤江珠緒)まあ、一気にですからね。大量生産ですね。へー!そうか。
(ジェーン・スー)さあ、そして、卒業式の他に、まだあります。中年には関係ない春の出来事。上京です。
(赤江珠緒)上京物語。はい。
(ジェーン・スー)私、東京生まれの東京育ちなんで、ちょっと上京の経験っていうのはないんですけれども。よく考えたら、偉いですよ。大学とか専門学校、18とかじゃないですか。18で親元離れて、戸締まり、火の元、光熱費払って。よくやるわっていう。で、それぞれ思い出があると思うんですけども。いろいろ聞いてきたところ・・・
(博多大吉)うん。
(ジェーン・スー)まず、Aさん。関西から出てきた方です。神戸出身の方。大学で東京に出てきたので、最初、東京弁のメンズが全員オカマに聞こえたと。言葉が。
(赤江珠緒)ああー。
(ジェーン・スー)なんか、『そうじゃない?』とか。『僕』とか。そういうのが完全になよなよしくて。結構びっくりしたと。あと、東京に来て、新しく使うようになった言葉っていうので、『ウザい』。関西だと、『うっとい』って言うらしいですね。
(赤江珠緒)あ、『うっとい』ね。『うっとい』って言いましたね。
(ジェーン・スー)あと、『平気、平気』っていうのも、関西の時には使わなかったそうです。『大丈夫、大丈夫』って。
(赤江珠緒)あ、『平気』ってかなりね、洒落た言葉ですよ(笑)。
(ジェーン・スー)そうなんですか!?
(赤江珠緒)『平気』って言わない。『うん、平気』っていうのはマンガの中でしか使わない。
(博多大吉)へー。
(ジェーン・スー)あ、日常生活で『平気』って言わないんだ。
(赤江珠緒)『平気』ってそういえば使ったことなかったです。
(ジェーン・スー)へー!それを言うようになったっていうのが、42才の東京の方だったんですけど。今度、37才男性の方です。『上京して驚いたのは、渋谷のスクランブル交差点。祭りかなにかをやっているのかと思った』と。
(赤江珠緒)(笑)。それは思いました。それは本当に、思いますね。
(博多大吉)もう、あるあるですね。
(ジェーン・スー)本当にみんな、あるあるで言いますけど。これ、なにがあるあるで面白いって、10人中8人ぐらいがこれを言うんですよね。なんなんですか?そんなに祭りですか?
(赤江珠緒)だって地方だと本当に祭りでしか集まらない。見ない。人を。
(博多大吉)あの規模はね、花火大会の規模ですね。
(ジェーン・スー)ああ、なるほど。
(博多大吉)で、スクランブル交差点のなにが恐ろしいって、信号が変わって、みんないなくなるでしょ?で、次の信号でまた同じ量がたまるでしょ?
(ジェーン・スー)あ、ああ。たしかに。
(博多大吉)それがずっと繰り返されるから、本当に祭りがどっかでやってるんじゃないのか?って。
(ジェーン・スー)あ、そっかそっか。どっかで祭りでもやっていないと、あんなに人が集まんないだろうと。
(赤江珠緒)なんの用事があって、ここにこんなに大量に人が?みたいな。
(博多大吉)これは奥の方で花火が打ち上がるに違いないってやっぱり思っちゃうんですよね。
(ジェーン・スー)そう。今回その、『上京についてのエピソード、ありますか?』って言ったら、『いや、スクランブル交差点が・・・』っていうのは結構出てきて。本当にそうなんだと。
(博多大吉)本当に思いますね。
(赤江珠緒)ねえ。
(ジェーン・スー)あと、まあ切ない話もありますね。『上京する日、早朝に両親が地元の駅まで車で送ってくれた。お互い明るく振る舞って、その時は上手く感謝を伝えられなかったのを覚えている』。43才女性。
(赤江珠緒)うん。
(ジェーン・スー)お二人はどうやって、出ていらっしゃったんですか?東京には。
(赤江珠緒)電車で。
(ジェーン・スー)いや・・・それはそうなんですけど。手段でいいんですけど、たとえば親に送られて、とか。友達に見送られて、とかっていうのは?
(赤江珠緒)いや、親に送られてだったと思いますね。いま、思えば。
(ジェーン・スー)カラッとした感じでした?
(赤江珠緒)いや、なんかジメッとしてましたね。
(ジェーン・スー)泣いちゃったりしたんですか?
(赤江珠緒)いや、泣いてはいないんですけど。なんか、父親がジーッと、人が入ってこれないエリアのところギリギリまで来て、ジーッと見てるみたいな。
(ジェーン・スー)うわー、切ない!
(赤江珠緒)泣きはしないですけど、ジーッと見てるから。いつも、ねえ。改札口のところでジーッと見てるみたいな。うん。なんかそんな感じはいま、思い出しましたね。これで。
(ジェーン・スー)ねえ。なんか。大吉さんは?
(博多大吉)いや、僕も35で出てきたんで。だからもう、そもそも実家はもう出て、福岡市内に住んでいたんで。別に東京に行くことが決まっても、『ふうん』みたいな感じで。
(ジェーン・スー)まあ、そうですよね。大人だと。
(博多大吉)だったですね。だからあんまり、あの、引っ越しを僕、してないんですよ。何回も東京と福岡を往復してたんで。全部スーツケースに詰めて、ちょっとずつ小分けで運んだ見たいな。
(ジェーン・スー)感慨深くなーい!
(赤江珠緒)たしかに(笑)。気がつけば。
(博多大吉)そうなんですよ。だから大人の上京でしたね。
(ジェーン・スー)『上京、ふうん』ってすごいですね。
(博多大吉)だから『今日からここが俺の城だ!』みたいなのはなかったです。
(ジェーン・スー)すこーしずつ、すこーしずつ、バレないように持っていく感じで。
(博多大吉)いろんなところで言ってますけど、僕、最初に住んだのが調布だったんですよ。で、調布ってなかなか田舎じゃないですか。結構。だから、『東京って聞いてきたのに、福岡時代より田舎に住んでるな。横、田んぼじゃん』と思いながら。
(赤江珠緒)あー。
(ジェーン・スー)当時はそうかもしれないですね。
(博多大吉)うん。横が畑やったんですよ。うちの。調布の時は。
(赤江珠緒)へー。私、渋谷区だったんで。いちばん最初に出てきた時は。で、『うわっ、どうしよう?』みたいなところがね。ひとり、夜を迎える時に。あの、カーテンをとにかく吊らないと、外から見えると思って。
(ジェーン・スー)そうだそうだ。
(赤江珠緒)で、荷物をダンボールから、『あ、カーテン。カーテン』と思って、出してきたらですね、知らなかったんですよ。カーテンって対になっていないバージョンがあるんですね。
(ジェーン・スー)あ、片側しかない。
(赤江珠緒)片側しかない。で、片側しか吊れずに、片側がめっちゃ丸見えだけど、どうしよう?みたいな。
(ジェーン・スー)両側開いているか、片方開いてるかにするしかない。
(赤江珠緒)真ん中らへんにして。そうですね。それでなんか、すごい不安な夜を迎えたのが上京の夜でしたね。
(ジェーン・スー)そうそう。なんか別の友人の子は、関西に今度引っ越したタイプの上京というか。関西に行った子なんですけど。初めての一人暮らしで、夜中、冷蔵庫の音が大きくて。『なんでこんな思いをしなくちゃいけないんだ!』って泣いたっていう(笑)。
(赤江珠緒)(笑)。そうですね。
(ジェーン・スー)若いっていいな!っていうね。
(博多大吉)夜中は来ますね。夜中ね、テレビつけると見たことないテレビが始まったりとか。
(赤江珠緒)ああー。
(ジェーン・スー)そっかそっか。
(博多大吉)はじめましてのアナウンサーの方がニュースとか読んでると、『うわー、えらいところに来たな!』ってやっぱ思っちゃいましたね。
(赤江珠緒)そうですねえ。
(ジェーン・スー)それはたしかにあるかもしれません。
(博多大吉)天気予報の天気図で福岡がない!とか。
(赤江珠緒)そうそうそう。あの、天気図の見方が若干、『あれ?ちょっと待って、ここ、東京で、これでこれで・・・』とか。なんか、見慣れてないエリアのね、分け方になるじゃないですか。ローカルになればなるほど。
(ジェーン・スー)たしかに。いちいちボディーブローで来ますね。そういうのが続くとね。
(博多大吉)そうそう。ジワジワと、『ああ、上京したんだ』って思いましたね。
(ジェーン・スー)で、次にですね、最後なんですけど、中年には関係ない春の出来事と言えば、自己紹介でございます。
(赤江珠緒)自己紹介?
(ジェーン・スー)これ、しなくなったと思いませんか?自己紹介。
(博多大吉)自己紹介。そうですね。まあ、言われたら・・・漫才なんかではね、そりゃ自己紹介しますけど。それはそれですもん。
(ジェーン・スー)そうですね。『君、誰?自己紹介』って言われないじゃないですか。もう(笑)。
(赤江珠緒)(笑)
(博多大吉)まあ、立場上、言われないかな?
(ジェーン・スー)そうですよね。でも、昔って自分から、『ほら、自己紹介して』『こんにちは!○○、△△才、■■から来ました』とか。やったじゃないですか。
(赤江珠緒)やりましたね。
(博多大吉)若い頃はやっぱりやってましたよ。
(ジェーン・スー)ね。で、ですね、まあ40才女性の方。『中年になって自己紹介で自己顕示をしようという欲がなくなり・・・』。そういう機会、あるんですって。お母さんとかだと、いろんな回に行ったりするとね。『求められているもの、つまり次の会話につながるものを自然に出せるようになりました。昔は好きな映画や音楽で、人とは違うこだわりを見せようとしてしまった。いまでは誰もが知っているものや興味を持ってもらえそうなものが話せます』と。
(赤江珠緒)ああー。
(ジェーン・スー)『ジム・ジャームッシュ、見てます』みたいな(笑)。
(赤江珠緒)(笑)
(博多大吉)そんなこと、言われますけど。言われていつも、『あっ?』ってなります。
(赤江珠緒)そっからのむしろ、展開の方が大事だからっていうね。
(ジェーン・スー)これね、もうひとりいましたけど。同じようなことやっちゃった人。新卒で入って、画用紙の大きなの渡されたんですって。で、『ここに一人ひとり、自分の自己紹介を書いて、同期の中で自分をアピールしなさい』みたいな。入社前研修があったんですって。で、みんな思い思いのその大きな画用紙に、似顔絵を書いたり、色を使ったりとかやってる時に、ひとりだけ、これ恥ずかしいでしょうね。いま思い出したら。『勝訴』って書いてバーッ!ってみんなの前に広げたやつがいたらしくて。
(赤江珠緒)(爆笑)
(ジェーン・スー)これね、やっぱね、21ぐらいじゃないとできないですよね。21、2で。
(赤江珠緒)そうですね(笑)。
(博多大吉)出世したのかな?その子は。
(ジェーン・スー)ねえ。一応まだクビにはなってないらしいんですけど。恥ずかしい!
(赤江珠緒)後々まで語り継がれちゃいますね。
(ジェーン・スー)『勝訴』ですよ(笑)。
(赤江珠緒)うわっ(笑)。
(ジェーン・スー)自己紹介で。ほぼ初見の人たちの前で。
(赤江珠緒)(笑)。いいじゃないですかー。
(博多大吉)果敢に笑い、取りにいきますね。
(赤江珠緒)そうですよ、そうですよ。
(ジェーン・スー)お二人のちょっと自己紹介って、改めて。いま、言われたら、なんてします?
(赤江珠緒)うわー、そうですね。
(博多大吉)仕事先でね、すごい名刺をいただくんですよ。で、もう名刺持ってないんです。僕。芸人なんで。だから名刺をいただく時に、『あ、すいません。僕、ちょっと名刺は持っていないので。博多華丸・大吉の大吉の方でございます。よろしくお願いします』ぐらいの。
(ジェーン・スー)それで通じますもんね。
(博多大吉)これぐらいのことを言いますね。
(ジェーン・スー)『趣味はなんなの、君は?』とか言われたら、どうします?
(博多大吉)『詳しくはウィキペディア等をご覧いただければ・・・』。
(ジェーン・スー)あ、ウィキペディア(笑)。
(博多大吉)『ほぼ載っています』みたいな感じで、まあ返すこともありますけど。基本、もう形式上の挨拶しか中年はやらないかな。赤江さんはまだね、個人事務所だし、いろいろ挨拶することもあるでしょうけど。どうするんです?
(赤江珠緒)『メカには弱いが、下ネタには強い。赤江珠緒です』(笑)。
(ジェーン・スー)なにを(笑)。なにを上手いこと言ってるんだ(笑)。
(博多大吉)本当に?
(ジェーン・スー)メカと下ネタ、関係なさすぎるし!
(博多大吉)で、下ネタ、そんな強くないでしょ?ただ黙って聞けるっていうだけでしょ?
(赤江珠緒)そうですね(笑)。まあなんか、そういう感じで。言ったりね。中年になるとね。
(ジェーン・スー)ちょっと、雑な下ネタが多くなったりするもの中年ですよね(笑)。
(赤江珠緒)どうでもよくなるっていう。
(博多大吉)スーさんはどうやって自己紹介するんですか?
(ジェーン・スー)私も『仕事、なんですか?』って言われるのがいま、いちばん困って。『雑務を』って言ってますよ(笑)。
(赤江・大吉)(笑)
(ジェーン・スー)『いろいろと雑務を』っていう。『ものを書いたり、ものを売ったりしています。しゃべったり』っていうね。本当に困ります。『ジェーン・スー、はあ?』って。そっからですから。
(赤江珠緒)(笑)。たしかにね。
(ジェーン・スー)『ええと・・・』っていうね。まあ、いろいろありますけども。まとめとしましては、春は甘酸っぱい記憶とセットになっているイベントが多いと。中年は知らぬうちにそれを見守る側になっております。私たちに残された春と言えば、花粉症と眠みとお花見。この3つでございます。で、なんとかするならば、たとえば、同窓会めいたお花見をして、いまみたいなね、話に花を咲かせ、記憶のアメ玉をなめ回して。鼻がスーッと通ったらそれでいいんじゃないか?と。
(赤江珠緒)そうですね。
(博多大吉)してます?同窓会。
(ジェーン・スー)あのね、好きな人がいるんですよ。すごい頻繁にやってるんで、何回かに1回、出てますね。
(博多大吉)たまーにね、同級生で会いたいなと思う時、あるじゃないですか。『あいつ、どんな顔に変わったんだろうな?』って。でも、自分が主催すると、責任を負わないといけないから。なんかね、誰か誘ってくれないかな?と思いながら、もうズルズル26年かな?高校を卒業して。1回もないのでね。
(赤江珠緒)1回もないんですか。
(博多大吉)ちゃんとしたやつは1回もないですね。だから、なんかね、行ける時に行った方がいいですね。中年はね。同窓会ね。
(赤江珠緒)そうですね。
<書き起こしおわり>