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宇多丸 『真相 マイク・タイソン自伝』を絶賛する

宇多丸 『真相 マイク・タイソン自伝』を絶賛する 宇多丸のウィークエンド・シャッフル
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ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の秋の推薦図書特集 放課後ポッドキャストでマイク・タイソンの自伝本を推薦。『近年いちばんの面白さ』と絶賛していました。

真相---マイク・タイソン自伝

(古川耕)じゃあ宇多丸さん、どうですか

(宇多丸)どっちにしようかなー?あのね、私じゃあ1冊目はこっちにします。読みやすい方からいきます。実はですね、この本は玉袋筋太郎さん。この番組でもお馴染み、浅草キッド玉袋筋太郎さんからすごく強く推薦されて。で、読み出したらもう最高に面白くて。これ、事実上、玉さん推薦本です。と、思ってください。何かと言いますとですね、タイソンの自伝です。マイク・タイソンの自伝です。

(古川耕)ああー、話題になってますよね。

(宇多丸)『真相』という本でございまして。ダイヤモンド社から出ておりまして。はい。非常に分厚い本でございましてね。なんだけど、まあKindle版とかも出てるんですけど。まあでも紀伊國屋書店でね、フィジカルなのをね!これが、いいんじゃないでしょうか。で、ご存知マイク・タイソンですよ。なにがすごいか?っていうと、そのね、ポップカルチャー史上って言っていいのかな?とにかく、我々が知っているような有名人とかね、なんでもいいですよ。の、史上、自伝とかいろいろありますよね?こんなに、こんなにめちゃくちゃなヤツは後にも先にも絶対にいないだろ!?っていうか。もちろんね、その歴史上の偉人みたいな。でね、彼自身も自分を歴史上の偉人になぞらえたりするわけですよ。

(古川耕)うん。

(宇多丸)もう、そこまでいかないと。だからチンギス・ハーンとか・・・そこまでいかないと、これ級の破天荒は無理だろ?っていう風に思うような、もうとにかくね、いいことも悪いこともスケールがデカすぎる!っていう、まず面白さの部分ですかね。で、玉さんに勧められて。とにかくすごい分量の本ですから。とはいえ、内容はみんな知っているタイソンなんで。ポンポン、すっごく読み進めやすいんですけど。ツカミがもう、本当この本最高で。

(古川耕)ほうほうほう。

(宇多丸)いいですかね?ちょっと、ネタバレだ!って言われるかもしれないけど。この本、本当ツカミが最高なんで。是非。あの、プロローグがあって、そのプロローグは例のレイプ裁判で有罪になってしまうところから始まるわけですね。彼の人生のある意味、どん底の瞬間ですよ。で、そこから始まって。で、そこからいったん遡って、彼のその生い立ちから始まるんですけど。彼の生まれ育ちはニューヨークはブルックリンのブラウンズビル(Brownsville)というですね。これ、ヒップホップ好きの方だったら、M.O.P.というグループの出身地。ブラウンズビル。

(古川耕)うんうん。

(宇多丸)要はM.O.P.というグループはものすごい荒くれな感じで。荒っぽーい感じの。『Ante Up』って曲で。要はカツアゲしちまえ!って曲なんですけど。とにかく荒っぽい・・・

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M.O.P.『Ante Up』

(古川耕)物騒ですね。

(宇多丸)物騒だなっていうのは曲では知ってたんだけど。これを読むと、『あっ、そういう土地なんだ』というのがよく分かる。オープニングでですね、出だしね。『俺たちはピューマボーイズと呼ばれている奴らとモメていた。1976年のことだ。俺はブルックリンのブラウンズビルに住んでいた。俺は当時、ザ・キャッツと呼ばれるチームの連中とつるんでいた。俺たちは押し込み強盗団で、仲間がピューマの奴らと言い合いになったから、加勢しようと公園に駆けつけたんだ。普段は銃を使ったりしなかったが、仲間のためだ。一山盗んできた。拳銃数丁に357マグナム一丁、第一次世界大戦時に使われていた銃剣付きの長いM1ライフルが一丁』。

(古川耕)戦争(笑)。

(宇多丸)『人家に侵入すると、思わぬ掘り出し物があるものだ』なんて言うわけです。『俺たちは銃を抱えて路上を歩いていた。近くにお巡りもいなかった。ピューマの野郎!歩き続けると、ピューマボーイズの何人かが通りに停まっている車と車の間に隠れていることに気がついた。俺はM1ライフルを手に素早く振り返ると、拳銃を持ったデカい男が俺に狙いを定めていた。「一体なにをしてるんだ!こんなところで!?」とそいつは言った。俺の兄貴のロドニーだった。「さっさと家に戻れ!」。そのまま公園を出て、家に帰った。まだ10才の頃の話しだ』。

(一同)(爆笑)

(古川耕)本宮ひろ志!?(笑)。

(宇多丸)本宮じゃないでしょ!?まず、もうこの時点で・・・要するにね、幼少時から悪かったっていう話ね。たとえば映画『グッドフェローズ』のオープニングでもいいですよ。『大統領になるよりギャングになりたかった』。だけどこれは、映像にしたらネタバレになっちゃいますから。これ、やっぱり書き口の上手さですよね。最後に『まだ10才の頃の』って、ええーっ!?っていう。なんなの!?っていう。とにかくですね、もうブラウンズビルはすごい治安が本当に悪い、環境が悪いわけです。なんだけどまあ、その中で家族がいて。家族に対する愛とかはそこそこあるんだけど、当然悪に染まって。タイソンっていうのは本当にどうしようもないワルなんですね。

(古川耕)うん。

(宇多丸)ところが、カス・ダマトというですね、名コーチ、名トレーナーと出会う。で、このカス・ダマトと出会ってっていうくだりはもう、あしたのジョーの世界でしたよ。カス・ダマトは丹下段平。要するに、当時のボクシング界でもちょっと時代遅れとされているようなスタイル。こう、ガードをがっちり固めながらの・・・

(古川耕)ピーカブースタイル。

(宇多丸)スタイル。で、まあ『いまに見てろよ!』というそのカス・ダマトが天才。どチンピラ中のどチンピラに才能を見出して。そこでね、2人で勝ち上がっていく様は、この本の全体ではポジティブなところなんですね。俺、グッと来るのはやっぱりマイク・タイソンってただの粗野な人だって思われるけど、実はもうボクシングオタクなんですね。

(古川・妹尾)へー!

(宇多丸)もう、ボクシングが好きで好きでしょうがないと。で、もう特にカス・ダマトが生きている時は熱心にトレーニングするし。で、ありとあらゆる古今東西の名ボクサーたちの自伝を読んだりとか、試合のビデオを見たりとか。とにかく全部研究して。彼らの技であるとか、癖であるとか、もしくは生き方とか発言とか、そういうものすべてから学んで。要するにちょっと、サンプリング世代っていうか、ディグしている。過去の歴史をディグしているやつなんですよ。ヒップホップ世代なんです。

(古川耕)なるほどなるほど。

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ヒップホップとの関連性が後からたくさん出てくる

(宇多丸)そのヒップホップとの関連性みたいなのも後からいっぱい出てくるんで。トゥパック(2PAC)とのね、交流とかいっぱい出てくるんだけど。そういうところで、なるほど、彼はちょっと単にそういうんじゃなくて、むしろ知的なタイプ。でも、もう戦いはすごくハードなっていう感じ。で、まあ勝ち上がっていくんですけど、その勝ち上がっていく過程、チャンピオンになる手前でカス・ダマトは死んでしまうわけですね。で、カス・ダマトはやっぱりその、彼をある意味ボクシングでもって成功に導く・・・

(古川耕)メンターみたいな。

(宇多丸)なんだけど、要は上がっていく途中でカス・ダマトが亡くなってしまったせいか、要は『勝ちさえすればいいんだ!』っていうことしか教えずに死んでしまうわけですよ。

(古川・妹尾)あー!

(宇多丸)勝った後に、人間としてどう成長していくか?の話はしていないわけです。そうこうするうちに、彼はまあ才能はとにかくありますし、訓練もしますし。もう勉強もしているから強い!で、師がいないまま、世界を手に入れてしまう。なんでもできる立場になるわけですよ。で、みなさん想像の通り、というか想像をはるかに超えた放蕩暮らしが始まると。無駄遣いひとつとっても、女遊びとってみても、そしてクスリですね。とにかく麻薬。が、ハンパない。僕、いちばん驚いたのが、もちろんそのスケールもハンパないんですよ。たぶん日本で、どんな芸能人が粋がろうとこのスケールは無理だ!っていうスケールで、まあ暴れまくると。

(古川耕)うん。

(宇多丸)と、同時になんにびっくりするって、チャンピオンになってるんですよ。なっているその時に、たとえば彼はね、地方に行きます。そうするとね、やっぱり自分が成功して、たとえば名士として扱われて、いい人みたいなふりをしなきゃいけないのが苦痛なんだって。『なぜなら、俺はクソ野郎だからだ。俺はブラウンズビルで盗みを働いたり、散々酷いことをしてきたクソ野郎で、いまもそれは変わらないんだ』と。居心地が悪い。どうするか?地方に行った時に、その地方のいちばん治安が悪い地域に1人で、しかもジャラジャラ宝石とかつけて、1人で出かけていって。地元のチンピラと揉め、ぶっ倒し・・・

(妹尾匡夫)はー!

(宇多丸)でね、この話すると、『タイソンは殴ると殺しちゃうから当てない技でやったらしいね』っていう。うん。この本読む限り、ボッコボコにやってます。

(一同)(笑)

(宇多丸)ボッコボコ。地元のチンピラを。とにかくそういうことをすることで、環境が悪いところに行って、悪い奴らと交わるとほっとするんだって。『俺の居場所はここだ!』って。とか、すごく成功してるのに、ブラウンズビルとか戻るとやっぱり悪に染まっちゃって。で、たとえばチャンプですよ?世界チャンプだよ?世界でなんでもできる男が、クラックハウスにたまって、そこにいる麻薬中毒の奴らとつるんで。そうすると、『こういうクズといると、ほっとする。俺は同類だから』って。で、周りの奴らが『おいチャンプ、なんでこんなところいるんだ?ダメだぞ、俺たちとつるんでいちゃ』って。

(古川耕)止められるぐらいの。

(宇多丸)ぐらいの、そういうことをやってたんだってさ!みたいのが延々あってですね。レイプ事件。彼はすごく否定してますけど。が、あったりとか。トゥパックとの交流を読むと、これ私ね、日本で数少ない直接トゥパックとそこそこやり取りした人間としては、『ああ、やっぱりトゥパックはいいやつだったな』って。

(古川耕)似てるっちゃ似てるのかもしれないですね。ちょっとね。

(宇多丸)いや、でもやっぱね、トゥパックはもっとキラキラなの。キラッキラの人なの。心はもう、天使のような人なんだけど。あとね、タイソンは何度も何度も、いくらいいところまで来てもすぐ戻っちゃう、みたいな感じ。で、続くという話でございます。これ、ジェットコースターで止まらない勢いなんで。で、なおかつ、耳噛み事件とか。なんで耳を噛んだのか?やっぱね、このタイソンの視点だからね。でも、タイソンの視点からすると、そりゃあね、耳ぐらい噛むわと(笑)。

(古川耕)あ、といういきさつがあるんですよということなんですか?

(妹尾匡夫)あの、畑山が当時ね、ボクシング強かった頃に、話を聞いたら、『ホリフィールドみたいなボクシングをされたら、俺だって耳噛むよ』って言ってました。あんなイライラさせるボクシングはないって。

(宇多丸)イライライライラ。本当、彼からすると、酷い。で、周りも味方がいないみたいな感じで。まあ、みたいなのも描かれますんで。みなさんご存知の事件も描かれますし。ということでもうね、とにかくこんなアップダウン。とにかくもう、日本の芸能界とかだったら絶対にあり得ないトップと、そんなやつがクラックハウスに入り浸っている。で、街のチンピラと本当にストリートファイトをまだしてるっていうこのアップダウン。これ、たぶん人類史上ないんじゃない?で、なおかつ、一応本編が終わると、その後にさらに後書きがついてるんだけど。そこで、もうびっくりするようなどんでん返しとかも用意してくれていて。

(古川耕)へー!

(宇多丸)もう・・・タイソン(笑)。最高です!あの『ハングオーバー!』シリーズに出演したことが彼にとっていかに・・・でもあの時点で彼は麻薬でヘロヘロなんですよ。ロクにもう右も左も分からない状態で出てる。とかですね、そんなのもありますんで。近年・・・玉袋筋太郎さんがおっしゃっているのは、『いままで読んだ自伝の中で面白さはトップだ』と。僕も、面白さっていう意味ではこれ、近年読んだ中ではもう最高です!話のネタとしてもう、この話だけで2-3時間盛り上がれるという感じでございます。

(古川耕)最近、でもショウビズ界に復帰してきた感ありますからね。

(宇多丸)そうです。あの、『リベンジマッチ』でまさに、そのエンディングでおまけコーナーでタイソンとホリフィールドが並んでっていう。それがちょっと、ひとネタになってるんですよ。

(古川耕)アカデミー賞かなんかのイベントでも、なんかスーツ着て出てきたりとか。割りとショウビズ界に復帰してきたな、みたいな感じはありますよね。

(宇多丸)ハングオーバー!はすごい感謝してるみたいですね。でね、これ不思議なのはそれこそリベンジマッチでさ、『レイジング・ブル』でジェイク・ラモッタがさ、コメディアンになるじゃないですか。なんかその、ボクサーからコメディアンコースって、なんかあるっぽくてさ。やっぱこう、タイソンも『俺はエンターテイナーが向いてるんだよ』みたいな感じで。そっち行こうとしたりとか。日本だってもちろん、ガッツ石松しかり、あるわけじゃないですか。具志堅さんしかり。だからなんかね、ボクサーとそのコメディー間の親和性とは一体なんなのか?って。これもちょっとね、思い浮かべさせるような・・・

(古川耕)ボクシング的にもちょっとね、タイソンっていままでに類を見ないボクサーだったって・・・

(妹尾匡夫)あんなスピードのあるヘビー級はいなかった。

(宇多丸)最後に、この訳されている方。タイソンともやり取りしているような方が、ただタイソンは本当にボクシングの実力で順位をつけるなら、ベスト10に入るか入らないかぐらいみたいなことは、ジャッジされてましたけどね。っていうのはやっぱり、もちろん天賦の才能は持ちながら、諸々でちょっと無駄にしちゃっている時期があるという。もちろん刑務所に入れられちゃっているのもあるし、その後、東京で負けちゃった時とか。もうボロボロの状態だったりして。やっぱりね、どんなに才能があっても、やっぱり最初に磨いている時がすごくね、の、財産で食いつないでいるような感じなんですよ。

(古川・妹尾)あー。

(古川耕)カス・ダマトと訓練している映像がYouTubeに上がっていて、なんか一時期僕、やたら見ている時期があったんですけど。まあ、異常なスピードなんですよね。もうカメラじゃ追い切れない。

(宇多丸)だからもう全盛期は、彼自身も『絶対に俺にかなう奴なんかいない』っていう感じだし。でね、こんだけ無茶苦茶なことをやっておきながら、後輩のボクサーとか最近のボクサーはね、もう勉強不足だ!と。

(古川耕)(笑)

(宇多丸)昔のボクサーのことをぜんぜん知らないし。俺とかは本当勉強して・・・みたいな。こんだけめちゃくちゃなことを書いておいて。そのね、すごくしっかりしている部分と、どうしようもないやつの部分で、なんか揺れ動く感じとかもすっごい面白いし。『まあ、俺はクソ野郎だが』みたいな(笑)。とかね、もう最高です。はい。あと、まあヒップホップ、R&B好きだったらいろんな知っている名前も出てくると思う。『アルビーシュア(Al B. Sure!)の家でパーティーをしていると・・・』みたいなのが出てきますんでね。

(古川耕)アルビーシュアって・・・

(宇多丸)あと、ヒップホップのブリンブリンスタイル。成金スタイルみたいなのはみんな俺がパイオニアだ、みたいなね。ことをおっしゃってたりしますね。といったあたりで、マイク・タイソン『真相』。ダイヤモンド社から出ておりますので。こちら、まずおすすめしたいと思います。

<書き起こしおわり>

真相---マイク・タイソン自伝
Posted at 2018.3.28
マイク・タイソン
ダイヤモンド社
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