西寺郷太・湯川れい子が語る 作詞家・湯川れい子の名曲制作秘話

湯川れい子が西寺郷太に語る フリオ・イグレシアスの人間的魅力 西寺郷太TAMAGO RADIO

湯川れい子さんがTBSラジオ『西寺郷太TAMAGO RADIO』にゲスト出演。作詞家・湯川れい子さんが手がけた名曲『恋におちて Fall in love』や『センチメンタル・ジャーニー』などの制作エピソードをお話されていました。

(西寺郷太)で、僕もう1個の湯川さんの音楽を日本に紹介してきた。ラジオでもそうですし、文章でもそうで。ライナーノーツの話もしましたけども。もう1個の、作詞家としての湯川れい子さんというのに。僕はもう、本当に好きな曲が多くてですね。

(湯川れい子)はい。ありがとう。

(西寺郷太)特にこの曲は、湯川さんのいろんなヒット曲の中でも代表曲のひとつですよね。この話も僕、面白いと思うんですけど。ちょっと僕が子供の頃に買ったレコードとして紹介させてください。小林明子さんで『恋におちて Fall in love』。

小林明子『恋におちて Fall in love』

(西寺郷太)はい。小林明子さんで『恋におちて Fall in love』。たくさん、もちろんヒット曲のある湯川さんですけども。この曲は徳永英明さんもカヴァーされたりとか。

(湯川れい子)そうですね。いま、男の方のキーで歌えるのがうれしいですね。

(西寺郷太)僕、これカラオケとか行くとぜったい歌うんですよ。徳永英明さんと僕、キーがほとんど一緒で。全部。あれを入れると、すげーみんなに褒められるっていう。本当に、これいつか聞いてください。僕の。

(湯川れい子)歌って歌って。1回ね、歌ってくれるとね、私に3円入るの(笑)。

(西寺郷太)(笑)そら、あんだけの家に住まれますね。

(湯川れい子)でも、たった3円よ(笑)。

(西寺郷太)いやいやいや。僕は一瞬行った時に。この前。突然行ったっていう話したじゃないですか。イーグルスの。真夜中に。

(湯川れい子)真夜中1時にね、来ていただいて。

(西寺郷太)いや、あのまま夜を越すと大変なことになると思って。で、行った時に、湯川さんが突然行ったのに、本当にイメルダ夫人かのような、ものすごい(笑)。

(湯川さんが)嘘よ。私、パジャマ着てたもん(笑)。

(西寺郷太)ものすごい妖艶なね、ネグリジェっていうんですか?ブワーッて。パジャマですけど。もうドレスみたいなので。『郷太さん、こんな風にお会いするとは思わなかったわ。ありがとう』って言ってくれて。

(湯川れい子)本当に恥ずかしかった(笑)。

(西寺郷太)あの、広い応接場所もあったんですけど。湯川さんのキッチンの、『私、ここで歌詞書くと落ち着くの』って(笑)。そのお勝手みたいなところの、割とパイプ椅子みたいな。ちょっと僕・・・あそこに無茶苦茶大理石みたいな、テーブルもソファーもあるんだけどって。そんなに話が伸びるとは思わずに聞いていたら、そこでずーっとそのエルビスの話とか・・・

(湯川れい子)すみません。本当に。

『恋におちて Fall in love』歌詞を何回も書き直す

(西寺郷太)いや、僕おぼえてるんですよ。あれで。『私のマイケルの資料とか、郷太さんに託すからね。整理したら渡すよ』って言ってくれたのを。おぼえてますから。そんでまあ、あれだけの世界の中で湯川さんの歌詞っていうものに関する、僕もちょっと驚いた話がいくつかあって。僕なんかからすると、えっ!?って思うんですけど。結構、歌詞を書いていて、ディレクターが湯川さんに散々当時、ダメ出しをして。で、この『恋におちて Fall in love』も、何回も書きなおしたって。

(湯川れい子)もう7回か8回くらい。でも、私のところに注文が来る前に、話だと有名な作家のところに行っていて。その方も、結局全部ボツで。で、私のところに来たっていう話があって。

(西寺郷太)最初は英語の発注だって、おっしゃってましたね。

(湯川れい子)最初はね、ドラマもCMもそうだけど・・・

(西寺郷太)これ、『金曜日の妻たちへ』ですね。

(湯川れい子)そう。TBSですよ。で、後ろで流れる歌が日本語だと、そっちに耳が行っちゃうんで。だから、耳に入らないようにサウンドとして、英語で書いてほしいって言われたの。

(西寺郷太)この小林明子さんの声が。

(湯川れい子)声がね、カレン・カーペンターに似てるから。

(西寺郷太)たしかに。カレンがなくなった頃ですよね。これ、ちょっと直後ぐらいに。

(湯川れい子)そうです。それで、全部実は英語で書いたの。だから私に来たの。

(西寺郷太)ちょっと残ってるんですよね。部分ね。あそこが好きなんですよ。

(湯川れい子)たぶんそれで私に発注が来たと思うんですけど。で、全曲実は英語で書いて渡したんです。そしたらやっぱり、英語っていうのはどうしてもフィットしないと。あるところまでは行っても。それはレコード会社サイドの思いよね。

(西寺郷太)あ、ドラマでやっていることと。僕もたまにあります。ドラマと、そういうディレクターと。いろいろ違うっていうことですよね。

(湯川れい子)でまあ、テレビのCMの曲なんかもそうだけど、ものすごくスポンサーからの注文がついたりするじゃないですか。で、これはドラマのディレクターはそういう注文だったんだけど、レコード会社としてはそれは困ると。せっかく主題曲になっていくんだから。

(西寺郷太)すごい人気番組というかね。

(湯川れい子)そうですよね。だからどうしても日本語で作ってほしいっていうことで、日本語で作ったんです。そしたら、ちょっと世界が違うと。それで2回も3回も。同じメロディーにそんなに世界が出てくるわけじゃないじゃないですか。同じメロディーなんだもん。

(西寺郷太)いちばんいいと思って書いているわけですからね。最初から。

(湯川れい子)そう。それでしかも最後の方になってはじめて言われたのは、不倫のドラマだから不倫の匂いをさせてくださいって。

(西寺郷太)まさに。ザ・不倫ですよ。あれね。

(湯川れい子)で、これ歌っている人が清純すぎるので。まだなんか東大かなんかの仕事をしてらっしゃる。で、清純すぎるので、この声では困ると。

(西寺郷太)あ、歌手も変えろと。

(湯川れい子)いや、歌手はいまさら。この人が作曲してるから、もう変えられない。だから不倫の匂いを歌詞でさせてくださいって。

(西寺郷太)あ、そっから。

(湯川れい子)だから7回か8回書き直したうちに。それで、最後の『ダイヤル回して手を止めた』って。いよいよもうレコーディング。これでドラマが始まるっていう1週間ぐらい前になって、もうプッシュホンになっちゃったんですよ。

(西寺郷太)(笑)。時代が。

(湯川れい子)時代が。

(西寺郷太)『ダイヤル回して♪』って言ってたら・・・『ピ、ピ、ピ』ですよ。

(湯川れい子)東京はいきなりプッシュホンになっちゃったの。で、地方はいいけれど。早かったんですよ。プッシュホンになるのが。バババババッ!ってプッシュホンになっちゃって。

(西寺郷太)『プッシュホン押して♪』だったら、ダメですよね。

(湯川れい子)あり得ない。

(西寺郷太)ダイヤルを、『9』とか回す。グリグリグリッて。

(湯川れい子)グリグリグリッて。ジーッて戻ってくる間にためらうわけじゃないですか。

(西寺郷太)『土曜の夜と♪』って。あの発想もすごいですよね。

(湯川れい子)日曜だけはその人、奥さんのところに行っちゃうから。

(西寺郷太)フリオ・イグレシアスに書いた歌じゃないですよね?(笑)。

(湯川れい子)違います。まだ息子がちょろちょろ、そこらへん遊んでいるころですから。

(西寺郷太)でも、それを突っぱねたんですよね?

(湯川れい子)突っぱねてくださったのは、レコード会社のディレクターだった。『ここがいいんだ。ここを書き直したら、この歌は死にます』と。

(西寺郷太)あそこがいいんですよ。

(湯川れい子)それで、明日がオンエアーっていう日に、やっぱりこれで行きます!ってディレクターがいまの音を届けてくださってくれたんです。ドラマのディレクターの方に。もう間に合わないっていうタイミングで。だからそれは本当に、レコード会社のディレクターに守っていただいた歌ですね。

(西寺郷太)それとまた、英語の部分も。結局、和洋折衷というか。あそこもいいですよね。本当に素晴らしいと思います。なるほど。いろんな物語。あと、もう1個言うと、僕、筒美京平さんと一緒に曲作ったりプロデュースしてもらったことがあって。センチメンタル・ジャーニーっていう曲が湯川さんの作詞で。筒美京平さん、松本伊代さんの。『伊代はまだ16だから』。あれも作詞としてもすごい。もう本当、すごいと思いますし。曲も素晴らしいんですけど。あの時のエピソードもすごく好きで。

(湯川れい子)そうですよね。今回、京平先生の100曲っていうすごいブックレットっていうか作品集が出て。その中に、実はセンチメンタル・ジャーニーを選んで頂いてるんですけど。

(西寺郷太)もちろん、入るでしょうね。

(湯川れい子)その時に、お渡ししたこれだけは詞が先だったんです。

(西寺郷太)みたいですね。いままで湯川さんの曲って、曲に合わせていくっていう。『ランナウェイ』もなにもかも。

(湯川れい子)そう。全部。ところがこれは詞先で。松本伊代さんの声だけ、他の歌っているのを聞かされて。『こういうとっても面白い声の子だから。でもまだこんな少女だ』と。

(西寺郷太)好きなんですよね。京平さんも割とキャッチーな声が好きだから。

(湯川れい子)京平先生がすっごい惚れ込んでらっしゃるから。『ただ、どういう楽曲でいったらいいかわかんないから、スケッチを書いてほしい』って言われて。で、スケッチでお渡しした詞なんですよ。

(西寺郷太)だって『伊代はまだ16だから』って。

(湯川れい子)それは、写真もらったから。

(西寺郷太)『タンタンタンタタン、タン、タタタンタターン♪』っていうメロディーがあったわけじゃなくて。

(湯川れい子)じゃなくて。

(西寺郷太)すごすぎる。もう、パンクですよ。パンク。

(湯川れい子)それで、京平先生にお渡しした詞の、手書きの詞がそのまま今回、その本に載っているんですよ。

(西寺郷太)えー!僕も持ってますよ。

(湯川れい子)本当?

(西寺郷太)それじゃなくて、僕が一緒に作らせてもらったときに、手書きでいただいた歌詞。あります。あとでかけたいですけど。

(湯川れい子)もうぜんぜんね。一言一句直さないで。京平先生がメロディーを作ってらっしゃるんですよ。で、私が次に聞いた時はもうレコーディング終わってたんだもん。

(西寺郷太)いや、だからそこもプロの仕事っていうか。さっきの、直して直して書いた『恋におちて』もありますけど。作詞家が書いた、僕、どっちもやるんでわかるんですけど。『ここ、ちょっとこういう言葉にならない?』とか、言葉数が合わせられなくて変えたりとかってことって。あんまり僕、詞先ってやらないんですけど。詞があって曲を書くって、本当湯川さんの時ぐらいで。だからそれぐらい難しいものなのに。やっぱり京平さんが1個も歌詞・・・

(湯川れい子)変えず。本っ当にね、最敬礼しました。

(西寺郷太)その、なんかサムライといいますか。プロのぶつかり合いがああいう曲だったっていうことも、また震えるというか。今日の前半では、湯川さんの音楽紹介者としての姿というかがあり、後半は作詞家としての湯川さんのスゴさっていうのを感じさせる放送になればいいと思ってたんですけど。

(湯川れい子)はい。ありがとうございます。

(西寺郷太)で、実は僕にとっても、1回この番組でもかけさせていただいたんですけど、湯川さんから詞をいただいて書いた曲というのがありまして。谷口尚久くんという共同作曲者と一緒に、bump.yというアーティストを。

(湯川れい子)かわいい人たちね。

(西寺郷太)5人組に。これ、本当に体育館とかで、みんなでカヴァーして、ピアノとかで歌ってくれたらいいなっていうシンプルな曲を目指して書いたので。作詞湯川れい子、作曲西寺郷太・谷口尚久で、bump.y『CRY』。聞いてください。

bump.y『CRY』

(西寺郷太)はい。湯川れい子さんと僕がはじめて、作詞作曲家として一緒に作れた曲で、bump.y『CRY』。聞いていただきました。

(湯川れい子)はい。

(西寺郷太)いろいろね、メッセージ来てます。『郷太さん湯川さんこんばんは。いやー、湯川さんがこんなにも熱い方だとは思いませんでした』。熱いですよ!相当熱いです。

(湯川れい子)熱いですね。うん。

(西寺郷太)『今夜のお題はキュンキュンキュンだったので、穏やかな話になるかと思いきや、おふたりとも熱いですね!ラジオから熱気が伝わってきます。実に興味深い話が聞けているので、あまり曲がかからなくても満足してますよ』って。

(湯川れい子)ありがとう。

(西寺郷太)あとね、twitterでもね。『郷太さん、震えっぱなしだな。西野カナかよ』っていう(笑)。

(湯川れい子)(笑)

(西寺郷太)すいません。西野カナさんのように震えております。

(湯川れい子)かわいいのよ、郷太さん。

(西寺郷太)ありがとうございます(笑)。あのね、『湯川さんの放送は2回に分けたほうがよかったんじゃないか?っていうぐらい面白い』っていう方もいらっしゃいますね。

(湯川れい子)ありがとうございます。

(西寺郷太)あとね、『カラオケで恋におちてを歌ってもらうと私に3円入るの』っていう。あれもいいですね。

(湯川れい子)私のtwitterも、@yukawareikoで。ぜひフォローして下さい。いまからものすごい大事な時期が始まりますから。


(西寺郷太)そうですよね。『西寺郷太さんの湯川れい子さんのモノマネが大好きです』って(笑)。『郷太さん』っていう(笑)。

(湯川れい子)(笑)。本当、なんかすごい色っぽいの。

(西寺郷太)いやいやいや。僕、本当いろんな話があって。この『CRY』というさっきの歌に関して言うと、僕もほとんど初めて詞先で作った歌で。

(湯川れい子)そうですよね。なんでこれ、この詞を渡したかってあの時。『その内に詞を』って言われてたんだけど。実は『上を向いて歩こう』という歌を震災の後、みなさん歌ってらっしゃいましたよね。でも、上も向けないぐらい辛いっていう時ってあるじゃないですか。『涙がこぼれないように』って。おもいっきり涙をこぼしていないと立ち上がれないみたいな。なんかそういう歌を作れないかなって。東北をいろいろ見ていて、自分自身も辛い思いをしてましたから。そんな歌を書けたらなっていうのが実はこれだったの。

(西寺郷太)この湯川さんの、本当に僕が言うのもあれなんですけど、大きく3つにこれまでやられてきた仕事を分けると、いわゆる音楽紹介。洋楽、特に英米の音楽をヒット曲なり音楽を紹介するという仕事。それと、作詞家としての仕事。自分で歌詞を書かれて、大きい意味でプロデュースされるという、作るという仕事。それからもうひとつはボランティア。社会運動。

(湯川れい子)まあボランティアというか、なんかこうね・・・

(西寺郷太)意識改革というか。なんだろう。

(湯川れい子)黙ってみている傍観者になれない。やっぱり感じることって音楽だけじゃなくて。いろんなことにものを感じるから、作れるわけじゃないですか。言えるし。そうすると、やっぱり社会に対しても、生きている限り、なんか発信していきたいなってすごく思うのよね。

(西寺郷太)で、その時に。作詞をいただいた時に、『郷太さん、いま若いアーティスト、若いアイドルたちに曲を書かれているから。若い人に郷太さん、この曲をどういう風に使ってもらってもいいから、歌ってもらって』って言ってくれたので。だからさっきも言ったんですけど、やっぱり湯川さんが東北を周られた当時の。本当に直後にもらったんで。そういった時に歌える歌をということで作らせてもらったんですけど。僕にとっても、本当に心が震えるような体験だったんですが。これね、レッド・ツェッペリンのツアーの時のとんでもない話とか、モンキーズが来日した時のとんでもない話とか。したい話がいっぱいあるんですが。まあ、メディアにのせられない話もあったり。湯川さんとは、僕は色んな話を・・・

(湯川れい子)そうですね。マイケルの話とかももっといっぱいしたいしね。

(西寺郷太)はい。まあ尽きるわけがないので。いろんな話をこれからも、ことがあるたびにというか。チャンスを作っていただいて。

(湯川れい子)また呼んでください。

(西寺郷太)もちろんですね。ありがとうございます。いろんなイベントとか。たぶん聞きたい!っていうリスナーの方も、いま見てるとすごく多いですから。本当に、勉強させてもらうというか。これからもよろしくお願いします。

(湯川れい子)こちらこそ、ありがとうございました。

(西寺郷太)はい。今夜のゲストは音楽評論家で作詞家の湯川れい子さんでした。ありがとうございました!

(湯川れい子)はい。

<書き起こしおわり>

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