伊集院光 ローカル路線バス乗り継ぎの旅と蛭子能収のスゴさを語る

伊集院光 テレビ東京『路線バスの旅』の魅力と蛭子能収のスゴさを語る 伊集院光の深夜の馬鹿力

ローカル路線バス乗り継ぎの旅 枕崎編

伊集院光さんがTBSラジオ 深夜の馬鹿力でテレビ東京で放映されている『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』シリーズを熱く語っていました。こんな感じです。

(伊集院光)アメリカのテレビだけが面白いテレビじゃない。日本にもとても面白いテレビがあるのに、みなさん最近、テレビの面白さを『テレビなんてもう、いまいち面白くなくなった』なんて言って、見逃してませんかっていう。僕が今ハマっていうて、本当はDVD BOX化してほしいと思っているのは、もっと言うと、DVDにしてノーカット版っていうか、ロング・バージョンがちょっと見たいっていうテレビ番組で。今のテレビって、そりゃあ僕も出てる側ですから、ご指摘を受けると申し訳ないと言うしかないんですけど、『分かりやすくする』、それと予算のこともあるのかな?『ながら見できるようにする』みたいなことがテレビの主流だから、薄まっているものが多いかな?とは思うわけですよ。

だけど、これに関してはむしろもっと濃い部分の、美味しいところを、トロを捨ててるんじゃないか?っていう意識がちょっとある。これはテレビの編集をマグロ解体ショーだとすると、かなり大トロの部分、まだあるんじゃねーか?と思うやつなんですけど。あの、『路線バスの旅』シリーズって、調べたらもうボリューム13くらいまであるらしいんですけど、もう見逃してる回とかすげー見たい!なんか『ローカル路線バスの旅』っていう・・・結構視聴率いいんだよね?テレビ東京にしてみたら、『何で?』っていうぐらい。十数パーセントぐらいいくから、これは『何でもカットマン(ヒストリー・チャンネル)』、ファックスが一切来ませんから(笑)。

『何でもカットマン』、だって有料チャンネルだしね。だからそういう意味で言うと『何でもカットマン』よりは絶対見ている人いっぱいいると思うんですけど。太川陽介さんと蛭子能収さんと、あと必ず女性の・・・妙齢の女性の、イメージではアラフォーぐらいの女性が必ずそこに入って、3人でローカルバスを乗り継いでどっかに行くっていう。どっか、『こっからここまで今日は行きましょう』みたいなのを、三泊四日くらいの期日でこっからここを制覇してください、ローカルバスだけ、路線バスだけ、高速バス使っちゃダメ、電車使っちゃダメみたいなルールのやつがあって。

蛭子さんがムカつく

これの蛭子さんがまー、ムカつくんですよ!まー!もう、意味が分かんないんです(笑)。この間久々に蛭子さんと仕事したんですけど、相変わらずすげーなと思ったのは・・・ご覧になっていただけた方がどれぐらいいるか分かりませんけど、テレ朝で『男と女、どっちが勝つ?』みたいなやつで。たとえば、『ピアノの鍵盤を3ついっぺんに叩いて、何の音が鳴ったでしょうか?』っていうのを、男の超一流の音楽家のひと3人と、女の超一流の音楽家のひとが3人同士で当てていくみたいな。で、どっちがこの鍵盤の数を増やしていっても当てられるか?みたいなやつなんだけど、俺、数正確に忘れちゃったけど、10個ぐらいバーン!って鳴らしても「ナニとナニとナニとシャープのナニと上のナニ」みたいなの、全部言えるんだ。この人たち。

で、俺らは見届け人っていう役で、その戦いを見ながら、これはいわゆる『プロレス的』なこととして、テレビのバラエティー的なこととして、「やっぱ男のほうが優れてるんだろう!」とか「女なんかだらしねーんだ!」とか。女の方は逆で「男なんて!」ってことを言い合うっていう番組の見届け人。男性チームの見届け人が、俺と、司会も兼ねているんだけど羽鳥アナウンサーと、アンジャッシュの渡部くんと、蛭子さんなんだけど。蛭子さんが、もう最初の問題で寝てるっていう・・・見届けるんじゃねーのかよ!?っていう(笑)。「俺らの役は見届けるんじゃねーのか?」って言ったら、「ゴメン、ピアノの調べって眠くなるじゃないですか。」って言うんだけど、鍵盤をバーン!って叩いてるだけで寝ちゃってるのね。

それで、渡部くんがもうテレビにも映っちゃってるから、「蛭子さん、寝てましたよね?」って言ったら、蛭子さんちょっとマジ怒りで、「そういうことって、テレビの前で言わないのがお約束でしょ!」みたいなことを言うの。・・・寝ない約束の方がすげーよ!もっと前の段階のところに『テレビの本番中には寝ない』の約束、すげーあると思いますけど!みたいな人で。『相変わらずだな、蛭子さん』って思いながら、たまたまこの週末、BS見ていたら、地上デジタルは見ねぇのかよって話だけど、BSを見ていたら、この路線バスの旅のBSジャパンで集中再放送みたいなのを毎日のようにやっている。

で、見たんだけど、まーこの蛭子さんがスゴいんだ。やっていたのは、途中から見たんだけど、中国地方の方から関門海峡を渡って、鹿児島の枕崎ぐらいまで路線バスで行けるかっていう旅なんだけど、まず蛭子さんが博多まで出て、路線バスのダイヤがどうなっているかわからないから、太川さんがキャプテン的な役割なんだけど、みんなをまとめて博多まで行って、『博多の先こっちの方面に行きたいんだけど、この夜の8時過ぎになってその先に行く路線バスがあるのか?ないのか?』みたいなのを心配しながら博多に行くわけ。そして奇跡的に行きたいと思っていた行き先の路線バスの終バスが一本あるの。それに対して蛭子さんが、「もう眠いから乗りたくない」って言い出すの。

えーっ!って思うの。で、それに対して太川陽介さんが、太川さんもずっと蛭子さんのこの感じに付き合ってるから、「分かった。蛭子さんの言い分は分かったから、今日は博多で泊まりましょう。そのかわり、明日の始発でそこに向かいますよ」って言ったら、「(始発バスの時間が)早い!早いからイヤだ!」って言い出すの。それはもう・・・「だってこの後、博多でホテル探して泊まって、寝るの何時頃でしょう。朝7時台のバスはイヤだ」って言うの(笑)。『すげーな、この人』って思うの。

で、さらに昔からこれはよくあることなんだけど、とにかく路線バスの旅で旅の情報番組の人気番組だから、止まって次のバスまで1時間・2時間あるから、そこで何か食事をしましょうみたいなシーンはよく出てくるわけ。で、食事するじゃん。(静岡県)焼津の時、驚いたの。焼津だよ?焼津に行って、みんなが季節の、「この季節は◯◯ですよねー」みたいなことをオバサンが言っていて、太川陽介さんがそれをたのむじゃん。たしかマグロの、美味しい季節なのか、他に焼津港でとれるこれがあるんですよってオバサンが説明するんだけど、蛭子さんはね、ハンバーグを食ってるの。たしか新潟の漁港に行った時も、トンカツを食ってるの。

これ、絶対蛭子さんは曲げないのね。これに関しては。だからもう、『大丈夫か?』って思うの。で、関門トンネルを通っている時は、太川さん、蛭子さんと芳本美代子さんっていう、絶妙な・・・これ、芳本美代子さんってあたりのテレ東のセンスがもう脱帽なんだけど、芳本美代子さんと3人で歩いて関門トンネルを越えられるっていう。で、芳本さんすごいはしゃいでて、「ちょっと前の方、見てくる!」って言ってパーッと行ってくるわけ。したら、「すごいよ!すごいよ!」って言って戻ってくるわけ。で、それは関門トンネルの中に県境があるわけ。ここまでが山口県、こっから先は福岡県っていう、ここをまたいだら九州ってところがあるのを確認して戻ってきて、「みんなで越えよう!」って言って、横一列に並ぶわけ。でいて、「せーの!」って言う息を吸ったところで蛭子さんが越えるっていう、『えっ?えっ!?』っていう。

本当に『えっ!?』って思うのよ。ほいで、蛭子さんが「ゴメンゴメン」って戻ってくるっていう、『えっ、何これ?何これ?』っていう・・・もう『枚挙にいとまがない』っていう言葉を覚えるね。こういうやつなの。こういうこと。

(中略)

(伊集院光)まあ、『何でもカットマン』よりは『路線バスの旅』の方が情報はあると思いますけど、『路線バスの旅』で見た蛭子さんの好プレーっていうか素敵なやつっていうのも、一応ファックスで頂きたいと思います。僕が見た回では、竜飛岬に行く回で、たしか東北縦断だと思うんですよ。松島あたりからずーっと竜飛岬まで乗り継いで行くわけ。で、最後の最後、竜飛岬に着くんだよ。着いて、バス停を降りて、そこに竜飛岬を見下ろせる展望台みたいな、見晴台みたいなのがあって。そこで太川陽介さんが、「じゃあ、ついに着いたからエンディング撮ろう」って言ったら、「階段のぼりたくない」と。「これは路線バスの旅だから、のぼる必要がない」と。「竜飛岬の路線バスの停留所に着いたんだから、終わりでいいはずだ!」ってグズるっていう(笑)。・・・相当スゴいんだよね。

ただね、この番組の俺はスゴいところは、蛭子さん、イライラするんですよ。俺、またね、自分で言うのも何ですけど、何でしょうね、肛門のかゆさのせいで(番組)ADにもっともらしいことを言って当たり散らすみたいなところもありますけど、基本僕真面目なんだよね。ああいう蛭子さんみたいなタイプ、イライラするんです。イライラすんだけど、でもこの番組のスタッフのスゴいところ、『分かってんなー、この人』ってところは、そうじゃないとつまんないってことをすごいよく分かってるのね。俺からしてみたら、本当にイチ視聴者としては、あれを蛭子さんじゃなくて誰か他の人にしたら、もっとすんなり行くだろうって思うわけ。

しかも蛭子さん、たまにマイクにちゃんと入っている声で、「どうせ太川さんの言うとおりにしなきゃいけないんでしょ」みたいな憎まれ口とかきくのよ。でも、おそらく分かって残しているのよ、それ。分かって残してるし。で、僕の前に座っている構成の渡辺くんは電車マニアの上に、こういう路線バスとかも異様に詳しいのよ。異常に詳しいから、テレビ見ている時に渡辺くんに話を聞くと、ぜんぜんトントン拍子に行けるのよ。それと、俺の変な真面目さから言えば、いろんなところ旅いくんで、おそらく構成の渡辺くんと俺のコンビであれ始めたら、スタート地点で『行けない』とか『こう行く』って分かると思うのね。そんな番組、面白くもなんともないのね。

でいて、太川さんがすごい、超カッコよく見えるの。超カッコいい。その蛭子さんを手なづけながら、何とかその・・・太川さん、蛭子さんにブチ切れないから、本来ワンパン入っても全然おかしくないんだよ?正直みんな見ていて、俺の中では少なくとも鹿児島県の枕崎を目指す編の後半だけで6回ぶん殴っていいと思ってるよ。で、一度もぶん殴らないし、ぶん殴った形跡もないわけ。でいて、『スタッフ、分かってんな!』と思うのは、結構ヘンなこといじるのね。蛭子さんが「どうしてもトイレ行きたい!」って言ってトイレ行くところとかあるんだけど、トイレ行った後にズボンのポッケの周りがよくビショビショになってるのね。それをハンカチを持たないでそこで拭いているっていうことを、わざわざふれたりするのね(笑)。

それに関しては分かってやっている。蛭子さんのダメさみたいなのを、すげー分かってやってんだよね。でもねー、だから俺、13回中5・6回は見てると思うのね。そのうち何回かはもう、この蛭子さんを楽しもうっていう・・・そのバスの旅にそれほど興味はない。何を食べているかもそれほど興味はないけど、蛭子さんが人として間違っているのが、どれぐらい間違ってるんだっていうのをすごい見たくて。全体的にはほのぼのとした番組だから、おそらく(カメラを)切っている時はもっとすごいことを言ってると思うんだよね。

営業所で、たまたま入ったバスセンターみたいなところに行ったら、大っきい路線図に・・・俺、沖縄行った時にあるバス会社のバスセンターで違うバス会社のバスのことはあまり分からないっていうのは、初めて沖縄バスで回って分かったんだけど、そういうことがままあるみたいで、営業所に行ったら感知してないバスが結構・・・前の営業所では感知していない、特にコミュニティ・バスみたいな、ものすごい短い区間だけ走っているマイクロバスみたいなやつの情報はないから、前の営業所では「そこで行き止まりです。その先は徒歩で行ってください」って行ったら、その先で『実は何とかバスっていうのがあるんですよ』って言われて喜ぶみたいなシーンがあるんだけど、そこで蛭子さんだけは「バスセンターっていうところは本当に不親切で、『無い無い無い無い』言いやがるけど、あんだよ!結構。」って言うのね。

それで、全員親切にしてくれたバスセンターの人が・・・それ、前のバスセンターの話をしてるんだけど、親切にしてくれた今のバスセンターの人たちが蛭子さんをすげー顔で見てるっていう(笑)。たぶん、残ってないところには蛭子、とんでもねぇ・・・テレビの常識に僕は既に毒されてると思うんです。テレビの収録現場の常識とかにも僕は毒されてるから、蛭子さんみたいな行動は良くも悪くもないと思うんです。だから、最近のテレビが予定調和でヌルいと思ったら、もう蛭子さんなんだよね。全然予定調和になりようがない。たまにあるのね。『これって太川さんがテレビのこと考えて言ったな』みたいなのが。

要するにかなり路線バスの旅も終盤に来て、「あとこれぐらい時間の余裕もあるから、こっから先は自分たちの力で調べていこうよ!」って言って、みんなで『エイエイオー!』ってやって、その次のシーンで運転手さんに「あの、ここからですね、◯◯に行くにはどうやって行ったらいいんですか?」って聞いたりするのね。ワンパン入っている様子がないのよ。ここに全然。だからもしかしたら、DVD BOX出た時には、分かりませんけど、過去のカットされているけど、蛭子さんのボディーに太川さんが重いヤツをズドンと行っているシーンを別ディスクでつけてくれたら、俺、5万まで出してもいいな。太川さんがいい人すぎるから、やっててほしい。やっててほしいよ!

(中略)

(伊集院光)で、そんな太川陽介さんがたまに蛭子さんをイジるところがあって。蛭子さんが雨の中を歩いたせいかなんかで、「下着のパンツの替えがないからコインランドリーに寄りたい」ってい言い出すわけ。ほいで、「どうしても寄りたいんだよ」って言い出して、太川さんが珍しく、「蛭子さん、いつもみたいに一回履いたパンツを、白ブリーフを裏返して、また履けばいいじゃない」って言ったら、蛭子さんがものすごい怒り始めるわけ。「そんな不潔なこと、一切やらない!」っつって。すごい言い出すわけ。その感じは、「寝てた」っていうのを指摘されて、「寝てないし、そんなことを言うのはテレビのルール上おかしい」ってことを言い出す蛭子さんと同じ顔なんだけど。蛭子さんが「そんなこと、絶対しない!」って言うんだけど、太川さんがその時珍しく蛭子さんイジりをしつこめにしたら、蛭子さんが「冬しかしない!」って言い出して(笑)。

で、何かね、蛭子さんのそういうのを、割と放任っていうか放りっぱなしにしてるかわりに、テレ東らしいっちゃテレ東らしい、ルールのゆるさみたいなのに指摘が行かないっていうか。突然、タクシー乗った回とかあったよね?一応ルールは有るのよ。スマホとかパソコンとかで調べちゃダメとか、高速バスに乗っちゃいけないとか、そういういろんなルールはあるんだけど、これがさ、最近この番組を構成の渡辺くんと見るのはイヤだから・・・「このルートだと、瀬戸大橋は渡れません」みたいなことを分かるわけ、コイツ。で、分かるとその瀬戸大橋のところまで行くと、瀬戸大橋は高速バスしか通ってないから、『ここはオッケーです』みたいなことに急になるわけ。

そうすると、俺的には『やった!太川さん、やったぜ!』って思ってるのに、俺の前にいる電車マニア兼バスマニアは、「瀬戸大橋は、瀬戸大橋の間だけを高速で移動するっていう特例みたいなことに関しては許します。許しますが、それだったら瀬戸大橋を渡りきった所にあるバス停からは路線バス出てますから、そこからは路線バスに乗ってもらわなきゃ困るのに、もうちょっと先まで高速バスで行ってるってのは、ちょっと許せません!」って言うのね。お前はお前でどの位置から言ってるんだよ、その「許せません!」みたいなやつ。その、蛭子さんのダメさで、『まあまあ、しょうがないよね』みたいな感じにもちょっとなるんだよね。

(中略)

(伊集院光)これ、本当かな?(リスナーからのメールを読む)『太川陽介さんがインタビューで言っていた番組未放送のエピソード。ようやく見つけたお店で店主自慢のエビフライを注文。どうやら大きさが自慢だったらしいのですが、配膳されて蛭子さんが一言。「言うほど大きくないよね。」で店主がブチ切れて強制退店になったことがあるそうです。』・・・あのね、本当だと思う(笑)。

<書き起こしおわり>

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