甲本ヒロト　下北沢・珉亭バイトの素晴らしさを語る

（甲本ヒロト）そうですね。きっかけだけ岡山でつかんで、あとは東京で。それで東京に来てメンバーチェンジもありましたし。ずいぶんと。で、新しいバンドをいろいろやりました。

（鈴木もぐら）それはもうバイトをされながらってことですよね。

（甲本ヒロト）そうですね。

（鈴木もぐら）下北沢の……珉亭でヒロトさん、バイトされてたっていう。それ、一番最初ですか？　最初から？

（甲本ヒロト）いや、最初は……もういろんなことをやりました。それで最初に僕の友達が珉亭に入って。「ここは働きやすいで！」って言われて。

（鈴木もぐら）ああ、岡山の方ですか？

（甲本ヒロト）ううん。その時に一緒にバンドやってた仲間が先に珉亭で働いて。「ここは本当に働きやすいで。入ったらな、いきなりご飯、食べれるんよ」「そりゃええな！」って。

（水川かたまり）それはいいですよね！

（甲本ヒロト）飯2回食える。入った時と、帰りと。

（鈴木もぐら）じゃあ、むしろ働いたらその日1日はもういいぐらいですもんね。

（甲本ヒロト）しかも日雇いなんです。

（鈴木もぐら）うわー！　いいっすねー！

（甲本ヒロト）で、次の約束することなく帰って。またお腹がすいたら行く。

（水川かたまり）別にシフトとかはなかったんですね？

（甲本ヒロト）僕らの頃はなかった。

（鈴木もぐら）最高のバイト先ですね！

（甲本ヒロト）だから演劇人とか音楽、バンドマンとかがそこに集まったんです。

（水川かたまり）松重豊さんとかもそうですよね。

（甲本ヒロト）そうそうそう。まさにそうです。

（鈴木もぐら）ヒロトさん、バイトで怒られたりとかはしないんですか？

（甲本ヒロト）怒られることは、ないですね。僕はそれよりも、長続きしないから。珉亭以外のバイトはもういろいろやったけど全部、すぐ辞めちゃってたから。向こうが怒る前にいなくなっちゃっていて。

（水川かたまり）「これはマズい。怒られそうだな」ってなったら、もう辞めて？（笑）。

（甲本ヒロト）そんな感じです。

（鈴木もぐら）それはもう、飽きちゃうってことですか？

（甲本ヒロト）そうですね。結局、そうです。飽きちゃうんです。

（鈴木もぐら）それで「なんかもう行きたくねえな」で行かないみたいな？

（甲本ヒロト）もちろん、ちゃんと筋を通して。「辞めたいです」って言って辞めますよ。

（鈴木もぐら）ああ、そこはちゃんと？

（水川かたまり）僕は飛んでばっかりです（笑）。

（鈴木もぐら）最悪だよ。飛びまくって。本当に。ちゃんとやっぱりそれは「辞めます」って言わないと、迷惑がかかるから。

（水川かたまり）筋は通さないといけないですね。今度生まれたら筋を通して。「辞めます」って言ってから辞めます。

（鈴木もぐら）もう飛ぶ人生じゃないな。次に生まれ変わったら。

（水川かたまり）次に生まれ変わったら（笑）。

（鈴木もぐら）じゃあ、そういう「なにやってんるんだ、お前！」とかそういう風に怒られちゃっちゃったりとか、そういうのはないってことですか？

（甲本ヒロト）うん。それはないねえ。でも体を使う、たとえば運送屋さんの仕事とかの時は非力だったもんで。「そんなもんも持てないのか！」って呆れられたりしたわ。

（水川かたまり）僕も結構、それこそ日雇いで重い資材とかを運んで足場を組み立てるみたいなところに行って。まあ、非力なんで。「そんなものも持てないのか！」って僕、当時24歳とかですけど。16歳の男の子に言われて。「すいません」とか言っていたら肩をぶん殴られて。「バカ野郎、お前！」「すいません、すいません……」って（笑）。

（鈴木もぐら）まあでも全然違うからね。ヒロトさんとは。ちゃんと辞める時は「辞める」って言ってるし。筋は通してますよ。

（水川かたまり）でも非力は一緒ですから（笑）。