町山智浩さんが2025年4月1日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でイタリア映画『Forbidden City(La città proibita)』を紹介していました。
※この記事は町山智浩さんの許可を得た上で、町山さんの発言のみを抜粋して構成、記事化しております。
(町山智浩)実際に行ってみてね、「わかるんだ、これ」って思いましたよ。でね、その修道院があったところに映画館があったんでちょっとフラッと入ってみたら、そこでやってた映画が今日、ご紹介する映画なんですけれども。なんと、僕が見たあたりで撮影している映画だったんですよ。すごいラッキーだったですね。日本公開がね、まだ決まってないんでちょっと申し訳ないんですが。『La città proibita』というイタリア語のタイトルで。これはね、『Forbidden City』……北京にある紫禁城のことなんですね。
北京にある清王朝の宮殿がありますけど。故宮とか言われてる。あれがタイトルなんですよ。でもイタリア映画で。舞台はローマ。しかも、僕が行ったあたり。コロシアムのあたりで撮影されている映画でした。
(町山智浩)これ、日本でも何回も何回も日本語版が作られてきた歌なんですよ。『あまい囁き』っていうタイトルですけども。これを歌ってる……これはオリジナルバージョンで。、これミーナというイタリアの歌手なんですけど。60年代からもうずっとイタリア最大の女性歌手なんですが。彼女が歌った歌が『Parole Parole』っていう歌なんですね。で、これがこの『Forbidden City』っていう映画の主題歌というかね、隠れキャラとしてこのミーナっていう人が出てくるんですよ。
これね、ミーナという人は僕が子供の頃、ものすごく有名だったんですよ。日本でね、その頃はイタリアンポップスがすごく人気で。ミーナさんは僕が生まれた年ぐらいにたしか来日して、日本語でレコードも出してるぐらいなんですよ。日本語で自分の歌をカバーしていたりしたんです。
で、森山加代子さんも彼女の歌のカバーもしてるしね。イタリアンポップスが日本の歌謡番組に出たりするような時代があったんですよ。当時。イタリアンポップスがすごく、アメリカのポップスよりも人気があった時代が当時、ありまして。その頃の最大の歌手がミーナさんなんですけど。
その人が主題歌みたいな感じでこの『La città proibita(Forbidden City)』では、もう彼女のジャケット写真とかがいろいろ出てくるという映画なんですが。これね、監督がガブリエーレ・マイネッティっていう人で。年齢はまだ48歳で若いんですけど。たぶんお父さんとかお母さんがそのミーナさんのファンだったんだと思うんですけど。
この人、変な人でね。実は日本で結構知られてるんですよ。ガブリエーレ・マイネッティっていう人、この人の長編デビュー作がすごい変なタイトルの映画で。『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』という映画なんですよ。これ、2015年の作品なんですけど。日本のアニメ『鋼鉄ジーグ』に捧げられた映画なんですよ。これは1970年代の東映アニメで。原作が永井豪なんですけども。『鋼鉄ジーグ』っていうのはまあ、いわゆる合体ロボットですね。それがイタリアで大ヒットして。それに捧げられたヒーロー映画がこの彼のデビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』という作品なんです。
『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の監督
(町山智浩)これ、ロボットは出てこないんです。『鋼鉄ジーグ』っていう風にその主人公のヒーローが呼ばれるんですよ。で、この『Forbidden City』の方もね、だからすごく変な映画で。ブルース・リーの『ドラゴンへの道』に捧げた映画なんですよ。これ、さっきからさっきからBGMで流れてる歌はミーナさんの歌なんですけども。今、流れている『月影のナポリ』という歌で森山加代子さんがカバーしてましたが。
(町山智浩)この映画『Forbidden City』っていうのはなんと、中華料理屋。中華レストランの名前でした。この中華レストランはコロシアムの北の方のローマ駅の周り……コロシアムとローマ駅の間にある地帯があるんですけど。そこがチャイナタウンになってるんですね。で、僕もそこに行って中華料理を食べた後だったんですけど。やっぱりずっとスパゲティばっかり食べていてね、醤油味が恋しくなって中華料理に行ってしまいました(笑)。
で、そこはね、中国人とかアジア人とか韓国人、日本人。あとアラブ系の人、アフリカ系の人、そういったいわゆるその移民の人たちの街なんですよ。で、ブルース・リーがなんでそこを舞台にしたのかがやっと、わかったんですよ。そこには本当にチャイニーズレストランがいっぱいあったからなんですよ。コロシアムで決闘するのは、歩いて5分だったからです。
僕、はじめてわかりました。「なんだ。チャイニーズレストランがいっぱいあるからコロシアムで戦ったんだ」って。それがわかりましたよ。ただのカオスな映画じゃなかったんです。非常にリアルなものだったんですね。で、そこで中国から来たあの女性のカンフー使いが行方不明になった自分のお姉さんを探すというカンフーアクション映画なんですけどね。
これ、最初ね、中華料理屋のキッチンで大バトルがあるんですよ。で、いろんな食器があるじゃないですか。料理用のいろんな、包丁とかさ。キッチンって。中華鍋とか、いろいろあるじゃないですか。それで戦うというのはね、『Mr.Boo!ミスター・ブー』という香港コメディがあって。それに対するオマージュなんですけど。
『Mr.Boo!ミスター・ブー』オマージュの厨房アクション
(町山智浩)もっと凶悪で、最後の方とかね、フライヤーからぐつぐつ煮えたぎった油をぶちまけて戦っていたりしますよ(笑)。ものすごい強烈な戦いで。最初、これは中国が舞台なのかな?って思って。敵の味方も全員、中国人で。そしたらバーンと窓を突き破って主人公の女性カンフー使いを外に飛び出すと、いきなりローマなんですよ。そこでイタリアンレストランのシェフと彼女が出会ってギャングと戦う間に恋に落ちて。それでベスパに乗ってコロシアムとかその周りを2人で回る、デートするというシーンがあるんですよ。これはあの名画、オードリー・ヘップバーンの『ローマの休日』へのオマージュなんですよ。
あれでオードリー・ヘッパンがお姫様でね。お姫様がめんどくさくなって抜け出して、グレゴリー・ペック扮するアメリカ人の記者とデートしてね。ベスパでローマの観光地を回るっていうシーンがあるんですけど、それをちゃんとやってます。でね、その回るところがちょうど僕がその前日に回ったあたりなんでね、「うわっ!」と思ってね。映画の中にいるみたいな、不思議な感じになって。映画の出来はどうでもよくなりましたね(笑)。
僕、先にその映画の聖地を回ってたんですけど。ということで非常に楽しい映画がね、その『Forbidden City(La città proibita)』なんですが。たぶんね、この監督は日本で人気あるからこれから日本公開されると思いますが。僕にとってはね、もう奇跡的な……しかもこの今、かかってる歌がミーナさんの『太陽はひとりぼっち』というツイスト……ツイストっていう音楽ジャンルが過去にあったんですよ。
これも日本で大ヒットしましたね。こういうね、おじさんには懐かしい音楽もかかって非常に素晴らしい映画でした。日本公開を切望します。