宇多丸 デビッド・ボウイを追悼する

宇多丸 デビッド・ボウイを追悼する 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中でデビッド・ボウイさんを追悼。ビデオ映像も含めて好きな曲『Never Let Me Down』を紹介していました。

(宇多丸)さあ、ということでね。月曜日に訃報が伝わってきたこの人も、きっとライブでしくったこともあるんですかね?しくっても、しくってないように見せるんでしょうねえ。演出です!みたいな。こういう人がしくると、余計目立つだろうね。まあ、デビッド・ボウイさんでございますね。まあ、あちこちで、デビッド・ボウイ追悼ということで、いろんな曲を流していると思うんで。この番組でも、どうかな?と思ったんだけど。あんまり他の局というか番組ではかけないだろうなって曲をかけようと思います。

要するに、『Ziggy Stardust』とかさ、あと、ヒットした中では『Let’s Dance』とか。まあ、かけて『Absolute Beginners』とかね。ジュリアン・テンプルの映画、ありましたけどね。まあ、そのへんとかだったらまだしもというかね。昔の方に行きがちなんだけど。ちょうど、評価の谷間の時期っていうかですね。たぶん、デビッド・ボウイのアルバムの中でも1、2を争う売れなかったっていうか、評価されなかったアルバムで、1987年。『Never Let Me Down』という16枚目のアルバムがございまして。

こちらのアルバムタイトル曲をかけようと思う。これ、なんでか?っていうと、曲もぜんぜん好きなんですけど。要するに僕、80’s 洋楽ポップDJなんかをやってたりなんか。ちょいちょい告知なんかさせていただいてますけども。まあ、基準は要するにビデオなんですよね。ビデオ世代なんですよ。僕は。で、特に『Poppers MTV』世代。TBSテレビでずっとやっていました、ピーター・バラカンさんの司会でずっとやっていた番組で。

要するに、ピーターさんのチョイスがちゃんと入っているので、作品的にも音楽的にもすごく、質が高いものばっかりがかかる番組で。僕はもうとにかく『Poppers MTV』の大ファンで。唯一、僕、いろんな番組。ラジオとかテレビ、全部通じて、自分でお便りを送ったり、あと、番組が終わる時に『悲しいです』みたいなハガキを送ったりしたのは、もう『Poppers MTV』だけですね。本当にね。というぐらい思い入れがある。

そこで、『Poppers MTV』で見たビデオなんですけど。このビデオを撮っているのがジャン・バプティスト・モンディーノっていう方で、フランス人の写真家で。いまでも活躍してますね。マドンナのジャケを撮ったりしてますけども。で、ビデオもいっぱい撮っている。80年代、この頃だと、ブライアン・フェリーの『Slave To Love』とか。この間、『キングスメン』でもかかってましたけどね。

あと、トム・ウェイツの『Downtown Train』。これ、ジャン・バプティスト・モンディーノ、もう素晴らしい大傑作。このビデオ、どっかでちょっと見ていただきたいけど。まあ、白黒ですごくコントラストが強烈についた。で、ものすごいスタイリッシュな映像で印象的な。その中でも大傑作。『Downtown Train』があって。これ、ぜひ見ていただきたい。

Tom Waits『Downtown Train』

で、そのジャン・バプティスト・モンディーノがこの次にかけるデビッド・ボウイの『Never Let Me Down』という曲のビデオを撮っている。どんなビデオか?っていうと、ダンスマラソンなんですよ。大恐慌時代に要するにずっとぶっ通しでダンスを踊り続けて、その踊り続けられた人に賞金をあげるっていう。これ、映画にもなっていて。ジェーン・フォンダ主演の『ひとりぼっちの青春』っていうシドニー・ポラックの映画にもなっていたりするんですけど。

まあ、これをモチーフにしたビデオで、非常にこれも味わい深い。曲もすごい好きなんで。他ではたぶんこれ、かけないと思いますんで、いってみたいと思います。デビッド・ボウイで『Never Let Me Down』。

David Bowie『Never Let Me Down』

はい。1987年リリースの16枚目のアルバムのアルバムタイトル曲。デビッド・ボウイ『Never Let Me Down』、かけております。あれですね。デビッド・ボウイ、訃報にまつわるあれと言えば、日経新聞の春秋っていう社説ね。あちこちで、ネットとかでも話題になっている。これ、すごいですよね。デビッド・ボウイが、『火星から来た宇宙人を名乗り・・・』。まあ、ここまではいいですよね。『ウルトラマンをまねたような扮装(ふんそう)で歌い踊る』『怪獣特撮ものやコスプレなどの日本のサブカルチャーを世界に広める大使的役割を担ってくれたことは忘れてはならない』。えっ、そうなの?(笑)。

ぜってー違うと思うけど!みたいな記事。これ、衝撃的。まあ、あちこちのネットで『これはひどい』っていうんでね。まあ、要するにあまりにも事実とかけ離れたという感じで扱われておりましたけども。

[リンク]日本経済新聞 春秋 2016年1月13日付
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO96042470T10C16A1MM8000/

これ、でも書いた人はたぶん、『Ziggy Stardust』とか、わかんない。そういうデビッド・ボウイがやっていることの感じを何となくは知っているんだけど、たぶん、何でもかんでもさ、『日本のオタクカルチャーの影響である』みたいな。何でもそこにつなげるあれを、よく調べもしないで。なんか、それの極北だよね、たぶん(笑)。それをやっちゃった極北。何でもそれで片付けるっていう。

だから俺、もう一種のギャグとして。『ぜってーそれ、違うよ!』っていうのも、『日本のクールジャパンの影響である』みたいに語るあれで、飲みながら遊びにしたら、面白いんじゃないかな?っていうね。今日の『クリムゾンピーク』だったらそれ、無理やりどこをつなげるかな?なんてことを思いながらね。はい。いやー、でも、すごい記事を書く人が。しかも、社説として。あるもんだな、なんてことを思ったりしました。

<書き起こしおわり>

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