石山蓮華『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』を語る

町山智浩『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』を語る こねくと

石山蓮華さんが2024年3月19日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』について話していました。

(石山蓮華)そして先週、映画監督が作ったミニシアターを舞台に描いた青春群像劇『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』という映画。井上淳一監督の作品をご紹介いただきまして。

(でか美ちゃん)私はちょっと上映タイミングが合わなくて。今週、見れなかったんですけど。

(石山蓮華)私は見て来ました。よかったです。これ、すごく好きでした。なんか、80年代を舞台にした映画界隈の自意識と才能と。でも運が必要だったり、みたいなごにょごにょしたところって……私は映画を撮ったことはないですけど。でも何となく、これまでの自分の青春時代を思い出して。「わかるな」っていうところをまた、なにか映画の力で明るく祝福してくれるようで、よかったです。

作品内の入れ子構造

(町山智浩)うんうん。これね、80年代が舞台なんですけど。その中でまた入れ子構造になっていて。60年代、70年代の映画を見て、80年代の主人公……予備校に通っている井上淳一監督自身の青春時代ですけど。その主人公が「60年代、70年代になんてとんでもない画があったんだろう!」って思う。具体的には若松孝二監督が作っていた映画を見て、彼に弟子入りをするという実話をもとにした映画がこの『青春ジャック』なんですけども。これもタイトルにトリックが入ってるんですよ。これ、『青春ジャック』というタイトルは若松孝二監督が1970年に作った映画の『性賊 セックスジャック』へのオマージュなんですよ。

で、この『性賊 セックスジャック』っていうのはややこしい映画でね。まずその当時、ハイジャックという飛行機を乗っ取る、なんていうか、活動というか、政治運動がすごく注目されていた時なんですよ。だからハイジャックに引っ掛けて『セックスジャック』っていうタイトルにしたんですけど。この内容がとんでもない映画で。その当時、60年代終わりっていうのはもう、世界中の学生たちが革命を起こそうとして、いろんな運動をしていたんですけども。この学生運動家たちはですね、「連帯です!」って言ってセックスばっかりしてるんですよ。「連帯を広めるんだ!」とかって言って。すると1人、なんていうか童貞の少年が出てくるんですよ。で、彼だけはセックスをしないんですよ。これはこの『青春ジャック』という映画にその構造は置き換えられてるんですよ。

(石山蓮華)ああ、そう言われると、そうですね。

(町山智浩)あの井上淳一さんの青春時代のウブな少年が出てきてね。

(石山蓮華)杉田雷麟さんが演じられている。

(町山智浩)ところが、その『セックスジャック』の方ではセックスしなかった童貞少年が突然、1人で過激なテロを展開していくんですよ。で、なにをするかというと、共産党本部を爆破します。これ、その当時は共産党は全然戦うことを忘れた日和見の腑抜け集団だって言われていて。新左翼から攻撃の対象になってたんですね。あとは総理大臣を暗殺しようとするんですけど。その、なんていうか、過激な童貞少年を演じていた俳優さんが、この『青春ジャック』の舞台となる80年代にはチェッカーズをプロデュースするんですよ!

(石山蓮華)そうか。映画の中にもちょっと出てきましたね。

(町山智浩)秋山道男さんっていう人なんですけども。チェッカーズっていうスーパーアイドルグループが80年代にありまして。それを売り出したのが、実はそのすごいテロリスト少年を演じていた秋山道男さんなんですよ。もうとんでもない複雑な構造になってるというね。それが『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』なんですが。

<書き起こしおわり>

町山智浩『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』を語る
町山智浩さんが2024年3月12日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』について話していました。
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