松尾潔 En Vogue、Ruff Endz、CHEMISTRYを語る

松尾潔 En Vogue、Ruff Endz、CHEMISTRYを語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でEn Vogue、Ruff Endz、CHEMISTRYについてトーク。各グループの新曲を紹介していました。

(松尾潔)さて、続きましては「昔の名前で出ています」。小林旭さんのそういう曲がございましたけども、昔のあの名前でいまでもやっておりますという2組をご紹介したいと思います。まず、最初にご紹介するのはアン・ヴォーグですね。アン・ヴォーグと言いますと、まあ彼女たちが90年代の女性R&Bブームの火付け役となったことに異論を挟む余地はないかと思いますね。『Hold On』という曲がその幕開けとなりました。

En Vogue『Hold On』

で、ヒットを連発したアン・ヴォーグ、4人とも歌が上手くてね、見目麗しい。その4人のメンバーの中にはね、かつてカール・ルイスが歌手デビューした時にバックで歌っていたという人も含まれていたという。こんな、もういろんなトリビアが当時、もう知っても知っても知り尽くせないぐらいそういうネタをね、提供してくれたような人気グループ。一時は日本でね、携帯電話のCMソングを歌っていたこともありましたね。大変な人気でした。日本武道館にガイとジョイントコンサートをやった時もありましたね。あれに行ったのもいい思い出ですが、そのアン・ヴォーグ。もう世に出て四半世紀がたっているわけなんですが、たとえば同時期に世に出てきたメアリー・J.ブライジがいまだにシーンのど真ん中で女王として屹立しているような、そんなステータスはいまはないかもしれませんが……ところがどっこい、生きているという。

松尾潔 メアリー・J.ブライジ『Thick Of It』を語る
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でメアリー・メアリーの『Thick Of It』について話していました。 (松尾潔)まずこれからご紹介いたしますのは、ただいま来日中ですね。もうこのシーンの女王と言って差し支えない存在、メア...

実は、コンスタントに新譜を出しているんですね。ただ、メアリー・Jのようにはその情報が伝わりにくいというのには理由がありまして。レーベルが定まらないとか、もっと言いますとグループのメンバーが定まらない。かつてのメンバー同士で訴訟問題になったりとかね。そのグループ名の使用を巡って、まあいろいろときな臭い話もあったりするわけです。しかし、それは音楽業界だけではないでしょう? という気もいたしますが。それでも4人のうちの2人……かつて横浜に住んでいたシンディ・ヘロンとテリー・エリス。この2人はいまも残っていますね。そしてもう1人、ローナというね、一時ロドニー・ジャーキンスのプロデュースでデビューして。本国アメリカではなく、日本でアルバムをリリースしたことがございました。

ちなみにその時のリリースパーティーのMCを務めたのが僕、松尾潔だったんですけども(笑)。その3人でね、アン・ヴォーグってやってここ数年は新曲を出しているのですが……まあ、いままでね、その曲を1曲1曲、この番組でご紹介したことはなかったんですけども、じゃあなぜ今日、取り上げるか? というと、その新生アン・ヴォーグの割りとコンスタントに出してきた曲の中でも今回は製作陣にご注目いただきたい。製作したのは、なんとラファエル・サディークなんですね。ラファエル・サディーク、かつての呼び名をラファエル・ウィギンス。そうです。トニ・トニ・トニのウィギンス兄弟の中心人物だったドゥエインとラファエル。2人とも中心だったんですけども、そのラファエルが今回、アン・ヴォーグをプロデュースしているんです。

で、このアン・ヴォーグとラファエル、この組み合わせっていうのはね、有りなんですよね。と言いますのは、アン・ヴォーグはもともとフォスター&マッケルロイという第二のジャム&ルイス的な位置づけで80年代終わりから90年代の半ばぐらいまで大活躍を続けたプロデューサーチームがオーディションで集めたような、いわゆるちょっと企画性の高いグループだったんですが。そのフォスター&マッケルロイが同時期にプロデュースを手がけて世に出てきた人たちというのが、トニ・トニ・トニだったんですね。まあ正確にはトニ・トニ・トニの方がデビューはちょっと早いですから、言うなればフォスター&マッケルロイスクールの上級生に当たるのがトニ・トニ・トニ。そして出来のよい後輩がアン・ヴォーグということが言えましょう。

そして、いまではその師匠のフォスター&マッケルロイ抜きで、先輩と後輩。言うなればスクールの同窓生の美しい上下関係によって今回、『I’m Good』という曲が作られましたと、そんなお話でございます。そしてもう1組、ラフ・エンズというね、これはね、まあ2000年頃からシーンに出てきた人たちですが男性デュオ、ラフ・エンズも昔の名前で出ていますというテーマに即しての選曲なんですが、その話はまたこの後で。まずは2曲続けてご紹介したいと思います。アン・ヴォーグで『I’m Good』。そしてラフ・エンズ feat. マーカス・クレイで『Speak To My Heart』。

En Vogue『I’m Good』

Ruff Endz feat Marqus Clae『Speak To My Heart』

レギュラープログラム『メロウな風まかせ』。今週は「昔の名前で出ています」というサブタイトルをつけてみました。アン・ヴォーグ、そしてラフ・エンズという、それぞれ90年代、ゼロ年代に一世を風靡した2組をご紹介いたしました。これが新譜というから驚きますね。アン・ヴォーグ『I’m Good』。うーん、新しい曲なのか、ちょっと前にレコーディングされたのか、ちょっと怪しいなという気持ちも若干あるんですけどね、まあラファエル・サディークが製作に携わっていると聞きますと、これは『メロ夜』的には外すわけにはいきませんね。まあ、ラファエルがやっているサウンドというのはそもそもタイムレスな、聞く時代を選ばない。それでいて、いつ聞いてもフレッシュな気分にさせるというサウンドなので。そうですね。アン・ヴォーグ『I’m Good』。新生アン・ヴォーグと言われれば、そう聞こえますね。あんまり新しいか古いかにこだわるのは、もしかしたらこういう曲の前では取り立てて大きなことではないのかもしれません。

そして、続いてお聞きいただきました。これはアメリカのFOX TVというテレビ局がございますけども。そこでオンエアーされているらしい『Shots Fired』というテレビドラマシリーズの挿入歌だそうです。『Speak To My Heart』。ラフ・エンズ feat. マーカス・クレイ。ラップじゃなくてボーカルの方のラフ・エンズにご注目いただきたいですね。まあ、この組み合わせ、数年前の『See You Again』っていうウィズ・カリファとチャーリー・プースの、ラッパーと歌い手の組み合わせで大ヒットがございましたけども。

まあちょっとそのあたりの発想をヒントにしたのかな? なんて気もしますが。なんにせよ、このラフ・エンズが本当に鋼のような、メタリックとも言えるような男っぽい歌いっぷりを披露しているというのがたまらないじゃないですか。ラフ・エンズと言いますとね、2000年のヒット『No More』。これがやっぱりいまでも語り草になっていますね。

『No More』という曲は2000年に彼らのメジャーデビューシングルとして出て、R&Bチャート1位。そして全米チャートでも5位というね、この類のR&Bデュオの作品としては破格のヒットになりましたね。で、その後に2人いるメンバーがそれぞれ仲違いというか……もともと4人組だったのが2人になってメジャーデビューしたという風に聞いているんですけども。その中でもさらに2人、別れちゃって。デヴィッドとダンテっていうのがいたのですが。特にデヴィッドの方は割りとソロ作品もリリースしていたんですけどもね、ちょっと前にリユニオンして、ラフ・エンズという名前でライブをやったり、こうして作品を出したりしているということです。で、この『Speak To My Heart』というのは、この数年前に再活動を始めてから以降ではいちばん檜舞台に近いところまでいま戻ってきましたよという感じなんですね。

でもやっぱり僕はね、ラフ・エンズ。2000年から数年間、最初のアルバム2枚ぐらいは特によく聞き込んでいたので、彼らの声の質というのはよく知っているつもりなんですけど、あんまり変わっていないことに驚きますね。大方、20年近く経っているわけですけども、「ああ、いまだにこれだけ歌えるんだ。これはまた一山あるかな?」なんていう気がいたします。その頃なぜ、このラフ・エンズをよく聞いていたか? と言いますと、僕、まさにこの彼らがメジャーデビューした2000年頃っていうのはCHEMISTRYっていう男性デュオを世に送り出す、ちょうどそのオーディションとかをやっている時期だったのかな? 

で、もういろんな参考例、それこそ肌の色にこだわりませんでしたからね。ワム! とかももちろんそうですしね。ジョージ・マイケルがいたワム! ですよ。あとは、もちろんメインはソウルシーン、R&Bシーンでございまして、ケイシー&ジョジョね。ジョデシのケイシー&ジョジョ。これ、当時よく言われたんですよ。「ケイシー&ジョジョを意識しているんですか?」なんてよく言われたんですけど、実はラフ・エンズが僕はいちばんよく聞き込んでいたんです。ちゃんと理由があって、CHEMISTRYと日本とアメリカという違いはあれど、同じレコード会社だったんですよね。ですからちょっとコラボレーションもしやすいんじゃないかな? なんていう目論見もありまして。

結局それは実現はしなかったんですけども、この番組でたびたびお話しています通り、CHEMISTRYも最近、再始動。で、ラフ・エンズもこうやって変わらぬ歌声を聞かせてくれると、うーん……やっぱりね、男のボーカルデュオってやっぱり向き合うっていうことは3人以上のグループとはまたちょっと違う圧っていうものがあるかもしれないんだけども。それ故に離れたかもしれないけど、またそれ以上の理由でこうやってマイクに向き合うことがあるんだななんてことを思いながら、このラフ・エンズの新曲を聞いた次第なんですよ。まあ、こういう話の流れになりましたんでね、CHEMISTRYをここでご紹介しようかなと思います。じゃあ、新生CHEMISTRYの曲を聞いていただきましょうか。と言ってもね、いまのところまだ1曲しか録っていないんですけども(笑)。この番組ではすっかりおなじみです。再始動曲、CHEMISTRYで『ユメノツヅキ』

CHEMISTRY『ユメノツヅキ』

<書き起こしおわり>

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