吉田豪 ライターと作家の肩書論争を語る

吉田豪 ライターと作家の肩書論争を語る モーニングCROSS

吉田豪さんがMXテレビ『モーニングCROSS』に出演。はあちゅうさんのツイートをきっかけにネット上で盛り上がったライターと作家の肩書論争について話していました。

(堀潤)さあ、続いて豪さん。テーマの発表をお願いします。

(吉田豪)はい。

(堀潤)来ました。「ライター? 作家? 肩書論争」。

(宮瀬茉祐子)ブロガーで作家のはあちゅうさんがまとめサイトで「読モライター」のくくりで掲載されたことに対して、「私、ライターではない」とTwitterに投稿。作家とライターの違いについて波紋を呼んでいます。

(堀潤)結構続きましたよね。レスがね。

(吉田豪)まあそもそもこれ、他人事みたいになっていますけど、僕ですからね(笑)。当事者。

(堀潤)見てましたよ(笑)。その話題になっていた時は気づかなくて、1日、2日後ぐらいして……。

(吉田豪)まとめられてから。

(堀潤)そうそうそう。そこから拝見してました。

論争の経緯

(吉田豪)まあ、簡単に説明しますと、もともとこの「読モライター」っていうのがタレント性があって顔出しして、交友関係とかも商品にしているネット系ライターのことを指す新たな言葉ができて。

(堀潤)「読モライター」っていうんですね。

(吉田豪)で、そこにくくられたことに反論して。そこまではわかるんですけど。で、「私はライターではなく、作家だ。プロフィールとかで『ライター』と書かれると、毎回直しています」ってなっていて、そこで僕が「Wikipediaとかでも『ただ単に”作家”と書いた場合、著作家。特に小説家を指す場合が多い』と……まあ、日本ではそうなっているので。はあちゅうさんの場合は小説も最近書かれたけど、基本は作家というよりはライター枠の人だと思います」って書いたことからどんどん広がっていって……という騒動なんですけど。まあ、根本はたぶん……。

(堀潤)ええ。たしかにいろんな人が相乗りしていて。

(吉田豪)そうなんですよ。はあちゅうさんの最初のこの設定にズレがあったと僕は思っていて。はあちゅうさんの考えだと、「作家っていうのは自分の意見を書く。ライターっていうのは自分以外を取材して、誰かの意見を書く」っていうことになっていたんですけども、自分の意見を書くっていうのはたぶんコラムニストとかエッセイストなんですよ。で、作家も別に作品で自分の意見は書かないことが多いし。で、ライター……僕、自分以外を取材するけど、自分のことも書くんですよ。

(堀潤)うん。小説家の方もね、すごい取材、取材、取材を重ねてっていう。

(吉田豪)私小説ならともかくっていう。だから、まずここの……。

(堀潤)そこがちょっと引っかかりが発生する原因だと。

(吉田豪)そうなんですよ。プラス、やっぱりだから、「ライター」っていうのは書く仕事全般を指す言葉で。で、「作家」はその中での限定的なものだから、「ライターではなく作家」って言うと「それはちょっと違うんじゃないですか?」ってことから、本当たぶん「作家」っていう肩書にこだわりがある人がものすごく多いから、みんな次々と参入してきて。

(堀潤)いや、その肩書はなかなかみなさん、それぞれにありますからね。

(ピーター・バラカン)「文筆家」っていう言葉はもう日本語では使わないのかな?

(吉田豪)堅いんですよね。

(堀潤)文筆家は、あります。あります。ありますけど……。

(吉田豪)でも、それがたぶん適切だと思うんですけどね。そういう方が。

(堀潤)はあちゅうさんはね、小説もいま、がんばって書いている。一方でなりたい自分を肩書にすることでそこに追いつこうと……。

2パターンの肩書のつけ方

(吉田豪)そうなんですよ。結局、結論としては僕もそうなって。いろいろといろんな人の意見を読んでいくうちに、やっぱり2パターンあるんですよね。夢とか志を肩書にする人と、現実、いま食べている仕事を肩書にする人。で、現実派の人はその夢派の人に対して何か言いたくなるっていう(笑)。

(堀潤)ああー、そっかー。たしかにね。

(吉田豪)「お前、まだ違うじゃん?」とか(笑)。

(堀潤)「俺だって控えているのに!」みたいな(笑)。

(吉田豪)そうなんですよ(笑)。っていうことなんだろうなと思ったのと、あとだから「ライターではなくて、作家」っていう言い方の問題っていうのもあって。これ僕、前に「アイドルじゃないです。ダンス&ボーカルグループです」問題っていうのがあって。

(堀潤)なんですか、それ?

(吉田豪)「あなたはアイドルの人ですか?」って言われると、「いや、違います。私はアイドルじゃなくて、ダンス&ボーカルグループです」って言い張るのがあったんですけど。正直、仕事の範疇も完全にアイドルで、稼ぎ方もアイドルなのに、なぜそのこだわり?っていう。それはたぶんだから、「ああ、アイドルじゃないんだ」ってその言葉を聞いて思うよりは、「アイドルって呼ばれるのがそんなに嫌なんだ」っていう風になっちゃう。

(堀潤)だからそこに優劣をつけているっていうのが透けて見えるのが……っていうことですね。

(吉田豪)そうなんですよ。そういう風に受け取っちゃったんですよね。

(宮瀬茉祐子)ライターとじゃあ作家も、どちらかと言うとやっぱり「作家さん」って言われる方がなんとなく上っていう風な認識ってことなんですかね?

(吉田豪)そうなんですよ。「ライター 作家」で検索するといろいろ引っかかったのは、「ライターという肩書から作家に肩書を変えて収入を10倍にしよう」とか。さらに作家はそれぐらいヒエラルキーが上っていうようなイメージがあるので。

(宮瀬茉祐子)たしかに。歌手とかも「アーティストさん」とかになりますね。

(ピーター・バラカン)言われたものをつけるっていうのも変ですよね(笑)。

(吉田豪)アイドルである問題です(笑)。

(堀潤)そういうの、あったよ。「うちはアーティストなんで、これ、できないんです」っていう風にお仕事をちょっと分けていた方も近くにいて。びっくりした。

(吉田豪)「今年からアーティストになったんで、アイドルイベントは出れません」ってよくあるんですよ(笑)。

(堀潤)ああ、そうそうそう!(笑)。

(吉田豪)「なに、それ?」っていう(笑)。

(堀潤)そう。この間まで一緒に楽屋で写真を「イエーイ!」とか撮ってTwitterに上げていた人が急に上げられなくなったとか。そうか。

(吉田豪)で、はあちゅうさん、ただ気持ちがわかるのが、ライター講座の仕事を頼まれた時に「アポ取りとかテープ起こしのやり方とかを教えてくれ」って言われて、「それは私はやっていない。私はライターじゃない」っていう結論になったらしいんですけど。言っちゃうとこれ、僕もやっていないんですよ。

(堀潤)ああ、なるほど。

(吉田豪)だからやらないライターも全然いるしっていう。やっぱりライターはもっと広い意味のはずなんですよね。

(堀潤)そうか。でもなんか、あれですね。はあちゅうさんもそうですけど、豪さんもそうですけど。僕からしてみたら、いつも固有名詞っていうか。豪さんは豪さんだし、はあちゅうさんははあちゅうさんです。ピーターさんはピーターさんだしって。なんとなく、肩書っていうのはでも、非常に日本社会においてはこだわりを生むひとつの要因になっていますよね。

(吉田豪)僕、基本出る時に「なんでもいいです」って言っていた結果、いちばんひどかったのがいくつかあって。僕、ITジャーナリストにされそうになったことがあって(笑)。

(一同)(笑)

(吉田豪)基本、なんでもそのままにするんですけど、それは否定しましたね。「ITジャーナリストではないです!」っていう(笑)。

(ピーター・バラカン)細かく分類したがるよね。この国。

(吉田豪)そうなんですよ。

細かく分類したがる日本

(堀潤)たしかに。そういうきらいはありますか。わかる、わかる。そうね。

(ピーター・バラカン)肩書ってそもそも必要ですか?って時々思いますよ。

(宮瀬茉祐子)英語だったらそのまま「Writer」ですか?

(ピーター・バラカン)もちろんあるんですけど。でもね、ライターとか……あの、ノンフィクションライターとノベリストっていうのはたぶんあると思うんだけど。僕もね、「ブロードキャスター」っていうのはやっぱりね、自分はこだわりっていうかね、自分の意識っていうものはあるもので。黙っていると「音楽評論家」って呼ばれたりするんですけど、僕は評論をしていないので。あくまでも趣味で音楽を紹介しているから。評論家と呼んじゃいけないと思っているんですね。だからやっぱり……。

(堀潤)そうですね。自分のラインっていうのがあるんですね。

(吉田豪)ちなみに僕、美人すぎる市議の藤川優里議員にコメントを求められた時に、雑誌を見たら肩書が「ゆりっぺウォッチャー」になっていたことがあって(笑)。

(堀潤)(笑)

(吉田豪)ストーカーみたいな肩書で(笑)。

(堀潤)本当ですね(笑)。

(吉田豪)いちばん引っかかるのがあれなんですよ。実はこの番組に出るたびに僕、自転車で来ているんですけど。自転車置場に「MXの報道関係者以外駐輪禁止」って書いてあって。僕、報道関係者なのかな?っていう疑問が(笑)。

(堀潤)まあ、そうですね(笑)。まあ、報道関係者ですかね。ええ。いや、でも、面白い話しですよね。このテーマって。誰が肩書を決めるのか?っていうね。

(吉田豪)でも、基本はやっぱり、他人が見てそう見えるかどうかだと思うんですけどね。それにたぶんギャップがあったらいろいろと言われちゃうかもっていう。

(堀潤)たしかにね。まあぜひみなさん、いろいろとはあちゅうさんのものも含めて読んでみてくださいね。本日のオピニオンCROSSは以上です。

<書き起こしおわり>

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