吉田豪 羽海野チカを語る

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吉田豪さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。漫画『3月のライオン』や『ハチミツとクローバー』の作者、羽海野チカ先生について話していました。



(安東弘樹)さあ、このコーナーは豪さんがこれまでインタビューしてきた一筋縄ではいかない有名人の様々なその筋の話を聞いていきます。今日、豪さんに紹介してもらうのは、現在公開中の映画『3月のライオン』の作者、漫画家の羽海野チカさんです。まずは羽海野チカさんのあらすじとその筋をご紹介します。漫画家、羽海野チカさんは東京都足立区生まれ。グッズデザイナー、イラストレーターなどを経て2000年、美術大学を舞台にした『ハチミツとクローバー』で漫画家デビュー。デビュー作の『ハチミツとクローバー』が2005年にアニメ化。2006年には映画化。2008年にはドラマ化。しかも大ヒットしております。2007年からはヤングアニマルにて高校生棋士を主人公にした『3月のライオン』の連載をスタート。現在、神木隆之介さん主演で映画化され大ヒット公開中。そんな人気漫画家、羽海野チカさんです。

(玉袋筋太郎)うん。

(安東弘樹)そして、吉田豪さんの取材による羽海野チカさんのその筋は……その1、いまならトークイベントもできる。豪さんのカウンセリングの筋。その2、ついに孫登場? 実年齢とは関係なく、思春期全開の筋。その3、学生時代は恐ろしい話と悲しい話のみの筋。その4、理想はあぶさん。羽海野先生の恋愛観の筋。その5、Twitterでカウンセラー増加の筋。その6、一石二鳥。『3月のライオン』は羽海野チカの筋。その7、「やっといて」と言えないので……アシスタントの力関係の筋。その8、豪さんのインタビューには物騒な話を……の筋。以上、これ最多かな? 8本の筋。

(玉袋筋太郎)だけどこれだけさ、すごい原作が当たっちゃって。ドラマ化、映画化されているってもうなんかさ、幻想としては女・梶原一騎的な感じだよね。だって。

(吉田豪)(笑)。成功者っていうね。

(玉袋筋太郎)もうなんでも当たっちゃって。どういう人なんだろうね。もうウハウハの生活をしてるわけでしょう?

(安東弘樹)まあ、言うたらそう……。

(吉田豪)と、思われるかもしれないですけども。

(安東弘樹)で、その1なんですけども。いまならトークイベントもできる。豪さんのカウンセリング。これ、どういうことですか?

吉田豪のカウンセリング

(吉田豪)いま出ている『クイック・ジャパン Special』っていうのと、『FRaU』っていう女性誌で羽海野チカさんをインタビューしたんですが。実は2005年に僕、『クイック・ジャパン』と『CONTINUE SPECIAL』っていうのでインタビューして。そしてイベントも1回、やっているんですよ。でも、会うのは10年以上ぶりっていう状態で。

(玉袋筋太郎)10年だもんね。

(吉田豪)そうなんですよ。ちなみにそのトークイベントもすごい特殊な形で。羽海野先生って顔出しをしないんですよ。で、年齢もミステリーなんで、熊のぬいぐるみを横に座らせて、別室からマイクでしゃべって。僕が熊のぬいぐるみとイベントをやるっていう。

(玉袋筋太郎)おおーっ!

(安東弘樹)ああ、私の好きなNHKの番組に近い感じで?

(吉田豪)そんな感じですね。

(玉袋筋太郎)でも豪ちゃんはもちろん素顔は知っているわけだもんね。

(吉田豪)もちろん、もちろん。

(玉袋筋太郎)不思議だよね。

(吉田豪)で、実は今回、10年以上ぶりに会って。その時も以前インタビューした『CONTINUE SPECIAL』っていうのを持ってきていて。「このカウンセリングのおかげで私はだいぶ変わった」っていう。

(玉袋筋太郎)「カウンセリング」(笑)。10年前の豪ちゃんのカウンセリング。

(吉田豪)そうなんです。「カウンセリング・インタビュー」って言われだしたのって僕、羽海野先生きっかけでもあるんで。当時は本当、山ほど資料を持っていって、それをカルテのように見ながらいろいろと話を聞いて。「睡眠時間はどうなんですか?」とか「全然それで大丈夫ですよ」とか、優しく肯定していくようなことをやり続けていたんですよ。

(安東弘樹)なるほど。肯定ね。

基本、ものすごいネガティブな人

(吉田豪)そうです。で、羽海野先生は基本、ものすごいネガティブな人で。「そういうネガティブな話っていうのは人に言ったら引かれるからしちゃいけない」って思っていたらしいんですね。ずっと。ただ、僕は羽海野先生のネガティブさっていうのが一回りして異常に面白くて。聞く度に爆笑してて(笑)。「最高じゃないですか、その話!」って言って。それを全部原稿にも載せて。「そういうようなダメな話っていうのは隠さなくてもいい。実は意外と笑いになったりするんじゃないか?」っていうのを覚えて生きるのが楽になって。

(玉袋筋太郎)ああーっ!

(吉田豪)それまでは本当に筋肉少女帯が人生の支えで……みたいな人だったのが、トラウマを笑い飛ばしたことで。さらに、作品がアニメ化されたことで、いろいろ声優さんとかで人間関係が広がっていって。そこで友達ができて、「遊びにおいでよ」とか言ってくれる人ができて。「海外旅行にも行けるようになったんです!」みたいな。「あれぐらいから私は変わったんです」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)もう吉田先生ですな。本当に。

(安東弘樹)ですね。吉田豪さんの完全肯定がきっかけで、いろんな社会活動を。

(吉田豪)そうですね。その時期から人間関係もいろいろ広がって、全てが上手く行くようになったんです、みたいな。で、実は今回、『FRaU』の編集者からのメールで「羽海野さんは『吉田豪さんじゃないとロングインタビューを受けない』という話があります」って来て爆笑して(笑)。「なんだ、それ?」っていう。そしたら実は、この日は1時間の
インタビューを2本連続だったんですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)。すごい! いや、ものすごい信頼されているよ、豪ちゃん。これは。

(吉田豪)で、なにかと思ったら、「まだ『3月のライオン』ではカウンセリングしてもらっていないので、成長した私を見てもらいたいと思った」っていうね。

(玉袋筋太郎)へー!

(安東弘樹)いい話じゃないですか!

(吉田豪)たまにはいいことするんですよ、僕も(笑)。

(安東弘樹)これ、なんか『たまむすび』っぽくない……(笑)。

(吉田豪)(笑)

(玉袋筋太郎)全くそれで梶原一騎的でもねえしね。

(吉田豪)全然ないです。ゼロです。

(玉袋筋太郎)全然ないんだね。

(安東弘樹)で、そのさっき年齢非公開っていう話をしましたけども。ついに孫登場ってこれ。実年齢と関係なく思春期全開。

年齢非公開

(吉田豪)そうですね。年齢も公表してなくて、ご結婚もしてなくて。「一体いくつぐらいだと思われているのかな?」っていう話をしていて。「漫画の読者の中では、たぶん若いと勝手に思っているはずで。年齢を発表しないで来ちゃっているから、いつ言えばいいのかと思って……」と。もともと少女漫画を描いていたので、その時は同時代性を必要としていたから隠していたんだけど、いまはもういつ言っても構わないという状態で。その後に言っていたのが、休載とかが多いらしくて、よく「なんで休むんだ!」とか言われるらしいんですけど、「私ね、君のお母さんよりも年上なんだよ……」っていう(笑)。「体が辛いの……」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)ああーっ! そんなところにヒントが隠されているわけね。

(吉田豪)ヒントを言うと、僕よりも上なぐらいですね。

(玉袋筋太郎)おおーっ!

(安東弘樹)『3月のライオン』、僕、アニメとか見ていましたけども。えっ、ああ、そうなんですか!

(吉田豪)ただ、年齢を超えたかわいらしさのある人。で、年齢を超えた思春期感のある人なんですよ。

(玉袋筋太郎)じゃあ、タイでタイ人の男性と付き合っていたあのおばあさんみたいな人だね。60才の……。

(安東弘樹)倍の年齢のね。きっちり倍でしたからね。

(玉袋筋太郎)あれ、すごい。笑っちゃった。へー、そうなんだ!

(吉田豪)で、最近会う人が年下ばっかりになってきて。仕事をする声優さんも10年前と違って、今回は本当に自分の子供世代になり。で、『3月のライオン』の主題歌を歌うぼくのりりっくのぼうよみさんはついに孫世代登場!っていうね。

(玉袋筋太郎)そこで孫だったんだ。年齢的にね。

(吉田豪)ただ、「この思春期感は本当に治らない」って言っていて。Twitterが本当にもう、常に悩んでいるんですよ。昨日、今日ぐらいもずっとまた悩んでいて。どうでもいいことなんです。正直。棋士が何段とかあるじゃないですか。何段の数字部分を漢数字じゃなくしちゃったことで。「ちょっとそれ、違いますよ」みたいに指摘されてからヘコみ始めちゃって。「私はなんてことをしてしまったんだろう……」みたいな。基本、そういう人なんですよ。

(安東弘樹)そうかそうか。

(吉田豪)で、ある日も「新宿の世界堂という画材屋さんの前で、お金を持ってこないで来ちゃって。タクシー代もない。画材も買えない。『どうしよう?』って思って途方に暮れて立ち尽くしていた」みたいなことを書いていて。「近所だから言ってくれれば僕、お金貸しますよ。すぐに行きますよ!」って言って。そういうことがすごいよくあって。「新宿で力尽きて。お腹がすいてお店に入ろうとしたけど、ちゃんとしたお店に1人で入ったことがない。カフェとか入ったら死んじゃうし……」っていう。

(玉袋筋太郎)なんで?(笑)。

(吉田豪)緊張しちゃうらしいんですよ。「カフェ、怖い」っていう。「喫茶店しか入れないんですよ。カフェに入ったら死んじゃうので」って。

(安東弘樹)ああ、そういうことか。喫茶店は入れるんですね。

(吉田豪)そうなんですよ。ちょっとおしゃれなところっっていうのがもう怖くて。「無理です!」って。

(玉袋筋太郎)ああー、わからなくもないんだ、そこは。

(吉田豪)「表参道ヒルズのそばに用事で言ったら、入れる店がない。『タリーズなら……』って思ったら、すごいおしゃれなタリーズで『これは無理』って思って撤退しました」みたいな。そういう人なんですよ。

(玉袋筋太郎)ああーっ! そういう部分があるから、作品に出てくるのかな。なんかね。そのシャイさというか。

(吉田豪)ただ、『ハチミツとクローバー』っていうのが実はリア充のおしゃれな恋愛漫画だと思われていたわけですよ。美大を舞台にした。それで、「こんな美大、ない」とか叩かれたりとかしていたんですよ。実はもうそれがそもそもの誤解で。羽海野先生自身はおしゃれしたこともなく、友達もいたことがなく、美大に行ったこともない人がそういう憧れを込めて描いた作品だったんですよ。私が味わったことがない世界を。そしたら、おしゃれ漫画ってレッテルを貼られてショックを受けて。「こんなリア充漫画、読まねえ」とか言われて。

(玉袋・安東)(笑)

『ハチミツとクローバー』への誤解

(吉田豪)そう(笑)。かわいそうな人なんですよ。1個1個、誤解を解いたんですけど。そもそもおしゃれ漫画にした理由も、もともとの媒体がCUTiE Comicっていうおしゃれな女性誌だったんで、「おしゃれ要素を入れなきゃ!」って思って。で、美大とかにして、おしゃれな服を着せて。その後、それが休刊になって『ヤングユー』っていう女性の漫画誌に移ったんで、「恋愛要素を強化しなければ!」ってやって。みたいな感じであの、媒体に合わせただけなんですよ(笑)。

(安東弘樹)(笑)

(玉袋筋太郎)経験はないんだもんね。

(吉田豪)全然、全然。

(安東弘樹)だから、憧れを具現化したら、それが本当だと思われて叩かれるっていう。

(吉田豪)そう。叩かれて。それで、今度は『3月のライオン』がその反動になって。おしゃれ要素を全部消そうとして、ほぼユニクロな感じの服にしたりとか、シャツはインにするとかにして。で、ウジウジした部分を強化したんですよ。本人らしい。そしたら、「こんな鬱漫画読まない」とか言われて(笑)。「そうすりゃいいんだ?」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)これ、編集者の人っていうのはもうベタ付きなのかな?

(吉田豪)そうですね。基本。

(玉袋筋太郎)そうなんだろうな。たぶん。その人と上手く、関係ができているというか。いいところを出そうとか。作品としては、その編集者がいて。パーソナルな部分は豪ちゃんが出すと。

(吉田豪)(笑)

(安東弘樹)まさにそうですね。

(玉袋筋太郎)その2つに分かれている。そうなんだ。

(吉田豪)インタビューではね。「こんな人です」っていう。

(安東弘樹)いやー、でもあのネガティブさが僕、大好きですけどね。最高ですよね。

(吉田豪)最高ですよ。好きになりますよ。本当にどんどん。聞くと。

(安東弘樹)だからなんか、「歪んだ」っていう言葉が当てはまるかわからないですけど、なんとも言えない心理描写ですよね。

(吉田豪)そうです、そうです。それは本当、本人そのままだったというね。

(安東弘樹)すごい納得した。さあ、続いて……。

(玉袋筋太郎)逆にそれが気になるんだよ。その3が、やっぱり。

(安東弘樹)学生時代ね。「恐ろしい」と「悲しい」話のみってこれ、どういうことですか?

羽海野チカ先生の学生時代

(吉田豪)そうなんですよ。せっかくなので『FRaU』では本当、基本的な話を全部聞こうと思って。「原点を探ってみたいんですけど、子供の頃からそんな感じだったんですか?」って聞いたら、「子供の頃は記憶があんまりないです」っていう(笑)。思い出が無いっていう。

(玉袋筋太郎)いきなり柵越えだよね。答えとしては。

(吉田豪)1人で図書館と家で本を読んでいるぐらいの記憶しかない。記憶のシーンは全て1人で、どこから1人だったのか?って考えたら、幼稚園でもう仲間外れになっていて。幼稚園のお庭の隅っこで砂山に横穴を掘ってハチのお家を作ったりとか。その頃から人と馴染めないタイプ。10代の頃は逃げ場がなくて。で、「美術系の高校に行ったら、絵が好きだし仲間がいるかも」と思ったら、都立で探したら1つしかなくて。それが工業高校の中のデザイン科だったから。ものすごい、時代的にビー・バップ(・ハイスクール)なところで「しまった!」ってなったっていう……(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)。そうだろうな、時代的に。

(吉田豪)で、「女の子が少なければいじめられないかな?」って思ったら、デザイン科は男子が7人だけであとは女子と。そしたら、『花のあすか組!』みたいな……それもそういう時代ですけども。そういう人たちがいて、「アカン!」って思って。「……最も厳しい3年間でした」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(爆笑)。全て裏目だね! 裏目、裏目。

(安東弘樹)裏目ですね。面白いように裏目だ。

(吉田豪)デザインの話も合う人がいなくて。ただ、先生がよくしてくれて。みんな不良だから課題を出さないんで、すごいかわいがってくれて。

(安東弘樹)ああ、(羽海野先生は課題を)出すからね。

(吉田豪)で、美術のおじいちゃん先生が「お前が課題を持ってくるのが楽しみなんだよ」って言ってくれて。その先生がサンリオの入社試験を受けられる道を作ってくれて。で、サンリオに入ることになるっていう。

(玉袋筋太郎)そうかー! もう、ストーリーだな。もう。

(吉田豪)で、「サンリオでは馴染めたんですか?」って聞いたら、ちょっと少し怖い女の上司が最初についたんだけど。その人の愛情を勝ち取ろうとして延々がんばり続けたらめちゃかわいがってくれて。で、サンリオっていうのが基本、美大とかを出ないと入れない。周りにいる人たちはみんな美大生なんですよ。で、はじめてそうやって友達みたいなのがその時にできて。で、美大憧れがここでできるんですよ。

(安東弘樹)ああっ!

(吉田豪)そして、自分が味わえなかった楽しい学生生活。先生はかわいがってくれた部分とかを活かしながら『ハチクロ』になっていくっていう。

(玉袋筋太郎)それなんだ、じゃあ。そこで触れ合った美大の先輩方は?

(吉田豪)「羨ましいな」っていう。「私の行ったことのない美大」っていう。

(安東弘樹)キラキラしていたんでしょうね。

(吉田豪)そうです(笑)。

(玉袋筋太郎)で、自分の鏡に写したものを描いたみたいなもんなんだね。はー! すげーな。

(安東弘樹)すごいなー。でも、がんばったんですね。

(吉田豪)がんばりましたよ。

(玉袋筋太郎)よく出会えたね、豪ちゃん。こんな素敵な人に。

(吉田豪)素敵ですよ(笑)。かわいい。

(安東弘樹)そんな羽海野さんが実は、あぶさん。

(玉袋筋太郎)あぶさんなんだね。これ。

(吉田豪)羽海野先生の恋愛観。僕、聞いたことなかったんで。「せっかくなんで、恋愛観聞いていいですか? 女性誌なんで」って思って聞いたら、「私、恋愛が苦手なので。待ち合わせとかをすると死ぬかもしれないので」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)待ち合わせで死ぬかも……カフェに入っても死ぬかもしれない。待ち合わせでも死んじゃう。

羽海野チカ先生の恋愛観

(吉田豪)「なんですか?」って聞いたら、「待ち合わせは本当に危険なので」っていう。「あと、別れ際に次に会う約束なんて、どうやってしたらいいかわからなくて、2度目の死を迎えるので。別れ際に約束できなかったら、またなにかで連絡を取らなきゃいけないじゃないですか。そこで3度目の死を迎えるので、無理だな」っていう。

(安東弘樹)なんで全部「死」なんですか? これ、「緊張する」っていう意味ですか? どういう?

(吉田豪)もうとにかく難しいんでしょうね。人間関係が下手で、それがまた恋愛になると。ようやく友達とかと付き合えるようになったのに、恋愛はまだ難しいみたいな感じの。

(安東弘樹)「待ち合わせをすると死ぬかもしれない」っていう言葉を僕、はじめて見ました。

(吉田豪)はじめて聞きましたよ。『3月のライオン』の中で、主人公がヒロインに対していきなり婚姻届を用意するシーンがあるんですよ。なんの恋愛もないのにっていう。あれは実は水島新司先生の『あぶさん』のプロポーズらしいんですよね。

(玉袋筋太郎)ほう!

(吉田豪)居酒屋さんの娘さんがずっと脇役として出ていたのに、ある日あぶさんが試合の帰りに婚姻届を持って、大将しかいない時に居酒屋に行って。大将に「これ……」って渡して、交際期間なしで婚姻届を持っていく。それが妙に面白くてときめいたので、漫画の中でもやって。だから、読者からすると「いつ恋愛が始まっていたんだ?」とか「いつ好きになった? 理由がわかんない」とか言われるんですけど、「私もわからないんですよ」っていう。「いつも理由もないし。私の中ではとってもリアルなんです。だから、いつかいきなり婚姻届を持ってきてくれる人がいいなと思って。交際期間なしで『お願いします!』みたいな」っていう。

(玉袋筋太郎)すごいよ、これは!

(吉田豪)それが理想の恋愛っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)下手すると殺到するかもしれないよ。財産目当てで(笑)。

(吉田・安東)(笑)

(玉袋筋太郎)ダメだよ! ダメダメダメ(笑)。

(吉田豪)真面目な人なんですから。傷つけちゃダメですよ。

(玉袋筋太郎)そうだね。本当に。みんなで守っていこう。

(安東弘樹)だからまあ、ピュアなんですね。本当に純粋なんですね。で、Twitterでカウンセラー増加の筋。

Twitterカウンセラーの増加

(吉田豪)そうですね。そのTwitterの話になった時に、「羽海野先生のTwitterが本当に好きで。相変わらず思春期の悩みを抱えているのが伝わってきて」と。この取材をした頃だと肉まんかなにかを食べたらしいんですよ。で、お店の中で食べたら怒られちゃって。「お店の中で食べないでください!」って。そんなルールがあるのを知らなくてシュンとしちゃう感じの(笑)。「寒空の中で食べました」みたいな(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(安東弘樹)かわいいな! なんか抱きしめたくなるけどな。

(吉田豪)そんなことばかりしてるんですよ(笑)。「最高!」って思って。

(玉袋筋太郎)いやいやいや。

(吉田豪)で、そういう話をしていた時に、なんでTwitterがああなるかっていうと、ネーム、つまり話を考えている時にそれをやっていると頭がすごく動くから、開けなくちゃいけない漫画の箱を開けると、ついでに自分の箱も開いちゃって収集がつかなくなる。で、その自分の箱の中に暗いことがいろいろと入っていて、それをワーッと書き出しちゃうっていう。

(玉袋筋太郎)ああ、そうか!

(吉田豪)で、「ファンの人が見たら嫌かな?」とも思っていたけど、「出勤の時に楽しく読んでいるから気にしないで」っていう感じでみんなに言われて、受け入れられるようになっていって。ファンの人は「そういうのを面白いって言ってごめんなさい」とか「先生、わかります。私も同じこと悩んでいました。中学生の頃」とかね(笑)。「いくつだと思ってるんだ?」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)でもう、そんな感じでカウンセラーが順調に増えているらしいんですよ。先生がそうやって傷つくたびに、「先生、大丈夫ですよ!」みたいな。みんなが(笑)。

(玉袋筋太郎)すげー!

(安東弘樹)そうか。普通Twitterをやっている方がカウンセラーになりますけど。そうか。周りが……。

(吉田豪)ヘコんだツイートの後は、みんながもう励まして(笑)。昔は僕ぐらいだったのが、いまカウンセラーがすごい増えて。「大丈夫ですよ!」って(笑)。みんなが言う。

(玉袋筋太郎)助けられているんだな。

(吉田豪)Twitterで音を上げることもよくあって。原画展とかいま、よくやっているんですけど。「なんでうちの県に来てくれないんですか!」とかよく怒られていて。で、最近Twitterで検索してご本人が見たっていうのが「ホストに入れあげている」っていうので。「ホストクラブなんて行っているわけないじゃないですか!」っていう(笑)。「死にますよ!」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)即死だよ、そんなの。看板見ただけで即死だよ、そんなの。うん。

(吉田豪)「メディアミックスがこうやってあると、もともとあんまり好きじゃないから読まないでいた人がものすごく攻撃してくるんで苦しい。使う言葉もエッジが効いていて辛い。でも、励ましてくれるんで、みんなに生かされてます」っていう。

(安東弘樹)「生かされている」。

(玉袋筋太郎)素晴らしいな。ねえ。「なんでうちの県に来てくれないんですか」って、まあそれはねえ……。

(吉田豪)作者に言っても……っていうね。

(玉袋筋太郎)たしかに。まあ、リクエストっていうこともあるからね。

(吉田豪)「自分でいろいろ動いてください」ってことですよ。本当に(笑)。デパートとかに言ったり。

(玉袋筋太郎)デパート、行けるのかな?

(安東弘樹)そう。デパートなんてね、まさに。

(吉田豪)そして、その6。

(安東弘樹)一石二鳥。『3月のライオン』は羽海野チカ。

自分自身を反映させた『3月のライオン』

(吉田豪)そうなんですね。よりイコールになって。映画の『3月のライオン』で主人公が「自分には将棋以外に何もないんだ!」って叫ぶシーンがあるんですよ。「これって羽海野先生にとっての漫画でもあるんだろうなって思った」って言ったら、まあ、本当にそうだと言うことで。『3月のライオン』を始める時に、「話を考える時に全部そうやっていろいろな箱が開いちゃうから、自分がその時に悩みそうなことを全部題材にすれば悩みについても考察できるし、ネームもできる。一石二鳥!」って思って。「深い箱も開くし、悩みと同じものをテーマに居場所を探してそこに一緒にいる人を探して。人生と仕事の両輪を上手く作るかどうかの男の子の話にしたら、失敗しても上手く行ってもそれが作品の結末になる。そうすると、Twitterが暗くなる」っていう。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)つまり、羽海野先生の生き様の成果によって主人公の着地点も変わる。漫画のラストも変わるらしいんですよ。

(玉袋筋太郎)ああー、そうか。

(吉田豪)羽海野先生がちょっと上手く行ったらハッピーエンドになって。最後1人ぼっちになったら、みなさん、察してください……っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)ああーっ!

(安東弘樹)そうか。じゃあ流れも決まってないんですね。

(玉袋筋太郎)乗り移っているよ、それは。

(吉田豪)まあ、結末自体は決まっているんですけど、それが平和になるか、平和じゃなくなるかが決まってないという。それが全て自分の人生なんです。

(玉袋筋太郎)すごいな、これ。

(吉田豪)「漫画って本人のパーソナルな部分がすごい出ると思っていて」って言ったら羽海野先生も同感で。「出した方が、欠点も個性なので。長所が似ていても、欠点ってみんなそれぞれいろんな種類があるから。それをそのまま出しちゃった方が、オリジナリティーのある漫画になる。それを出すのはやっぱり勇気がかなり必要で。漫画家さんと話していても、本人と話した方が引き込まれるケースがある。悩んで話したことでグッと来るから、それを描いてしまった方がいいと思うけど、『悩みなんか描けないよ』って言われて。惜しい! あなたが悩んでいる姿が美しいのに。私はほとんど描いているのに」っていうね。

(玉袋筋太郎)やっぱりね、なんだろう。先ほど出てきた名前だけど、晩年の梶原一騎先生もね、なんかやっぱり坂道を転げ落ちる時には漫画の中に自分のね……。

(吉田豪)心の叫びを描いてましたよね!

(玉袋筋太郎)心の叫びが出てるっていうのがあるんだから。

(吉田豪)全部出してましたよ。

(玉袋筋太郎)そう。「どいつもこいつも!」とかね、「この野郎!」とか。

(安東弘樹)その、吐露になるわけですね。

(玉袋筋太郎)吐露になっていくんだけど、でも、羽海野先生は当たっているわけだからね。ずっと。

(安東弘樹)そうですよね。

(吉田豪)当たっているのに、悩み続けるっていうね。

(玉袋筋太郎)不思議だなあ!

(安東弘樹)だって言わば、成功者じゃないですか。

(吉田豪)成功すれば、それが全て幸せっていうわけではないと。

(安東弘樹)まあ、ねえ。

(玉袋筋太郎)よっぽど本当、さっきの話じゃねえけどホストクラブに行っちゃった方が楽になるんじゃねえかと思うんだけど。俺。

(安東弘樹)ちょっとうちの番組の企画で行っていただきたいぐらいの感じですけどね。

(吉田豪)企画で(笑)。

(玉袋筋太郎)でも死にますから(笑)。

(吉田豪)その不器用さが伝わるのがその7です。

(安東弘樹)「やっといて」と言えないんだ。アシスタントとの力関係。

アシスタントとの力関係

(吉田豪)アシスタントさんに頼み事をするエピソードになったんですけど。ちょっとめんどくさいようなシーンをアシスタントさんに頼んだら、誰も返事してくれなかったらしいんですよ。原稿を受け取ってくれない。それで、ものすごい担当さんが待っている切羽詰まった状況だったから、「わかりました。自分でやります」って返して、ものすごい勢いで見開きの背景を筆ペンで描いて。「迫力が出たから、いいかなって」っていう(笑)。

(安東弘樹)いい人だ。

(玉袋筋太郎)いや、もう抱きしめてやりたくなるね。本当に。

(安東弘樹)いや、本当。さっきからずっと思いますよ。

(玉袋筋太郎)思うね。「大丈夫だよ!」って。

(吉田豪)「がんばったよ!」ってね(笑)。で、そういう作業が終わってアシスタントさんに「『もうサイゼリヤしか開いてないけど、みんなでご飯食べに行こう』って言ったら、『ああ、ちょっと私、忙しいんで』とか言われて心がポキっと折れたことがありました」って(笑)。

(玉袋筋太郎)アシスタント、頼むよ!

(吉田豪)「みんなでちょっと慰安旅行とか行こう」って言っても断られたりして。いま、そのアシスタントをなんとか活かせるようになろうとがんばっています!」って言われて(笑)。それを誌面通じて訴えてどうするんだ?っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)そうだよ。サイゼリヤだってようやく行けるようになったかもしれないんだから。

(吉田豪)そこは死なないですからね(笑)。

(安東弘樹)羽海野さんが誘うっていうこと自体が奇跡ですよ、これ!

(玉袋筋太郎)お金がありゃキャンティだってどこだって行けるんだから。

(吉田豪)高いところね(笑)。「そういうことをもう1回言われたら、『いま、疲れていて。みんなでご飯に行こうとしているのにピシャッと言わないで』って言おうと思って。その人は時々、他人とのコミュニケーションって怖かったんだな』って思い出させてくれるんです」みたいな(笑)。

(玉袋筋太郎)あの、お給料を払っている側でしょう?

(吉田豪)そう(笑)。

(安東弘樹)雇い主ですよ。雇用主。

(玉袋筋太郎)が、なぜそこまで気を使ってんの?(笑)。

(安東弘樹)でも、その人は選んだんですよね。この羽海野さんをね。しかもね。

(吉田豪)そうです(笑)。

(安東弘樹)そこがすごいね、また。

(吉田豪)アシスタント残酷物語的な話はよく聞きますけども、逆ですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)逆だよ、これ。うん。

(安東弘樹)どれだけ気を使っているんですか。さあ、そしてその8。豪さんのインタビューには物騒な話を。

羽海野チカ先生の謎のサービス精神

(吉田豪)また羽海野先生がなぞのサービス精神がある人で。今回もなんか新宿の話をしていたら、「なんでこんな話を僕に提供するんだ?」って話をまずしだしたんですよ。新宿2丁目の漫画家さんがいっぱい遊びに来るお店で飲んでいたらしいんですよ。そしたら、とあるプロレスラーの人が突然暴れて、様子が変わって一緒にいた人を気に食わないって暴れて。その人が殴られて。結局、朝4時ぐらいまで超狭い店に4時間近く監禁されて警察沙汰になったと。

(玉袋筋太郎)(笑)。誰だ、それ?

(吉田豪)一瞬、応戦した方がいいのかなって思ったら、「いま羽海野さんがケガをしたら、白泉社が大変なことになるから黙ってここにいなきゃダメです!」って言われて。「当たり前ですよ! なんで応戦するんですか、羽海野先生が? 止めてくださいよ!」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)そこだけは命知らずだね(笑)。

(吉田豪)「私がなんとかしなきゃ!」みたいな(笑)。

(玉袋筋太郎)4時間近く監禁されたって(笑)。誰だよ?

(吉田豪)またいい人なんですよ。その人が、「今度結婚が決まった」って最初に言っていたらしくて。「これが大事になったら、結婚がダメになっちゃうかもしれない」って思って。「これは大事にしちゃダメだ」って(笑)。

(玉袋筋太郎)ああー。

(吉田豪)そういう話で、なんか知らないけど僕にはエピソードを提供しなきゃみたいなのがあるらしくて。10年前も「私、実はロス疑惑の三浦和義さんからお手紙をもらったことがあるんですよ」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)「獄中から同人誌の通販を頼まれまして……」みたいな(笑)。

(玉袋・安東)ええーっ!?

(吉田豪)「これ、絶対にそうですよね? 獄中にこの名前の人、いないですよね?」みって。三浦和もまたすごいマニアなんですよ。全然売れる前の同人誌時代に目をつけているんですよ。羽海野先生を。

(玉袋筋太郎)うわーっ!

(安東弘樹)ものすごいですね!

(吉田豪)そう。

(玉袋筋太郎)俺たちにとってのキング・カズですよね。

(吉田豪)そう(笑)。

(安東弘樹)『たまむすび』的キング・カズ。

(玉袋筋太郎)キング・カズなんだよ。へー! それは……。

(安東弘樹)いや、これ俄然興味深まったと思いますが。この羽海野チカさんのインタビュー、現在発売中の『別冊クイック・ジャパン 3月のライオンと羽海野チカの世界』と講談社から発売中のライフスタイル誌『FRaU』にたっぷりと掲載されていると。

(吉田豪)こういうのを知った上で映画とか漫画を見ると、より楽しめるんですよ。

(玉袋筋太郎)そうだね。うん。

(安東弘樹)でも、いちばん我々としては面白かったのは、現在発売中の『別冊カドカワ』で大谷翔平選手にインタビューと。

(吉田豪)そうなんですよ。謎のマッチメイク。すごいんですよ。大谷さんって無趣味で有名らしいんですよ。で、無趣味な大谷さんと、僕は野球を何も知らないんですよ。で、「2人で雑談をしてください」っていうテーマで(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(安東弘樹)野球しか知らない人と(笑)。

(吉田豪)そう。野球を一切知らない人とっていう(笑)。

(玉袋筋太郎)平行線だけどな。それでも成立させた豪ちゃんがすごい。野球が好きなんだってね。常に野球のことを考えてるっつーんだもんね。

(吉田豪)なんだろうな。ポップな星飛雄馬ですよ。

(玉袋筋太郎)ああーっ! 野球ロボットでもちょっと違うロボット。

(吉田豪)そう。楽しくロボットに徹している感じの。悩まない。「ディスコ行かなきゃ!」みたいにならない(笑)。1人でクリスマスパーティーとかやらない星飛雄馬っていう。

(安東弘樹)で、『BUBKA』で女子プロレスラーの堀田祐美子さんのインタビューですね。

(玉袋筋太郎)これも面白そうだな。堀田祐美子も。

(吉田豪)最高でした。

(安東弘樹)吉田豪さん、次回の登場は5月5日、子供の日です。

(玉袋筋太郎)子供の日だから、どうしよう? 子役にする?(笑)。

(吉田豪)(笑)

(玉袋筋太郎)なんなんだろうね、面白いよ。5・5・豪ですよ!

(安東弘樹)3つ並びますから。

(吉田豪)おおっ!

(安東弘樹)今日はありがとうございました!

(吉田豪)どうもです。

(玉袋筋太郎)ありがとうございました!

<書き起こしおわり>
大ヒット漫画『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の著者である、漫画家・羽海野チカさん。めったにメディアに登場しない超人気作家の知られざる姿に、プロインタビュアー・吉田豪が迫る! ――映画『3月のライオン』、おもしろかったですよ! 羽海野 よかった! ありがとうございます。映画化はホントにうれしいです、大友(啓史監...
大ヒット漫画『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の著者である、漫画家・羽海野チカさん。めったにメディアに登場しない超人気作家の知られざる姿に、プロインタビュアー・吉田豪が迫る! ▼前回の記事はコチラから! 漫画家・羽海野チカ 『3月のライオン』 制作秘話を語る frau.tokyo ――羽海野先生はお洒落漫画を描...

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