町山智浩 大ヒット韓国ホラー映画『コクソン(哭聲)』を語る

町山智浩 大ヒット韓国ホラー映画『コクソン(哭聲)』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、韓国で記録的な大ヒットとなったホラー映画『コクソン(哭聲)』を紹介していました。
※放送では映画『ドント・ブリーズ』に続いて紹介しています。

哭声/コクソン(字幕版)

(町山智浩)はい。それで、韓国で夏に大大大ヒットした映画が『コクソン(哭聲)』っていう映画なんですね。500万人が見たと言われているんですけど。これ、「コクソン」っていうのは韓国の南の方にある山奥の田舎の地名なんですけども。で、非常に美しいところで、田舎町なんですよ。そこで次々と連続殺人が起こるんですね。で、一家の1人が突然自分の家族を皆殺しにしてしまうという事件が連発するんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、主人公は駐在さんなんですけど、事件なんか起こったことがないから、全くちゃんと捜査ができないんですよ。で、最初に「殺人事件が起こった!」って主人公の駐在さんが呼び出されるんですけど。お母さんがね、「ちょっと、あんまり急がないでご飯を食べてからにしなさいよ」って言われて、ご飯を食べてっちゃうんですよ。殺人なのに(笑)。

(赤江珠緒)ああーっ!

(町山智浩)で、現場に遅れて行くと、その言い訳がね、「あの、すいません。母が病気で……」ってこの駐在が言うんですよ。で、同僚の警官に「お前、その歳で『母が病気』とかふざけんじゃねえよ!」って言われている人なんですね。

(山里亮太)おお、ダメ警官で。

(町山智浩)ダメ警官でね、これがめちゃくちゃおかしいんですけど。だから、田舎でいかに平和かっていう感じですよね。で、10才くらいの娘さんがいるんですけど、奥さんとエッチしているところをモロに見られちゃうんですよ。で、「しまった! 娘に大変なトラウマを与えてしまった!」ってもうビクビクするんですね。娘との関係が。「ごめんね、傷つけちゃったかな?」みたいに、このお父さんがね。すると娘がね、10才ぐらいなんですけど、「まっ、気にすんなよ、父ちゃん。そんなの知ってるし。わかってるから。まあ、これでも飲めや」って言ってジュースをくれるっていう、いい娘なんですね(笑)。

(赤江珠緒)ええーっ?

(山里亮太)ホラーですよね?

(町山智浩)まあ、ホラーなんですけど。で、次々ととんでもない血みどろの殺人事件が起こっていくんですが、どうもこの原因は國村隼らしいっていうことがわかってくるんですよ。

(赤江珠緒)えっ? 國村隼……

國村隼が出演

(町山智浩)國村隼さんがね、なんか山奥にいるんですよ。でね、しかもね、裸で森の中を駆けずり回っているんですよ。國村隼さんが。

(赤江珠緒)う、うん……

(町山智浩)でね、人肉とか食ってるんですよ。

(山里亮太)あ、急に来た。

(町山智浩)國村隼、裸で人肉ですよ? どんな映画なんだ!?って思いましたよ(笑)。國村さん、セリフもほとんどないしね。なんで國村隼さん、この仕事を引き受けたのか?っていうね。

(赤江珠緒)韓国映画で山の中に國村隼さん?

(町山智浩)山の中に國村隼ですよ。しかも、裸。一応、安心してください。ふんどしは履いています。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(町山智浩)ふんどし姿の國村隼がもう思いっきり堪能できるというフケ専最高の映画なんですが(笑)。このね、『コクソン』っていう映画の監督はね、写真があるんですけど。ナ・ホンジンさんっていう人なんですね。若いんですが。

ナ・ホンジン監督

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)この人、『たまむすび』のミフネさんにそっくりですね?

(赤江珠緒)ああーっ! メガネをかけて、ちょっとヒゲがあって。そうですね。

(町山智浩)『たまむすび』のスタッフなんですが。ミフネさんって(笑)。そっくりなんですよ。ナ・ホンジン監督(笑)。

(山里亮太)ナ・ホンジン監督からカリスマ性を全部取ったらミフネさんじゃないですか?

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)すげー似てるんですけど(笑)。この監督ね、こんなのんびりした顔をしていてね、作る映画、作る映画、とんでもないんですよ。毎回。で、まず『チェイサー』っていう映画がありますね。これは日本でも世界的にヒットしたんですが。これがね、主人公がデリヘルを経営しているオヤジなんです。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、デリヘルで女の子を派遣するんですけど、帰ってこないんですよ。女の子が。で、「どうしたんだろう?」っていうことで、その女の子を探し始めるっていう話なんですね。で、これは実際に韓国で起こったデリヘル嬢連続殺人事件が元になっているんですよ。で、これは『チェイサー』っていうタイトルなんですけど、警察がやっぱり役に立たないんですね。で、このデリヘルオヤジが1人で連続殺人鬼と対決するっていう、デリヘルオヤジヒーローものという、世界でも珍しいジャンルの映画でしたね。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)デリヘルオヤジヒーローもの?

(町山智浩)そう(笑)。デリヘルのオヤジががんばるっていうなかなか言いにくくなっていますけども(笑)。すごい映画だったんですよ。

(赤江珠緒)それが『チェイサー』。

(町山智浩)はい。で、その次に、まああんなに面白かったんだからこれ以上面白い映画ができるのか?と思ったら、その次にナ・ホンジン監督が撮ったのが『哀しき獣』っていう映画で。これがまた、すっごい面白かったんですよ!

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)これね、北朝鮮と中国の国境のところの中国側に吉林省っていうところがあるんですけど。そこって国境を区切ってしまったため、そこにもともと住んでいた朝鮮・韓国系の人たちが中国人として暮らしているところなんですよ。実際にそうなんですが。で、そこに住んでいる人たちは中国の中でもっとも貧しいらしいんですね。で、韓国に出稼ぎに行くらしいんですよ。で、その1人の男の若い奥さんが韓国に出稼ぎに行って行方不明になって帰って来なくなるんです。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、その若い旦那が韓国まで奥さんを探しに行くっていう話がこの『哀しき獣』っていう映画だったんですけど、そういう話なのかな?って思って見ていくと、どんどん違う方向に話が転がっていくんですね。で、途中から『チェイサー』に出ていたデリヘルオヤジが登場してですね、そいつが殺人マシーンとして韓国のヤクザもね、あらゆるやつらを片っ端から牛のスネの骨ってあるじゃないですか。巨大な。その牛のスネの骨でギャングだのなんだの、片っ端から殴り殺していくっていうとんでもない映画になっていくんですよ。

牛骨殺人マシーン

(赤江珠緒)なんでまた、牛の骨で?(笑)。

(町山智浩)もう、めちゃくちゃ最強なんですよ。このおっさんがね、どんなことをしても倒せないターミネーター的な展開になっていくんですよ。で、ストーリーとしてはこれ、どうなの?って思うんですけど、圧倒的なそのオヤジのパワーで映画を乗り切っちゃうんですね(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)で、見た人はみんなね、「オヤジ、最高!」っていう感想をね。でも、それでよかったのか?っていう映画が『哀しき獣』だったんですよ。で、今回、このオヤジ映画を撮らせたら最高なナ・ホンジンが作ったのが國村隼ホラーなんですよ。

(赤江珠緒)國村隼さん(笑)。ええっ?

(山里亮太)写真があるけど……

(町山智浩)すごいですよ。雨の中で泥んこになって裸ですよ。ほとんど。あの歳で。すげえな、役者魂! とも思うんですけど。

(赤江珠緒)じゃあいま、韓国の人が國村隼さんを見たら、「怖っ!」って思う感じですか?

(町山智浩)國村隼が道を歩いているだけで、韓国の人はみんな「うわっ!」って逃げちゃうんですよ。子供は泣くし。もう大変な事態になっていますよ。國村隼。本当に。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)でね、「なんで國村隼にしたんだろう?」っていうのをナ・ホンジン監督がインタビューで答えていて。「誰にしようかな?」って役者の写真のカタログを見ていたらしいんですね。そしたら、「『この顔だ!』って思って決めた」って言ってるんですよ。日本人だからどうこうじゃないんですね(笑)。顔見て決めているから、相当キテるな、この人と思いましたけど(笑)。でね、この『コクソン』っていう映画は最初、連続殺人捜査ものかな?って思うと、話がどんどんわけがわからなくなっていくんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、途中からゾンビ映画みたいになっていって、さらに『エクソシスト』みたいになっていくんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)「最初に見ていたのと違う映画になっているよ、おい!」みたいな。

(赤江珠緒)ええっ? それ、いいの?

(町山智浩)「いいの?」と思うんですよ。で、しかもさっき言ったみたいにギャグが入っているでしょう? ギャグも入っている上に、次々とどんでん返しが連続していって、さっきまでこうだって言っていたのと違うことを言って、またこうだってひっくり返していくんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、もう全然わけがわからないっていうすごい映画なんですね。この『コクソン』っていう映画は。これはね、もう見た後、どうしたらいいの?っていう気持ちになる映画でね。すごかったですね。これ。

(赤江珠緒)でも、大ヒット。これもね。

(町山智浩)大ヒットなんですよ。日本では非常に爽やかに『君の名は。』で、アメリカでは『ドント・ブリーズ』、韓国では國村隼ですよ。

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(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)どういうことなのか? と。

(赤江珠緒)今年の夏はそれぞれ全然違うあれでしたね。

(町山智浩)全然違うだろ、それ!?っていうね、思いますけども。はい。ということでね、思いっきり國村隼さんのお尻とか堪能できる『コクソン』。これは来年公開らしいです。

(山里亮太)(笑)。町山さん、「國村隼さんのお尻を堪能できるのでおすすめ」っていうわけじゃないですよね?

(町山智浩)そこがポイントですよ、やっぱり。僕としては。めったに見れないものですよ、國村隼さんのお尻とか。

(山里亮太)たしかにね。レア尻ですね。

(町山智浩)そんなものね、大事に拝んだ方がいいと思いますけども。なんのためかはわかりません。はい(笑)。

(赤江珠緒)今日はとにかく怖い、そして大ヒットしたというホラー映画を2本。『ドント・ブリーズ』と國村隼ホラー『コクソン』の2本を紹介していただきました。

(山里亮太)「國村隼ホラー」なんていうジャンル、ないから(笑)。

(町山智浩)國村隼ホラーですね。はい。

(赤江珠緒)『ドント・ブリーズ』は年内に日本公開が予定されていますし、『コクソン』も時期は未定ですが来年ぐらいかな? 日本で公開される予定と。

(町山智浩)来年はじめには公開だそうです。はい。

(赤江珠緒)うわー、ドキドキしますね、これね。

(町山智浩)ドキドキしますよ、國村隼さんの裸を見れると思うと。

(山里亮太)それで「行こう!」ってなった人、いるかな? いま(笑)。

(町山智浩)ものすごくなった人とか、新宿の二丁目方面でなった人とかいると思います。はい。

(赤江珠緒)さあ、再来週のスペシャルウィークでは投票日が迫ってきた、こちらもそうですね。いよいよです。アメリカ大統領選挙について町山さんにお話いただく予定になっています。町山さん、ありがとうございました!

(山里亮太)ありがとうございました!

(町山智浩)どうもでした!

<書き起こしおわり>

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