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町山智浩 ドナルド・トランプの共和党大統領候補指名権獲得を語る

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町山智浩さんがABCラジオ『おはようパーソナリティ道上洋三です』に電話出演。アメリカ大統領選挙で共和党候補としての指名獲得がほぼ確実となったドナルド・トランプについて、お話されていました。



(道上洋三)アメリカ大統領選挙。共和党の候補の指名争い。さっきの朝刊のコーナーでお話しましたが、2位のテッド・クルーズ上院議員が3日に撤退を決めまして。ジョン・ケーシックオハイオ州知事も4日、選挙戦から撤退することを表明しました。したがって、指名争いに残っているのは実業家のドナルド・トランプさんだけということになって、事実上共和党はトランプさんの指名獲得が確実になったんですが。そのまま、つまりクリントンさんと大統領候補争いになるのか。なった場合、クリントンさんを倒してトランプさんが大統領になったら、どういうことになるんだろう。改めてまた、映画評論家、コラムニスト、カリフォルニア・バークレーに住んでらっしゃる町山智浩さんにうかがいます。町山さん、おはようございます。

(町山智浩)おはようございます。

(道上洋三)お久しぶりです。

(町山智浩)はい。よろしくお願いします。

(道上洋三)トランプさんがほぼ、指名を獲得したっていうことのようですが、アメリカ国内は各州いろいろ反応は違うんでしょうが、だいたい全般どのように捉えられているんでしょうか?

(町山智浩)まあ怒っている人も多いですね。特に共和党という政党がもうほとんど解党の危機に直面しています。

(道上洋三)ほう。ということは、やはり共和党の主流派の候補と目されていた人が撤退を始めたということで、余計に危機感なんですか?

(町山智浩)いままで予備選に入ってから、トランプは16人の共和党の候補者と戦ってきたんですが。16人は共和党の中でリーダーのトップの16人ですね。全員、トランプに倒されました。

(道上洋三)ああー、そうなんだ。

(町山智浩)はい。もう弾がないです。

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壊滅的な状態の共和党

(道上洋三)弾がないということは、もう共和党はクルーズなのか……あるいは、共和党がいまおっしゃったように壊滅的な状態で。

(町山智浩)完全に壊滅的ですね。党としてもうやっていけない事態になっています。

(道上洋三)ああ、そうですか。

(町山智浩)もうすでに、共和党の党員登録書を焼き捨てる党員も続出しています。

(道上洋三)あら、まあ。これ、じゃあどういうことになるんです? 今後。

(町山智浩)今後はですね、もうすでに2人のブッシュ大統領とロムニー候補。前の大統領候補だった。これらの人たちは「絶対にトランプを支援しない」と表明しています。共和党下院議長のポール・ライアンさんも「支援しない」と言っていて。上院の議長のマコーネルさんは「これはでも、共和党としては支援しないわけにはいかないだろう」ということで、「支援する」という形で。真っ二つに共和党は分かれて、トランプ支援と支援じゃない方で『シビル・ウォー』状態です。

(道上洋三)はー! これ、共和党になるかはともかく、クリントンさんの相手としてトランプさんが11月の大統領選挙っていうのは、もうほぼ確定なんですか?

(町山智浩)そうですね。はい。共和党の方は、なんとかしてトランプさんじゃない人を候補に立てようとしていたんですけども、さっきも言ったように全員、戦死しましたので。いません。党内には。

(道上洋三)ああ、そうですか。ということは、もう共和党は決まりなんですね。

(町山智浩)もし、この場合にトランプを候補として7月の党大会で指名しないと、党には党内の政治家たちと、党に投票する支持者の2つがあるわけですね。で、党内。共和党執行部の政治家たちはトランプを支持しないのに、でも、投票をする人たちはトランプ支持なんですよ。要するに、支持者の意向を無視して別の候補を立てるっていうことはできませんからね。

(道上洋三)ああ、なるほど。

(町山智浩)昔、民主党がそれをやって大変なことになりました。1968年に民主党が党内であまり票を取っていない人を候補に指名しまして。民主党はバラバラになりましたね。同じことが起こると思います。もし、それをやったら。

(道上洋三)ああ、そうですか。その時の大統領は、誰になったんですか?

(町山智浩)その時ね、ニクソンなんですよ。ニクソンが「ベトナム戦争を継続する」と言いまして。それでジョンソン大統領がベトナム戦争で批判されて、下ろされたんで。「ベトナム戦争を終わらせる」と言った民主党の候補を民主党員は候補として推していたんですが、民主党執行部がベトナム戦争継続っていうことで副大統領を指名したために、シカゴ民主党大会は血の海になりましたね。実際に戦いになりまして。暴力の。

(道上洋三)ははー……それと近い状態がいま、共和党の中で起っていると?

(町山智浩)共和党の中で起こっているんですが、このまま要するに執行部がトランプ候補を指名しないように阻止したら大変なことになると思いますよ。

(道上洋三)どういうことになるんです?

(町山智浩)僕、アリゾナに行きましたけど。トランプの支持者の方、みんな銃を持っていますからね。

(道上洋三)ああ、そういう事態になりかねない?

(町山智浩)いま、アメリカはオープン・キャリーといって、外を歩いたり、スーパーに行ったり、公園に行ったり、幼稚園に行ったりする時に銃を腰につけたままでいい場所が多いんですよ。共和党が強いところは。それで、クリーブランドでやる共和党大会にも、「銃を持ってこさせろ!」みたいなことを言って揉めてるんですよ、いま。

(道上洋三)ほー!

(町山智浩)銃の所持、持ち込みを許可しろって言って、揉めてるんですよ。そういう事態ですね。

(道上洋三)やっぱりあれですね。日本からだとアメリカの大統領選挙はショーみたいなもんだって遠くから眺めている様子と違うのよ。やっぱりね。命がかかっているんですね。

(町山智浩)僕はアリゾナとか、アイオワの方のトランプの集会に行ったんですけども。とにかく、会場の雰囲気っていうのは「怒り」なんですよ。圧倒的な怒りが支配している状態ですね。トランプがああいう形でほら、みんなが怒るように煽っているからなんですけどね。実際は。ただもう、インタビューすると「本当に俺たちはもう騙されないぞ!」っていう怒り爆発ですよね。その会場にいる人たちは。

(道上洋三)はー。それでも結局、ここまで勝ち進んできた。

(町山智浩)もちろん。だから彼らの怒りのエネルギーでトランプは勝ち進んできたんです。

(道上洋三)つまり、いままでの既成の勢力や政治に対する不満みたいなものがトランプに集約されたわけですか?

(町山智浩)はい。その通りです。

(道上洋三)つまり、民主党の方でもサンダース候補が若者とかの支持を集めている。「既成の政治家じゃない人を」っていう波がひとつ、もう一方である中で、共和党の方はもっとそれが先鋭的に、トランプさんの方に出たと?

(町山智浩)そうですね。全く民主党の方で起こっていることと同じですね。トランプとサンダースっていうのは、本当にもうほとんど同じ、裏表ですね。

(道上洋三)なるほど。なおかつ、トランプさんは自分でお金を持っているから、選挙資金を周りから援助してもらわなくても大丈夫だと。

(町山智浩)そうなんですよ(笑)。

(道上洋三)だから思い切って言えることが言えると。

(町山智浩)はい。だから結局、支持者の人たちが共和党に対して怒っているのは、いままで共和党にずっと投票してきたけれども、投票してきた人たちにとっては何もいいことがなかった。もう何十年も投票をしてきて、もう我慢ができないと。で、具体的には、共和党の議員たちは議会をずっと支配しているんですけども、彼らがやったことっていうのはまず、金持ち・富裕層に対する徹底的な減税。あと、福祉の切り捨て。公共事業の取りやめ。公務員の給料を減らす。退役軍人への補助を減らす。貿易の自由化によって中国やメキシコに仕事を取られる。そういったことばっかりをやってきたんですね。共和党は。

(道上洋三)はい。

(町山智浩)これは、選挙資金を出してくれるお金持ちとか大企業に対する奉仕としてやっているわけですよ。共和党の人たちは。でも、実際は票を投票してくれる人たちは中流とかの人たちなわけですよね。特にトランプを支持している人たちは、田舎の方に住んでいる地方公務員とか中小企業経営者が多いんですよ。

(道上洋三)はい。

(町山智浩)で、大学は出ていないぐらいなんですね。この人たちは、どんどんどんどん貧しくなっていったんですよ。共和党に投票をすればするほど。それでも我慢して投票をしていたのは、キリスト教を守ってくれるからだったんですね。あと、銃を持つ権利を守ってくれるから。

(道上洋三)なるほど。

(町山智浩)でも、いくらなんでもここまで騙されては、もう我慢ができないと。で、トランプが「君たちは騙されているんですよ。彼らはお金をもらっているから、金持ちのためにしか政治をしませんよ。あなたたちのことは何も考えていませんよ」って説得して回ったんで、もう一気にトランプに行きましたね。

(道上洋三)ああー、そうですか。町山さんがちょっと最初に心配してらっしゃったことがどんどん現実になっていっているわけですね。

実は悪くないトランプの国内政策

(町山智浩)そうですね。ただ、トランプは国内の政策としては、実はそんなに悪くないんです。はっきり言って、トランプの政策はいいです。だから、いま言ったみたいにTPPに反対してるんですよ。これ(TPP)になったらアメリカの仕事が全部、工場とか奪われちゃうから。これは絶対に反対だって言っていて。あと、オバマケアっていういわゆるオバマさんがやった医療保険ですね。あれには賛成なんですよ、トランプは。

(道上洋三)ああ、そうなんですか?

(町山智浩)そう。もうちょっと良くしたいだけで、やめにしないと。で、共和党はあれを全部撤廃するって言ってるんですけど。そうすると、いませっかくオバマケアで医療保険をもらえた人たちの保険を取り上げることになるんですよ。そんなバカなことはできないって、トランプは結構真面目で。あと、年金も保証すると。年金制度も共和党はやめちまえって言ってるんですけど。これも保持すると。

(道上洋三)なんでトランプさんは共和党から出たんですかね?

(町山智浩)そう!(笑)。そうなんですよ。

(道上洋三)共和党の主力政策に反対しながら。

(町山智浩)ものすごく反共和党的な政策なんですよ。国内に関しては。

(道上洋三)一時、日本で「自民党をぶっ壊す」って言って総理大臣になった人があるんですけど。やや似てますか?

(町山智浩)だからポピュリズムと言われているもので。やっぱり普通の投票をする人たちにとってメリットのある政策ばっかり打ち出すんですよ。で、いままで共和党は普通の人にとっては全然よくない政策ばっかりだったんですね。金持ち優遇の。「それでよく票を取ってきたな。じゃあ、ここは穴だ!」って思ったんですね。トランプさんはマーケティングのプロだから。

(道上洋三)マーケティングで(笑)。なるほどね。

(町山智浩)「ああ、彼らはみんな騙されている。白人の中産階級や田舎に住んでいる人たちは『キリスト教、キリスト教』っていうことで騙されて共和党に投票をしてるけど、そこの彼らのニーズに応える政策を打ち出せば、俺は勝てる!」と思ったんで、たぶん共和党から行ったんですよ。

(道上洋三)なるほど。

(町山智浩)彼自身の信条は何もないと思います。

(道上洋三)そうするとですね、そのニーズで行くと国内政策は大丈夫として、ひょっとしてクリントンさんと大統領選挙を争うということになると、ブームみたいなもので行くと、トランプさんが勝つかもしれない?

(町山智浩)だからもう徹底的にポピュリズムなんで、いま、どんどん政策を変えていって。いま、共和党内で勝ったから、今度はもうすでに政策を変え始めています。彼は。一般的な投票でも勝てるように……っていうことでもって、いままで女性差別的なことを言っていたりもしたんですけど。それも変えてきているんですよ。それで、最低賃金も上げるって言ったり。要するに、サンダース的な方向に振ってます。もうすでに。

(道上洋三)ああ、そうですか。

(町山智浩)この人、なんでもいいんで。勝てれば(笑)。

(道上洋三)外交政策で、イスラム教徒を締め出すとか、メキシコに万里の長城を築くとか、日本にも軍備を持たせて、お金を負担しないんだったらアメリカ軍は撤退するとかって、かなり過激なことを言ってるんですけど。これも言動は変わりますかね?

(町山智浩)これに関しては、変わらないと思います。要するに、投票をしない人たちのことをいくら悪く言ってもいいわけですよ。

(道上洋三)なるほど(笑)。

(町山智浩)特に日本とかメキシコとか中国は、とにかく徹底的に悪く言った方がいいんで。全然曲げないと思います。このへんは。

(道上洋三)外敵を作って、中が丸く収まると。

(町山智浩)はい。で、アメリカ国内の票をとにかく集めるためだったら、何でも言いますよね。

(道上洋三)なるほどね。いまのところ、クリントンさんとトランプさんということでは、世論調査ではどちらもクリントンさんがやや有利という数字を見るんですけど。そうなんですか?

(町山智浩)まあ、世論調査以前にですね、最近ずっと選挙があるんですけど、ここ10年以上、民主党がかならず勝つという州が19州、あるんですね。アメリカに。そこの選挙人数を合計すると、242点で。271点あれば大統領が決まっちゃうんですよ。

(道上洋三)ああ、なるほど。

(町山智浩)あとたった31点しかないんですよ。クリントンさんが取らなきゃならないのは。で、共和党の方は、実はすでに確保しているのは102点しかないんです。倍以上、民主党の方が多いんです。だからこれ、最初から勝負にならない戦いなんですよ。普通に共和党が戦ったら。

(道上洋三)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)だから逆に言うと、トランプさん以外の人が共和党から出ていたら、全員負けてたんです。トランプだから、勝つ確率が出てきているんですよ。つまり、さっき言ったように共和党の金持ちに凝り固まった政策じゃなくて、普通の人たちを優遇する政策をトランプは打ち出しているから、下手するとスイング・ステーツと言われる接戦州で勝つトランプが可能性が出てきているんですよ。

(道上洋三)ああ、なるほど。ということはこれ、次にアメリカ大統領選挙は7月の共和党の党大会なんかではなく、どこに注目してニュースを見ていたらいいですか?

フロリダ州とオハイオ州に注目

(町山智浩)フロリダ州とオハイオ州をどっちが取るかだけです!

(道上洋三)ほう。フロリダとオハイオを。

(町山智浩)はい。さっき言ったみたいに、ほとんどの州でもうどこに投票をするか、決定しているんで。決定していないのはフロリダ州とオハイオ州で。それがそれぞれですね、選挙人数を29票、18票とかなり持っているんですね。で、この2つをどっちが取るかでもう確実に決定します。ここだけ注目していればいい感じです。

(道上洋三)どっちが取るかっていうのは?

(町山智浩)要するに、クリントンが取るか、トランプが取るか。フロリダ州の29票を取れば、ほとんど勝ちです。たぶん。

(道上洋三)はー、そうなんだ。これ、いつですか?

(町山智浩)これがだから11月の選挙の時に決定するんですけども。で、フロリダは最も早く開票されるんで、かなり先に決定されると思います。フロリダがどうなったかで、もうほとんどわかると思います。

(道上洋三)ああ、そうなんですか。ということは、ますます目が離せないという状況ですね。

(町山智浩)いま、もしアメリカの株価とかの下落が始まったりして、経済状況が悪くなったらトランプが有利になると思います。

(道上洋三)そうですか。ニーズに合わせて政策をコロコロ変える。言うことも変える。

(町山智浩)変えまくりです(笑)。ポリシーないですから、この人。

(道上洋三)大丈夫ですか、アメリカは?

(町山智浩)だから、この人が核ミサイルのボタンを持ったらヤバいと言われてますね。

(道上洋三)なるほど(笑)。

(町山智浩)あと、国内向けすぎるんで。外国との協調は考えていないから。それこそドルの切り下げとか、かなりとんでもないこともする可能性がありますね。

(道上洋三)ああ、そうですか。なるほどね。これはちょっと日本は「日米協調体制で」って判で押したようなことを言ってますけども。そう言ってられなくなるかもしれないですよね。

(町山智浩)そういう人じゃないです、相手は。はい。

(道上洋三)ああ、そうですか。ちょっと覚悟しながらニュースを見ていかないといけませんね。これからね。

(町山智浩)はい(笑)。

(道上洋三)どうも、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

(電話を切る)

(道上洋三)カリフォルニア、バークレーにお住まいの町山智浩さん。いつもストレートで、ちょっとニュースとか新聞の論調とかと町山さんは違う、市井の空気っていうか雰囲気っていうか。そういうものも、ちゃんとつかまえてお話くださるんでわかりやすいですけど。大統領選挙、まあ違う意味で盛り上がっているようです。

<書き起こしおわり>
2016年アメリカ大統領選挙 解説記事まとめ
2016年のアメリカ大統領選挙について、主にTBSラジオで放送された解説についての記事をまとめました。 町山智浩 2016年アメリカ大統領選とドナルド・トランプを...
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