町山智浩 映画『さざなみ』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、イギリス映画『さざなみ』を紹介。劇中で使われる音楽の意味や俳優陣の過去の作品から、映画を解説されていました。


(町山智浩)今週はですね、もう4月9日に日本公開になりますイギリス映画で『さざなみ』っていう映画を紹介させてください。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)これは、いつも僕がやっているようなバカ映画じゃなくてですね、非常に渋い、70才の奥さんと79才の旦那さんの老夫婦。45年間、ずっと結婚していた老夫婦の45年目の話なんです。

(山里亮太)っていうことは、いつも町山さんが言う裸情報は今日は無いですね?

(赤江珠緒)ねえ。

(町山智浩)えー、まあ……近いものはありますけども(笑)。

(赤江珠緒)いやいやいや、無理して盛り込まなくていいですから、町山さん(笑)。

(町山智浩)盛り込まなくていいですよね。70才の夫婦ですからね。はい(笑)。それで、この『さざなみ』っていう映画の話をする前にですね、ちょっと音楽を1曲、聞いていただきたいんですが。エマーソン・レイク・アンド・パーマー(Emerson, Lake & Palmer・ELP)の『Jerusalem(聖地エルサレム)』。お願いします。

エマーソン・レイク・アンド・パーマー『Jerusalem』



(赤江珠緒)きれいな曲。

(町山智浩)はい。この歌は『Jerusalem』っていう歌なんですが。ELP。エマーソン・レイク・アンド・パーマーというイギリスのプログレッシヴ・ロックバンドの歌なんですね。で、このキーボードを弾いているキース・エマーソン(Keith Emerson)さんがついこの間、3月11日にカリフォルニアで自殺をされまして。71才なんですけどね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)で、その時に一緒にいた人は日本の人ですね。川口真理さんっていう日本の女性が一緒に暮らしていたらしいんですけど。なんか、ちょっと健康が良くなくて、思ったようにキーボードが弾けなくなったという理由で拳銃で自殺されたということなんですけども。このキース・エマーソンっていう人は、ものすごく日本で人気があったんですよ。ご存知です?

(赤江珠緒)いやー……

(山里亮太)知らなかったです。

(町山智浩)覚えてない?

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)あの『幻魔大戦』っていうアニメがあったじゃないですか。あの主題歌とかやっているんですよ。



(赤江珠緒)ほー! じゃあ結構、そうなんですね。

(町山智浩)日本ではね、すごく人気があって。ELPっていうバンドは。あと、『ゴジラ ファイナルウォーズ』の音楽とかもやってますね。



(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、この人がいかに日本で人気があったか?っていう話をするとですね、青池保子さんっていう少女漫画家がいましてですね。その人が昔、描いていた『イブの息子たち』っていう漫画があるんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)で、それは3人のすごくイケてる美青年がちょっとゲイでっていう、まあBLものの元祖なんですけども。それに出てくるヒースっていう顔の長いキャラクターのモデルがこのキース・エマーソンなんですよ。


(赤江珠緒)へー! この金髪の。なるほど。長髪の。

(町山智浩)そうそう。もう、顔は長いんだけども、美青年っていうね、設定なんですけども。で、青池保子さんの漫画っていうのはロックファンの間ではもう大好きで。もうロックファンはかならず読んでいる漫画だったんですけど。そういうグループがあったんですよ。ELPっていう。プログレッシヴ・ロックっていうのはね、ご存知かどうか、あれなんですけども。クラシックみたいな非常に高度な演奏技術と、非常に哲学的なテーマをアルバム1曲で語っていくという、非常に大げさなロックなんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、それをやっていた人なんですけどもね。で、ライブなんかもかっこよくて。ナイフを鍵盤に突き立てたりとか、すごいかっこよかったんですけども。そのキース・エマーソンさんが亡くなって、僕はファンだったんで聞いてもらったんですが。いまの歌はね、これ、サッカーファンだと聞いたことがあると思うんですよ。

(山里亮太)へー。サッカーのやつでかかっているんですか?

(町山智浩)これね、イングランドの副国歌ですね。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)これはELPのですね、『恐怖の頭脳改革』っていうすごいタイトルのアルバムの1曲目に入っているんですけども。『Jerusalem』っていう曲でですね。まあ、『God Save the Queen』よりもイギリスの労働者階級の人たちが歌うイギリス国歌みたいな感じなんですね。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、『God Save the Queen』って『女王陛下万歳』なんですけど。この歌はもっとすごく反逆的なんですよ。歌詞が。

(赤江珠緒)そうなんですか。

(町山智浩)この『Jerusalem』っていうのは、「このイギリスはサタンの工場みたいなものだ。腐敗している。でも僕は、心・精神の戦いを止めない」っていう、ものすごい
パンクでロックな歌詞なんですよ。

(赤江珠緒)そうなんですか。曲調すっごい美しい、なんか穏やかな……

(町山智浩)そうなんですけどね。これをまあ、イギリスの人たちはサッカーの試合とかで歌うわけですけど。



(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、今回、僕この『さざなみ』っていう映画を紹介する時になんでこの歌をかけているか?っていうと、この歌がある映画で、ひとつのテーマとして使われているんですね。それは、『長距離ランナーの孤独』という62年の映画なんですが。この『長距離ランナーの孤独』っていうのは世界の青春映画の大傑作なんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、どのぐらいすごい映画か?っていうと、あのシルベスター・スタローンが『ロッキー』のシナリオを書く時に参考にした映画なんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、これ、主人公はイギリスの労働者階級の少年で。この少年を演じている人がトム・コートネイっていう今回の『さざなみ』っていう映画の主演俳優なんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、いま79才ですけど。62年の時に出た映画で、まだ少年なんですが。で、イギリスっていうのは労働者階級に生まれると、もう当時は全く生涯、一生労働者階級だったんですよ。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)もうずっと貧しい仕事をして、貧しく死んでいくしかなかったんですね。イギリスっていうのは階級社会だから。

(赤江珠緒)そんなに階級が厳しかったんですね。うん。

(町山智浩)完全に階級が分かれていたんですよ。で、そこに生まれた主人公の少年が、ちょっと犯罪を犯して少年院に入れられちゃうんですね。で、少年院で歌うのがこの歌なんですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)つまり、「この国は腐っているけど、俺は心の戦いを止めない!」って歌うんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、彼は走るのが早いから、長距離ランナーとして少年院の院長に見初められて。戦士として鍛えられるんですね。で、所長は「お前が長距離レースで勝てば、いくらでも金をやるし、学校にも入れてやる」って言って懐柔しようとするんですよ。で、ここで主人公はすごく悩むんですね。「権力に従って一生懸命走れば、俺はもしかしたら金持ちになれるかもしれない。でも、それは権力者に心に負けることじゃないか?」っていうことで、葛藤していくっていう物語なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、主人公が最後に選ぶ選択は何か?っていうのがこの『長距離ランナーの孤独』という素晴らしい映画なんですけど。それの反逆する少年を演じたのがトム・コートネイで。今回の79才の老人を演じてるんですね。

(赤江珠緒)わー! この時の流れがまた。

シャーロット・ランプリング

(町山智浩)もう1人、奥さん役の方の人は、シャーロット・ランプリングという女優さんで、現在70才なんですけども。この人も、実はその当時のアイドル的な女優さんだったんですね。で、もう1曲、聞いていただきたいんですけども。『Georgy Girl』、聞いていただけますか?



(赤江珠緒)ああー、うん。

(町山智浩)はい。これ、聞いたことありますか?

(山里亮太)あります。車のCMかなんかでね、たしか使われていたと思います。

(町山智浩)そうそうそう。そうなんですよ。これね、『ジョージー・ガール(Georgy Girl)』という1966年のイギリス映画のテーマ曲なんですね。で、これは主演はそのシャーロット・ランプリングさんじゃなくて、別の人。リン・レッドグレイヴっていう人が主演なんですけど。これ、ジョージーっていう女の子がその当時、1960年代のイギリスっていうのは世界の最先端だったんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、その頃、60年代っていうのは全世界でカウンター・カルチャーと呼ばれる世界的な若者革命が起こっていたんですよ。これ、NHKの新・映像の世紀でもやっていましたけども。

(赤江珠緒)見ました、見ました!

(町山智浩)見ました? 世界の若者革命。

(赤江珠緒)見ました。あちこちでね。

(町山智浩)要するに、全世界でね、若者たちが一種の暴動みたいな形で、ファッションとか音楽とか政治的な運動とかをして。で、アメリカからヨーロッパ、日本、あと中国。共産圏も全員が立ち上がって、大人たちに立ち向かったという時代があったんですね。

(赤江珠緒)まさにこの時代。

(町山智浩)そうなんですよ。で、それでイギリスがいちばんそれが進んでいてですね。それは、もともとさっき言った『長距離ランナーの孤独』に代表される、『怒れる若者たち』っていう運動があったんですね。労働者階級の若者たちは何をやっても絶対にうだつが上がらないっていうことで、ものすごい怒りが爆発したわけですよ。で、出てきたのがビートルズ(The Beatles)とかのロックンロールなんですね。

(赤江珠緒)そっか、そっか。ええ、ええ。

(町山智浩)そう。彼ら、みんな労働者階級なんですよ。まあ、ミック・ジャガー(Mick Jagger)とかは違うんですけども、ビートルズとかは一生労働者として工場で働くしかなかったのに、ロックンロールでもって戦い始めたんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、一斉にそこから全世界的に火がついて。特にロンドンでは、ミニ・スカートが始まったりして。女の子たちも、イギリスっていうのはものすごい、ヴィクトリア朝の世界で、首の顎の下まで襟があるような服を着て、肌を一切出さないっていうような国だったんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それが一気にミニ・スカートになっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)なんか、価値観がガーッと変わりましたもんね。

(町山智浩)180度、変わったんですね。で、大人の言うこと全部に反対するっていうことでもって、特にイギリスとかから出てきたのが……イギリスに限らないですけど、ヨーロッパ、アメリカで出てきたのが、「フリーラブ」っていう考え方なんですよ。つまり、結婚に縛られないと。好きな人と、好きなように恋愛して、何人でも同時に恋愛して。で、やりたくなったらやっちゃいな!っていう世界だったんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それが、だからいま70才ぐらいの団塊の世代の人たち。ベビーブーマーの人たちとか、いま大人しくしてますけども。若いころは、やりまくりですから。あいつら!

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)なるほど! そんな時代があったんだ。

(町山智浩)って、時々聞いた方がいいですよ。「どんくらい、やった?」とかね。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)で、偉そうなことを言って説教したりする時には、「あんた、ヤリまくりだろ? 若い頃」って言った方がいいですけど(笑)。

(山里亮太)なるほどなー! いいなー! あ、「いいな」じゃねえな。間違った。

(町山智浩)で、たくさん年金を貰っているんですが。まあ、それはいいんですが(笑)。その『ジョージー・ガール』っていう映画は、そういう風潮に乗れない女の子の話なんですよ。

(赤江珠緒)ああー、そうだったんだ。

(町山智浩)で、周りはみんなイケイケでもってエッチとかしてるのに、ジョージーっていう女の子は、なんかそれがうまくできないわ……っていう歌なんですね。これ。

(赤江珠緒)はー! うん。

(町山智浩)で、その中で、モテモテの女の子を演じていたのが、シャーロット・ランプリングっていう女優さんなんですよ。

(赤江珠緒)若い時のお写真がありますけど、めちゃめちゃきれいですもんね。

(町山智浩)ものすごいきれいなんですよ。この人。で、スタイルもよくて。モデルもやっていたんですけども。で、当時のロンドンではもう、いわゆる「スウィンギング・ロンドン」って言われた、なんでもありの世界の中でアイコンみたいな存在だったんですね。シャーロット・ランプリングさんっていう人は。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)とにかくエッチで。もう映画とか出ると、脱ぎまくっているし。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか!

(町山智浩)で、しかも結婚した時に、男2人と彼女は1人で暮らしていて。いわゆる一妻多夫制みたいなことをやっていたらしいんですね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そういうまあ、進んでいる人だったんですよ。この人は、すごく。で、さっき言った反逆する少年、怒れる若者の79才のトム・コートネイと、昔、もうスウィンギング・ロンドンでイケイケだったシャーロット・ランプリングが70才になって共演したのがこの『さざなみ』っていう映画なんですね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だから、なにもわからないで見ちゃうと、ただのおじいさんとおばあさん2人なんですけど、この2人はイケイケでしたから! 若い頃は(笑)。

(赤江珠緒)そういうことなんですね!

(町山智浩)そう。僕らの世代から見ると、そういう風に見えちゃうんですよ。「あ、こんなに枯れているけど……」みたいなね。

(赤江珠緒)じゃあ、大御所中の大御所の2人が組んだ夫婦役?

(町山智浩)そうなんですよ。はい。で、まあ2人とも若い頃はモテモテだったわけですけど。で、45年間一緒に暮らしている夫婦っていうことになっているんですね。で、結婚45年目のパーティーを開こうってことで、準備をしているんですよ。そこに、ところがひとつの通知が来るんですね。旦那さんのトム・コートネイのところに。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それは、50年前に、要するに彼女、いまの奥さんと付き合う前に、彼がガールフレンドを連れてスイスに行った時に、そのガールフレンドが行方不明になったんですね。ところがそれが50年後のいまに、「氷河から出てきた」っていう通知なんですよ。

(山里亮太)氷河から?

50年前の夫の恋人の遺体が氷河の中から見つかる

(町山智浩)氷河って、ありますよね。あれって、人が落ちたりすると氷漬けになるんですけども。すると、ゆっくりと下におりていって、何十年後かには下に出てくるんですよ。その死体が。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、そうすると出てきた遺体っていうのはほとんど死んだ時のままに保存されているんですよ。

(山里亮太)あ、冷凍保存されるんだ。

(赤江珠緒)うわー、そういうことだ。

(町山智浩)そうなんです。で、これは何度もいろんな例があって。この『さざなみ』っていう映画の原作者がこの小説を書いたきっかけっていうのは、本当に最近あった事件で。何十年も、25年も30年も前に死んだ登山家の遺体が出てきたと。その時に、それを受け取りに行った人が、その登山家が死ぬ直前に奥さんを妊娠させて生まれた子供だったんですね。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、会いに行ったら、ほとんど死んだ時のままでお父さんが保存されていて。そのお父さんが、自分よりも若かったと。

(赤江珠緒)はー! そういうことになりますね。そうか。

(町山智浩)そうなんですよ。もうほとんどそのままなのに、自分より若い父親と対面したっていう記事があって。新聞記事かなんかで。で、それを読んで、原作者が書いた小説の映画化がこの『さざなみ』なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、そこで、「亡くなった遺体をスイスまで引き取りに来い」って言われるわけですね。すると、そこにいるのは、まだハタチそこそこの旦那の、自分が付き合う前の彼女なんですよ。

(赤江珠緒)うーん! うんうん。

(町山智浩)で、それを知ってその旦那さんは45年目の結婚パーティーを祝おうと思っていたのに、心が揺らぎ始めるんですね。で、こっそりスイスまで、遺体を見に行こうとし始めるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、それは……そういう心理もわかりますよね。

(町山智浩)ねえ。でも、奥さんとしては、自分が会う前の彼女だけども、まだハタチの姿でそこにいるって考えたら、もう居ても立ってもいられなくなるんです。

(赤江珠緒)そうか。遺体だけが時を超えちゃってますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。と、いう話なんですね。で、これってどうなのかな? と思うが、女の人はよく言われますけども。「男性経験を上書き保存する」と。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)つまり、過去のものは全て消えていくんだと。でも、男っていうのは「付き合った人が全部消えないで残っていて、積み重ねていく」って言われてますよね?(笑)。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)だから、奥さんの方も「50年前の彼女でも、この男の中ではまだ彼女の1人なんだ」と。

(赤江珠緒)ああ、そうですか! もう亡くなっているのに?

(町山智浩)亡くなっているのに。っていうかもう、亡くなっているけども、自分と会う前の人だよね? 赤江さんとか、自分と旦那が出会う前に、旦那が好きだった人とか、嫉妬します?

(赤江珠緒)いやー、これがね、本当に私、これが「中身がおっさん」って言われる所以だと思うんですけど……そういうの、本当にないかもしれない(笑)。

(町山智浩)全然ないんですね(笑)。

(赤江珠緒)「おっさんくさい」って言われるんですけど。うーん。だってそれは、会う前だし。

(町山智浩)「関係ない」って思いますよね? 山里さんは、でもどうですか?

(山里亮太)僕はちょっと気になっちゃうタイプなんですよ。前の人のことが。「前の人と、こんなところに行った」とか言われちゃうと、「えっ、それなんなの? いま、言う必要あった?」みたいなことを言いたくなっちゃうタイプ。

(町山智浩)あ、どっかデートに行った時に、「ああ、ここ前に来たわ」とか言う時ね。

(山里亮太)そう。言われちゃうとちょっとムッとして。「えっ、それ言う必要、あった?」っていう……

(町山智浩)「誰と行ったんだよ?」みたいな。大観覧車でエッチしようとしたら、「前もしたわ」とか言われたりするんでしょ?

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)いや、町山さん、町山さん……

(赤江珠緒)それはちょっと、私も気になる感じの……(笑)。

(町山智浩)あ、そういうんじゃないの?

(山里亮太)それは、どんな人でもそうでしょう? 「この観覧車で昔、エッチしたんだよ」って言ったら、「お前、なにやってんだよ!」ってなるでしょう?(笑)。

(町山智浩)ねえ。妙に段取りが良かったりすると、気になるとか、そういうやつじゃないですか?(笑)。

(山里亮太)そうそう。「この角度が見えないんだよ」なんつって(笑)。町山さん。町山さん!

(町山智浩)そういう、なんか人によって違いますけどね。

(山里亮太)よくこの『さざなみ』の映画の話で下ネタをブチ込めましたね! 町山さん(笑)。

(町山智浩)いやいや、そういう仕事ですから。はい(笑)。

(山里亮太)違いますよ! そういう仕事ではない(笑)。

(町山智浩)でね、この中でね、ラジオから曲が流れるシーンがあるんですね。ちょっと聞いてもらいます。『Young Girl』。ゲイリー・パケット&ザ・ ユニオン・ギャップ(Gary Puckett And The Union Gap)で、お願いします。



(町山智浩)はい。これはその60年代に、この夫婦がイケイケだった時の思い出の曲ではあるんですけど。これが流れると、奥さんはね、「ラジオ、消して!」って消しちゃうんですよ。怒って。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)どうしてか?っていうと、この歌はね、「君は僕には若すぎるよ」っていう歌なんですよ。で、「君みたいな若い子がいると、困るんで。僕の心から出て行ってくれないか? お願いだ」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)うわー、なるほどー!

(山里亮太)つながっちゃうんだ。

(町山智浩)この、まさにその氷河に閉じ込められていた女の子のことを歌っているように聞こえて、奥さんがガッ!って怒って切っちゃうっていうシーンがあって。

(赤江珠緒)ああ、でもそれ、ちょっとかわいらしいじゃないですか。奥様のその心理。

(町山智浩)そう。だから、どんどん乙女になっていくんですよ。この70才の奥さんが。この件によってね。で、これもたぶん、歌の歌詞を知らないと、なんで消すのかわかんないと思いますけどね。

(山里亮太)最近、あれですよね。映画の使われている曲とかの意味合いを知っておくと、より面白くなれるっていう映画が多いですね。なんか。

(町山智浩)そうなんですよ。特にこの映画の場合には、彼らが青春だった頃の60年代のイギリスのポップスが流れるんで。それでちょっと、わからないとわかりにくいところなんですけども。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)はい。ただね、この映画を見ていて僕、静かな映画なんですけど、すごく感動したのはですね、ある小説に似ているんですね。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)それね、レイ・ブラッドベリというアメリカの作家が書いた短編小説で『みずうみ』っていう小説があるんですよ。で、これは『10月はたそがれの国』という短編集に入っていて。全世界のあらゆる小説の中で、最も短くて、最も悲しくて、最も美しい話と言われているんですね。で、これは12才の頃に主人公が幼馴染の女の子が湖で溺れて行方不明になっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それから何十年後かに結婚して、子供ができて、その故郷の湖を訪れるっていう話なんですけども。これが素晴らしい小説でね。ちょっとみなさん、探して読んでいただきたいんですけども。萩尾望都先生がすごく影響を受けてますね。

(赤江珠緒)ああー、望都先生が。へー!

(町山智浩)『みつくにの娘』という素晴らしい短編漫画があるんですが。それは明らかにこの『みずうみ』の影響を受けてますけども。それを思い出させるね、失ってしまった過去との葛藤とかが非常に泣かせるんで。これ以上言うと、オチをバラすことになるんで言いませんが。というね、映画が『さざなみ』という映画で。ラジオをお聞きの方で、僕ぐらいの年齢の人はぜひ、見に行っていただきたいなと思います。

(赤江珠緒)いや、でも思い出と戦うっていうのは大変ってね、いちばん言いますもんね。

(山里亮太)なんか、知った感じのことを言ってますね?

(町山智浩)でも、いきなり蘇ったら怖いですよ。やっぱり。

(赤江珠緒)そうですね(笑)。蘇ったらまた、違いますね。

(町山智浩)これ、来週公開か。

(山里亮太)4月9日。

(赤江珠緒)ということで、映画『さざなみ』のお話をうかがいました。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どうもでした。

<書き起こしおわり>

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