町山智浩 映画『スポットライト 世紀のスクープ』を語る

町山智浩 映画『スポットライト(Spotlight)』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、カトリック教会の神父による少年たちへの性的虐待事件を報じたボストンの新聞記者たちを描いた映画『スポットライト 世紀のスクープ』を紹介していました。

スポットライト 世紀のスクープ (字幕版)

(町山智浩)今日はですね、もうアカデミー賞に向かっていますので。アカデミー賞候補になるだろうと言われている作品で『スポットライト(Spotlight)』という映画を紹介します。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これね、『スポットライト』っていうタイトルはボストンのボストン・グローブっていうローカル紙にあるコーナーの名前なんですね。で、そこのスポットライトっていうコーナーはローカル紙が独自に調査したローカルネタの記事を連載しているコーナーなんですけども。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)そこのチームがですね、5人ぐらいいて。2002年にですね、カトリック教会の神父による少年たちへの性的虐待事件を暴いたことがありまして。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)これは最終的に全世界に発展していって、要するにバチカンが支配する全世界のカトリック教会で何千人もの少年たちが・・・歳は11才から14才ぐらいが中心だったんですが。ひどい時には3才の男の子まで、神父たちによって性的にレイプされていたことが判明しまして。

(赤江珠緒)そんな数ですか!?ええっ!?

(町山智浩)そうなんですよ。それで、カトリック教会っていうのはすごい2000年ぐらい歴史があるんですけども。ローマン・カトリックっていうのは。で、一時はどんな国王よりも力があったんですね。昔、『カノッサの屈辱』っていう有名な話がありますけども。それぐらい権力があったローマン・カトリック。バチカンがですね、もう初めて土台がグラついてるんですよ。これで。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)全世界で4千件近く、現在レイプが報告されていてですね。神父の資格を剥奪された人が8百人以上。で、2千6百人ぐらいが職務永久停止っていうのを食らっているんですよ。

(赤江珠緒)えっ、そんな・・・ええっ!?

(町山智浩)で、アメリカだけで2015年の秋までに支払った性的被害者の損害賠償額は40億ドルです。

(赤江珠緒)ケタが違うんですけど。ええっ!?

(町山智浩)ものすごい額です。アメリカだけでですから。全世界だと、それこそもっといっちゃうわけですよね。倍とかね。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)そのきっかけとなった事件というか・・・

5人の記者が暴いた少年への性的虐待事件

(町山智浩)そうなんですよ。たった5人の新聞記者がそれを暴いたっていう話なんですよ。いままで、要するに国王すらも倒せなかったバチカンをガタガタにしたのはたった4人か5人の記者だったっていう話がこの『スポットライト』っていう映画ですね。

(赤江珠緒)実話かー・・・

(町山智浩)これは主人公はですね、『バードマン』に出ていたマイケル・キートンっていうおっさんですね。

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(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)目がギョロっとしている、昔『バットマン』をやっていた人ですけど。その人がボストン・グローブでスポットライトっていうコーナーのデスクをやっているんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、そこに上司が来るわけですよ。ぜんぜん違う、フロリダの方でやっていたユダヤ系の編集長が上司で来ましてですね。で、『このコラムを読んだか?』って言うんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、そのコラムは過去に何回か神父による性的な男の子に対するいたずら事件があって。それが示談になったっていうちっちゃいコラムだったんですよ。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)で、『これ、なんで調査しないんだ?』って聞くんですね。その、新しく来た上司が。したらね、そのボストン・グローブの記者たちはそんなものを調査するってことが全く欠片も思っていなかったんですよ。

(赤江珠緒)なんで?

(町山智浩)どうしてか?っていうと、ボストンっていうのは前も話したんですけど、アイルランド系の人が4人に1人なんですね。23%以上。で、カトリックなんですよ。みんなが。で、マサチューセッツ州っていうところにあるんですけども、2人に1人がカトリックなんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)で、ものすごいカトリックが強くて。あと、イタリア系、ポーランド系が人口の多くを占めているんで、カトリック教会がものすごい権力を持っていて、誰も手が出せない、すごいものだったんですね。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、前に『ブラックス・キャンダル』っていう映画で警察も政治家も犯罪者もみんなアイルランド系によって支配されているっていう話をしたんですが。ボストンは。

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(赤江珠緒)ああ、そうでしたね。

(町山智浩)で、カトリック教会はそれ以上の力を持っているんですよ。イタリア系、ポーランド系も全部支配してますんで。プエルトリコ系とか。だから、こんな事件があっても誰もそんなものを捜査したりとか調査したりとか。そんなもの、誰も手が出せないんだから・・・っていうことで、頭の中に入ってなかったんですよ。彼ら。

(山里亮太)はー、なるほど。だから、他所から来たから、そこらへんの・・・

(町山智浩)そうなんですよ。だから、他所から来た部外者のユダヤ系の人が、『なんでこれ、調査しないの?』って言ってから、調査を始めることになるんですね。で、まずその被害者たちの弁護士を務めている人が1人だけいて。その人に会いに行くんですけど、その人もアルメニア系なんですよ。

(赤江珠緒)ふん。

(町山智浩)だから、そういったものと戦える唯一の人だったんです。まあ、唯一ってことはないけど、珍しい人だったんですね。それで、新聞記者もほとんど、ユダヤ系の編集長以外は全員やっぱりカトリックで育っているんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)スタッフが。で、その被害者の弁護士のところに行って、『とりあえず被害者の人に会わせてくれませんか?』っていうことになって、被害者に会うんですね。

(赤江珠緒)ふん。

(町山智浩)すると、男の子。30ぐらいの男性なんですけど、もうとにかく貧乏で。で、お母さんに育てられてカトリックの教会にずっと行ってたんだけども、神父さんに『ヤラせろ』って言われたら、断れなかったと。子供だったし、お母さんは神様を信じているし、自分も神様を信じているし。で、神父は神の代理人だと思っているから、断れるはずがないと。

(赤江珠緒)はー!その信仰心につけこんで。

(町山智浩)で、まあひどいことを・・・そうなんですよ。されたと。で、彼はもう麻薬中毒でボロボロなんですね。で、それに会ってショックを受るんです。新聞記者たちが。その会ってショックを受ける新聞記者はマーク・ラファロさんっていう俳優さんが演じてますが。この人、『ハルク』の人ですね。

(赤江珠緒)おおー。はい。

(町山智浩)で、『彼、ひどいね。ボロボロだね』っていう風に言うとその弁護士が『いや、彼はマシな方だよ』って言うんですよ。『だって、自殺している人も多いからね』って。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)で、これは単なる性的な犯罪ではなくて、魂に対する犯罪なんだと。で、これね、僕、昔『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』っていう番組がありまして。懐かしい番組ですが。続けてほしかったですけどね。それで、この被害者の人たちにインタビューしたドキュメンタリー番組をテレビで放送したことがあるんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)いまはなきMXテレビで。あ、いまあるのか?

(山里亮太)いま、MXテレビ自体はありますよ(笑)。

(町山智浩)はい(笑)。そこでですね、放送したんですが。それは被害者の人たちのインタビューですけど、それ、強烈だったですよ。彼らの問題はまず神様を信じられなくなるんですよ。あらゆる神を。宗教ってものを全く信じられなくなって。世界を信じられなくなるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だってそれまで神様が全てだと思っていたから。子供の頃から。

(赤江珠緒)そうですね。うん。

(町山智浩)それにレイプされるわけですからね。

(赤江珠緒)これね、町山さん。被害者は男の子ばっかりなんですか?

(町山智浩)女の子もちょっといます。ただ、まずね、神父になろうと思っていた人たちの中に、もともと神父になると結婚できないんですね。それでもOKっていう人が多かったんで、男性を狙う連中が多かったらしいですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)神父が結婚できないっていうのは別に聖書にそう書いてあるわけじゃなくて。バチカンが全ての神父の持っている権力を最終的に子孫に譲り渡したり分担させないようにするために、子供を作らせないようにして、結婚をしないっていうのが決まっただけなんで。

(赤江珠緒)一代限り。

(町山智浩)単なる経済経営上の理由なんですよ。

(山里亮太)あ、そうなんだ。

(町山智浩)はい。だから後で嘘をついて。『神様と結婚したんだから、結婚しなくていいんだ』っていう風な理由をつけたんですけど、聖書にはそんなこと、どこにも書いてないんですね。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)権力を集中させて経済力を集中させるためだったんですよ。バチカンに。

(赤江珠緒)なるほどー!

(町山智浩)それで、まあひどかったのは、じゃあなんでこれがいままで、あからさまにならなかったのか?と。それで中で調べてわかったのは、ジョン・ゲーガンという神父は130人の男の子を犯していたことがわかるんですよ。調べていくうちに。

(赤江珠緒)うん。

性的虐待事件を繰り返した神父

(町山智浩)あの、被害者たちに片っ端から会っていくんですけどね。で、なんでこれが明るみにならなかったのか?っていうと、これが単にその神父だけの問題じゃないことがわかってくるんですよ。まず、このゲーガンっていう神父はなぜ、ぜんぜん処分されないのか?って調べると、『病気で転任』っていうので転任を繰り返しているんですね。

(赤江珠緒)自分自身が。はい。

(町山智浩)で、カトリック教会っていうのはバチカンに本部があって、すべての神父はそこから派遣されるんですよ。チェーン店みたいになっているんですよ。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、事件を起こすたびに、違うところに転任させて。で、ほとぼりが冷めると帰ってくるっていうのを繰り返して、グルグル回していることがわかるんですよ。

(山里亮太)うやむやにしてたんだ。隠して。

(赤江珠緒)えっ、じゃあバチカンは知っていたの?

(町山智浩)バチカンは知っていて。しかも、その信者たちにこっそり示談金を払って、示談にしてるんですね。

(山里亮太)うわー・・・

(町山智浩)被害者たちに。で、被害者たちのほとんどっていうか全員がものすごく貧しい家で。その、お金さえもらっちゃうと黙ってる人たちばっかりなんですよ。それしか狙わないんですよ。

(山里亮太)ええっ?

(町山智浩)で、しかもそれを示談にしてOKってことにして、裁判とかも全部、1回も裁かれない。有罪判決が出ていないっていうのは、その地元のボストンの弁護士がやっぱりみんなカトリック教会にコントロールされているからなんですよ。

(赤江珠緒)怖っ!なんか根深いですね。ええっ?

(町山智浩)そう。だからこれは『変な神父がいた』っていう問題じゃなくて、市の政治家から弁護士から司法、裁判官、警察から、全部結託したシステムだったってことがわかってくるんですよ。新聞記者が。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、もちろん新聞社の上の方も知っていて、黙っていたんですよ。

(赤江珠緒)えっ?そうか・・・

(町山智浩)もちろん、そうなんですよ。で、『これは大変な事態だ!』って今度、裁判所に行って、書類を、記録をなんとか見つけようとすると、記録自体が存在しないんですよ。

(山里亮太)そうか。裁判所もそこらへんの力が入っているから。

(町山智浩)そう。隠滅されてるんですよ。で、大変な、全部が敵だっていうことがわかってくるんです。この5人の新聞記者以外は。で、そこでどうやって証拠を見つけていくか?っていう話なんですね。この『スポットライト』っていう映画は。

(山里亮太)うわー。すごそうだな、これ。

(町山智浩)これね、僕、見ていてね、『大統領の陰謀』っていう1976年の映画を思い出したんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)これ、前も『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』っていう映画の元になっているっていうことで紹介したんですが。ニクソン大統領が1972年に盗聴をしたんですね。

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(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)で、それをたまたまワシントン・ポストっていう新聞の記者がなんとなく勘づいて、徹底的に調べて暴いたことで、ニクソンは辞任に追い込まれたんですね。大統領を。で、それはニクソンが辞任に追い込まれたことは世界中の人が知っていたんですけど、どうやってその新聞記者が気づいたか?っていうのを映画にしたのが『大統領の陰謀』っていう映画だったんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)だから、実はこのカトリックの事件っていうのは、全世界の人が結構知っているんですよ。大変な問題になりましたから。ただ、どうやってこの新聞記者たちがそれに気づいたか?っていうのはあんまりみんな知らないんですよね。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)だからそれを緻密に描いていく映画になっていますね。『スポットライト』っていうのは。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)そりゃあだって、妨害とかもね、いっぱい入ってきたりとか。いろいろ・・・障害のレベルが違いますよね。

(町山智浩)妨害もすごいんですけどね。で、これね、調査ジャーナリズムと言われているもので。ジャーナリズムって、最近日本もアメリカもそうなんですけど、ほとんどが批評ジャーナリズムになっちゃっているんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)みんなが知っている事件をどういう風に書くか?みたいな話になっちゃっていて。でも、本当の調査ジャーナリズムっていうのは探偵みたいにして、警察とかまで、警察とかが知らんぷりしているものとかをジャーナリストが自分の力で探っていって、真相を見つけていくっていうジャーナリズムがあるんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)でも、それが最近、ぜんぜん流行ってないんですよ。アメリカでも、日本でも。まあ、世界的にね。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)みんなが知っている事件を、まあどう評論するか?みたいなことになっちゃっているんで。

(赤江珠緒)でも、そうなるとね、絶対的権力に対しての対抗手段がないですもんね。

(町山智浩)だから権力にしても誰にしても、とにかく人の悪口を書けばいいや!っていうことになっちゃうんですよ。ジャーナリズムって。そうじゃなくて、足で調べていくと。っていうのを、昔のジャーナリズムっていうもののあり方を見せていく映画なんですよね。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)でもやっぱり、大変なんですよ。結構こういうことをやると。僕、昔『宝島30』っていう雑誌で編集者をやっていた時に、前も話したんですけど、まあ右翼に銃撃されたっていう話はしましたけど。それ以外にもね、宗教団体いくつか調査とかやっていて。それも裁判をやられるは、嫌がらせされるは、大変だったんですよ。

(赤江珠緒)まあ、いろいろ敵みたいなのが出てきちゃいますもんね。

(町山智浩)そうそう。あとね、北朝鮮がずっと天国みたいな国だって嘘で宣伝されていて。で、朝鮮籍の人たちが北朝鮮に帰ったんですね。帰ったっていうか、行ったことがないのに、行ったんですよ。北朝鮮籍の人ってほとんど韓国出身ですから。で、行って、もうかなり殺されているんですよ。もう、大虐殺ですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)日本から北朝鮮に行った人たちは。それで、その人たちのことをほとんど報道されていないんですけど、それとかを追っかけたりしたんですけど。で、まあ単行本にしたりしたんですけど。それもまたものすごい妨害とかね、もう大変だったんですよ。もう。内容証明とか送られてきてね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、やっていくうちにね、記者と、それを調べているライターの人と僕との間で、ケンカになっていくんですね。『嫌がらせされたのに、どうして守ってくれないんだ!?』みたいな話になっていくんですよ。

(赤江珠緒)はー、そうか。身内同士でもね。

(町山智浩)大変ですけど。ノンフィクション作家のね、米本和広さんっていう方と一緒に組んで宗教団体の追求とかやっていたんですけど。それが、米本さんが最終的にその宗教団体のトップの逮捕にまで、暴いたんですね。米本和広さんは。

(山里亮太)ええっ!?

(町山智浩)米本和広さんで調べてもらうと、Amazonでまだ売っていると思います。その逮捕自体もずいぶん前の話ですけどね。はい。そこまで行った時はものすごく嬉しいんですよ。編集者は。これね、その記事が出る日の発売日の緊張と興奮っていうのが描かれていて、そこでなかなか感動するんですけどね。この『スポットライト』っていう映画は。

(赤江珠緒)へー、そうか。

(山里亮太)町山さんとかにシンクロするところがあるから。たくさん。

(町山智浩)やっぱりね、ものすごいね、『さあ、記事書いたぞ。今日、発売だぞ!』っていう時は、『さあ、どうなるだろう?』って。で、発売された後にね、編集部にバーッ!っと電話がかかってくるわけですよ。どんどん。いろんな所から。嫌がらせもありますけどね(笑)。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)その感じとかがね、よく出ていてね。なかなかね、わーっ!と思いましたね。

(山里亮太)だって取り上げていることが世界的大問題を・・・

(赤江珠緒)ねえ。じゃあこの記事を元に、カトリック教会はだいぶ刷新したり?

(町山智浩)カトリック教会は最初はね、否定してたんですよ。『こんなものは・・・』って。でも、どんどんどんどん訴訟が次々と起こって。アメリカだけで3千件とか、すさまじい訴訟の数になっちゃって。で、世界中にそれが広がって、どうしようもなくなって、結局ローマ法王っていうかバチカンもそれを認めるということになって、賠償してて。賠償でお金がなくなっちゃっているんですよね。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)あ、バチカンのお金がなくなるぐらい。

(町山智浩)バチカンの方も。で、いまローマ法王ってすごくいい人になりましてですね。フランシスっていう。すごくリベラルな人として、保守的なローマン・カトリックの人たちは怒ったりしてるんですけども。なぜ、彼のようないい人、本当の人格者っていうものをローマ法王にしなきゃならなかったか?って言いますとですね、実はこのアメリカにおけるカトリック教会の子供虐待っていうのを隠蔽していたアメリカでいちばん偉かったローマン・カトリックのトップの人っていうのは、法王の座を狙っていたんですよ。

(赤江珠緒)はー。ええ、ええ。

(町山智浩)で、この事件が起こったんで、彼はローマ法王になれなかったんですけど。そういう人がローマ法王の座を狙っていたような世界だったわけですよ。だから、清廉潔白な人を今度、法王にするしかなかったんですね。その前の法王も隠蔽工作を知っていたりして、謝罪したりしているわけですから。

(赤江珠緒)そうですね。これで暴かれなかったら、その人がなっていた可能性もあると。

(町山智浩)そうだったんですよ!でね、これでわかるのは『日本はムラ社会だ、ムラ社会だ』って言うじゃないですか。ボストンって完全なムラ社会ですよね。これ聞いていると。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)みんながわかっているのに、見ないふりをしてっていう。でもね、まあムラ社会っていうのはだからどこにでもあるなと思いましたよ。見ていて。

(赤江珠緒)うん。そういうことなんですね。

(町山智浩)ねえ。日本ばっかり言われているけど、どこも同じじゃないかと思って。ただね、辛いのは記者の人たちがどんどんどんどんひどいことが暴かれて。自分たちが暴いているわけですけど、暴かれていくと、やっぱりそれで傷つく人がいっぱい出てくるんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、『これを続けていいんだろうか?』って気持ちになってくるんですね。もちろん・・・子供だってカトリック教会行ってるんですよ。自分たちの子供も。

(山里亮太)そうですよね。自分たちもそうなんですもんね。

(町山智浩)そう。でもわかっていくと、『もう行くな!』って言うんですよ。突然。お父さんが。で、『どうして?』って聞かれても、答えられないんですよ。言えないんですよ。あまりにもひどいから。

(山里亮太)そっかー・・・

(町山智浩)で、子供は真面目に素直に神様を信じているのに、そんなことを言ったら子供は社会とか世界に対する不信感の塊になっちゃうじゃないですか。で、あとお母さんがカトリック信者なんですね。記者の女の子のレイチェル・マクアダムスっていう女優さんが演じている女性の記者のお母さんは。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、真面目に神様を信じて、カトリック教会を信じているんだけども、彼女の人生自体を破壊しちゃうことになっちゃうんですよ。もう歳をとって死んでいくしかないのに、『教会はインチキでした』ってことを教えたら、じゃあ死んでいく時にどういう気持ちで死んでいけばいいんですか?そのお母さんは。

(赤江珠緒)最大の価値観を潰されますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからこれはね、恐ろしい犯罪だったんだっていうことが描かれている映画が『スポットライト』でしたね。

(赤江珠緒)えー!しかも、実話だし。もう・・・

(町山智浩)実話ですね。これでまあ、デスクを演じているマイケル・キートンさんはまた『バードマン』に引き続いて、アカデミー賞候補になるだろうと言われてますね。という映画で。ただ、日本公開はまだ決まってないんで。まあ、どういう事件か?っていうのは、僕が紹介したドキュメンタリー版の方の『フロム・イーブル』っていうタイトルでDVD出てますんで、それでも見てください。

(赤江珠緒)はい。これまた話題作になりそうです。今日は映画『スポットライト』をご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした!

<書き起こしおわり>

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