町山智浩 映画『オデッセイ』を語る

町山智浩 映画『オデッセイ』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、マット・デイモンが火星に取り残された男を演じる映画『オデッセイ』を紹介していました。

オデッセイ(字幕版)

(町山智浩)今日はですね、アメリカで大ヒットしている・・・ものすごいヒットしてるんですけど。『オデッセイ』という宇宙サバイバル映画を紹介します。

(赤江珠緒)いや、だからこのね、宇宙サバイバルって聞いて、これが明るくなるのか?と。

(山里亮太)まあ、ねえ。深刻な話っぽい?

(町山智浩)これが明るいんですよ。僕も驚きました。で、話はどういうのか?っていうと、火星に行った宇宙飛行士がですね、たった1人で火星に取り残されてしまうっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)うん。絶望じゃないですか。

(町山智浩)絶望的な状況です。はい。で、話はですね、まずロケットでNASAの宇宙飛行士たちが火星に行きまして。すごい遠いんですけども。それで、着いてですね、6人の宇宙飛行士がそこで研究所、基地を作って1ヶ月間、調査をしようとしてるんですけども。嵐が来ちゃうんですね。ものすごい。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、その嵐が来たんで、至急地球に帰ろう!ってことになって、みんなでロケットに乗ろうとするんですけど。その途中で、嵐で基地のアンテナが折れて、それが飛んできてですね、宇宙飛行士の1人のマット・デイモンにグサーッ!って突き刺さっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)で、他の宇宙飛行士たちは、『こりゃあマット・デイモン、死んだな』と思って。ロケットに乗って、地球に帰っちゃうんですね。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)あらー・・・っていう感じなんですよ。ところがね、マット・デイモン、大したケガじゃなかったんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!?うん。

(町山智浩)で、生きていてですね。生きていたんだけど、火星だと。火星っていうのはね、空気が地球の200分の1しかないんですって。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)それで、人間が必要とする酸素はしかも、ほとんどなくて。ほとんどが二酸化炭素なんですって。で、空気がまずないと。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、あと、ものすごく寒いんですね。火星は。南極とかそれぐらい、もっと寒いらしいんですけど。あと、水が最近火星から発見されたんですけど。地下にあるだけで、簡単に取れたりしないらしいんですよね。基本的に砂漠。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、あと食料は一応持ってきたんですけども、少ししかないんですよ。で、これ、宇宙ロケットが引き返せばいいじゃないかって思うんですけど、宇宙ロケットって引き返してまた助けに来るだけの燃料を持っていないんですね。

(赤江珠緒)ああ、そうかそうか。

(山里亮太)ギリギリなんだ。

(町山智浩)だから彼らは地球に帰ったままなんですよ。で、じゃあ地球から新しいロケットを打ち出せばいいじゃないかって思うんですけども、地球で新しいロケットを作って発射して、火星に助けに来るまでに4年かかるんですって。

(赤江珠緒)4年!?

(町山智浩)4年かかるんですって。じゃあ、マット・デイモン生きていけるのかな?大丈夫か?っていう話なんですね。それが、今回の『オデッセイ』っていう映画なんですけども。で、本当に絶望的な状況で、たったひとつ、マット・デイモンの火星の基地に残されたたったひとつの心の支えがですね、宇宙船の船長が地球から持ってきたCDが置いてあるんですよ。1枚。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それを聞くぐらいしか心が休まる時がないんですけど。そのCDがまたですね、その宇宙船の船長の趣味で、なぜか70年代ディスコヒット曲集だったんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)でね、この映画、全編に渡って70年代ディスコヒットがかかりまくっているという、非常に奇妙な映画なんです。

(山里亮太)えっ?映像とあんまり合わなそうな気がするんですけどね。歌が。

(町山智浩)そうなんですよ。たとえば1曲目、ちょっと聞いていただけますか?これはセルマ・ヒルストンの76年の大ヒット曲。『Don’t Leave Me This Way』です。どうぞ!

セルマ・ヒルストン『Don’t Leave Me This Way』

(町山智浩)はい。この歌はですね、『私を置いて行かないで』っていう。

(赤江珠緒)そのまんまなんですね!

(町山智浩)そのまんまですね(笑)。歌詞のままです。『あなたに去られたら、私はもう生きていけないわ』っていう歌なんですよ。

(山里亮太)ぴったりだ。奇跡的に。

(町山智浩)そう。火星に置き去りにされたマット・デイモンの気持ちそのままなんですけども。ちょっと聞いてください。いい曲なんで。

(曲を聞く)

(町山智浩)はい。この歌ね、70年代に大ヒットして。僕みたいなどうしようもなくオタクでもね、その頃っていうのは僕、高校でしたけど。高校・大学の頃っていうのは、僕みたいな人ですらディスコに行った、ディスコブームの頃だったんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?町山さんがディスコへ!?

(町山智浩)高田馬場にもディスコ、あったんですよ。昔。この時代は。70年代終わりっていうのは。パチンコ屋さんの上に『リチャード三世』っていうディスコがありましたよ。高田馬場に(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)時代を感じますね!

(町山智浩)そういうところにも行ってましたけども。そこで、この曲がかかってね。この『ウー・・・ベイビー♪』っていうところで全員でバーッ!っと盛り上がるんですけど。まあ、それはいいんですが。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そういうね、僕の世代にはめちゃくちゃノリノリの曲ばかりかかっているんですけど。で、こういう歌に励まされてマット・デイモンはがんばるわけですよ。生き残るために。で、たとえば酸素はね、火星は二酸化炭素があるから、二酸化炭素から分離すれば酸素はできるんですって。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)で、そういう技術はいま、もうすでにNASAはあるらしいんですよ。それで酸素を作ると。で、今度酸素があれば、ロケット燃料がちょこっと残っているんで。ロケット燃料は水素なんですね。水素を燃やすんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だから水素と酸素をくっつけて、水を作ることができるんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)これ、やりましたよね。化学の実験でね。学校でね。で、今度、水と酸素はあるけれども、食べ物がないんですね。ところがこのマット・デイモンは植物学者だったんですよ。で、なんとかね、ジャガイモの種イモだけはあったんですけど。これをどうやって育てるか?と。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)でも、土はないんですよね。火星っていうのは砂漠なんだけど、植物が生えてないから栄養分が一切ないんですよ。土に。でもね、人間は栄養分をお尻から出しますよね?

(赤江珠緒)ああー!はい。排泄物で?

(町山智浩)そう(笑)。それでまあ、有機栽培をするんです。ジャガイモの。そうやって食べ物を作って、なんとかサバイバルしていこうというね、話なんですね。この『オデッセイ』っていう映画は。4年間、はい。で、これで生きられるってなると、ここでかかる2曲目。行ってみたいと思います。グロリア・ゲイナー『恋のサバイバル』。

グロリア・ゲイナー『恋のサバイバル』

(町山智浩)はい。この歌、知っている人はもうノリノリだと思いますよ。新宿二丁目方面では。はい。これはね、さっきの歌と歌詞のはじめのところが同じなんですよ。『あなたが去った時、私はもう生きていけないと思ったわ』っていう歌詞なんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)でも、その後ね、『でも、幾つもの孤独な夜に耐えて、私は強くなったの。生きていく方法を学んだの。私は生き延びるわ!生きていくわ!』っていう歌詞なんですよ。

(赤江珠緒)なるほど。たくましい、復活する歌ですもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。

(赤江珠緒)えっ、これが実際にこのシーンでかかる?

(町山智浩)で、『I Will Survive』って。まあ、これはね、映画館でかかった時。この『オデッセイ』を見た時にね、僕、サンフランシスコの方に住んでますんで。まあ、世界一のゲイのメッカなんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)だからこれがかかった時に、もうみんなノリノリでしたね。はい。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)これ、いわゆるゲイのみなさんにとっての国歌、アンセムと言われている曲なんです。

(赤江珠緒)そこまで?へー!

(町山智浩)そうなんですよ。だからもう、これがかかったらみんなノリノリでしたけど。で、まあ急にここでポジティブになっていって。がんばろう!っていう話になってくるんですけど。こういう地獄みたいな状況で生き残る話って、みんなもう極限状態でものすごいサスペンスじゃないですか。ところがこの映画、ずーっとこういう曲が流れているんで、ずーっとノリノリでミュージカルみたいなんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?不思議(笑)。

(町山智浩)だから、『ええーっ?こんな映画、あったのか?新しい!』って思いましたね。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)これね、監督はリドリー・スコットというもう巨匠ですね。で、この人は『エイリアン』。あの怖い怖い『エイリアン』ですね。あと、『ブレードランナー』ね。そういうすごい重々しいですね、傑作の数々を撮ってきたリドリー・スコットですけど。今回、ノリノリですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)もう、ディスコでノリノリ!っていうね、とんでもない映画になってますね。はい。

(山里亮太)これ、でもあれなんですね。緊張感を削いじゃうみたいなこと、ないんですか?曲はちゃんと、ハマってくるんですかね?

(町山智浩)緊張感はないですけど(笑)。元気になりますよ。はい。

(山里亮太)そうか(笑)。明るいSFですもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、彼が、マット・デイモンが生き残っていることがわかったんで、NASAの方でもなんとか彼を救出するための作戦を立てるんですよね。で、一生懸命みんな考えるんですけども。このマット・デイモンっていうのはもともと『インターステラー』っていう映画が去年ありましたけども。あれでも、なんか宇宙の彼方に行って1人で暮らしている男の役でしたね(笑)。

(赤江珠緒)あー!うんうん。

(山里亮太)出てましたね。それで。

(町山智浩)で、この人もともと新人として出てきた時も『プライベート・ライアン』で。第二次大戦の時にドイツ軍のまっただ中にいて、それをトム・ハンクスが助けに行くっていう映画だったんですよ。

(赤江珠緒)よく取り残される人(笑)。

(町山智浩)よく取り残されて救出されている、救出され役者だな、マット・デイモン!って思いましたけどね。人に迷惑ばっかりかけてるんですけど。

(赤江・山里)(笑)

(山里亮太)役ですけど(笑)。

(町山智浩)そうなんですけどね(笑)。役ですけど。はい。でね、NASAがなんとか彼を助けようとしてですね、作戦をみんなで立てるところでかかる曲がこの曲なんです。はい。デビッド・ボウイ『スターマン』。

デビッド・ボウイ『スターマン』

(町山智浩)はい。これも明るいでしょ?

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これ、歌はね、スターマンっていうのは『宇宙の男』っていう意味ですけど。『宇宙の男があの空の上でみんなを待っているよ』っていう歌なんですよ。

(山里亮太)シンクロしまくりですね、曲。

(町山智浩)そうなんですよ。だからね、ミュージカルみたいに歌詞が全部、状況を説明してるんですね。

(赤江珠緒)ほのぼのしてますね!

(町山智浩)そうなんですけど、日本では、上映する時に使っている歌の歌詞を訳詞を基本的につけられないんですよ。字幕で。あの、著作権の問題があるらしいんですよ。

(赤江珠緒)あっ、そうなんですか。それがわからないとちょっとね・・・

(山里亮太)もったいないよね。

(町山智浩)そうなんですよ。僕、よく字幕の監修をやる時に『訳詞をつけてくれ』っていう風に言うんですけど、『ちょっと著作権上、問題があって・・・』って言われるんですよね。だからせっかく歌詞が画面とシンクロしてるのに、わからないっていうことがあるんで。日本で見る人たちのためにね、いま説明してるんですけど。

(山里亮太)なるほど!

(赤江珠緒)これを聞いた上で行けばね。なるほど。

(町山智浩)そうなんですよ。ちゃんと、全部意味があるからねっていう感じなんですけど。で、これデビッド・ボウイの歌で。ディスコじゃないんですけどね。これ、デビッド・ボウイにはそのものズバリの歌で、『Life On Mars』っていう歌もあるんですよ。『火星の生命・火星で生きること』っていう意味なんですけど。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)ただそっちはね、なんかスローバラードだから、合わないから使わなかったみたいです。今回は。

(赤江珠緒)はー。そうなんですか。へー!

(町山智浩)だからこっちになっているんですけど。で、これね、映画『オデッセイ』っていうタイトルは日本だけのタイトルなんですよ。もともとのタイトルは『火星の人(The Martian)』っていうタイトルなんです。この映画。要するに、マット・デイモンが火星に行って、火星の人になっちゃったわけですね。

(赤江珠緒)わかりやすいですね。うん。

(町山智浩)わかりやすいんですけど。ただ、日本ではこれを『オデッセイ』にしたのはまた別の意味があって。ギリシャの物語で『オデッセウス』っていう人がいたんですね。ギリシャに、昔。王様なんですけども、トロイの木馬を発明した人なんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)で、トロイ戦争でトロイの木馬の発明して『俺は頭がいいぜ!』ってえばっていたらポセイドンっていう海の神様の怒りを受けてしまって、家に帰れなくなっちゃったんですね。

(赤江珠緒)もう10年以上帰れなかったっていう、英雄。

(町山智浩)そうなんですよ。地中海をグルグル回って。だからその、家に帰ろうとして帰れない人が、一生懸命家に帰ろうとする話をみんな『オデッセイ』って呼ぶんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからこれはマット・デイモンの『オデッセイ』なわけですね。

(赤江珠緒)なるほど。

(町山智浩)ちなみに『2001年宇宙の旅』っていう映画も地球から木星に行って帰ってくる話なんで。『2001年宇宙のオデッセイ(2001: A Space Odyssey)』っていうのが原題なんですけどね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)はい。でも、たいていの勤め人のお父さんはみんなオデッセイですね。毎日ね。

(赤江珠緒)なんで帰れない?(笑)

(町山智浩)そうなんですよ。なぜ帰れないって、いろんなものに誘惑されて帰れなかったりね。朝、帰ってきたりする変なオデッセイもありますが。はい(笑)。で、この映画、本当に死ぬかもしれないっていう話なのに、ぜんぜん暗くならないんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)すごい不思議な映画でね。特にね、お客さんがノリノリの曲ですごくよかったのがね、ドナ・サマーの『ホットスタッフ』ですね。お願いします。

ドナ・サマー『ホットスタッフ』

(赤江珠緒)えっ?この曲もかかるの?

(町山智浩)そう(笑)。

(山里亮太)この曲は、よく聞くねー!

(町山智浩)これはいいでしょ?ここんところがいいんですよ。イントロがね。ここんところね。

(山里亮太)えっ?これ、どこでかかるんですか?これ。

(町山智浩)これは秘密なんですけど。これ、歌詞がね、すごくエッチな歌詞で。『今夜は私、なにかホットスタッフ(熱いモノ)がほしいのよ!』っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)はい。熱いモノって言っても、お味噌汁とかじゃないですよ。

(赤江珠緒)わかってます。わかってますよ、はい。

(町山智浩)わかってます?大人のモノですよ。はい。

(赤江珠緒)鍋とかじゃないんでしょ?わかってますよ。

(町山智浩)鍋とかじゃないです。はい。

(赤江珠緒)火星でそんな・・・ええっ?

(町山智浩)この歌はね、『フル・モンティ』っていう映画で使われていたの、ご存じですか?あの、おっさんたちがストリップする映画です。

(赤江珠緒)ああー、はいはい。

(町山智浩)だから要するに『熱いモノ』っていう映画なんで、男性ストリップの曲として使われていて。それ以来、もう男性ストリップの定番なんですよ。この歌は。

(山里亮太)たしかに、そのイメージ。

(町山智浩)で、ですね。安心してください。この『オデッセイ』、ちゃんとマット・デイモンのフル・モンティが、あります!

(赤江・山里)(笑)

(山里亮太)いや、ですから・・・

(赤江珠緒)『安心してください』って(笑)。

(町山智浩)後ろ姿なんですが、完全オールヌードです!

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、安心してください。履いてません!

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)じゃあ、安心できないですよ(笑)。

(町山智浩)いやー、しかもね、お尻の間から、足の間からですね、ちゃんとマット・デイモンのホットスタッフが見えますから!

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)ちょっと!大問題でしょ、それは!?

(町山智浩)いやー、これ、日本だとどうなるのかな?よくわかんないですけど。

(山里亮太)見えてるんですか?海外のは。

(町山智浩)シルエットですけど、ちゃんと見えているんですよ。ただね、あまりにそれが大きいので、作り物説が出てます。いま、アメリカでは。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)CGじゃねーの?とか言われますね。

(赤江珠緒)ああ、そうですか(笑)。

(町山智浩)マット・デイモン、なんか見栄張ってねえか?とかね。いろいろ言われてます。そう。『監督、ちょっと大きくして。俺のホットスタッフ』って言ってたんじゃないか?って言われてますね。はい。

(赤江珠緒)そうかー。いや、でもね、町山さん以前紹介してくださった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』っていうのが宇宙でなんかCDの曲が流れるっていう。ありましたよね。

(山里亮太)カセットテープ。

(赤江珠緒)テープがね。あんなイメージですかね?

(町山智浩)いま、それ流行っているみたいですよ。それ流行っているみたいです。もう。これからそれで行くと思います。日本映画もそうなるんじゃないかな?なんか突然『CDがあったぞ、これ』っていう展開がね。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)なるほど。たしかに、いいんだよな。あの演出って、楽しいです。

(町山智浩)懐かしいんですよ。それでもう結構みんなね、体をゆすって踊って見てるっていう珍しいSF映画ですね。

(赤江珠緒)へー!なるほど。

(町山智浩)ただね、これ、ディスコの問題もあるんですけど。音楽のせいで明るいっていうのもあるんですけど。これ、とにかくね、全くパニックにならないで落ち着いているんですよ。このマット・デイモンがずっと。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それの理由はまずひとつね、マット・デイモンに家族がいないんですよ。この映画の中だと。

(赤江珠緒)はいはい。

(町山智浩)だから、恋人とか自分の子供とかがいたらたぶんね、『会いたい!会いたい!』ってなっちゃうんだけど。いないから、淡々としてるんですね。

(山里亮太)あんまりドラマが生まれない感じなんですか?

(町山智浩)そう。だから必死になっていないんで、『あれっ?』って思う人もいるかもしれないですけど。でもね、『アポロ13』っていう映画が昔、ありまして。それ、実話でね。アポロ13号っていう月に行く宇宙船が事故を起こして地球に帰れなくなっちゃった実際の事件があって。で、宇宙飛行士たちが地球に帰るためにあらゆる手を尽くすんですけど。それ、トム・ハンクスだったんですけど。それもね、宇宙飛行士、誰一人としてパニックにならないんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?ならない?

(町山智浩)『家族に会わせろ!』とか、『会いたい!』とか泣いたりしないんですよ。これね、どういうことなのか?っていうと、宇宙飛行士の人に実際に会って聞いたことがあって。スペースシャトルに乗った人で、中国系のパイロットの人でしたけど。『そういうのでパニックになる人は宇宙飛行士に選ばれないよ』って言われましたね。

(赤江珠緒)ああー!だって精神的にものすごい強靭さが求められるって言いますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。性格的にそういうところで淡々と、作戦を遂行する。たったひとつの望みでもその成功に賭けるっていうようなタイプの人じゃないと、宇宙飛行士にならないらしいんですよ。落とされちゃうって。

(山里亮太)じゃあ、リアルなんですね。マット・デイモンの。

(町山智浩)はい。そのへんがリアルですね。ちょっと時間があったら、じゃあ最後の曲。『ラブ・トレイン』、オージェイズ、聞いてもらえますか?

オージェイズ『ラブ・トレイン』

(町山智浩)これがね、また楽しい曲でね。『愛の列車にみんな、乗ろうよ』っていう歌なんですよ。で、『ロシアの人も中国の人も乗るよ』っていう歌詞なんですよ。これ、1973年に当時のアメリカのニクソン大統領が中国との国交回復を成し遂げたんで、この曲がヒットしたんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、これが『オデッセイ』の中でかかるシーンは、まあだいたい予想がつくと思うんですけど・・・中国マーケットをものすごく意識したシーンでしたね(笑)。

(赤江珠緒)ああー!いま、ハリウッドはね、そういうことが多いと聞きましたけども。

(山里亮太)中国のね、シーンを入れないと中国で流せないから。

(町山智浩)はい。でも、よくこの曲見つけてきたな!と思いましたよ。ちゃんと歌詞がぴったりだから。みんなで、『中国もアメリカもロシアも協力しようよ!』っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だからこれ、選曲がとにかくすごかったですね。『オデッセイ』は。

(赤江珠緒)なんか作っている人も、だんだん楽しくなってきた感じが。うん。

(山里亮太)『これ、当てはまるぞ!』みたいな。

(町山智浩)こういう曲を考えている時がいちばん楽しいんですよ(笑)。本当に。クウェンティン・タランティーノもね、『曲を考えている時がいちばん楽しい』って言ってましたね。映画を作る時に。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)『「どの曲を使おうか?」っていう時がいちばん楽しい』って。

(赤江珠緒)ねえ。そうですよね。

(町山智浩)日本公開は2月5日ですけども。まあ、サントラが出ると思いますので。あの、もう僕と同じぐらいの歳の人はもう、涙ボロボロだと思いますよ。腰がね、思わず動いちゃうと思います。

(赤江珠緒)まさかディスコでノリノリだったとは。

(町山智浩)みんなやっていたんです。その頃は。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そういう時代だったんですね。はい。

(山里亮太)映画見る前に聞きこんで行った方が。

(赤江珠緒)そうですね。ちゃんと曲の意味をわかってから行ったらね、なお楽しいかもしれません。

(町山智浩)そうなんですよね。

(赤江珠緒)今日は映画『オデッセイ』をご紹介いただきました。日本では、先ほども申し上げました。来年の2月5日公開となります。町山さん。じゃあ町山さんもね、ディスコ話なんかも今後おいおい、教えていただいて・・・

(町山智浩)そんな話、ないですよ!(笑)。

(赤江珠緒)そうですか(笑)。

(町山智浩)ホットスタッフの話とかね。はい。そういう・・・

(山里亮太)(笑)

(町山智浩)『マット・デイモンのがいい!』とかね。『ベン・アフレックとどっちが大きいか?』とか、そういう話ですね。はい。

(赤江珠緒)わかりました(笑)。じゃあ町山さん。また来週、お願いします。ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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