町山智浩 ニール・ブロムカンプ作品『チャッピー』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督の最新作『チャッピー』を紹介していました。

『第9地区』ニール・ブロムカンプ監督作品

(町山智浩)今日も、子どものような映画です。僕、実はベルリンに行ってたんですよ。

(山里亮太)ベルリン?へー。

(町山智浩)なぜかベルリンでね、南アフリカ映画の取材があってですね。なんかよくわかんないんですけど、最近、ベルリンなんですよ。なんか、取材が。なんかね、いままで映画の取材とか、ヨーロッパでまとめてやる時って、ロンドンだったんですね。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)ロンドンにフランスとかいろんなヨーロッパ各国の記者を集めてインタビューとかさせていたんですけども。いまね、イギリスの物価が異常に高いんですよ。だから、できないみたいなんですよ。で、ユーロは下がっているから、ユーロ圏でってことでベルリンみたいなんですけど。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ちなみにいま、イギリスって地下鉄の1区間っていくらだと思います?日本円で。1区間の地下鉄の料金。

(山里亮太)日本だとね、だいたい210円くらいでしょ?じゃあ、500円くらい?

(町山智浩)850円くらいですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(山里亮太)高っ!タクシーみたい。

(町山智浩)バカげてるんですよ(笑)。だからまあ、イギリス取材はなくなったんですけど。まあいいや。それで、南アフリカ映画です。今回紹介するのは『チャッピー』っていう映画です。チャッピーって言うと、昔、明石家さんまさんがチャッピーって言ってたの、知ってます?

(赤江珠緒)ええっ!?

(山里亮太)さんまさんが?ご自身のことをですか?

(町山智浩)さんまさんとかって、アイドルだったんですよ。昔。

(山里亮太)あ、それはね、はい。聞いております。

(赤江珠緒)そうなんですか。

(町山智浩)『ヤングおー!おー!』とかね。あ、『聞いております』の世界なんですね。



(山里亮太)そうなんですよ。

(町山智浩)あ、そっか。

(赤江珠緒)えっ?で、チャッピーって呼ばれていたんですか?

(町山智浩)チャッピーって呼ばれていたんですよ。あの、ほら。昔、関西の若手の落語家の人とか、みんなアイドルノリで売ってた頃があるんですよ。すごい昔ですよ。考えると(笑)。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)さんまさん、もう還暦ですよね。そろそろね。

(山里亮太)そうですよ。もう、60才。

(町山智浩)その頃、アイドルでキャーキャー言われてた頃はチャッピーって言われてましたよ。

(赤江珠緒)へー!なんか、チャッピーってすごいかわいいネーミングですもんね。

(山里亮太)でも、すっごいアイドルだったのは聞いてる。

(町山智浩)そうなんですよ。あとね、昔、『魔法使いチャッピー』っていうアニメもありましたけどね。74年くらいね。顔がかわいい少女なのに声がおばさんの不思議なアニメでしたけど。増山江威子さんでしたから。はい。バカボンのママの声でした。

(赤江珠緒)あー!

(町山智浩)本題に戻るとですね、チャッピーっていうのはハードSFバイオレンスアクション映画なんですよ。

(山里亮太)ハードSFバイオレンス映画?

(町山智浩)アクション映画。チャッピーって名前なのに。

(山里亮太)なんかかわいらしいね、映画のイメージですけども。

(赤江珠緒)似つかわしくない。

(町山智浩)そうなんですよ。でも、チャッピーっていうのはものすごい戦闘能力を持った、SWATロボットなんですよ。SWATっていうのは特殊部隊ですね。警察の。の、名前がチャッピーっていうロボットが主人公の話なんです。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、舞台は南アフリカの首都のヨハネスブルグなんですけども。すごく金持ちと貧乏な人たちの格差がすごく広がって。貧乏な人たちが、まあ暴動を起こしたり、ギャング化してるんで。非常に危険だと。で、警察官が行くと、撃たれちゃうんで。で、ロボットを作って、それを突入させるようにしたっていう話なんですね。

(山里亮太)ほう。

(町山智浩)で、ほとんど現在の話です。で、そのSWATロボット部隊っていうのを作るんですけども。それを開発した男が主人公で。インド系のですね、非常に若い、この人は『スラムドッグ・ミリオネア』っていうアカデミー賞をとった映画の・・・覚えてます?見てますか?


(赤江珠緒)あ、ごめんなさい。見てないな。

(町山智浩)スラムドッグ・ミリオネアの若い主人公の少年がインド系科学者なんですけども。で、そのロボットを開発して、さらに、そこにですね、そのロボットは言われた通りにコンピューターで動くだけなんですけども。そうじゃなくて、完全に自律して、自分の意思で判断して動くAIを組み込もうとするんですよ。

(山里亮太)人工知能を。

(町山智浩)はい。ところが、それだと非常に信用出来ないってことで、企業のロボット会社の方はそれに賛成しないんですね。で、悔しいから自分でプログラミングをしちゃうんですよ。ある1人のロボット警官に。そうすると、自分で考えて、いい悪いを判断して、勝手に行動する自律型・・・要するにスタンドアローンって言うんですけども、の、ロボットが完成すると思ったらですね、そのAIを組み込んだロボットを誘拐されちゃうんですよ。ギャングに。

(赤江珠緒)ギャングに?ええ。

(町山智浩)ギャングに誘拐されちゃうんですよ。そのギャングがですね、これがニンジャ(Ninja)っていう名前のギャングなんですね。白人のおっさんで体中に刺青を入れている50才ぐらいの、要するにまあ、昔ロックだったけれどもそのまま50になっちゃった人なんですよ。そのニンジャっていう人は。

(赤江珠緒)ほうほうほう(笑)。

(町山智浩)白人で。これね、ニンジャっていう俳優さんが演じています。

(山里亮太)えっ、あ、ニンジャっていう方なんですか。

(町山智浩)はい。これ僕ね、最後でクレジット見たら『Ninja:Ninja』って書いてあって(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)ご本人役ってことじゃないんですよね?

(町山智浩)あのね、ニンジャっていう芸名のラッパーらしいんですよ。パンクラッパーらしくて。南アフリカで人気のある、まあ50ぐらいのおっさんですね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)で、その人はギャング役でこの映画に出てて。そのロボットを誘拐しちゃうんですね。で、奥さんがヨランダっていう奥さんで。これも実生活で奥さんらしいんですけど。ニンジャの。『ニンジャの奥さん』ってもう何を言ってるのかわからないですけども(笑)。


(山里亮太)(笑)

(町山智浩)で、ところがその、さらってみたらそのAIは組み込んだだけで、まだプログラミングの途中だったんですよ。戦闘能力とかはある程度入ってるんですけど、心の部分をまだ入れてなかったんですね。これから入れるところで盗まれちゃったんで。だから、子どもなんですよ。

(赤江珠緒)ほー。

(町山智浩)で、動かしてみたら、『うーん、うーん、チャッピー、こわいー』とか言ってるんですよ。

(山里亮太)まだ赤ちゃんみたいな。

(町山智浩)赤ちゃんなんですよ。だから、基本的にコンピューターっていっても、なにも入れなければただの・・・人間の脳もそうですけど、なにも入れてないうちはただの赤ん坊ですよね。みんなね。で、それを抱えちゃうんですよ。そのギャングが。

(山里亮太)あ、しかもギャングに(笑)。

(町山智浩)ギャング夫婦が。で、しょうがないからそのヨランダっていうカミさんの方ね。要するにヤンキーの女房はですね、『チャッピーちゃん、チャッピーちゃん』っつって、かわいがり始めるんですよ。その戦闘ロボットを。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)で、やっぱりほら、女性だから、そういうの、自然に優しくなっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)やっぱり、母性本能が出てきてね。

(町山智浩)で、そのロボットの方がそのどうしようもないですね、きゃりーぱみゅぱみゅをものすごいパンクにしたみたいなヨランダっていう姉ちゃんをですね、『ママ、ママ!』って呼ぶようになるんですよ。

(赤江珠緒)ああー、それはでも、なついてくると可愛くなるでしょうね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、向こうも『ママ』って呼ばれると、だんだん自分も目覚めてきて。あたし、ママかしら?っていう感じでやさしくして育てていくんですよ。チャッピーを。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ところがですね、それを狙っているやつらが何人もいるんですよ。いっぱい。まずその、ニンジャくん。誘拐したギャング自体はそれで金儲けしようと思ってるんですよ。で、こいつになんか悪いことをいっぱい教えて、泥棒とか強盗をさせようと思ってるんですよ。

(赤江珠緒)ああー!なるほど。

(町山智浩)で、ママがいないとこっそり銃の撃ち方とかナイフの使い方を教えるんですよ。チャッピーに。チャッピー、なにもわからないから、ピストルをパンパン!って撃って的に当たったりするとニンジャが、『おう、すげーな!お前、さすが俺の息子だぜ!』とかって褒めるから、『えっ、そう?パパ。僕のこと、好き?』とか言って、どんどん人殺しの技術を覚えていくんですよ。

(赤江・山里)うわー!

(町山智浩)で、そのパパの歩き方とか、肩で風を切りながらヨタヨタ歩く。股を開いて。いわゆるチンピラの歩き方なんですよ。で、それをパパみたいになりたいって、そのロボットがヨタヨタ歩きするんですよ。

(赤江珠緒)うわー、なんでも吸収していっちゃうんだ。

(町山智浩)吸収しちゃうから。それで、パパがいっぱい体中にアクセサリーをいっぱいしてるから。ピアスとかね。で、『僕もしたい』とか言って、ロボットなんでピアスとか入れられないんで、落書きを体中にいっぱいしてタトゥーみたいにしたり。金のネックレスとかいっぱいするんですよ。指輪とか。

(赤江珠緒)本当に子どもみたいに。

(町山智浩)子どもだから、いい悪いがわからないから、親がやることはみんな正しいと思っちゃうんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)で、しゃべり方も最初は『チャッピー僕ね・・・』とか言ってたのが、『YO!メーン!ファッキュー!メーン!』とかになっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)成長してるな(笑)。

(山里亮太)ええっ!?

(町山智浩)成長なのか?それ(笑)。

(山里亮太)影響、受けすぎちゃってるんだ。

(町山智浩)そう。お父さんのしゃべり方をただ単に覚えているだけなんですけど。ヤバいんですよ。で、そこにさらに狙っているやつらがいて。まずそのギャング集団の大ボスが狙っているんですね。チャッピーを。それとあと、さらにそのロボット会社の方で、このロボット警官とライバルだった技術開発者がいるんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)で、それをヒュー・ジャックマンが演じています。あの、『Xメン』でウルヴァリンとかやったり、『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャンやってた。ところがこっちではロボット技術者なんですけど。彼はAIに反対なんですよ。で、AIとかを入れてくと、いつか人間乗っ取られちゃうぞ!ロボットたちに社会を。だから、あくまでロボットはロボットでマニピュレーションするだけで・・・要するに人間が操作するだけであるべきだって言って、彼自信の脳波で操作する巨大戦車ロボットみたいなのを発明するんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それを売り込んだんですけども、あまりにも戦闘能力が強すぎてデカすぎるからってことで売れなかったんですよ。で、会社では窓際に回されちゃうんですね。ヒュー・ジャックマンが。あ、ちなみにヒュー・ジャックマン、今回はお尻出してないです。

(赤江珠緒)いやいや(笑)。たしかに出す要素ないんじゃないですか。博士ですから。

(町山智浩)まあ、出してないことをわざわざ説明することなんですが(笑)。

(山里亮太)ぜったいお尻情報を入れたがる。

(町山智浩)科学者なんで。科学者がお尻出していたら、それはまたいろんな問題ありますけど。そういう教授もいますが。はい。

(山里亮太)(笑)。僕ら、そんながっかりしてないですよ。

(町山智浩)で、すごくそのロボット警官計画そのものを破滅させようと思っているんですよ。彼は。そしたら、みんながロボット警官っていうのは危険だから、彼がやっているそのAIが組み込んでないロボットの方を採用してくれるはずだと思って。密かにその、もうすでにSWATとか警察が採用しているロボットたちをおかしくしちゃおうっていう企みを持っているんですね。ヒュー・ジャックマンは。今回、悪役です。

(山里亮太)ふんふん。

(町山智浩)で、そういういろんなやつが狙っている中で、チャッピーはどんどんどんどん悪く悪くなっていくんですよ。で、またお父さんがすごく悪くてね。『チャッピー。お前は世の中を知らなきゃいけねーな』って言って、いきなりスラム街に彼を放り出すんですよ。チャッピーくんを。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)そうすると、チャッピーはいわゆるロボット警官と同じ姿をしてるから、その辺のスラムの不良たちとかギャングたちはみんなチャッピーが嫌いなわけですよ。ロボットが。で、『こいつはロボット警官だ!俺の友達を逮捕しやがった!』とか『殺しやがった!』とか言って。みんながチャッピーを攻撃してくるんですよ。石を投げたり、火炎瓶投げたり。で、ボロッボロにされちゃうんですよ。腕切断されたりとか。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、世の中を憎むようになるんですよ。人間を憎むようになっていくんですよ。だから、この映画はロボットの話なのかな?と思ったら、これ、子育ての話ですよね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)要するに、子どもっていうのはみんな誰も彼も生まれた時は真っ白なんだと。でも、それにどんなものでも刷り込めるんだという怖さみたいなものを・・・

(赤江珠緒)いや、本当そうですね。

(町山智浩)そうなんですよ。それで、世の中っていうのは怖いんだ、憎いんだ、ひどいんだっていうのを教えると、世の中を憎むようになるし。人は残酷なんだ、意地悪なんだって教えると、人を憎むようになる。で、戦わなければ勝てないんだ、みたいにして、全員自分以外は敵と思うように、だんだんなっていっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、そうじゃなくて、やさしくすれば、人を愛するようになるんで。それをどうするか?っていう話になってくるんですね。チャッピーっていう映画は。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)っていうね、ただのロボットアクション映画なのかな?と思ったら、そうじゃないところにどんどん踏み込んでいくんですよ。話が。

(赤江珠緒)ほー!チャッピーがまあ、メカメカはしてますけども。でも、ちょっと等身大の人間みたいな大きさで。ちょっとあの、かわいいポーズとかとってると、たしかにかわいかったりしますもんね。

(町山智浩)はい。これね、演じてる人はね、これモーションキャプチャーっていうシステムで。要するにロケ現場では人間が演じて、後でロボットに置き換えるっていうやり方をしてるんですね。

(赤江珠緒)あ、だからすごく人間っぽいんですね。

(町山智浩)人間っぽいんです。これ、猿の惑星シリーズで最近のやつはみんなそうやってますけども。この演じている人は41才のおっさんです。はい(笑)。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか。チャッピー。へー!

(町山智浩)シャールト・コプリーさんっていう41才のおっさんが子どもチャッピーを演じてますね(笑)。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)これはおかしいんですけど(笑)。で、このチャッピーっていう映画自体は監督・制作・脚本・特撮、全部やっている人がですね、ニール・ブロムカンプっていう人で。この人、南アフリカ出身なんですよ。で、この人、29才の時に自分で全部特撮から話から監督までした『第9地区』っていう映画を南アフリカで作りまして。ヨハネスブルグで。


(赤江珠緒)これ、衝撃的なね、作品ですもんね。

(町山智浩)そう。これ2009年か10年かに作って。その時に、まだ29才なのにアカデミー作品賞候補になっている人なんですよ。で、すごい脚光を浴びてですね。その後、ハリウッドに行って『エリジウム』っていう映画を作って。で、今回また、ヨハネスブルグに帰ってきて、このチャッピーを作ったんですね。

[関連リンク]町山智浩映画解説 マット・デイモン主演『エリジウム』

(山里亮太)はい。

(町山智浩)で、彼にインタビューしてきたんですけど。ベルリンで。とにかくね、日本のアニメとかマンガが大好きなんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)で、最初の第9地区っていうのは日本のいろんな、『超時空要塞マクロス』とかですね、そういうアニメに出てくるその、誘導ミサイルがものすごいいろんな方向から飛んでくるアクションであるとか、日本のアニメによくある人間がロボットを着てアクションするっていう、いわゆるパワードスーツとか。そういったものを盛り込んでいたんですけど。今回はもっと日本の影響が強くて。チャッピーに関しては。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)まずこれ、警官ロボットのチャッピーのデザインが『パトレイバー』そっくりなんですよ。


(山里亮太)へー!あ、そうだ。言われてみれば、形とかは。

(町山智浩)『機動警察パトレイバー』の主人公のロボットにそっくりなんですね。

(山里亮太)イングラム。

(町山智浩)はい。あと、日本のマンガでアニメにもなってますけど、士郎正宗さんっていう天才がいるんですけど。世界的に有名な。その人の書いている『アップルシード』っていう、やはりSWATものなんですね。で、サイボーグSWATが出てくるんですけど、それにも似てるんですよ。

(山里亮太)手元に画があるけど、本当だ。


(町山智浩)そっくりなんですよ。で、それはもうはっきりと、『影響を受けた。マサムネ・シローは尊敬している』と言ってましたね。士郎正宗ってどっちが名前かわかんないんで、英語で入れ替えたりすると何言ってるかわかんなくなるんですが(笑)。

(赤江珠緒)(笑)。本当だ。

(町山智浩)あと、まあ士郎正宗さんが原作を書いた『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』っていう話があって。それは人間の心っていうものはコンピューターによって置き換えることができるんだっていう話なんですね。要するに、AI、人工知能っていうのも心になり得るんだっていう話なんですよ。攻殻機動隊っていうのは。で、それも今回のテーマになっていますね。


(山里亮太)えっ、じゃあ思いっきり日本のアニメの影響を・・・

(町山智浩)はい。ものすごい影響を受けてやっていますけども。それで、チンピラがニンジャだしね。

(山里亮太)あ、そうか。ニンジャ。

(町山智浩)そう。それで手裏剣投げたりしてるんですけど(笑)。

(赤江珠緒)えっ?チンピラが?

(山里亮太)手裏剣まで出てきちゃうんですか?もう。

(町山智浩)手裏剣まで出てくる。ニンジャだからね。

(山里亮太)すごい。日本のリスペクトが。

(町山智浩)そうなんですよ。スゴイリスペクトで。マクロスとかの影響も受けて、マクロスに出てくるロボットそっくりのですね、足が逆関節になっている巨大ロボットとか出てきてですね。ですけども、デザインはたしかに日本のロボットのデザインで、ストーリーとかも影響を受けてますけど、実際にこれを実写で動かすっていうのがすごいですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)日本の人たちはアイデアはあるんだけども、お金がないからできないんですよ。それ、やっぱり悔しいですよね。

(赤江珠緒)ねえ。そうですか。でもこのロボットがどうなっていくのかね?個性が・・・

(町山智浩)そう。そこにね、このチャッピーを作ったね、インド人の科学者がギャングにどんどん育てられているところに来ちゃうんですよ。で、衝撃を受けるんですよ。自分が素晴らしいスーパー警官ロボットにしようとしたのが、どうしようもないヤクザ者になってるわけですよ。体、イレズミだらけで(笑)。金のネックレスとかジャラジャラ言わせて(笑)。


(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、久しぶりに・・・最初の頃はまだ『僕、チャッピーなの』って感じだったのに、久しぶりに会ったら、『YO!メーン!』とか言ってるわけですよ。

(山里亮太)ショックだなー。

(町山智浩)大ショックですよ、もう。それを作った博士は。生みの親。で、はっきりと言うんですよ。『僕は君を作った、メイカー(生みの親)だ。君を素晴らしいものに育てようとしたのに・・・』って言うんですけど、ここの部分はね、神様なんですね。彼は。

(赤江珠緒)はあ。

(町山智浩)要するに人間っていうものを作った神様みたいな感じで。キリスト教的には。でも、キリスト教的には人間っていうのは神によって作られたけれども、反逆して出て行っちゃうんですね。エデンの園をね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)で、人間っていう自立した種が生まれて育っていくんですけど。そういう話担っていくんですね。途中から。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)で、そのチャッピーが言うんですよ。『なぜ僕に意識とか気持ちとか心っていうのを無理やり与えたんだ?』って言って怒るんですよ。『そんなもの、ほしくなかったのに!』って言われるんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・

(町山智浩)『そんなものがあるから、辛いんだよ!』って。

(赤江珠緒)まあ、それがあるから悩むわけですもんね。

(町山智浩)それがあるから悩むし、それがあるから悲しむし。『そんなものをくれて、僕はあんたが嫌いだ!』って言うんですよ。自分を作った造物主に対して。

(山里亮太)ああ、それ反抗期だ。反抗期。

(町山智浩)そう。ここのところはフランケンシュタインっていう小説があるんですけど。それに出てくる話になってるんですね。フランケンシュタイン博士によって作られた人造人間が、博士を憎むんですよ。『なぜ俺を作ったんだ!?』と。そのへんも含めてですね、すごく深い話になっています。

(赤江珠緒)深いですね!

(町山智浩)第9地区の時もそうでしたけど、このニール・ブロムカンプ監督っていうのは、なんかこう、ストーリーの中に深いメッセージを込めますよね。

(町山智浩)彼はやっぱり南アフリカで育って。彼が子どもの頃はアパルトヘイトの終わりの頃ですね。で、アフリカ人。そこに住んでいる先住民の人たちを少数の白人が弾圧して、上に君臨してて。それがまあ、ひっくり返ってですね。ネルソン・マンデラの戦いによって。で、今度は白人と黒人を平等にしなきゃならないんだって、もうすごいいろんな社会的な軋轢を彼自身、子どもの頃に見てきたんですね。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)だからそういうのが影響してるんですね。で、ここでは要するに貧しいところで育ったからって悪いやつになるとは限らないと。黒人のギャングがいっぱい多いんだけども、あれは黒人ってことに問題があるわけじゃない。問題は、育てられ方なんだと。要するに、社会にとっての扱われ方で人間っていうのはどうにでもなるんだという話を展開してるんですよ。このチャッピーを通して。

(赤江珠緒)なるほど。これ、でも人類の普遍的な悩みのテーマかもしれないね。いろいろ。

(町山智浩)そうなんです。で、そのニンジャとかヨランダっていうチンピラギャングのどうしようもないヤンキーな感じのダメパパ・ママがいるわけじゃないですか。こいつらダメだ!こんなやつらに育てさせたら子どもはみんなダメになっちゃう!と思うんですよ。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)ところが、大逆転が後半で展開してくるんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)泣かせるんですよ。最後。

(赤江珠緒)へー!これはちょっと見たいな。面白い。

(町山智浩)最後、ええーっ!?っていう感じで。こ、こんな・・・なんて言うか、『全町山が泣いた!』ですよ。

(赤江珠緒)全町山が泣いた!(笑)。いや、町山さん、1人だから。

(町山智浩)1人しかいないんですけど(笑)。とりあえず、全町山が泣いた!ですよ。

(赤江・山里)(爆笑)

(町山智浩)チャッピーで。はい。そういうね、もう誰が見ても泣けるね、それでしかも最後は燃える大戦闘シーンですからね。

(山里亮太)いい!見たい!

(町山智浩)で、日本のアニメ、マンガへのリスペクトもすごいですから。ということで、チャッピー。もうすぐ公開ですね?

(赤江珠緒)そうですね。

(山里亮太)5月23日ですか。日本は。

(町山智浩)はい。『チャッピー見にいこうぜ!』っていうと、『お前、なに?』って言われる・・・ちょっと言いにくいですけど(笑)。

(赤江珠緒)そうですね(笑)。

(山里亮太)かわいい映画見に行くのかな?って。

(町山智浩)『お前、何者だよ?』とか言われると思いますけど。はい。

(赤江珠緒)深い話であるということですね。

(山里亮太)見たい。これ。

(町山智浩)もうね、いまんところ今年見た映画の中では、『セッション(Whiprush)』と並ぶですね、ベスト1、2ですね。これ。チャッピーとセッションはもう必見!っていう感じですね。

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(赤江珠緒)ああー!いいですね!あのドラマーのセッションと。

(町山智浩)はい。

(赤江珠緒)わかりました。ありがとうございます。今日は映画第9地区の監督最新作、チャッピーをご紹介いただきました。町山さん、それではまた来週。

(町山智浩)はい。どもでした。

<書き起こしおわり>

追記 山里亮太 チャッピーの感想を語る

日本公開後にチャッピーを見た山里亮太さんが町山智浩さんにその感想を伝えていました。

(山里亮太)町山さん、『チャッピー』、見まして。

(町山智浩)あ、どうでした?

(山里亮太)面白かったですねー、あれ。

(町山智浩)でしょう?

(山里亮太)町山さんが言っていた、あの監督のね、いろんなメッセージが込められた。『あ、うわっ、そういうことか、そういうことか』って。最後も本当に、町山さん。驚くことになるんですけど。ううっ!ってなるんですけど。

(赤江珠緒)悪人に誘拐されるロボットの話ですよね。ギャングにね。

(町山智浩)悪人じゃないんですよ。なんていうか、どうしようもないヤンキーな人たち。ヤンキー夫婦にね、ロボットが育てられるっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)ねえ。いま公開してますもんね。日本でね。

(山里亮太)めっちゃ面白かったです。あれ。

(町山智浩)この夫婦がとんでもないっていうね。はい。

(山里亮太)キャラクターの濃い夫婦なの。

(町山智浩)ビッグダディにロボットが育てられるみたいなもんですよ。

(赤江珠緒)(笑)。ちょっと、個人攻撃はやめてください(笑)。

(山里亮太)町山さん、ビッグダディはね、すいません。独特っていうだけで(笑)。悪くはないです。

(赤江珠緒)そうそう(笑)。

(山里亮太)いやー、すごかった。いろんなメッセージが本当に散りばめられてますよね。あれ。

(町山智浩)あのどうしようもないビッグダディ・・・ビッグダディにしてますけど(笑)。ヤンキーパパが最後、泣かせるんですよ!

(山里亮太)そう!

(赤江珠緒)へー!ああ、そう?

(町山智浩)そう。

(山里亮太)いや、めっちゃかっこいいシーンがあるの。

(赤江珠緒)そうなんだー。

(町山智浩)父親としての自覚に目覚めてね、っていうね。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)とんでもないオヤジなんだから。最初はずっと。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)はい。とんでもないですよね!本当にね。

(赤江珠緒)ちょっとね、林下さんのね、顔が出てきちゃうからね。ダディの方がね。

(町山智浩)江頭さんに似てるんですね。いつも上半身裸でね。

(山里亮太)あ、そうそうそう(笑)。お父さんが。江頭さんっぽい。お母さんもね、かなり個性的なお母さんなの。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。見にいこう。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)ヤンキーになったきゃりーぱみゅぱみゅみたいな感じの。

(山里亮太)そうそうそう(笑)。

(赤江珠緒)ほほう(笑)。

(山里亮太)ぶっ飛んだ格好してるの。

(町山智浩)そういう感じです。チャッピーでした。ぜひご覧になってください。

<書き起こしおわり>

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