町山智浩 アンジェリーナ・ジョリー『不屈の男 アンブロークン』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、アンジェリーナ・ジョリー監督の映画『アンブロークン』を紹介していました。


(赤江珠緒)では、今日の本題に行きましょう。

(町山智浩)今日はね、アンジェリーナ・ジョリーって女優さんが監督した映画で『アンブロークン』っていう映画についてお話します。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)これ、アメリカでクリスマスに公開されたばっかりなんですけど。だから2週間ぐらいしかたってないですけど。これね、日本では公開される見込みがないんですよ。

(赤江珠緒)らしいですね。

(山里亮太)話題になってますよね。いま、日本で。それで。

(町山智浩)はい。これ、去年の6月ごろにアンジェリーナ・ジョリーが来日した時にですね、いわゆるインターネットとか、産経新聞とか、週刊文春などのいわゆる保守系メディアがですね、『アンジェリーナ・ジョリーが反日的な映画を監督している』っていう風に騒いだんですね。

(赤江珠緒)ええ。

日本での公開予定が未定

(町山智浩)で、その辺りでですね、配給元も日本公開を見合わせて。いまのところ、公開予定がないという感じなんですけども。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)でも、映画が完成したのはついこの間なんで、誰も見てないのにな・・・とか思いましたけどね(笑)。はい。

(赤江珠緒)うん、そうか。

(町山智浩)それで、見ましてですね。すごく立派な映画でしたよ。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)うん。これはね、撮影監督がめちゃくちゃすごい、ロジャー・ディーキンスっていう人がやってるんで。いやー、映画って監督が新人でも、撮影監督で立派な映画になるなって思いましたけど。それはまあ、いいんですが。

(赤江珠緒)そういうもんなんですね。ええ。

(町山智浩)そういうもんですよ。これは豆知識として持っておくといいんですけど。映画の画面っていうのを決めているのは監督じゃなくて、撮影監督ですから。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)いちばん現場で偉い人は撮影監督なんです。これは重要なことなんですが。はい。まあいいや。それでですね、映画の本題に行きますとですね、『アンブロークン』っていうタイトルはね、『破産しない』じゃなくてですね、『不屈』とかですね、『くじけない』っていう意味なんですね。これは、主人公は実在の人物で、ルイス・ザンペリーニっていう、オリンピックの金メダリストです。

(山里亮太)へー。

(町山智浩)で、この人はですね、20世紀の初めにアメリカに移民したイタリア人なんですけど。イタリア系移民で。で、まあその当時イタリア系移民っていうのはものすごく差別されて、迫害されていたんで。アメリカでは。すごくいじめられるんですが、彼は戦うんですね。ぜったい負けない男で。

(赤江・山里)ほうほう。

(町山智浩)で、戦ううちに、ケンカも強いんですが。酒や煙草や女の子も好きでですね。で、かっぱらいとかやっていて、警官に追われたりしてるような男の子なんですよ。不良少年ですね。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)でもね、逃げ足がめちゃくちゃ速いってことでですね、その技術を陸上競技に打ち込んでですね、中距離走。だから1マイル走で全米記録を打ち立ててですね。

(赤江珠緒)あ、本当に速かったんですね。

(町山智浩)本当に速かったんです。逃げ足の速い男だったんですね。それで、19才の時に5000メートル走の選手としてですね、ベルリンオリンピックに出場して金メダルを獲得するんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)で、このシーンが結構良くて。彼はイタリア系で、しかもアメリカの国旗を背負ってドイツで試合に出て。しかも周りは日本人の選手もいるんですね。だからまさに世界の民族の国家を超えた平和の祭典オリンピックっていう感じなんですよ。そのシーンは。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)で、彼自身はまだ若いから、4年後の東京オリンピックでもがんばるぞ!って思うんですね。東京行くぞ!って思うんですけど、そしたら戦争になっちゃうんですよ。で、東京オリンピックは中止になります。

(赤江・山里)はい。

(町山智浩)で、ザンペリーニくんは南太平洋で爆撃機に乗るんですけども。で、ハワイ周辺で偵察してるんですね。そうすると、この爆撃機がボロくてですね、エンジンの欠陥で墜落しちゃうんですよ。で、救命ボートに乗ってですね、仲間何人かとともにずっと漂流するんですけども。南太平洋を。サメがすごいんですよ。

(赤江珠緒)あー・・・

(町山智浩)で、ボンボンボンボン、ボートをつついてくるんですよ。サメが。

(赤江珠緒)うわっ、怖いですね。はい。

(町山智浩)それでまあ、水もないし。たまに雨が降ってそれを飲むぐらいで。で、47日間漂流したんですね。彼らは。

(赤江珠緒)それもすごいですね。47日間。

(町山智浩)この漂流シーンが結構酷いんですよ。結構すごくて。まあ、俳優たちは本当に絶食してガリガリになっています。で、最終的にはザンペリーニくんと仲間1人だけしか生存者はいないんですけども。みんな死んじゃって。で、そこでやっと救助されるんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、それを救助したのが敵である日本の軍艦だったんですよ。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)それで、彼らは、とうかザンペリーニくんは、サメよりも恐ろしい敵に出会うことになるんですよ。

(山里亮太)捕虜になって。

(町山智浩)その敵っていうのは、渡邊睦裕(わたなべむつひろ)っていう軍曹なんですね。日本軍の。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、その人は東京の大森にあった捕虜収容所で捕虜を仕切っていたんですよ。で、この渡邊睦裕っていう軍曹はですね、すごく金持ちのおボンボンで。早稲田の仏文科を出ていたインテリでですね。英語も話せるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)で、しかも写真を見ると美男子なんですね。結構。ところがですね、そのザンペリーニがオリンピックの金メダリストの有名人だって知るとですね、徹底的に彼を虐待するんですよ。

(山里亮太)ほー。

(町山智浩)もう意味もなくバンバン殴って。たとえば、『俺を見ろ!』って言うんですよ。で、バキッ!って殴って、『俺を見るな!』って言うんですよ。見ないと、『俺を見ろ!』バーン!って殴って。繰り返すんですよ。

(赤江珠緒)うーん・・・

(町山智浩)で、ボッコボコにするんですね。とにかくザンペリーニだけを徹底的にいじめ抜くんですよ。で、これが酷いんですけども。これね、見ているとね、大統領候補でマケイン上院議員っているんですけども。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)マケイン上院議員もね、お父さんがアメリカ軍の提督だったんで、ベトナム戦争で爆撃機撃墜された時に、ベトナムの収容所でものすごい虐待されるんですよ。有名人だったんでね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)目的は要するに彼を屈服させることによって、英雄だったり有名人だから、他の捕虜も全部屈服させるっていうことができるんですよ。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)で、完全に屈服したらラジオに出して、プロパガンダ放送でアメリカ向けに『私は悪いことをしました』っていう反省放送をさせようとしてるんですね。ところが、そのマケイン上院議員も、このザンペリーニも屈服しなかったんですよ。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)あ、マケインさんは最終的にしたんですけど。ザンペリーニは屈服しなかったんですね。はい。で、徹底的にいじめられるんですけど。たとえば、捕虜を100人か200人並ばせて、一人ひとりに一発ずつザンペリーニを殴らせたりするんですよ。

(山里亮太)うわー・・・

(町山智浩)すると、捕虜が泣きながら、ごめんよー!って言いながら殴るんですよ。そういうことをやってるんですけど。その渡邊軍曹っていう人を演じてるのはですね、MIYAVI(みやび)っていうロックミュージシャンでですね。この間の紅白でSMAPのギターを弾いていた人ですけど。



(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)はい。すごく中性的でですね、見ていると、これたぶんアンジェリーナ・ジョリーが大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』を見たんだと思うんですよ。

(赤江珠緒)あー。

(町山智浩)で、あれで捕虜を虐待する日本兵を演じたのが坂本龍一さんで、すごく中性的なんですね。

(赤江珠緒)はい、はい。

(町山智浩)たぶんあのイメージだと思うんですよ。

(赤江珠緒)あ、ちょっと似てますね。写真を見ると。

(町山智浩)似てるんですよ。ねえ。戦場のメリークリスマスって日本兵による捕虜虐待を描いた映画だったですけど、83年に公開された時には別に上映中止を求める騒ぎとかなかったんですよ。反日だとか別に騒いでいる奴とかいなかったんで。もういま、時代が変わったなと思うんですけど。まあ、それは置いておいてですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)この渡邊軍曹がなんでそんなに残虐なのか?っていうのがね、すごく映画では謎になってるんですね。ただね、この原作の本があったり、あといろんな資料があるんですよ渡邊軍曹に関しては。で、そこで捕虜とか収容所の日本人の職員とかも証言してるんですけど。それを読むとね、映画よりもちょっと怖いんですよ。この人。本当に。

(山里亮太)へっ?

(町山智浩)この人ね、散々虐待した後、夜に捕虜をですね、優しく、『俺の部屋に来いよ』って呼ぶんですよ。それで、ビールをあげたり、お菓子をあげたりするんですよ。

(赤江珠緒)へえ。

(町山智浩)それで、『すまなかった。虐待、酷かった。許してくれ!もう二度としないから、友達になってくれ!』って言いながら、泣くんだって。

(赤江珠緒)DV夫みたいじゃないですか。

(町山智浩)そう!怖くなっちゃって。これ読んで。めちゃくちゃ怖いよ、この人!っていうね。こういう人って本当に怖いですね。

(山里亮太)うわー・・・で、次の日また何もなかったように?

(町山智浩)で、翌日また虐待するんですよ。それを繰り返すというね、やられた方はたまんないですよ。頭、おかしくなりますよ。本当に。まあ、そういう怖い人だったんですけど。ただね、日本兵がみんなこういう残虐だとか、日本兵が酷い虐待をするっていう映画じゃぜんぜんないんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、たとえば東京大空襲のシーンがあって。それではその、日本の民間人が家を焼かれて、ものすごくもう、大虐殺されるっていう画もちゃんと見せてるんですね。アンジェリーナ・ジョリーは。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だから、日本が酷い!っていうんじゃなくて、どっちもやってるよってことはちゃんと見せてるんですけどね。

(赤江珠緒)あ、そうなんですね。

(町山智浩)同じ大森収容所にね、徳川義知(とくがわよしとも)っていうね、華族の人がいたんですよ。華族って、徳川家の子孫ですね。その人は捕虜の世話をしてたんですね。英語ができるから。渡邊軍曹も英語ができるから捕虜の相手をしてたんですけど。だから、彼の方が、徳川さんの方がものすごく捕虜に優しくて。その戦争が終わった後、感謝状をもらってるんですよ。捕虜だった人たちから。

(赤江・山里)へー。

(町山智浩)そういう人もいたんですね。

(赤江珠緒)そういう人も描かれてるんですか?

(町山智浩)そういう人はね、描かれていない。原作にも出てくるんですけど、映画の方には出てこないんですが。ただね、渡邊軍曹は逆に捕虜たちによって告発されて、戦争が終わった後、戦争犯罪者として指名手配されるんですよ。

(赤江珠緒)実際に。はい。

(町山智浩)実際にはね。ところが、この渡邊っていう人は逮捕されなかったんですね。

(赤江珠緒)えっ?なんでですか?

(町山智浩)この人ね、敗戦と同時に逃亡してね、7年間、山の奥で暮らしていたんですよ。隠れて。で、占領が終わって進駐軍が引き上げた1952年にやっと出てきて。で、文藝春秋にその逃亡記を書いているんですよ(笑)。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)そうなんですよ。アイスクリーム売ったりしてたとか書いてましたよ。僕、記事を手に入れたんですけどね。はい。そういう人でね、やっぱり自分がやっていたことが悪いって思ったからすぐ逃げたんだと思うんですけど。でね、このアンブロークンっていう映画はね、戦争が終わったところで映画自体は終わっちゃうんですけど。実際は、このザンペリーニさんにとってね、いちばんの地獄は戦争が終わった後なんですよ。

(赤江珠緒)戦争が終わって、捕虜からも開放されて。

(町山智浩)そうなんですよ。この人、開放されてアメリカに帰るんですけど、ずっと3年間、拷問され続けたんで、はっきり言って頭がおかしくなっちゃってるんですよ。

(赤江珠緒)ああ。

(町山智浩)眠れないし、結婚もするんですけど、非常に憎しみが渦巻いてて。渡邊軍曹に対する。で、もう悪夢の中で何度も何度も渡邊軍曹を殺す夢を見るんですよ。

(赤江珠緒)へー。うん、うん。

(町山智浩)で、もう『殺してやる!殺してやる!殺してやる!』っつって、もうどんどんどんどんおかしくなっていくんですよ。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)で、酒に溺れて、奥さんにも暴力をふるうから、奥さんからも離婚されそうになって。もう、いわゆるだからPTSDですね。言葉、ないですけど。当時は。まあ、それになっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、限界まで追い詰められたところで、この人、結局、やっぱり教会にいって救われたんですね。で、キリストの言葉でね、『汝の敵を愛せ』って言葉がありますよね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それで、やっと、『この地獄から俺が抜け出せるには、それしかないんだ』ということがだんだんわかってくるんですよ。キリストって十字架にかけられた時に、めちゃくちゃ拷問されてるじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)だからこのアンブロークンっていう映画はそれをちょっと重ねてはいるんですよ。十字架みたいな木の棒を持たされて拷問されるとことか、明らかにキリストを重ねてはいるんえすけど。で、結局ものすごい憎しみがあると、自分がいちばん辛いんで。そっから脱出するには、相手を許すしかない。敵を許すしかないんだという結論に彼は達して。それで救われるんですね。

(赤江珠緒)えーっ!そういう心境になって、そうできるんですね。

(町山智浩)まあ、それ以外には救われないんですよね。だってずっと、殺してやる!って気持ちだったら。自分がいちばん辛いですよね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、救われたってことで、それをザンペリーニ氏がですね、それを渡邊軍曹に伝えたくなったんですって。私は救われたよ!と。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)もう大丈夫だ!と。それでですね、ずっと連絡を取ろうとしてたんですけど、応えなかったんですね。渡邊軍曹は。で、とうとう、1998年に、とうとう初めて渡邊軍曹は・・・もう軍曹じゃないですけど。渡邊睦裕氏はですね、CBSテレビのインタビューに出演するんですよ。

(赤江珠緒)めちゃくちゃ最近じゃないですか。98年。はい。

(町山智浩)むちゃくちゃ最近なんですよ。で、そのインタビューは、いまもYouTubeで見れるんですけども。『私はザンペリーニを虐待したことを認めます』と言っています。



(赤江珠緒)ほー。

(町山智浩)で、もうひとつ、面白いのは、『私がそういう虐待をしたのは、軍の命令ではありません。自分の気持ちからしたことです』って言ってるんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)これは周りの証言から照らし合わせると、事実ですよね。他の人は虐待してなかったんで。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)そう。やっぱりなんかいろいろ問題があった人だと思うんですけど。

(赤江珠緒)そうでしょうね。で、また夜だけ優しくしたりね。呼びに行って。

(町山智浩)そう。自分では悪いと思っているからでしょうね。うん。だからまあ、抑えられなかったんでしょうね。で、1998年になんで彼がインタビューに応えたか?っていうと、CBSテレビがですね、そのザンペリーニ氏と渡邊さんを会わせようとしたんですよ。

(赤江・山里)ふん。

(町山智浩)っていうのは、長野オリンピックでザンペリーニさんは元金メダリストとして聖火ランナーをすることになってたからなんです。

(赤江珠緒)いやー、すごい人生ですね。ザンペリーニさん。

(町山智浩)すごい人生なんですよ。彼はとにかく日本とアメリカとの友情を結びたいんだってことで、そういう活動をしてたんですね。それで彼は直江津ってところで、炭鉱でものすごい強制労働を渡邊軍曹にやらされていたんですけども。その直江津の町でですね、聖火を持って走ったんですよ。

(赤江・山里)へー!

(町山智浩)で、その時は日本も結構ちゃんとそれを報道してたんですけども。まあ、でも渡邊軍曹は最後までザンペリーニに会おうとしなかったんですね。だから最後まで、自分の過去の罪と直面することは避けたまま死んでいったんですけどもね。

(赤江珠緒)そうなのかー。

(町山智浩)という話で、という映画なんで。まあ、映画では最後、言っちゃうとあれだけど、日本でもYouTubeで見れるからいいんですけど。長野オリンピックでザンペリーニさんが走る映像が出てきますけどね。日本の人たちに拍手されながらね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)だから、これは別に日本が悪いとかいう映画でもなんでもなくて。本当に強い男は敵を許すっていう話ですよ。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)なるほど。反日じゃなく。

(町山智浩)本当に耐える男っていうのは、くじけないんだ。自分の中の憎しみにも、くじけないんだっていうことなんですよね。

(赤江珠緒)たしかに、許してないと日本でのオリンピックの長野オリンピックで、聖火ランナーは努めないですよね。

(町山智浩)だって彼は東京オリンピックで走るのが夢だったんだもん。

(赤江珠緒)ねえ。

(町山智浩)80才にしてそれを果たしたんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、まあこの話をね、このアンブロークンっていうのを上映できないような状態になっていて。その時に、この叩いている人たち、攻撃している人たちっていうのは、原作となっているノンフィクションの中に、こういう文章が出てくるからなんですね。『戦争で捕まった捕虜たちは、日本で医学的実験での過程で殺されたり、儀式としての食人で食われた。生きたまま』という記述があるんです。たった一行なんですけども。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)それはその戦争中に日本軍が捕虜にやった虐待行為の例として、たった一行ひいてあるだけで。別に映画の方が、ザンペリーニさんと関係ないからそんなことを描いてないんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、その叩いた人たち。特に週刊文春とかはこれに関して、『食人とかは捏造である』っていう風に言ってるんですけど。これ、捏造じゃないですから。

(赤江珠緒)うーん・・・

(町山智浩)これ、実際に小笠原事件っていう事件が起こっているんですよ。で、これは捕虜だった米軍のパイロット5人を殺してですね、日本兵に食べさせるっていうことを日本軍がやっているんですよ。

(赤江・山里)はー・・・

(町山智浩)で、しかもそれが飢えていたからじゃなくて、敵を食べるっていうことでの士気高揚を目的とした宴会でやってるんですよ。だから『儀式として』って書いてあるんですよ。これ。この原作の本には。だから、ぜんぜんその、なんていうか『儀式としてやった』っていうから日本が伝統的に食人の習慣を持っていたっていう風に批判してたんですけど、そういう意味じゃないんですよ。これ。酒盛りでやったからなんですよ。

(赤江・山里)はー・・・

(町山智浩)だからこれ、事実なんで。捏造でもなんでもないし。あと、『生きたまま食われた』っていうのはこれ、事実じゃないんですね。殺してから食ってるんで。ただ、生きたまま、その人の臓器をバラバラにするっていう事件もやってるんですよ。日本は。これ、九州大学で8人の米軍捕虜が生きたまま内臓を取られて、どうやって死んでいくか?とか、生きたまま血管を流されて、どのぐらい出血すると死ぬか?っていう人体実験を生きたままやられてるんですよ。

(赤江・山里)はー・・・

(町山智浩)で、これは『海と毒薬』っていう小説になるぐらい有名な事件なんですけど。どっちも事実なんですよ。全く捏造じゃないですから。だからまあ、でも、それは全然この話とは重要な問題じゃなくて。映画の中には出てこないんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)まあ、本当にね。そういうところでね、間違った情報によってこの映画は叩かれてますよ。完全に。

(赤江珠緒)そうなんですね。

(町山智浩)で、もういま、すごい嫌な世の中になっているじゃないですか。サザンオールスターズがね、愛と平和を歌ったら抗議されるってどうなってんの?って思いますけど。だから僕が前に話した『グランド・ブタペスト・ホテル』っていう映画のモデルになったシュテファン・ツヴァイクっていう作家のことを思い出すんですよね。彼はドイツ語圏でいちばんの人気作家だったのに、ナチスの時代になったらユダヤ人ってことで迫害されて死んでいったんですけど。

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(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それともう、サザンオールスターズの弾圧っていうのがね、すごくよく似てるなと思うんですけどもね。だからもう、こういうね、ことでいいんだろうか?と。そういう愛と平和を歌う歌とか映画が攻撃されるような世の中でね。それで、オリンピックやるの?と思いますよ。

(山里亮太)20年にね。

(町山智浩)そんな国でオリンピック、やるんですか?

(赤江珠緒)うーん・・・たしかに。

(町山智浩)本当に。どうすんの?って思いますよ。はい。そういう感じでね。まあ、とにかく週刊文春は本当に反省してほしいですね。はい。

(山里亮太)内容を見て。

(赤江珠緒)そうなんですね。映画はだって、いま封切られたわけですもんね。

(山里亮太)前もそうでしたよね。『ジ・インタビュー』の時もそうでしたもんね。中身を見ずに怒っているっていう。

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(町山智浩)そう。中身見ないで言ってるんだけどね。みんなね。うん。まあ、そういうことですけども。はい。

(赤江珠緒)そうですか。

(山里亮太)これ、映画自体はどうなんですか?映画の、作品のクオリティーと言いますか。

(町山智浩)これはもう堂々たる作品になっていますね。さっき言ったように、撮影監督が非常に優秀な、『スカイフォール』の撮影監督ですけどもね。それで、脚本はコーエン兄弟が参加してて。コーエン兄弟っていうのはもうアカデミー賞をとっている名作家なんで。まあ、すごいサポートによってアンジェリーナ・ジョリーがガッチリした映画を撮ったっていう感じでしたね。

(赤江珠緒)そうですか。

(町山智浩)はい。アンジェリーナ・ジョリーさん自身は国連大使でもあって、世界の平和を実現するために邁進している人なんで。その立場で撮ってますからね。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)はい。

(赤江珠緒)なるほど。でも日本では、公開予定はないということなんですね。

(町山智浩)もうね、全然そういう、日本が悪いなんていう話じゃないですよ。見ると。許しの物語ですね。最終的にはね。

(赤江珠緒)元オリンピック選手がね、47日間も漂流して。捕虜にもなってっていう。

(山里亮太)捕虜になるまでのドラマでも、相当濃厚なやつなのに。その後もまたいろいろあって。

(町山智浩)彼の本当の強さを示したのはやっぱり、許したってことですよ。

(赤江珠緒)ねえ。そういう人物がいたっていうことをね、初めて知りましたね。

(町山智浩)ちなみに、マケインさんもすごく拷問されたんですけども、最終的にベトナムとアメリカの国交を回復させたのはマケインさんなんですよ。

(赤江珠緒)ほー。

(山里亮太)許したんだ。

(町山智浩)そう。拷問されたけども。そういう人たちが本当は強い男だなと思いますけどね。ちなみにさっきの小笠原事件でも、その人肉を食べるって言った人に反抗して、捕虜を守ろうとした日本人がいたんですよ。彼らが、正しい人たちなんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。なんか、歴史も本当に複雑だから、もういろんなね、視点がありますからね。

(町山智浩)そう。だからサザンオールスターズが言っているように、『歴史を照らし合わせて助け合えたらいいじゃない』って歌ったんですよ。それを弾圧しようとするなよと。

(赤江珠緒)そうですね。うん。

(町山智浩)もう本当に、みんな守った方がいいですよ。大変なことになりますよ。こんなものを許していたら。はい。

(赤江珠緒)なるほど。わかりました。今日はアンジェリーナ・ジョリー監督のアンブロークンを町山さんにご紹介いただきました。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どもでした。

<書き起こしおわり>


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