町山智浩が語る『キャプテンアメリカ2』の元ネタと超深いテーマ

町山智浩が語る『キャプテンアメリカ2』の元ネタと超深いテーマ たまむすび

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。映画『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』の裏側にある、非常に深いテーマについて語っていました。

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (字幕版)

(町山智浩)ということでですね、今日はアメリカで大大大大大大ヒットしてるですね、映画。マンガ映画です。マンガを映画化したものなんですけど。『キャプテン・アメリカ』っていう映画ですね。それの続編の『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』っていう映画について紹介します。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)これ、キャプテン・アメリカって1作目が何年か前に公開されたんですけど。ご覧になってますか?

(赤江珠緒)見ました。いやー、あのね、ちょっと一寸法師みたいな感じ、しますよね?

(町山智浩)えっ!?

(山里亮太)違う映画、見たんじゃない?

(赤江珠緒)いや、だって主人公がすごい弱かった、虚弱体質の人が、ものすごく筋肉ムキムキな・・・

(山里亮太)赤江さん、一寸法師、知ってる?

(町山智浩)(笑)

(赤江珠緒)いや、でも打ち出の小槌か!っていうぐらい変わるんですよ。ですよね?町山さん。

(町山智浩)あー。まあ主人公はですね、男の子で第二次大戦の時に戦争が始まったんでアメリカ軍に志願するんですね。スティーブ・ロジャースっていうんですけど。ところが、なんていうか小倉一郎さんっていう俳優さんをご存知ですか?

(山里亮太)ん?なんの方だろう?

(町山智浩)昔、70年代に結構テレビに出てた、本当にひ弱なひ弱な俳優さんなんですよ。見た目が。ひょろひょろで、白くて、あばらが見えてて。その小倉一郎さんのアメリカ版なんですよ。その主人公が。のび太が1週間ぐらいご飯食べなかった感じ。

(赤江珠緒)ああ、そうですね。

(町山智浩)のび太ってジャンクフード食べ過ぎてぷっくりしてますけど、あれがご飯食べなかった感じなんですよ。それが、でもすごく愛国心があって、アメリカを守ります!ってアメリカ軍に入るんですけども。あまりにもへなちょこなんで、これは兵隊にはなれないよと。徴兵の基準に受からないよと言われるんですが、ものすごい愛国心が強いんで。命がけなんで、じゃあ・・・っていうことで、アメリカ軍がその時研究していた超人血清というものがありましてですね。それを打たれてですね、超人になるんですよ。筋肉モリモリの。

(山里亮太)ドーピングだ。超ドーピングだ。

(町山智浩)超ドーピングですよ。これをクリス・エヴァンスっていう俳優さんが演じてるんですけど、男なのにおっぱいがある人ですね。

(赤江珠緒)あれね、主人公が見事に変わるんですけど。あれはどういう役作りですか?

(町山智浩)あれは筋肉モリモリの方が本当のクリス・エヴァンスさんなんです。で、ひょろひょろの方はCGで加工してるんですよ。他の人の体に顔とかを貼り付けて。

(赤江珠緒)そうなんだ。なるほど!

第二次大戦中の国威高揚マンガ

(町山智浩)普通の人は逆ですけどね。で、これは筋肉モリモリの方が本当の俳優さんで。それで、ナチとかと戦うんですね。これ、舞台が1940年代で戦争中なんですよ。で、これ元がマンガがありまして、その当時に書かれていたマンガで。子どもたちに国威高揚をするためにですね、キャプテン・アメリカ。まさに『アメリカ大将』っていうんですかね。訳すと。キャプテン・アメリカね。が、日本軍やナチと戦うっていうマンガがありまして。それはまあ、昔の戦時中のマンガだったんですけども。これがまあ、その後蘇るんですよ。

(山里亮太)はい。

(町山智浩)戦後ね。どうして蘇ったか?っていうと、氷漬けになっていたって話になっていて。このキャプテン・アメリカが。

(赤江珠緒)現代に1人で。そこが浦島太郎か!っていう。

(山里亮太)なに昔話にたとえてんの?

(町山智浩)そうそう。浦島太郎。この後、アベンジャーズっていう映画が作られて。それで現代に蘇るんですね。氷漬けのを発見されて。解凍されてですね。冷凍食品みたいに。で、ところが彼はひょろひょろのヘナチョコだったわけじゃないですか。それで軍隊に入ったわけじゃないですか。10代で。で、現在でも90才の爺さんなんですけど。実際はね。70年間凍結されていたから。だからみんなにもう、浦島太郎扱いされて。バカにされるんですね。

(山里亮太)ふん。

(町山智浩)アベンジャーズでは。で、はっきり言うと90才の童貞男ですからね。

(赤江珠緒)そうですね。ずいぶん時代錯誤なところ、ありますもんね。

(町山智浩)これ、長いですよ。彼女いない歴70年っていう人ですからね。

(山里亮太)こじらせたなー!

(町山智浩)(笑)。ものすごいこじらせてるんですけど。でも、ものすごく愛国心が強いから、アメリカのために戦ってるんですね。で、今回ですね、ウィンター・ソルジャーっていう映画ではですね、彼がアメリカのために戦おうとして、逆にアメリカの敵になっていくっていう話なんですよ。

(赤江・山里)ええーっ!?

(町山智浩)で、映画の最初の方では一生懸命まだ現代の勉強を続けてるんですね。だからメモ帳を持ってるんですよ。キャプテン・アメリカって。それで、『ロッキー』とかですね。要するに自分が寝てた間に起こっていたことを全部メモして、追っかけしてるんですよ。この人。

(山里亮太)真面目だから。

(町山智浩)真面目だからそういうアプローチしかできなくて。『スターウォーズ』とかね。見なきゃなんないマストリストを作ってるんですよ。もう悲しいんです。『スティーブ・ジョブズって誰?』みたいなね(笑)。知らないんで。ただ、やっぱりね、メモに鉛筆書きなんですよ。スマホ使えないんですよ。キャプテン・アメリカ。かなり、まだ追いつけてない人なんですけど。で、彼がですね、シールズっていう世界を平和にする組織がありまして。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)国際諜報機関なんですけど。そこで働いてるんですね。キャプテン・アメリカは。で、この映画のいちばん最初でシールズがすごい作戦をやる!っていう風に紹介されるんですよ。それは、ヘリキャリアっていう巨大空母が空に飛ぶやつ。空中空母と、人工衛星のスパイ衛星ってありますよね。地上を監視する衛星システム。それとインターネットを連動させて、地上にいる、世界のどこにもテロリストがいると。それを事前に見つけて、空中から全部先に殲滅することができるっていうシステムを紹介されるんですよ。キャプテン・アメリカが。

(山里亮太)ほう!

(町山智浩)で、シールズはこれでもって世界を平和にできる!みたいなことを言われるんですよ。そうするとね、キャプテン・アメリカは『これはおかしいよ』って言うんですよ。

(赤江珠緒)ん?なぜだ?

(町山智浩)『これはおかしい。自由を守るためにこんなことをやるのはおかしい。これはただの恐怖を与えるためにやってるんじゃないか?』って言って反発するんですね。

(赤江珠緒)おー、なるほど。

非常に政治的な映画

(町山智浩)で、そこからこの話が始まっていくんですけども。これね、ものすごく政治的な映画なんですよ。このキャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャーっていうのは。で、アメリカで大ヒットしてますけど、アメリカ人もいまの若い人たちはたぶんほとんど意味がわからないんですよ。この映画で描かれていることの。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)で、今日は、たぶん日本でお子さん連れでお父さんとかみんな見に行ったりすると思うんですね。キャプテン・アメリカは。アベンジャーズが大ヒットしましたからね。その続きだと思って。でもね、わかんないと思うんですよ。なんだか。だからその説明を事前にしておこうと思うんですよ。ネタバレにならない程度に。

(赤江・山里)お願いします。

(町山智浩)で、まずこのシールズっていう国際平和組織みたいなのがあるんですけど。首都ワシントンにポトマック川っていう川がありまして。そこのほとりに巨大基地が建ってるんですね。で、そこが何度も映るんですけど、その脇にちょっと低めの10階建てぐらいの丸いビルが映ってるんですよ。何度も見てるんですけど。それが、なんにもそこでそのビルはなんだって説明がないんですけど、実はものすごく重要なビルディングなんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)それはウォーターゲートビルっていうビルなんですよ。ここはあの、1972年のウォーターゲート事件の舞台になった場所なんです。で、このウォーターゲート事件っていうのがテーマになってるんです。ウィンター・ソルジャーっていう映画の。で、ウォーターゲート事件っていうのはそのビルに、民主党の事務所があったんですね。選挙事務所があって、その時選挙があったんですけども。その時に現役だったニクソン大統領。共和党なんですけど、が、民主党のオフィスの盗聴を行ったんですよ。

(山里亮太)ふんふん。

(町山智浩)で、それが発覚して大統領が盗聴をしてると。で、選挙をいじろうとしてるということで大問題になって、ニクソンは失脚してですね、辞任したんですね。これはアメリカでは大変な事態になって。政府が国民を監視してるんじゃないか?と。で、実際にしてたんですけど。その後、どうもアメリカ政府が大量にやったのが、CIAやFBIが盗聴していたことがどんどん発覚していくんですけども。実は政府は国民をぜんぜん、国民のために働いてるんじゃなくて、国民を監視してるってことがわかっちゃったんですよ。

(赤江・山里)うん。

(町山智浩)で、これでもうぜんぜん政府を信じることはできないこと、しかもベトナム戦争の後でしたからね。これはなんなんだ?ってことで、アメリカ人がこっから・・・

(赤江珠緒)日本でもありましたもんね。ウォーターゲート事件はね。

(町山智浩)そうなんですよ。その政府を信じなくなったきっかけなんですけども。で、これは映画化してるんですね。これを。それは『大統領の陰謀』っていうタイトルで映画化されてるんですけども。それはウォーターゲート事件を暴いた記者の話なんですね。ワシントンの。これの主演がロバート・レッドフォードなんですよ。で、ロバート・レッドフォードはその前に『コンドル』っていう映画を撮ってるんですけど、コンドルっていう映画ではCIAの職員が、CIAがわざと世界中に戦争を起こして、アメリカにとって気に入らないものを排除したりしてるっていう陰謀を知ってしまって。末端の職員が。で、CIAの内部で殺されそうになるっていう話をコンドルっていう映画で撮ってるんですね。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)それがロバート・レッドフォード主演なんですよ。

(赤江珠緒)あ、ここにもロバート・レッドフォードが。

(町山智浩)ロバート・レッドフォード。で、このウィンター・ソルジャーはロバート・レッドフォードが出てくるんですよ。シールズの長官として。だからこれは、それで長官がシールズの中で要するに全世界を監視してテロリストを排除するっていうシステムを作るよ!って最初にそう言うんですね。それに対してキャプテン・アメリカが反対する。で、キャプテン・アメリカは追われることになるんですけど。この話はロバート・レッドフォードが75年に出たコンドルっていう映画が元になってるんですよ。

(赤江・山里)はー。

(町山智浩)要するに政府機関の陰謀に気がついた政府職員が反抗して、反逆するっていう話なんですね。

(赤江珠緒)それ、いまでもあるじゃないですか。いま、まさに。

(町山智浩)そう!いままさにあったのが、エドワード・スノーデン事件なんですよ。で、それも元になってるんですよ。今回のウィンター・ソルジャーの。

(赤江・山里)あー!

(町山智浩)で、エドワード・スノーデン事件っていうのはNSAっていうアメリカの機関がありまして。これは対テロリスト組織なんですね。組織っていうか、省なんです。国家安全保障局っていうとこで。テロリストからアメリカを防ぐためにあるんですけども。そこがですね、国民の電話とかインターネットのやりとりを傍受してたと。情報を取っていたということが発覚したんですね。つい最近。それをNSAで働いていた職員のエドワード・スノーデンが暴露したっていう事件がありました。

(赤江珠緒)告発しましたね。

(町山智浩)告発しました。これも中に入ってきてるわけですよ。このウィンター・ソルジャーの中に。だから、そういう点がわからないと、なんだろうな?この話ってなっちゃうんですね。

(赤江珠緒)なるほどー!

(山里亮太)悪いやつからね、急に悪いやつに仕立てあげられて、追われてて。それをどう逃げ切るか?っていうぐらい単純な話じゃないっていうことですね。

(町山智浩)そうなんです。だからある程度の事実が下にあるんですね。このウィンター・ソルジャーっていうのは。

(赤江珠緒)そういう時にキャプテン・アメリカ。最初の、1の方はなんていうか、当時のアメリカっていうか。戦意高揚!みたいな感じの、割と単純なヒーローっていう感じがしたんですけど。

(山里亮太)いいやつがいて、悪いやつがいて。

(町山智浩)そう。すごい懐かしい感じの。昔、日本に『のらくろ』ってマンガがあったんですけど。いま読むと、とんでもない内容なんですよ。のらくろっていま読むとすごいですよ。軍隊に行って、明らかに中国人だったりアメリカ人だったりするような兵隊をバンバン殺すんですから。かわいいのらくろくんが。本当にすごいですよ。

(赤江珠緒)やっぱり戦争に向けてのコミックですからね。

(町山智浩)そう。その時代のマンガだったからですけども。だからこのキャプテン・アメリカも。

(赤江珠緒)そういう感じだったのかな?

(町山智浩)元々はそういうマンガだったんですよ。ところがその後、どんどん要するにアメリカっていう国が変わって、時代が変わっていく中で、ただの愛国者が愛国者でいられなくなっちゃうんですね。

(赤江・山里)はー!

(町山智浩)で、キャプテン・アメリカっていうのはものすごく愛国者が強くて。本当にアメリカを死ぬほど愛してるんで、アメリカ政府が悪いことをした場合に、おかしくなってきちゃうんですよ。で、実際にウォーターゲート事件があった時に、マンガの方の、原作の方のキャプテン・アメリカはこういう話になってるんですよ。あのね、秘密の帝国っていう悪の軍団がいるんですね。それがアメリカの内部に潜んでて、アメリカを全体主義社会にしようとしてるんですね。で、それを追っかけてるんですけど。キャプテン・アメリカは。とうとう首領を捕まえそうになると、首領が逃げていくんですね。で、どこに逃げていくのか?と思って追いかけると、ホワイトハウスの中に入ってくんですよ。そいで、その首領のマスクを、覆面をバッ!と取ると、顔は出てこないんですけど、その時の大統領なんですよ。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)その時は、ニクソンなんですよ。大統領は。アメリカを内部から侵略している組織のいちばんのトップがアメリカの大統領だったっていうオチだったんですよ。それ。それでキャプテン・アメリカは『もう俺はこの国を信じられない』って言って、キャプテン・アメリカを辞めちゃうんですよ。辞めて、『俺は国家なき男』って言って。『ノマド』っていう言葉があるんですけど。ノマドっていうのは遊牧民ですね。国家を持たないで放浪する人のことをノマドって言いますけど。『俺はノマド』って言って、キャプテン・アメリカを辞めてヒッピーみたいになってアメリカを放浪し始めるんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)彼は。だから本当にアメリカを愛してるからそうなっちゃうんですね。絶望して。っていうようなキャラクターなんです。だからものすごく単純な愛国キャラかと思うと、だからこそどんどんどんどん苦しいところに追い込まれていくっていう、結構悲劇のキャラなんですよ。

(山里亮太)へー!お気楽な感じかと思ってました。見た感じから。

(町山智浩)そうそう(笑)。見た感じは星条旗を着てるから、バカみたいなんですよね。見た目が(笑)。本当に恥ずかしい格好をしてるんですけど。こんな恥ずかしい格好をするほど愛国心があるんですよ。だからこそ、『国なんかどうでもいい』ってチャラチャラ思っている人よりもどんどん傷ついていくんですよ。彼は。だって、国家っていうのは悪いことをしますからね。政治家っていうのは。彼は純情だから、いちいち傷つくんですよ。それに。

(赤江珠緒)なるほどー!

(町山智浩)っていう話で。で、ウィンター・ソルジャーっていう今回のタイトルは敵の名前なんですよ。ウィンター・ソルジャーっていう名前のものすごい強敵のサイボーグが出てくるんですね。で、キャプテン・アメリカとほとんど互角に戦える能力の男が出てくるんですけども。これ、ウィンター・ソルジャーっていう名前がまた非常に政治的な意味を持っているんですよ。

(赤江珠緒)えっ?なんだろう?

(町山智浩)これは、アメリカで1971年にですね、ベトナム戦争がまだあった頃ですけど。ベトナム戦争に行ったアメリカの兵隊たちが、『我々がベトナムでどんな残虐行為をしたか?』っていう告白をした集会の名前が、ウィンター・ソルジャー集会っていうんですよ。

(赤江珠緒)えー!そうなんですか?

(町山智浩)そう。『アクト・オブ・キリング』とか『リーベンクイズ』と同じことなんですよ。71年にあったんです。その時にそれを主催した、戦争に反対するベトナム帰還兵の会っていうのの会長が、現在のジョン・ケリー国務長官なんですよ。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)ジョン・ケリーさんはベトナム戦争に行ってですね、そういう残虐行為の実態を見たんで。それを告発すると言って、帰還兵たちを集めたんですよ。それはどうしてか?っていうと、その直前にですね、アメリカ軍の兵士がソンミ村っていうベトナムの村でですね、まったく武装していない農民の女子供老人を500人殺したっていう事件がありまして。それが本当にあったのかどうなのか?本当に虐殺だったのかどうなのか?ってずっと裁判でモメてたんで。そういったことに対して、こうしたことはベトナムでしょっちゅう行われてるんだってことを証言する集会が行われたんですね。それがウィンター・ソルジャー集会なんですよ。

(赤江・山里)えーっ!?

(町山智浩)だからウィンター・ソルジャーっていうタイトルはものすごく政治的な意味があるんですよ。

(赤江珠緒)ものすごい重いタイトルなんですね。

(町山智浩)ものすごい重いタイトルなんですよ。で、これアフガンとイラクで戦争があった時にも、そこに参加した人たちは自分たちの残虐行為を告白する集会を開いて。それもウィンター・ソルジャー集会っていって。これに関しては集会の記録が日本でも本が出てます。『冬の兵士』っていうタイトルで出てますね。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)はい。だからね、子どものバカバカしい戦隊物みたいな。○○戦隊みたいな見た目なんですけど。キャプテン・アメリカって。実はすごい深い深い内容になってるんですよ。

(山里亮太)とんでもない敵だから、今回最終的にこの話がどう締めくくられるのか?ってのも。

(町山智浩)そうなんですよ。これ、要するに敵は巨大空母でもって全世界のテロリストを自由自在に空から殺すことができるっていう自動システムみたいなものを作っているわけですね。っていうかアメリカ政府がバックについているシールズっていう組織がね。で、これはなにか?っていうと、オバマ大統領がやっていることなんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)これ、ドローンっていうものがありましてですね。無人で空をとぶちっちゃな飛行機なんですけども。無人攻撃機って言われてるものなんですね。で、オバマ大統領っていうのは戦争をしないっていう政策をとってるんで。でも、テロリストはいっぱいいるじゃないですか。要するにブッシュ大統領はそれに対して全面戦争を仕掛けて、大惨事を引き起こしたんですけども。戦争をしないで戦争を止める方法っていうのはこれなんだということなんですね。オバマ大統領の政策は。無人攻撃機でテロリストを一人ひとり殺してくんですよ。

(赤江・山里)はあ。

(町山智浩)で、オバマ大統領。大統領に就任してから無人攻撃機をものすごい数で使っています。これはね、完全にリモコンで、テレビゲームみたいにして。要するにモニターを見ながらコントロールできるんですね。で、秘密基地でアメリカ兵がこれを操縦して。テロリストをいるところを人工衛星で見つけて、テロリストのいるところにこの飛行機、ドローンを飛ばして、それでロケットやミサイルを打ち込んでテロリストを殺すんですよ。

(赤江珠緒)まったく一緒じゃないですか!

(町山智浩)まったく一緒なんですよ。これ。これに関してはオバマ大統領が、排除すべきテロリストのリスト、危惧リストっていうのを持ってるっていうことがニューヨーク・タイムズで暴かれて大問題になってるんですけども。ただ、これもすごく難しくて。じゃあ戦争するまで、要するに敵がテロをするまで待つのか?と。いや、彼らがテロをする前に先に行って殺してしまえば、何十万人という犠牲は防げるじゃないかと。で、しかもこのドローンだとアメリカ兵はぜったいに死なないんですよ。ひとりも死なないんですよ。

(赤江珠緒)そうだね。

(町山智浩)ところが、ミサイルを打ち込まれた方はミサイルですから、テロリスト以外の人もいるんですよ。そこに。コラテラル・ダメージっていうんですけど、巻き込まれてかなり死んでるんですよね。2000人以上がいままでそのドローンで死んでると言われてるんですよ。

(赤江・山里)ええーっ!

(町山智浩)ただ、2000人の犠牲で何十万人が死ぬ戦争を防げるからいいじゃないかっていう説もあるんですよ。どっちが正義なんだ?ってことなんですよね。だからこういう本当の現実の厳しい問題を突きつけている、結構すごい映画がキャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャーだったですね。

(赤江珠緒)そうなんですね・・・

(町山智浩)だからぜんぜん絵空事じゃないんで。出てくることはぜんぶ何かの事実を元にしてるんだってことを考えながら見ていただくといいかなと思います。

(赤江珠緒)時事ネタが巧妙にね、盛り込まれている映画だったんですね。

(町山智浩)これがね、アメリカ映画の上手さなんですよね。だから見た後、なんかどうも残るんですよ。ウウッていうのが。

(山里亮太)キャプテン・アメリカが買って、スカッとして終わるような映画じゃないんだ。

(町山智浩)そういうことがないところがね、すごいところだなと思いましたね。

(山里亮太)最近、マンガのヒーローたちの心の闇のところばっか・・・

(赤江珠緒)やっぱり正義ってそんな単純なものじゃないっていうね。

(町山智浩)その中で正義を貫こうとするから、キャプテン・アメリカはかっこいいんですね。童貞だしね。

(山里亮太)よくこの話を赤江さんは一寸法師にたとえましたね。

(町山智浩)キスぐらいはしたことがある、みたいなことは言ってました。

(赤江珠緒)そうそう。デートの約束もしてたのにね。

(町山智浩)一応、ファーストキスじゃねーぞ!って言ってましたから。

(山里亮太)そこを言うところがね、童貞のいいところ。やったこと、あるし!って。

(町山智浩)あ、そっか(笑)。わかりました。

(赤江珠緒)今日は人気アメコミヒーロー原作の新作、キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャーご紹介いただきました。

<書き起こしおわり>

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー (字幕版)
クリストファー・マルクス, スティーヴン・マクフィーリー, ケヴィン・ファイギ
販売価格 ¥199(2018年3月24日21時27分時点の価格)

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