渡辺志保とAKI IKEJIRI Kanye West『DONDA』リスニングイベントを語る

渡辺志保とAKI IKEJIRI Kanye West『DONDA』リスニングイベントを語る INSIDE OUT

AKI IKEJIRIさんが2021年7月26日放送のblock.fm『INSIDE OUT』に電話出演。アトランタで開催されたカニエ・ウェスト『DONDA』リスニングセッションの模様を渡辺志保さんと話していました。

(渡辺志保)先週の金曜日、日本時間で言うと7月23日の朝9時からですねカニエ・ウェストのニューアルバム『DONDA』のリスニングパーティーがアトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアム。普通にめちゃめちゃデカいアリーナのスタジアムがあるんですけど。そこでリスニングパーティーが開かれたというわけで。まず今日はですね、そこの現場に実際に行っていらっしゃいました、この『INSIDE OUT』でもおなじみ。アトランタを拠点として活動していらっしゃいますフォトジャーナリストのAKI IKEJIRIさんをお迎えしてお届けしたいと思います。アキさん、お願いします。

(AKI)どうも、こんばんは。

(渡辺志保)朝からすいません。ご無沙汰でございますけども。月曜日の朝っぱらからこんなところに引っ張り出して……って感じなんだけど。アキさん、実際に先週金曜日の……そっちでは夜になると思うんですが。

(AKI)そう。22日の木曜日の夜。

(渡辺志保)実際に現地に行かれたと。大変だった?

(AKI)大変……なんかね、その週の月曜にいきなりプシャ・TがInstagramで告知して。それがグワーッて回ってきて。で、リスニングパーティーっていうことで。普通、そのリスニングパーティーってほら、みんなアーティストがやる時ってお金を取らへんくて。パーティーみたいに。みんな、やっぱり聞かせなあかんから。お酒も食事も振る舞って……っていう感じやけども。カニエの場合は金を取るんかい!ってなって。

(渡辺志保)「チケット、売るんかい!」って(笑)。

(AKI)そう。で、さすがカニエ、やることがちゃうなっていう。で、その金を取るっていうことがわかって「いやー、どうする? 行く? 行かへん?」みたいな話になっててんけど。で、その次の日にカニエがは……カニエって実はアトランタ出身で。シカゴをレペゼンしてんねんけど、アトランタ出身で。お母さんとお父さんが出会ったのがHBCU(Historically Black Colleges and Universities)っていうすごく由緒正しい黒人のための大学で出会っていて。その関係もあって、カニエがそこでチケットをタダで配りだしたんよね。

(渡辺志保)ねえ。5000枚配ったっていう風にニュースで書いてありました。で、モアハウス大学とかクラーク・アトランタ・ユニバーシティとかね。スペルマンとかね。

(AKI)そう。それの影響もあってチケットの値段が下がって。その次の日に。それで私も「じゃあ、行こうかな」っつって。そういう感じなんやけども。

(渡辺志保)COMPLEXとかのメディアのレビューを読むと「街中がカニエを歓迎していた」みたいな。そんな感じが書いてあって。

(AKI)そう。もうラジオとかもカニエ一色で。「今日はカニエ、ありまっせ!」みたいな。すごかったね。プロモーションが。

(渡辺志保)なるほどね。私もAppleMusicでストリーミングをしてくれてて。ずっとそれをちょいちょい見てたわけなんですけど。なかなか始まらなかったじゃないですか。まあ、それは織り込み済みだけどさ。

(AKI)そう! もう私の隣に座った人が熱烈なカニエファンで。しかもケンタッキー州から駆けつけてて。

(渡辺志保)マジで? 気合入っている!

(AKI)たぶんそういう人、いっぱいおったと思う。あんまりそのアトランタ、アトランタっぽい人はいてなかったし。やっぱりアトランタの人って「金、取るんかい!」って1回、そこで引いてまうから。

(渡辺志保)たしかに(笑)。わかる。その気持ちは非常にわかる。ケンタッキー州からでも、東京からでも駆けつけたくなる気持ち、めっちゃわかる。

(AKI)そうそう。7万人ぐらい入ったって。

(渡辺志保)うーわっ! 半端ないね。じゃあ、もうほぼ客席フルだったっていうこと?

(AKI)なんかね、3階席はあんまり使ってないらしくて。1階、2階を使っていて、そうね。ほぼフルっていう感じ。

(渡辺志保)すごい! じゃあ、そのケンタッキーから来られた方はどんな感じだったんですか?

(AKI)ケンタッキーから来られた方は……私ね、ちょっと自分のYouTube用にインタビューを撮っているんで。それ、ちょっと上げているんで。

(渡辺志保)ああ、そうか。それ、後でチェックしないと!

AKI IKEJIRI Kanye West『DONDA』イベントレポート

(AKI)ちょっとおもしろい。でもね、そう。私、ちょっと感動したんが、それがインスタで出回ったんが月曜日で。その次の日に、私もホンマにたまたまテレビでバスケを見てて。そしたらシャカリのコマーシャルが……。

(渡辺志保)ああ、シャカリ・リチャードソン。NBAで流れたBeats by Dr. Dreのやつですね。

(AKI)そう。シャカリのコマーシャルが流れていて。それがカニエの新しいアルバムからの1曲を使っていて。しかもカニエが自分でエディットしていて、みたいな。で、シャカリちゃん、結局オリンピックに行かれへんやったんか。

(渡辺志保)そうなんですよね。もうちょっと説明しておくと、シャカリ・リチャードソンのニュースはほぼ日本で報じられてなくて。

(AKI)マジで?

(渡辺志保)そう。彼女、陸上競技の選手なんだけど。東京オリンピックの前にドーピング検査で引っかかってしまうたですよね。これがマリファナのTHCの成分が引っかかっちゃって。でも、なぜ彼女がそのマリファナを吸ったのか?っていうと、自分の産みのお母さんが亡くなったというニュースを聞いて。しかも、彼女はウィードが合法な州……コロラドでしたっけ? そこでウィードを吸ったのに、それが結果、オリンピックの規定というか、陸上の規定ではそれがドーピングにあたるっていうことになって、彼女は出場資格を取り消されてしまうたっていう経緯があって。なんだけど、そのシャカリ・リチャードソンはその後にTwitterで「いや、私も人間なんです(I am human)」っていうことをTwitterでつぶやいて。

(渡辺志保)それで結構皆さんがシャカリ・リチャードソンのことを擁護していたんですよね。

(AKI)そう。だからやっぱりそのお母さんを亡くしたっていう背景と、あとは若い人の才能を……できへんかったっていうんで。そこで彼女を起用したっていうのはすごいなと思った。

(渡辺志保)しかも、そのシャカリ・リチャードソンのこの一連の出来事も本当に2ヶ月前とかそれぐらい。本当につい最近のことで。

(AKI)そう。すごい早いペースでどんどん行ってる。で、アメリカって日本やったらちょっとマザコンみたいに取られるかもしれないけど。アメリカの人ってすごいお母さんを大事にしてて。なんかギャングとかでも母の日にちゃんと食事に行って。花を渡して。ほんで自分が金持ちになったら、そのお母さんにまず家をプレゼントする。

(渡辺志保)一緒にレッドカーペットを歩いたりとかね。

(AKI)そうそうそう! 呼んでね。グラミー賞とかもね。そういう関係性があって。その中でもカニエは傍から見ててもそのお母さんとの関係がすごい近かったらしいから。やっぱりカニエがお母さんを亡くした喪失感たるや……っていう感じでうずっと引っ張ってきていて。それでここに来てお母さんをレペゼンしてっていう。

(渡辺志保)そうだよね。で、本当に説明不要かもしれないですけど。『DONDA』っていう今回のアルバムのタイトルはまさにそのカニエ・ウェストのお母さん、ドンダ・ウェストさんの名前を取ってそのままアルバムのタイトルにしているっていうね。

(AKI)ほんで、そのお母さんの声とかもちょこちょこ入ってたんだけど。

(渡辺志保)ねえ。結構ふんだんに使われてたっていう印象がありますね。

(AKI)あったんやけど……そのメルセデス・ベンツ・スタジアムの音響が悪すぎて。もう爆音で音が割れすぎて。私はもうまず不可能やったし、現地の人もリリック全然聞きとられへんかったみたいな。

(渡辺志保)そうなんだ! それは結構、海外のレビューをいくつか読んだけど。皆さんそれは仰ってましたね。

(AKI)もうね、ヤバいよね。音が割れすぎて。全然っていう感じだった。

(渡辺志保)そうか。むしろAppleMusic、ストリーミングで聞いていた人の方がもしかしたら音とかリリックっていうことに関してはうまく聞こえたのかもしれないね。

(AKI)プラス、誰がフィーチャリングかっていうのも鮮明に聞こえたと思う。

(渡辺志保)たしかに。私もだからTwitterを追いながらストリーミングで……ちょっと中断してたところもあるんですけども。見ていて。やっぱりみんな「えっ、これはリル・ダークの声じゃないか?」とか「これはリル・ベイビーじゃないか?」とか。そんな、もう一瞬にしてさ、ブワーッと中継ツイートみたいなのがなって。すげえって思いながら。それを見ながら、聞きながらっていう感じで過ごしていたな。

(AKI)それで結局、カニエはマイクも持たず、最後に最後に別に「サンキュー」とも言わずに、そのまま去っていったみたいなので。

(渡辺志保)2時間ぐらい遅れて、アリーナの何もない、だだっ広い床にカニエさんが来たじゃないですか。でさ、その間はみんな、どういうことをしていたの? その、AppleMusicでも客席の様子とかカフェテリアの様子とかが映ってるんだけど。みんな、もちろん楽しそうではあるけども。どういう感じだったのかな?って。

(AKI)あのね、そう。カフェテリアとかでダベったりして。食事したり、ビール飲んだりとか。あと、カニエはやっぱりね、そのメルセデス・ベンツとコラボしていて。Tシャツを出していて。ロングTだけやけど。一瞬で売れたね!

(渡辺志保)さすが!

(AKI)しかも120ドル。めっちゃ高く取ってるねんけど、一瞬やった!

『DONDA』イベント限定Tシャツ

(DJ YANATAKE)ヤナタケです。僕もね、そのTシャツを速攻で調べたんですけど。eBayで4万とか5万とかしていますね(笑)。

(AKI)せやろ? そう。現地とかでもすでに私の友達が……その子は昔、ワカ・フロッカとサインしていて、すごい頑張っていたラッパーなんだけども。その子が……1人2枚までっていう制限があったんやけど。なのにも関わらず、その子は4枚ぐらい肩に持っていて。それをしかもその場で……120ドルやったのにその場で300ドルで売ってたからね(笑)。どんだけハッスルしてんねん?っていう(笑)。

(渡辺志保)さすがのハスラー根性。なるほど、そうですか(笑)。で、そんな中で満を持してカニちゃんが出てきたわけじゃないですか。その時は皆さん、どういう反応を? もう「ワーッ!」って割れんばかりの歓声を?

(AKI)そう。もう割れんばかりの。「来たで、来たで。来よったで! あれ? でも顔がちょっとおかしいで?」みたいな。距離があるから、見えへんから。「なんじゃ、これ?」みたいな(笑)。

(渡辺志保)そう。私も旦那にさ、「カニエが出てきたけど、パンストかぶっている? どういうこと?」みたいな感じで。まあ、すごいタイトなマスクをかぶっていましたけども。でも、音響が悪いっていうハンデというか、障害はあれど、アキさんとしてはどんなエクスペリエンスだったのかなと思って。なかなかないじゃない? あんなアリーナで。

(AKI)しかもマイクを使わずに。

(渡辺志保)それで金を払わせて。しかもアルバムも完成してるのか、してないのか、みたいな感じだったわけじゃない?

(AKI)そう。でも、なんやろうな? 私はもう自分の個人感情よりも「うわっ、カニエってめちゃくちゃ愛されてるやん!」みたいな。もうやっぱり客層がホンマに子供から50代、60代まで。しかも男女問わずやから。しかも、3日、4日前にアナウンスしてこんだけ人を集められる。やっぱりカニエなんやなって思って。

(渡辺志保)そうか。なるほどね。まさにそこに尽きるのかもしれないですよね。

(AKI)ホンマにそう。だって、最近に始まったことじゃないけど。もう、ちょっとやっぱり奇行が目立ちだして。トランプとなんか会合したりして。

(渡辺志保)親密になって。かつ、自分も大統領選に立候補してっていうね。

(AKI)そうそう。そんだけすごい奇行をしてるのにも関わらず、こんだけの人が集められる。しかも他の州からも来るから。しかも、人種も問わずやから。だから、やっぱりカニエなんやなっていう気がした。

(渡辺志保)すごいですね。現地で感じた面白小ネタみたいなの、ありますか?

(AKI)面白小ネタ、めっちゃいっぱいあるねんけど。とりあえずカニエ、ずっとメルセデス・ベンツのそのスタジアムに住んでるらしく(笑)。

(渡辺志保)えっ、今もっていうこと?

(AKI)そう。今もスタジアムに住んでいるらしいのよ。

(渡辺志保)えっ、じゃあずっとアトランタにいて?

(AKI)アトランタのそのスタジアムで寝泊まりしているっていう。

(渡辺志保)じゃあ、ずっとそこで収録もやっているっていうこと?

(DJ YANATAKE)なんかね、中にスタジオを作っていて。『DONDA』はそこで完成させるらしいですよ。

(渡辺志保)すごい! そんでさ、リスニングイベントをまさにやっている時、2チェインズが楽屋でレコーディングしてるのを自分のインスタに上げていてさ。「すごいことをしよるな」って思って見ていました。そうなのかー。

イベント後もスタジアムに住み制作

(AKI)で、土曜日にアトランタのサッカーの試合がそのスタジアムであってんけど。そこにカニエ、顔を出したらしいからね(笑)。

(渡辺志保)アハハハハハハハハッ!

(DJ YANATAKE)それも、わざわざあのマスクをかぶったまま。あの赤いジャケットでスタジアムの客席にいて。めっちゃ……あれはバズらせに行っているよね?(笑)。

(渡辺志保)さすがのカニちゃん(笑)。

(AKI)バズらせるか、もしくは服を持ってきていないかどっちかだっていう噂やけども(笑)。

(渡辺志保)こんなに長くいるはずじゃなかったみたいな(笑)。

(AKI)そうそう。もしかしたらこのスタジアムでやって、反応がすごいよかったし。「ここでちょっと作るで!」みたいになったんかもしれん。

(渡辺志保)そうか。じゃあ今、アトランタの……そこにみんなが押し寄せるみたいなことはあるのかな? 地元の人が。

(AKI)ないと思うけどね。でもまあ、みんな知ってるよね。「ああ、カニエはあそこに住んでるんや」みたいな(笑)。

(渡辺志保)そりゃそうだわ(笑)。すごいことだわ、本当に。

(AKI)で、そのショーが終わった後、バックステージでカニエ、アトランタ市からオフィシャルに「7月22日をカニエデーに認定します」ってなって。

(渡辺志保)それ、本当にびっくりしたんだけども(笑)。

(AKI)市を挙げて。カニエ、すごいなって(笑)。

Atlanta Officially Declares July 22 As ‘Kanye West Day’
Following a sold-out, stadium-set listening party for Kanye West‘s long-awaited album “DONDA,” the city of Atlanta has o...

(渡辺志保)でもさ、さっきアキさんもおっしゃっていた通り、去年とかもすごく目まぐるしく……ここ2、3年は特にそうですけども。奇行っていうか、ついていけないみたいなこともあったわけだし。おそらく、「もう本当に本当に勘弁して。カニエ、ちょっと無理!」っていう方もいらっしゃるんじゃないかと思うの。おそらくね。でも、それでもやっぱり愛されキャラっていうとすごい失礼かもしれないけども。もう愛されまくっているし。アトランタの市長までもが認める存在になってるっていう。そこがやっぱりカニエのマジカルなところっていうか、すごいところ。

(AKI)カリスマ性があるし。何をやってももう「カニエやから」で許されてしまう雰囲気があるよね。「カニエやからしゃあない。やらせよう」って。

(渡辺志保)まあ、カニエだからなかなかステージ上に現れなくてもとりあえず待つみたいな。

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