町山智浩 2020年アメリカ大統領選・投票3週間前の状況を語る

町山智浩 2020年アメリカ大統領選・投票3週間前の状況を語る ABCラジオ

(道上洋三)そうですか。そうやって勝ったって言われても、この間もその票の開け方で随分とムダになった票が後から出てきたりして問題になりましたけど。

(町山智浩)はい。今、カリフォルニア州、僕の住んでる州では教会とか市役所とかに謎の箱が置かれていて。そこに「公式の投票箱」って書かれているんですね。それは共和党が勝手に置いた箱なんですよ。で、間違って投票した票を盗もうとしているっていうことで今、大問題になっています。だからもう、あらゆるとんでもないことが起こる選挙になっていますね。

(道上洋三)ということは、その選挙管理委員会が管理をして、それを軍が守るというような、そういうことじゃないんですか?

(町山智浩)選挙管理委員会はそれを守ろうとして、その偽の投票箱に関して「州が命令を出してそれを撤去しろ」って言ってるんですけれども。共和党側は「これは友達とか近所の人向けに親切で置いた箱なんだ」って主張をして撤去をしないんですよ。

(道上洋三)友達とか親戚に配慮しなくても……みんなが行く投票ですから。

(町山智浩)だからその偽の投票箱自体が本来だったらもう選挙法違反のはずなのに、堂々と置かれているという異常事態が発生しているんですよね。

(道上洋三)そうですか。で、軍を握ってるのはトランプさんの方だと?

(町山智浩)いや、その「トランプ軍」っていうのはボランティアなんです。トランプ大統領が「私を支援している人たちはトランプ軍というものに入ってくれ」と……つまり、軍隊じゃなくて応援団みたいなものです。「そして投票所を監視せよ」という風に何度も何度も、1日何回もツイートしてるんですよ。そうすると、アメリカは銃を持って道端を歩くことがほとんどの州で許されているので、ライフルとかを持った人たちが投票所の周りに行って。それで黒人とかメキシコ系の人とかトランプではない民主党に投票したような人を威嚇して投票させないということが行われると恐れられているんです。

武装したトランプ軍団による投票所監視の可能性

(道上洋三)はー! 町山さんも随分、大統領選挙を経験してこられた方だと思うんですけど。初めてですか? こういうのは。

(町山智浩)初めてですね。昔から共和党はそういった形での選挙妨害をしてきたんですけども。1回、裁判にかかって2018年まで禁止されたんですけど、それが失効するんで今回はやる気なんですよ。

(道上洋三)それはどういうことですか?

(町山智浩)1981年に共和党が銃を持って投票妨害をしたことがあって。それで結局、2018年までそれは禁止になってたんですけれども。その期限が切れたので、今回はやる可能性があるんですよ。それは難しいのは、法律で禁止できないんですよ。

(道上洋三)なぜできないんですか?

(町山智浩)道端にライフルを持った人が立っていても、別に法律違反にはならないんですね。アメリカは。

(道上洋三)そうか。なるほど……。

(町山智浩)それで投票しに来た人に「なにしに来たんだ?」っていう風に聞くのも法律違反ではないし。

(道上洋三)投票箱を別に用意するっていうのも違反じゃないんですか?

(町山智浩)だから本人たちは「普通の人たちの票を盗もうとしているんじゃなくて、近所の知り合いのために親切で置いてるんだ」っていう風に共和というは主張してるんですよ。で、そこに間違って投票をした人は、それはその人のミスなんだから……という形で。信じられないことが起こってますよ、今。

(道上洋三)それがもし、投票として加算されて、トランプさんということになったら認められるっていう可能性があるわけですか?

(町山智浩)だから今、司法長官までがトランプ大統領のために「今回の大統領選について、法的に見張る」みたいなことを発言しているので。もう各州ごとに裁判になって。2000年の選挙の時にブッシュとゴアが300票の差でフロリダでどっちが勝つか?っていうことになって。それで最高裁に上がったんですが。

その時、最高裁は判事が共和党の人が多かったんで、ブッシュの勝ちを宣言するという事態があったんですよ。それもブッシュがやっぱり最高裁に訴えたんですよね。それと同じことをフロリダとかペンシルバニアとか、そういう激戦州でトランプ米大統領が裁判に訴えるだろうと。「訴える」と言っちゃってるんですよ、もう実はトランプさん。「負けたら全部訴える」って言っているんですよ。

で、そのために監視団を5万人用意して、「各地でなんとか不正選挙である証拠を見つけろ!」って言ってるんですね。「それを証拠に訴えるから」という。で、ドタバタ知ってると1月20日が来て、自動的に彼は大統領としての権限を失うんですけれども。だからこれから1月20日にかけて、アメリカ大混乱が続くだろうと言われています。

(道上洋三)ということは、中国とか北朝鮮がうんぬんとかという問題じゃないわけですね。アメリカは。

(町山智浩)アメリカはもうそういう問題ではなくなっているんですよね。

(道上洋三)「そういう国からも自分の国を守って、あなた方の就職をちゃんと面倒を見て、アメリカはもっと強いものになるんだぞ!っていうトランプを支持してくれ」という。こういうことですか?

(町山智浩)いやー、トランプ大統領がすごくよく分からないのは、軍隊はすごく彼は賛美してるんですけれども。でも外国に軍隊を送ることには徹底的に反対してる人なんですよね。ご存知のように日本、韓国からアメリカ軍を引き上げるって言ってみたり。NATOから引き上げると言ってみたりしてる人なので。あまり他の同盟国にとってはそんなにいい人ではないんですよ。

(道上洋三)なるほどね(笑)。

(町山智浩)それで北朝鮮と仲いいし。金正恩さんとものすごく仲が良くて。トランプ大統領がコロナにかかった時に真っ先に「心配してる」っていう風に手紙を出したのは金正恩さんでしたけどね。なんでそんなに仲がいいのか?って思いますけど。プーチンさんともトランプさんは仲良しですね。だから日本とか韓国とかみたいに北朝鮮とロシアに近いところで苦労している国にとっては全然頼りにならないんですよ。

(道上洋三)なるほどね。お互い似てるんじゃないんでしょうかね?

(町山智浩)そう思います。その通りだと思います。

(道上洋三)なんか私はその北朝鮮とアメリカの交渉とか、米中の交渉とかっていうのを見ていると、それぞれが似たもの同士でやってるので。お互いの気持ちが一番よくわかるのはあの3人じゃないか?っていう風に思えることもあるんですけども。

(町山智浩)そうなんですよ。だから習近平主席と会った時もすごく仲が良かったんですよね。トランプさんはね。ゴキゲンで。その通りで、たぶんみんな似てるんだと思いますよ。気が合うんだと思いますよ。

(道上洋三)ねえ。きっとそうですね。世界的に大変なことじゃないでしょうか?

戦争をしなかったトランプ大統領

(町山智浩)そうなんですけども。でも、そのおかげで彼ら、一種独裁者みたいな人たちが互いに仲良かったおかげでトランプ大統領の4年間というのは大きな戦争がなかったんですよ。だからそれは世界にとってはいいことだったとは思うんですよ。絶対に……今まで、民主党だったら人道的に中国が許せないとか北朝鮮は許せないとか。プーチンは許せないっていう形で敵対したんですけど、トランプさんは仲良しなんで、敵対はしないんで。だから戦争にならなかったっていう点は人類にとってはよかったかもしれないですね。

(道上洋三)関税を上げるとか何だとかって言ったって、本当にそれになっていってしまうとお互い困る部分がありますからね。お互いの道具とか機械を……。

(町山智浩)まあ、それ以上に中国はアメリカの国債を日本と同じぐらい持ってるところなんで。戦争なんかしなくても、アメリカの国債を売っぱらってしまえばアメリカの経済が崩壊しますからね。だからお金的には中国はアメリカのスポンサーなんですよ。だから本当は戦争できないんですよ。

(道上洋三)なるほど。そういうふうに考えていくと、ノーベル平和賞に名前がちょっと上がってたっていう話もありますけれど(笑)。そういうことになるんでしょうか?

(町山智浩)そうですよね。本当にね、イランで将軍をミサイルで暗殺したんですけど。トランプさんは。それ以外はそんなに戦争していないんですよ。実は。アメリカ国内ではコロナで21万人というベトナム戦争や朝鮮戦争など今までの戦争よりも多くの死者を出しているんですけども。外国ではそんなに人を殺してないんですよ。意外なことに。

(道上洋三)なるほど。やっぱり不動産の方が大事な人ですね。

(町山智浩)それが今、問題になっていて。実はトランプコーポレーションは不動産で全然利益をあげていなくて。で、10年以上税金を払ってないことが発覚したんですよね。

(道上洋三)あれはやっぱりそうなんですか?

(町山智浩)これはトランプさんとトランプさんの息子さんが言ってるんですけど。「私たちは給与税とか不動不動産の固定資産税は払っていたぞ」っていう風に反論してるんで。「所得税を払っていたぞ」とは言ってないんですよね。2人とも。だからおそらく所得税については払ってないんですよ。払っていたら「払ってるぞ!」って言うはずなんで。で、それは赤字申告してたんで、実際にはそんなに利益は上がっていなかったんだろうと言われていますね。

(道上洋三)今回はじゃあ、もう「負ける」ということを覚悟で、そこまで線を張ってあるので。大統領選挙は裁判ですか?

(町山智浩)裁判に持ち込むようにもう完全に準備してますね。

(道上洋三)なるほどね。そこまでを見通してのアメリカ大統領選挙は11月3日ということですか。

(町山智浩)でもたぶん11月3日には決着が付かないと思います。まあ裁判に訴えますからね。

(道上洋三)なるほど、なるほど。どっちにしても来年の1月20日までには何らかの形が出るということですよね。

(町山智浩)はい。何らかの形が出ないと、自動的に下院議長が大統領代行になっちゃうんですよ。

(道上洋三)なるほどね。複雑な国ですね!

(町山智浩)いろんな法律があってね、面白いですね。調べると。

(道上洋三)そうですか。また選挙が近づいたり、あるいは結果が出てからお願いいたします。

(町山智浩)はい、こちらこそよろしくお願いします。

(道上洋三)今朝はありがとうございました。

(町山智浩)どうもありがとうございました。

<書き起こしおわり>

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