プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で新元号・令和への切り替わり後の新聞各紙の報道をチェック。さらには平成元年に元号が切り替わった際の新聞記事も読み比べながら、平成という時代を振り返っていました。
(プチ鹿島)で、話を戻しますと5月1日。令和の初日ですよね。いろんな新聞、特に社会面はお祭り騒ぎだったんですよ。で、僕がぜひお伝えしたいのはこれ、東京新聞。これもやっぱりカウントダウンの様子とかね、「3、2、1、おめでとう! 渋谷の若者」っていうのをドーンと出したりしているんですが、ふっと左の方を見ると「故郷、奪われたまんま」っていう見出しがあって。福島第一原発から避難をしている方のコメントが載っているんですよ。
じゃあ、なにを言っているのか?っていうと、「元号さ変わっても、うれしくも悲しくもねえ」って。そりゃそうですよね。だからこう、お祭りムードはまあいいんだけど、少なくとも元号が変わっても全然リセットしていない人もいるんだよっていうのは新聞がそれをちゃんと報じているのか、いないのかっていうのはこういうところでわかりますよね?
東京新聞:「故郷、奪われたまんま」 福島第一 原発避難:社会(TOKYO Web) https://t.co/ZSO4tWTAdK
東京新聞、2019年5月1日の紙面より— みやーんZZ (@miyearnzz) 2019年5月7日
(海野紀恵)はい。
(プチ鹿島)で、実はこの年表トークっていうのは僕、『サンデーステーション』という番組でも新聞読み比べのコーナーをやらせてもらっているので。一昨日、10分ほど時間をいただいてこれをやったんです。
(海野紀恵)はい。
(プチ鹿島)で、スタッフとね、番組2日前に打ち合わせをいつも1時間、2時間ぐらいやるんですけども。その最後に、みんないま、令和の予測とか、どの新聞にも載っているじゃないですか。こうやって近未来的な技術革新とか、ウキウキした感じで見ることができるけど、「じゃあ一方で平成の最初の時にはどんな予測記事があったんだろうね?」って。それに気づいて。「じゃあ、それを調べよう!」って盛り上がって。実際に土曜日、日曜日とかけてスタッフの方が探してくれて。それを番組の最後に発表したんです。
(海野紀恵)はい。
(プチ鹿島)ただ、持ち時間10分の中でコンパクトにやりますから。でも、これを読むとすごく面白かったんです。だから『サンステ』のスタッフの方が「この記事、本当に面白かったのでどこかでぜひ、ネタでどんどん使ってくださいよ」って言ってくださったんで、今日は持ってきたんです。
(海野紀恵)ええっ?
(プチ鹿島)これ、平成元年。1989年1月15日の朝日新聞の朝刊。つまり、平成が始まって1週間経ってから、いよいよ平成はどんな時代になるのか?っていうことで、大手企業の課長さん50人にアンケートをしたんですね。タイトルがすごいです。「手探り日本、黄金時代」。
(海野紀恵)へー!
「手探り日本、黄金時代」
(プチ鹿島)1989年ですから黄金時代。バブル真っ只中なんですね。当然、バブルっていうのは弾けた後で気づくもの。真っ只中にいる人は「これはバブルだ」とは思っていないわけですよね。そんな最中、じゃあ平成のこれから日本はどうなりますか?っていう予測ですよ。まず、「日本の元気力」って。浮かれているでしょう?
(海野紀恵)そうですね(笑)。勢いを感じます(笑)。
(プチ鹿島)で、「日本はこれからどうなるか?」って聞いたところ、第三位が「衰退する」。そう答えた課長さんがだいたい10%ぐらい。少数派。第二位が「現状維持」。24%。ダントツの第一位だったのが64%。圧倒的な多数で「日本は一層繁栄する」。
(海野紀恵)へー!
(プチ鹿島)これを番組で紹介しました。実はこれ、記事ですからいろいろとアンケートの声が載っていまして。これが本当に興味深いんです。たとえば「一層繁栄する」と答えた人の中には、こんな答えもあるんですよ。「よほどの天変地異がない限り、世界で最も安定した時代を日本は築ける」っていう。だから平成という時代、実はその「よほどの天変地異」が何度も何度もあったという。まさに予測不可能な時代であったという。いまから読むと「ああーっ!」っていうのがありますよね。
(海野紀恵)はい。
(プチ鹿島)で、たとえば「日本はまだ上り坂にある」っていう風に答えた人のうちの約半数が「日本はハイテク大国の道を歩む」っていう風に言っていて。それから「金融大国化する」っていうのもあって。皮肉なことに「政治大国になる」という風に予想していた課長さんはわずか2%だった。だから「ますます日本は反映するけど、政治大国にはならないだろうな」っていう、ここは当たっているんですよね。
(海野紀恵)はー!
(プチ鹿島)じゃあ、たとえば「日本経済の落とし穴は何なのか?」。30年前に聞いたアンケートではこんなことを答えていた方がいた。「世界経済のブロック化の中で日本は世界の孤児になる」。あとは「アジア諸国の追い上げとアメリカの圧力との狭間に入り、判断を誤るとどっちつかずになる」「外国人労働者問題でにっちもさっちも行かなくなる」。
(海野紀恵)すごい! 当たっている!
(プチ鹿島)やっぱり当時の大手企業の課長さん、すごいんですよ。で、気になるのが、じゃあ平成で実現すること。「東京・大阪間のリニアモーターカー」って言っているんですよ。
(海野紀恵)ほう。
(プチ鹿島)つまりね、これさっき紹介したばかりですよね。令和の予定表でもやっとリニアモーターカーが入る。ところが、30年前の新聞を見ると、30年前に「これからの平成の時代、なにが実現しますか?」に「リニアモーターカー」って。だからこれ、リニアモーターカーっていったい何かね?っていうね(笑)。
(海野紀恵)そうですね(笑)。
(プチ鹿島)リニア、何かね?っていう話になるんだよね。だから僕、さっきわざと最初の方に令和に予定されている年表で「リニア」って言ったんですよ。あれで「近未来だ!」ってワクワクした方……30年前から。なんだったら僕、小学生の頃から言われてましたからね。昭和の頃に。だからここで「リニアモーターカーってなんだろう?」っていうのはあるわけですね。
(海野紀恵)はいはい。
(プチ鹿島)で、面白いのが、これは大手企業の課長さんたち。バリバリの経済の真っ只中にいる人たちの予想なんですが、いまから読むと実は文化人の予想の方が当たっているんですよ。同じ記事の紙面に渡辺和博さんっていう当時、38歳の方。この人は「マルキン・マルビ」っていう昭和の末期にベストセラーを出した人で。要は「マルキン(マル金)」っていうのはお金持ち。「マルビ」っていうのはそんなにお金がない人っていう、そういう本。僕も覚えています。
渡辺和博さんの平成予想
その人が30年前に平成という時代を予想しているんです。なんて書いてあるか? 「地価高騰などでマルキンとマルビ(お金持ちとお金を持っていない人、貧乏な人)の差がはっきりしてしまったところからスタートするわけですが、マルビの方だって趣味にふけって楽しく生きることでマルキンを意識しない努力をするだろう」って。
(海野紀恵)ほう。
(プチ鹿島)「平成はみんな自分のことだけを考えて生きる楽しい時代だが、昭和の感覚で言えば小市民ばかりで退屈な時代」っていう。つまり、お金がある・ないだけで昭和の末期は区分けをされていたんですけども。「平成という時代はお金がなくてもそれなりに個人個人で楽しく暮らす時代が来るんじゃない?」っていう。で、「昭和の感覚で言えば小市民ばかりで退屈な時代」っていう。この後。「……でも、そう考えると鬱病になってしまうから『楽しい時代だ』と思っていた方がいい」っていう。メンタル的な……これも平成、話題になりましたよね。ズバリ、当てているんですよ。
(海野紀恵)すごいですね!
(プチ鹿島)ねえ。だからこう、面白いですよね。新聞って。当然、未来予測も昨日、今日、ここ1週間の新聞で出ますけど。じゃあ、平成の時にはなんて言っていたの?って。これ、探せば答えはあるものだから。ある意味、意地悪な問いでもあるんですよ。だけどしっかりと記事に残っているから。そういう、時空を超えた旅をするのも面白いなと思って。
(海野紀恵)答え合わせですね。
(プチ鹿島)そう。だからこれ『サンデーステーション』のスタッフとね、「ああ、これは当たっているわ!」っていうことで一部、ご紹介しまして。詳しい記事の紹介をこのキックスで今日、はじめてさせていただいたんですが。時間があれば、30年前の新聞とか、大きな図書館に行けばいまだに見れますので。それと照らし合わせることでいまが見えるのかなとも思いました。火曜キックス、スタートでございます。
<書き起こしおわり>