筒井康隆さんがTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』に出演。『最後の喫煙者』などの著作もある愛煙家の筒井さんが菊地成孔さんとタバコについて話していました。
(菊地成孔)まあ、そんな筒井先生ですけども、あとは多く来ているのが……やっぱりメールがすごいですね。数が半端じゃないです。同様投書多数ということでこの方のメールを。「菊地成孔様、筒井康隆先生、こんばんは。ゲストの筒井先生に質問です。加熱式タバコがブームですが、筒井先生はいまでも紙巻き派でしょうか? 私の感覚では加熱式タバコが出始めた頃は都会で大流行していましたが、現在では都内の喫煙所では加熱式と紙巻きの数が半々で、加熱式が手に入りやすくなった地方部では加熱式に切り替えた人が多い印象があります。後世に語り継がれるべき大傑作『最後の喫煙者』から30年。タバコを取り巻く環境はどのように変遷したのか、先生のお考えをお聞かせ願います」ということです。
(筒井康隆)うんうん。
(菊地成孔)まあ、いまは紙巻き?
(筒井康隆)そうですね。はい。ヴォーグというタバコを吸っていますけども。
(菊地成孔)ヴォーグを。そうですか。すごいこと聞いちゃったな。いちばん最初に僕、『Quick Japan』の対談の時に、対談が終わった後にね、「君、無口だね」「いや、緊張してて……」「一服、どうかね?」って先生がシガーケースから細巻きの葉巻を出されたんですよ。
(筒井康隆)葉巻?
(菊地成孔)たしか葉巻だったと思いますけども。それで「うわっ、葉巻! これ、どうしよう? 吸ったら灰になっちゃうし。持って帰りたいんだけどな……」って思ったんですけど、先生に「どうですか?」って言われてタバコを断るのもね。
(筒井康隆)ああ、それは『時をかける少女』の?
(菊地成孔)そうですね。
(筒井康隆)あの頃はモアというタバコです。細巻きで少し長めで、それで紙が茶色いんですよ。
(菊地成孔)ああ、モアだったんですね。
(筒井康隆)モアです。
(菊地成孔)モアですか、あれ。
(筒井康隆)だと思います。
(菊地成孔)なるほど。よくでも、タバコでご記憶なんですね?
(筒井康隆)だってそれは時代時代でね。で、そのモアの次がもうすぐヴォーグだと思いますよ。モアがあれがね、僕は普通のタバコがね、唇が薄いもんだからね、口に合わないんですよ。で、細巻きばっかりなんだけども。モアはあれは長すぎてね、灰皿に置いておくでしょう? それで原稿を書いていたら忘れちゃって。で、机の上を焦がしたことが何回もあるし。「これはヤバい」って思って、それでヴォーグにしたんですよ。
(菊地成孔)じゃあ、ハイライトだセブンスターだっていうのは吸ったことないんですか?
(筒井康隆)そうですね。その前はショートピースですね。缶入りの。
(菊地成孔)缶入りの。いわゆる「缶ピー」ですね。
(筒井康隆)缶ピー。
(菊地成孔)両切りですよね。はいはい。あれ、美味しいですよね。なるほど。すげー話聞いちゃった(笑)。いまはヴォーグ?
(筒井康隆)いまはそうですね。
(菊地成孔)加熱式タバコは?
(筒井康隆)いや、全然。
(菊地成孔)口にしたこともない?
(筒井康隆)そもそも出始めた頃に、そういうものが出たっていうことを知らなかったんだね。全く知らなかったです。で、私のマネージャーが吸っているのを見て、「なんだ、それは?」って(笑)。
『最後の喫煙者』から30年
(菊地成孔)フフフ、なるほど。「『最後の喫煙者』から30年」って、あれからもう30年なんですね。
(筒井康隆)ああ、そうですか。うん。あの頃はでも、一応「嫌煙権」やなんかが言い出されていたけれども、いまほどキツくはなかったですね。
(菊地成孔)いまほどキツくはなかったですね。あの後、やっぱり『最後の喫煙者』という作品の叫びもある意味むなしく、どんどんどんどん喫煙者が差別される時代になってきましたけども。
(筒井康隆)うん。まあ、私は案外平気ですけどもね。あの、なんて言いますか、どうしても吸いたくなったらレストランなんかで食事の後ね、ちょっと吸いたくなるでしょう? そういった時は、もう出して吸うんですよ。そしたら、慌てて灰皿を持ってきますからね。
(菊地成孔)はいはい。
(筒井康隆)それは「この灰皿でそれをすぐに消しなさい」っていう意味なんですがね。
(菊地成孔)フフフ(笑)。
(筒井康隆)けど、僕は灰皿があることをいいことに、まあ3、4服は吸えますよ。うん。
(菊地成孔)なるほど。じゃあもう、マイペースでお楽しみになっていると?
(筒井康隆)まあ、多少は遠慮しています。
(菊地成孔)なるほど。すごいなー。まあ、「タバコを取り巻く環境はどのように変遷したのか、お考えをお聞かせ願います」には「悠々と吸っています」っていうことですね(笑)。
(筒井康隆)そうですね(笑)。
(菊地成孔)なるほど(笑)。
<書き起こしおわり>