町山智浩 テネシー州ナッシュビルの盛り上がりを語る

町山智浩 テネシー州ナッシュビルの盛り上がりを語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で取材で訪れたテネシー州ナッシュビルについてレポート。近年女性たちの独身最後のパーティー需要を取り込んで女性観光客で街中が盛り上がり、不動産価格が2倍以上になったことなどについて話していました。

(赤江珠緒)町山さん、今日はスタジオにご登場です。お久しぶりです。

(町山智浩)ああ、どうもです。ちょっとお土産があるんで。これ、山ちゃん。お酒セット。ジャックダニエルズですね。

(山里亮太)すごい! 素敵な、これ……。

(赤江珠緒)いろんな小瓶が並んでいて。素敵。

(町山智浩)ジャックダニエルズの工場があるテネシー州ナッシュビルに行ってきたんで。お酒、飲みます?

(山里亮太)飲みます、飲みます。うれしい!

(町山智浩)で、ピンクピン太郎ちゃんに……。

(赤江珠緒)えっ、ああ、うれしい!

(町山智浩)ナッシュビルのTシャツ。

(赤江珠緒)Tシャツ、かわいい! ありがとうございます。

(町山智浩)あとね、これは赤江さんに。これ、「ウィスキー好きの女」って書かれているTシャツ(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハッ! 「ウィスキー好きの女」って書いてあるの、これ?

(町山智浩)「Whiskey Lovin’ Woman」って書いてあります。こんなの着て歩けないですよね(笑)。家で寝間着代わりに着てください。

(赤江珠緒)いやいや、これ、じゃあ海外の人とかにすれ違ったら「あいつ!」って思われるのね(笑)。

(町山智浩)そうそう。「酒飲み女が!」って思われるんですよ(笑)。

(赤江珠緒)いやいや、うれしいです。ありがとうございます。すいません。

(山里亮太)ありがとうございます。町山さん、すいません。

(町山智浩)ナッシュビルはその「ウィスキー好きの女」って書いているのを着ている女の子が街にあふれているんです。

(赤江珠緒)あ、ウィスキーの街っていう感じなんですか?

(町山智浩)そうなんですよ。ナッシュビルっていまね、観光客がすごく集まって、ものすごいブームの街で。夜にライブハウスが10軒ずつ並んでいるようなすごいところがあるんですよ。で、そこに女の子たちが1000人とか2000人とかあふれているんですよ。

ライブハウス通りが女性観光客であふれる

(赤江珠緒)若い女性たちが? ああ、そう?

(町山智浩)で、それはね、みんな友達の誰かが結婚するっていうことになって、独身最後のパーティーに来ているんですよ。『ハングオーバー!』っていう映画で男たちがやっていたじゃないですか。ただ、いままでそれはラスベガスだったんですよ。でもラスベガスはあまりにも男向けなんですよ。街全体の作りがね。だからバクチとストリップとかそんなのばっかりだから女の子が行く場所じゃなかったんですよ。ところがナッシュビルは完全に女性向けにして。で、誰かが結婚するっていうとアメリカ人は「じゃあ高校とか大学の友達同士でナッシュビルに行こう!」っていうのが流行っているんです。

(赤江・山里)へー!

女性たちの独身最後のパーティーで人気

(町山智浩)で、ベロベロに酔っ払っていて。最近のアメリカとかヨーロッパとかアジアの観光地に行くと、動くバーっていうのがあるの、見たことあります?

(赤江珠緒)あ、知ってる! みんなで自転車みたいなのをこいで。屋台みたいな乗り物になっていて。その周りを座って囲んで自転車をこぐんですよ。で、街中を移動して、ある場所でまた止まって飲む、みたいな。

(町山智浩)そう。バーのカウンターそのものが動くんですよ。自転車になっていて。

(山里亮太)それ、お客さんがこぐの?

(赤江珠緒)お客さんがこいで。

(町山智浩)自転車をこぐ。そうすると、酔いが早く回るから。運動をすると。で、バーだからそこでお酒が出るわけですよ。だから道端でお酒を飲んでいるっていうか、道路を走りながら女の子たちがそれに乗って自転車をこぎながらお酒を飲んでいる状態なんです。

(山里亮太)それ、飲酒運転にならないのかな?

(町山智浩)いや、だから俺も飲酒運転になるのかな?って思ったけど、運転手は違うんですよね。

(赤江珠緒)ああ、そうかそうか。運転手さんが前にいるんだね。こぐ労力だけ、みたいな。

(山里亮太)動力だけだからいいんだ。はー! 運転する人が間違わなきゃいいんだもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、ライブハウスがズラーッと並んでいるんだけど、どのライブハウスも入場料はタダ。ナッシュビルは。

(赤江珠緒)へー! 楽しいですね。じゃあ、行ってライブをはしごみたいな。あっち行って、こっち行って……みたいな。

(町山智浩)そうなんですよ。でね、ナッシュビルってもともとカントリー&ウエスタンのレコーディングスタジオがある、ミュージックシティって言われていたところなんですけど。最近ではテイラー・スウィフトがカントリーから出てきて、クロスオーバーっていうポップとかロックをやり始めたんで。まあジャンルがなくなっていったんですよ。で、ライブハウスも全部ロックとかブルースとかカントリーとか、もうありとあらゆる音楽があるんです。で、「ここに行ってちょっと聞いて、じゃあ次に行こう」っつって、みんなベロベロになりながらはしごして音楽を聞いてこうやって踊って。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)クラシック・ロックのところに行ってディープ・パープルで踊ったりとかっていうのをやるんですけど。で、出ている人は全員めちゃくちゃ上手い。レコーディングスタジオに来ているから、ほとんどみんなレコーディングミュージシャンだったり、スタジオミュージシャンだったり。あと、歌手になりたい人たちが自分で歌うのを見せてプロデューサーとかにアピールするために来ているから、全員もうプロ。

(赤江珠緒)はー! じゃあ、お金はだって、ライブだけど払っていないでしょう? だけどみんな、プロとしてここで?

(町山智浩)そうそう。だからギャラはそんなにもらっていないんですよ。みんな自分たちのショーケースとしてやっているから。だから入場料はタダなんですよ。もう音楽の質もいいし、安いし。お酒飲み放題でめちゃくちゃ楽しいから、ナッシュビルはもう観光地として大成功していて。街中が高層ビルの建築ラッシュ!

(山里亮太)へー! もうバブルなんだ。

不動産価格が2倍以上に

(町山智浩)バブル。大バブル。僕、6年ぐらい前に行った時はそんなでもなくて。2011年ぐらいから爆発的な人気が出て。不動産価格が2倍以上に跳ね上がりました。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)すごいですよ。もうひとつは、日本企業がすごくここで成功しているんですよ。

(赤江珠緒)なんの企業だろう?

(町山智浩)日産。日産の工場があって。日産のメインのいちばん大きい工場がここにあるんです。

(赤江珠緒)ナッシュビルにあるんですか。へー!

(町山智浩)で、日産スタジアムっていうのがあって。ただね、経営者だけが日本人で、働いている人は全部現地人なんですよ。あと、ブリジストンの工場もあるんです。だから産業もすごくここは盛り上がっていて。で、すごいですよ。観光地だけど中国人も日本人も韓国人もいないんですよ。アジア人はゼロ。

(赤江珠緒)へー! ああ、そう?

(町山智浩)アジア人ゼロ。すごいですよ。

(赤江珠緒)それはあんまりナッシュビルという街の響き、名前が聞いたことないですからね。

(町山智浩)聞いたことないでしょう? カントリーウエスタンの街だから。それで、外国からは来ていなくてアメリカ人の観光客だけが集まっているんですけど。すごいですよ。スーパーマーケットに買い物に行ったらニコール・キッドマンと会ったとかいう人がゾロゾロいるんですよ。住んでいるから。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ニコール・キッドマンは旦那がカントリーミュージシャンだからね。オーストラリア出身の。だからすごく変な街で面白くて。で、僕は地元の観光局に「日本からの取材なんだけど、いろいろと都合してくれないか?」ってたのんだら、「日本から観光客なんかナッシュビルには来ねえから、協力しねえ!」って言われて(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハッ! いや、これからね。そうですよ。そんな楽しいところだったら。

(町山智浩)世界中の観光地、僕はあちこち行くけど、中国人が誰もいないっていうのははじめて見ましたね。

(山里亮太)いまはいたるところに中国の方がいますもんね。日本なんかすごいですけども。

(町山智浩)そう。日本人か中国人、かならずいるんだけど。誰もいなくて。

(山里亮太)これ、情報としてアジアを対象にしていないからでしょうね。

(町山智浩)まあ音楽がそんなに流行っていないと思っているんですよね。ナッシュビルの音楽が。ただ、テイラー・スウィフトとかマイリー・サイラスとか、結構みんな知っているから。だから宣伝をすればいいのにっていうのでそういう話をしてきたんですけど。ただ、まだアジア人が来るには辛いところがあったんです。食べ物。

(赤江珠緒)ああ、そう?

(町山智浩)ナッシュビルの食べ物って、全て揚げ物なんですよ。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。ほうほう。

(町山智浩)全てフライ。で、チキンとかビーフとかポークとかっていうんだけど、見た目がわからない(笑)。全部揚げてあるから。

(赤江珠緒)アハハハハハッ! 全部茶色い。

(町山智浩)で、もう歳だから胸焼けしてくるんですよ。揚げ物ばっかり毎日食べていると。だから「野菜をくれ」って言ったら、野菜も揚げてある。オクラとか(笑)。

(山里亮太)ええーっ!

(町山智浩)で、「付け合せとか、ないの?」って聞いたら「じゃあピクルスがあります」って。漬物。漬物はいいんだけど、漬物も揚げてあるっていう。

(赤江珠緒)ええーっ! ピクルスは揚げなくていいよ、もう!

(町山智浩)だからテーブルの上は全部揚げ物で、見分けがつかなくて。「これ、なんだっけ?」って言いながら食べるっていう(笑)。

(山里亮太)ちょっとギャンブルな感じで(笑)。

(町山智浩)そう。ギャンブルな(笑)。「あれっ?」って思って。野菜だと思ったら違ったみたいな。

(山里亮太)それ、何日か滞在だとちょっとキツいですね。

(町山智浩)ちょっとキツかった。途中からもう胸焼けがすごくて。

(赤江珠緒)でもそんな街があるんですね。

(町山智浩)もうざるそばが食べたくなりましたね。はい(笑)。というところがナッシュビルでしたが。

(赤江珠緒)お土産、ありがとうございました。

(町山智浩)それはね、『町山智浩のアメリカの”いま”を知るTV』っていう僕がやっているBSの番組のロケでいったんですけども。

(山里亮太)ああ、ロケはさせてもらえたんですね。ナッシュビルで。

(町山智浩)まあ、ちょこっとだけなんですよ。そこに行ったのは、そこでやる白人至上主義者の集会に飛び入り参加するためだったんです。

(赤江珠緒)へー! そこで?

(町山智浩)そこでやっていて。そっちは許可してくれて。どうしてか?っていうと、その主催者の人、白人至上主義団体のリーダーが、日本で生まれて16才まで日本の住んでいた人なんです。

(赤江珠緒)ええっ? そうなの? それで、白人至上主義になっているの?

(町山智浩)そう。で、「あなた、白人って自分以外ほとんど見たことなかったでしょう? 16まで」って言ったら「はい」って言っていて。アメリカにはじめて行ったのが17の時だったっていう。

(赤江珠緒)じゃあアメリカへの憧れが妙に高まっちゃったのかしら?

(町山智浩)だからたぶんねじれちゃったんだろうね。ずーっと日本で、その人は神戸で育っているんですよ。周りは全部日本人で。で、日本語でインタビューしてきましたよ。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(山里亮太)16まで住んでいたら、そうか。

(町山智浩)そう。だからネイティブなんですよ。完全に。なにがきっかけで?っていう話をいろいろとしていますんで。

(赤江珠緒)ああ、それは興味深いわ!

(町山智浩)それは他局ですが(笑)。

<書き起こしおわり>

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