えのきどいちろう 大杉漣との思い出を語る

えのきどいちろう 大杉漣との思い出を語る くにまるジャパン極

えのきどいちろうさんが文化放送『くにまるジャパン 極』に出演。亡くなった俳優の大杉漣さんとの思い出を紹介していました。

(野村邦丸)この前、えのきどさんからLINEが届きまして。「この記事を見てください」っていう。これは、何新聞でしたっけ?

(えのきどいちろう)朝日新聞の栃木版を送ったんですけども。今日、話そうと思っていた本題はアイスホッケーの話でもあるんですけど、大杉漣さんの話なんですね。俳優の大杉漣さんが急逝されて。僕、しばらく本当にヘコんだんですけど、ちょっとお付き合いがあって。僕は日光アイスバックスっていうアジアリーグのアイスホッケーチームの、ちょっと前までは取締役をやっていて。まあ、取締役と言っても無給、タダ働きですけどね。

(野村邦丸)フフフ(笑)。

(えのきどいちろう)経営が苦しくなって、潰れそうになったので、僕とセルジオ越後さんが立ち上がって。最初、シーズンの途中で北海道に遠征する費用がなくなっちゃったんで、募金をやったんですよ。その募金で割と大きなお金が集まって、やっとチームがそのシーズン、遠征ができるようになって。で、そのシーズンはなんとか走り終わったんだけど、その後にどうしよう?ってなった時、セルジオさんが「俺、広告塔でも役に立つと思うから。俺がやるよ」って言ってくれて。僕も間をつないだから、「応援します」って言うわけにもいかず、「じゃあ、向いてないけど、取締役として入るよ」っていう風になったんですけど。

(野村邦丸)うん。

(えのきどいちろう)ようやく、選手上がりの僕よりもよっぽどしっかりした人にバトンタッチできたので、いまは僕は単なるタダ働きのライターとして参加しているんで(笑)。まあ、ホームゲーム皆勤ですし、仕事は同じようなことをやっている。それで、(取締役になって)バトンを引き継いだものの、やっぱり広告も集まらないし。僕らってたとえば今市中央幼稚園とかにも営業を行くわけ。

(野村邦丸)幼稚園に?

(えのきどいちろう)で、ちっちゃなバナー広告をもらったりするわけ。いわゆる大きな、ナショナルスポンサーとかだけやっている感じのとは全然違うんですよ。細かいところをいっぱい拾ってなんとかお金を集めていこうという。単なるファンの方なのに有志で、ボランティアで出してくれる方もいて。バナーで会場に上がっているので、「勝訴」って書いたバナーがあって。「勝ってくれ!」って訴えているんだと思うんだけど(笑)。

(野村邦丸)フフフ(笑)。

(えのきどいちろう)なんの広告にもなっていない(笑)。

(野村邦丸)裁判所でもないしね(笑)。

(えのきどいちろう)「勝訴」って書いてあるのがアイスリンクにぶら下がっているんだけど、そういう、みんなが出し合ってなんとか支えているクラブなんだけど。本当に経営が苦しかった時、フジテレビが『NONFIX』っていうドキュメンタリー番組をやってくれたんですよ。アイスバックスで奮闘している僕やセルジオさんの姿を……僕がお金がないんでスタッフの家で寝袋で寝泊まりしながらやっているという姿を丹念にカメラが追ってくれたんだけど。それのナレーションをやってくれたのが、大杉漣さんだったんですよ。

NONFIX : 大人になってみた夢。 ~日光にアイスホッケーチームがある~ - フジテレビ

(野村邦丸)うん。

(えのきどいちろう)で、大杉さんは自分の家で映像を見ながら、尺を計りながらナレーションを当ててみるというのをやったんだって。で、ある日、アイスバックスのFAXがカタカタカタッて鳴って。僕、その日のことはよく覚えているんだけど、職員のやつが俺の家に電話をしてきて。「大変です! いま、ファンクラブの入会申込書が届いたんですけど、『大杉漣』って書いてあります!」って言うんだよ。それで、「えええーっ!?」って。その時はまだ、ナレーションを大杉さんがやったって知らないから、「どういうことなんだ? どういうことなんだ?」って。で、いろいろと聞いたら、フジテレビの方でそういうことだってなって。「ええっ!」ってなって。

(野村邦丸)うん。

(えのきどいちろう)それで、普通は「ファンクラブ入会」って言っても名前だけかと思うじゃん。しばらくしたら、(アイスバックスの)日光霧降アイスアリーナに1人でブラッと来たんだよ。「いやー、応援しますから」って。「えのきどさん、はじめまして。ナレーションをやっていて、号泣したんですよ。自分も若い頃、芝居で貧乏をしたから。寝袋で寝たりしているのを見て、たまらなくなりました。これは揺さぶられて、本当に応援したいと思って。アイスホッケーはあまり見たことないけども、今日見に来ました」って。徳島の方で、サッカーが大好きな方なので。で、帰りには「今日は本当に楽しかった。すごく興奮した」って言ってくれて。その日はたまたまアイスバックスががんばって勝ったので、それもよかったなと思うんだけど。

(野村邦丸)うん。

(えのきどいちろう)それでしばらくしたら、日光東照宮で自撮りした写真とか。それから試合の時のスタンドから撮った写真とかが大杉漣さんのブログに、いまも残っていますけども、アップされて。それだけでもすごく宣伝になるし、うれしいことなんだけど。

(野村邦丸)うんうん。

(えのきどいちろう)びっくりしたことがその後にあって。大杉漣さんが『笑っていいとも!』に出たんですよ。テレフォンショッキングのコーナー。いちばん派手なところですよ。そこで、「日光にアイスバックスというアイスホッケーチームがある。この間、ナレーションの仕事でそれをやって、すごく感動をしたんだ。氷上の戦いはすごく熱くて面白い。自分はファンクラブに入って、応援しようと思っているんだ」っていうのをタモリさんに向かって言っているんですよ。俺、テレビの前で棒立ちになっちゃって。「えええーっ!」っていう。その後に、『笑っていいとも!』って100人アンケートっていうのがあったじゃないですか? あれで大杉さんが出した質問が「この中でアイスホッケーを生で見たことがある人」っていうもので。もう、尺にしてどれぐらいだろう? CMを出したと換算してもしょうがないけどさ、ずーっと日光アイスバックスの話をしてくれて。

(野村邦丸)うん。

大杉漣さんは日光アイスバックスの恩人

(えのきどいちろう)それで、そのドキュメンタリー番組と『笑っていいとも!』のおかげで……本当にあれがなかったら潰れそうになっていたと思うんだけど。ファンクラブの数もすごい増えてさ。本当に助かったんですよ。だから本当にね……大恩人だなと思っていて。その後も、いろんな会場で……それもサッカーの会場でお会いする時もとんでもないところで。首都圏の、等々力とか味スタとか、そういうところでお会いしたこともあってそれはわかるんだけど、ザスパクサツの正田醤油スタジアム群馬。大杉さんは徳島ヴォルティスを応援しているからさ、敷島公園のスタンドでばったりお会いした時は本当にびっくりして。「えのきどさーん! なんでいるの?」って(笑)。「俺が先に言いたいよ!」って思ったんだけど(笑)。

(野村邦丸)フフフ(笑)。

(えのきどいちろう)「今日、仕事が空いたから、徳島ヴォルティスを応援しに来たんですよ。ご縁がありますね」って(笑)。「それ、俺のセリフですよ!」って思ったりしたんですけども。だから、僕が言いたいのは日光アイスバックスが潰れないですんだ大恩人で、最高の人だったということです。これ、栃木版の朝日新聞に書いた時にはちょっと宣伝になったりするといやらしいなと思って。「この後、プレーオフがあるんだけど大杉さんに勝利を届けたいんだ」っていう原稿を書いたんですけど、宣伝したみたいになったらいやらしいなと思ったんですけど、まあアイスバックスはプレーオフのファーストラウンドで王子に負けまして、王子が次のセミファイナルでロシア・サハリンに向かっていくことになって、うちは全日程を終了しちゃったんですけども。

ですけど、かならず大杉さんの恩には……応えたいと思うんですよね。だから……いやいや、すいません……だからね、で、ちょっと人に言われて。「そういうことっていうのは報じて、ちゃんと人に伝えて完成することだ」と。アイスホッケーの世界って狭いですから、栃木とかアイスバックスのファンはこの大杉さんの話は知っているんですけど。普通は、大杉さんはサッカーファンとして知られている方で。「本当に自分で金を払って、誰にも頼まれないで助けに来てくれたっていうのは、人に言うべきなんだ」って言われて……すいません。で、ちょっと……いやいや、まいったな。はじめて霧降アイスアリーナに来た時も、アイスバックスのスタッフがびっくりしたのは、自分で入場券を買って一般席に座っていたという。それで「あれ……大杉漣じゃないか?」っていうことで、「なんで?」「いやいや、ファンクラブで普通に見たかったもので」って。

(野村邦丸)これ、えのきどさんに聞いた話かな? 徳島に対する愛っていうのもものすごく強くて。チームのスタッフ全員も今回の大杉漣さんの急逝っていうことに対しては、まるでチームの人間が1人いなくなってしまったようだっていう……。

(えのきどいちろう)開幕戦で徳島ヴォルティスは本当にすごい……試合は落としてしまったんだけど、本当に会場の雰囲気が熱くて素晴らしかったって聞いています。連絡を受けました。

(野村邦丸)えのきどさん、朝日新聞の栃木版ですんで。これ、LINEで写真撮ったやつを僕に送ってくれたんですよ。それがいろんなところに拡散して、今度はサッカーファンでもある大杉漣さんということで。サッカーファンのみなさんにもこれがどんどん広がっていっているみたいなんですけど。実際にえのきどさんがお書きになったこれ、栃木版の記事はどうやって見れるんですか?

朝日新聞栃木版・えのきどいちろうさんコラム

(えのきどいちろう)ウェブで検索すると当たるような気がしますね。しばらくしたら。そう思います。すいません。ちょっと話が……まあ、いつもまとまらないですけども。今日はだらしなくてすいません。

(野村邦丸)よく、伝えていただけました。

(えのきどいちろう)本当に、ご冥福をお祈りします。素晴らしい人でした。

<書き起こしおわり>

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