都築響一さんがLOVE FM『トランジットレディオ 常盤響のニューレコード』に出演。九州が持つ独特の魅力と都築響一さんの展覧会『僕的九州遺産』について話していました。
(常盤響)常盤響がお送りしております『トランジットレディオ』月曜日、『ニューレコード』。ここからは『GO GO ニューレコード』のコーナーでございます。このコーナーでは毎週ひとつのテーマに沿ってレコードを聞いていただくといったコーナーなんですけども。レコード屋さんやCD屋さんに行ったことがある人ならわかると思いますが、音楽にはジャンルと言うものがあります。ロック、ジャズ、クラシックなどなど様々なジャンルがあるわけなんですけども。でも、そんな大まかなジャンルでは括れない個人的な趣味趣味ミュージックを細かく細かく掘り下げてしまおうというコーナーでございます。と、いつも通りのことを言ったんですけども、本日はスペシャルゲスト。この方にお越しいただきました。
(都築響一)はい。都築響一です。よろしくお願いします。
(常盤響)よろしくお願いします。どうも、ご無沙汰しております。
(都築響一)どうもどうも。常盤さん、あれですね。糸居五郎みたいなしゃべり方ですね(笑)。素晴らしい。滑舌が(笑)。呼んでいただいてありがとうございます。
(常盤響)お恥ずかしいです。いや、都築さんとは実は一度だけ、Dommuneでお会いしたというか、ご挨拶というか。
よく名前を間違えられる関係
(都築響一)よく名前を間違えられる仲ですよね(笑)。
(常盤響)それで非常にご迷惑をおかげしていると……
(都築響一)いやいや、こちらこそ。みなさん、質問をさせているんじゃないかという風に。
(常盤響)都築さんがたぶん97年に『TOKYO STYLE』を出された後に僕が写真集を出したんですけど。その後に、「あの部屋の写真集を持っています」っていう……
(都築響一)(笑)
(常盤響)『ROADSIDE JAPAN』とかで間違われることはないんですけど。「なんか女の子を部屋で撮ってますよね?」みたいなことを言われやすかったんですね。
(都築響一)うちにはさ、「脱ぐので撮ってください」っていう人は来ないですけどね(笑)。
(常盤響)そうですか(笑)。
(都築響一)残念ですねー(笑)。
(常盤響)そんなに……「響」という字だけが入っているだけなんですけども。
(都築響一)なんか、字面が似ているんでしょうね。
(常盤響)なんですかね。まあ、僕はちょっとありがたいぐらいなんですけど。
(都築響一)こちらこそ。よろしくお願いします。
(常盤響)というわけで、本日はなぜ都築さんにお越しいただいたか?っていうと、いま現在イムズの8階にある三菱地所アルティアムで都築さんの展覧会『僕的九州遺産』という素晴らしい展示が……
(都築響一)ちょうどこのスタジオの向かいみたいな感じですけど。前からなにかやったらどうか? みたいな話をもらっていたんですけども。で、この夏に東京の渋谷で1個、エロ系の展覧会をやってですね。それをそのまま持ってこようかな? とも思ったんですが。どうせなら、これまで20年ぐらい九州のネタっていうのをずいぶん掘ってきたので、それを一堂にまとめてみたかったっていうので。まあ、写真をメインに最初は考えていたんですけども、「そういえば……」と思って、いろいろ撮影した人たちが作ったもの。そういうものも持ってこれるかな。地元なら……ということで、九州の面白い人とか面白いことをやっている人、面白いもの、面白い場所。そういうものだけを集めて。九州の人たちに見てほしかったんですよね。
(常盤響)ああー、なるほど。
(都築響一)結局九州って、ずいぶん僕は好きで来ているんだけど、東京から見てもすごく面白いものがいっぱいあるのと同時に、地元の面白いものを面白がらないのが九州人だっていう気がするんですよ。
面白いものが多いのに、それを面白がらない九州
(常盤響)たしかにそうですよね。
(都築響一)たとえば、博多の人は東京の方は向くけど、佐賀は向かないじゃないですか。
(常盤響)たしかに。同じ福岡内でも、じゃあ筑後に行くか? とか。
(都築響一)行かないでしょう?
(常盤響)行かないんですよ。
(都築響一)でしょう。だけど、足元にすごい面白いものがある。たとえば、秘宝館だって九州には2つもあったのに、どっちも潰れてしまったでしょう? そういうものが……面白いものを大切にしない土地柄なんじゃないか?っていう気がして。それで、ぜひ地元の人に足元を再発見してほしいなということで。九州ネタのみでまとめてみたんですね。
(常盤響)なるほど。もう20年前の時の取材のものから……
(都築響一)今年撮ったものまで。
(常盤響)で、また前の場所にもう一度行かれたりとか。
(都築響一)それもやっていますね。
(常盤響)でも、見ている中でも、「あっ、もうあの警察犬の写真が撤去されているんだ!」とか。
(都築響一)そうなんですよ。ずいぶん移り変わりが激しいんですよね。なんか、インターナショナルスタンダードにはなるけども、ローカルの魅力が失われていくっていうのはすごい残念ですよね。
(常盤響)そうですね。だから、僕もやっぱりこっちにいて、こっち側の友達とかはああいうところ……たとえば不思議博物館とかも全然僕、知らなくて。単に、東京で撮影をしている着エロみたいなことをやっているアイドルの子から、「常盤さん、福岡なんですか? 不思議博物館、行かれました?」とかって、すごい推されて(笑)。
久しぶりの来館!不思議博物館なう。九州コンセプトカフェスタンプラリー三ヶ所目! #九州コンスタ pic.twitter.com/AbZxgVON2e
— ヒロ (@hiro_ngs) 2016年10月16日
(都築響一)そうなんだ(笑)。
(常盤響)「一度行ってみたいんですよ!」みたいな。
(都築響一)そうでしょう? やっぱり、近いと人は行かないんじゃないですかね。
(常盤響)そうかもしれないですね。
(都築響一)なんかもったいないなと思いますね。だから今回、本当福岡県から鹿児島県までいろんなのを出してますけども。唯一出していない場所っていうのが、福岡市内なんですよ。あとはいろんなところが出ているんですけど。もう、小倉なんかいっぱい出てるし、いろいろ出ているんですけども。福岡は、たとえば日本で言えば東京は1割じゃないですか。あとは9割は地方でしょう? アメリカで言えば、ニューヨークは例外じゃないですか。だから、九州で言えば福岡はニューヨークなんですよ。全然アメリカを表していないわけよ。
(常盤響)ああー、たしかに。
(都築響一)福岡っていうか、博多・福岡市内っていうのは。だけど、トランプを生むような膨大なアメリカがあるように、膨大な九州っていうものがあるわけですよ。それが、なんか埋もれていったり消えていくのは残念だなっていう思いがすごいありますね。
(常盤響)たしかに、僕も5年ほど前に東京から福岡に引っ越してきまして。まあ、ある意味福岡の市内、特に中央区とか博多区の中心地、そのへんはあまり違和感なく住めたんですね。東京的な感じで。だから、そういった意味では非常に九州全域から人が集まって来ている東京的な場所なのかもしれないですね。ただ、一歩外に出ると……
(都築響一)うん。やっぱり30分ドライブするだけで全然違う九州があるわけじゃない? それが、見ていて歯がゆいっていう感じがすごくありますね。もっと行こうよ!っていう感じがすごく。
(常盤響)そうですよね。でも都築さんは麹町ですよね?
(都築響一)はい。生まれ育ちも東京なので。逆にこう、全ての地方が新鮮だったっていうとあれですけどね。まあでも、常盤さんだって同じ感じかもしれないけど。だから、別にバカにしているとかそういうんじゃなくて。行く機会がなかったじゃないですか。スキー場とかさ、京都みたいなところは別だけど。たとえば、若松市とかにですね、若松とかにはなんかないと行かないじゃないですか。
(常盤響)行かないですね。
(都築響一)だから、行くところ行くところ全てが新鮮で。「こんな近くに日本語の通じる外国があったのか!」っていう感じですよ。
(常盤響)そうですね。
(都築響一)だからそれを20年ぐらい前に自分の中で発見して。まだ日本というものを全く知らないなと。その興奮がいまだに続いているっていう感じですね。
(常盤響)ああー、なるほど。本当にそうですよね。96年でしたっけね?
(都築響一)そうですね。『TOKYO STYLE』っていうのをまず作ってですね、その後に「本当に地方って時々変わったものがあるよね。カエルの形をした鉢とか……みたいなものを雑誌でちょっとやってみよう」っていう短期連載で始めてみたのが7年間ぐらいになっちゃって。だから、そんだけ知らなかったっていうことなんですよ。インターネットもまだなかったし。『るるぶ』しかなかったもん(笑)。
(常盤響)(笑)
(都築響一)1人で『るるぶ』をハンドルのところにくっつけて、運転しながらずっと探していったらそれだけいっぱいネタがあったっていうことなので。本当に情報は東京の一極集中だな――いまだにそうだと思いますけども――だなっていうのを初めてわかった気がしましたね。それからいままであって、普通だったら僕は本業が雑誌で原稿を書いて、それがそのうち単行本になって……みたいな感じだったので。雑誌の企画がないと取材もできなかった。だって、取材して出さないわけにもいかないので。
(常盤響)そうですね。
(都築響一)でも、5年ぐらい前から自分のメールマガジンを始めたので。そうすると、別に自分がやろうと思えばできるわけですよ。それで加速度的にここ5年ぐらい、さらに地方を回る数が多くなって。毎月半分とは言わないけど、1/3ぐらいは確実に地方にいるんですけど。九州はやっぱり大物なんですよ(笑)。
(常盤響)なるほど(笑)。
(都築響一)だから、ねえ。本当に「九州いいよね」っていう気持ちが半分と、「いや、なにしてるの?」っていう気持ちが半分ですね。今回は。
(常盤響)たしかに。結構九州で県外に推したいっていうものが、果たして県外の人に魅力的なのか?っていう。行政とかが推すものに関してですけども。
(都築響一)本当ですよ。ねえ。だって、別にさ、たとえば外国からお客さんがいっぱい来るわけじゃないですか。別に買い物だけじゃないですよね。だからそういう時にね、面白いもの……たとえば、常盤さんだってパリに行くとかロンドンに行ったら、それは有名なものもいいけど、やっぱり地元のやつだけが好きな面白い場所とかって行きたいじゃないですか。ちっちゃいミュージアムとか、変なクラブとかさ。
(常盤響)はい、はい。
(都築響一)そういうのも見せてあげないと、リアルな九州ってわからないよね。食べているものとかも含めてね。
(常盤響)はいはいはい。というわけで、ちょっと九州つながりということで。一応音楽番組なんで。
(都築響一)そうだったんだ(笑)。
(常盤響)インスパイアを受けた、『僕的九州遺産』ということで九州のバンド。特に福岡のバンドなんですけども。演歌ロックのグループで一番星というグループがあるんですけども。曲は内山田洋とクールファイブの名曲『長崎は今日も雨だった』。それでは一番星で『長崎は今日も雨だった』、聞いてください。
一番星『長崎は今日も雨だった』
(常盤響)お送りした曲は一番星で『長崎は今日も雨だった』でした。
(都築響一)最高ですね(笑)。素晴らしい。
(常盤響)というわけで都築響一さんにゲストで来ていただいております。
(都築響一)ありがとうございます。ぴったりの選曲で。ありがとうございます。
(常盤響)今回の展示の中でも、囲ってあるコーナーが……
(都築響一)ああ、はい。18禁コーナーですね。おしゃれなアルティアムで最初で最後だと思いますけども(笑)。
(常盤響)僕も、特に福岡なんかは……東京ですと意外と周りでエロ本の仕事もやっているけど、おしゃれな仕事もやっているとか、そういう人もいたりしますし。まあ、いろんな人がいるわけじゃないですか。でもこっちに行くと、まずエロっていうものを生業にしている人がいないわけですよ。なもので、「どうやって食ってるんですか?」みたいなことも言われるんですけど。だから、ああいう場所でそのエロというものが。おしゃれなところに仕切られてあるっていうのが……
『神は局部に宿る』展
(都築響一)でもね、さっきちょっとだけ言った7月から8月に渋谷の真ん中のギャラリーで、それは僕がこれまで撮りためた秘宝館だとかラブホテルだとか、あとラブドールとかね。いろいろ日本のエロを……特に昭和っぽいエロを集めた展覧会をやったんですけど、それはね、1ヶ月ちょっとでね、1万人ぐらい来たんですよ。入場料千円もすんのに。それだけですごい額になっちゃうっていうね。
(常盤響)はい、はい。
(都築響一)で、その8割は女子なんですよ。
(常盤響)そうなんですよね!
(都築響一)で、そのうちの半分は僕の名前すら知らない人なんですよ。で、僕の展覧会は基本的に全部撮影をOKにしているので。もう、誰かが来て、インスタとかで「なんかエロかわいいのやってるよ!」みたいな感じで。そうするとまた、なんだかわからないけど来るみたいな子がすごいいて。だから、エロ好きっていうよりはいま、普通の女の子たちがああいうのを全然嫌がらないっていうか、かえって面白がるっていう感じですよね。
(常盤響)そうなんですよ。
(都築響一)だから、ラブホテルのインテリアとかにしても、面白がるのは女の子たちなわけですよ。だって、部屋を選ぶのも女の子たちだし、触れるラブドールコーナーとかも作ったんだけど、触るのは女の子たちばっかりだし。だから、たとえば常盤さんだって、別にいま、「じゃあヌードを撮ろうよ」っつってさ、恥ずかしがる子なんかいないでしょう?
(常盤響)そうなんですよね。僕も自分が、「モデル、どうやって探しているんですか?」ってよく聞かれるんですけど、いっぱい来るだけなんです。
(都築響一)簡単ですよね。本当に。
(常盤響)で、(ヌード写真を)見ているのも、女の子なんです。
(都築響一)そうだと思いますよ。本当に。あれ、下品じゃないじゃない。そのへんを……まあ、下品かもしれないけど。
(常盤響)それでも変わってきまして。昔は、結構3、40代の人は、ちょっとおしゃれっぽくヌードを撮ってほしいんですけど。やっぱり20代ぐらいになると、逆に下品な方がいいとか。
(都築響一)うん。ちょっと笑いが入っているとダメなんだよね。
(常盤響)そう。なんか、変わってきましたね。
(都築響一)でもさ、常盤響さんに撮られるのと、アラーキーさんに撮られるのでは心構えが違うと思うわけよ。やっぱり(笑)。だけど、僕もね、前に若い子たちの部屋を撮るのが好きなんで、部屋で脱いでもらうという。それを「部屋ヌード(ヘヤヌード)」っていうくだらない企画を一時やっていたんですが(笑)。
(常盤響)はいはいはい。
(都築響一)あのね、「脱ぐのが嫌だ」っていう子は1人もいないね。だけど、「部屋がいま汚いからちょっと……」っていう子はいるわけよ。だからさ、身体なんでもうプライバシーじゃないんですよね。部屋の方が……「部屋にコンビニ袋がいっぱい散らかっているから恥ずかしい」みたいな方がプライバシーっていうか。人に見せたくない自分っていう感じ。身体なんか別に……っていう感じですよね。
(常盤響)そうですね。
(都築響一)だから、そういう意味から言うと、秘宝館ね。さっき言ったように、九州には嬉野と別府とあったわけですけども。まあ、なくなるっていう話が出てからぐらいは、本当に若い女の子がわざわざ東京から行くとか。北海道から行くとか。いろんな子たちがすごい来ていましたよね。
(常盤響)そうみたいですね。
(都築響一)だからもう、昔の大人のエロを女の子が最近面白がるとかそういうレベルじゃなくて。ねえ。好奇心の1つの発露の仕方として、そこにエロもあったというぐらいの感じですよね。
(常盤響)そうですね。僕も、この『僕的九州遺産』をアルティアムに見に行った時も、その時にいたお客さんは5、6人で、みんな女性なんですよ。で、この小部屋に入りましたら、もう先客の女性が3名ほどいまして。
(都築響一)(笑)
(常盤響)そうすると、なんか女性の中でこういうのを見るのはまた……独特の緊張感と言いますか。
(都築響一)そうなんだ(笑)。
(常盤響)でも、女の人は全然気にしないですもんね。
(都築響一)それは電車の女子専用車両に入ってしまったみたいな感じ?(笑)。
(常盤響)そうなんですよ(笑)。
(都築響一)動きに気をつける、みたいな(笑)。でも、それぐらいみんなね、こだわりがないですからね。だから、そんなのもっとどんどん壁を取っぱらってやればいいと思うんですよね。
(常盤響)そうなんですよ。ですから、本当企業とか、おじさんの方がそういうのを変に気を使っている部分があって。
(都築響一)そうですよね。別のところに気を使え!っていう感じなのね(笑)。それは、ねえ。ラブホテルの話とか、そんなの誰も気にしませんよ。で、一方やっぱり昭和的なラブホテルのインテリアだのいろんなものはどんどんなくなって。まあストリップ劇場がなくなっていったりとかね、そういうこれまであった性風俗の形みたいなのがデザインからしてもどんどんなくなっているので。そのへんは本当に押さえておきたいというかね。保存することはできなくても、せめて記録することはできる。たとえばいま、赤線跡とかがブームじゃないですか。あれ、ほとんどが女の子ですもんね。
(常盤響)そうですね。
(都築響一)あんたが赤線跡を見てどうすんの?っていう感じなんだけど。「建物がかわいい」とか、なんかそういう感じで行っちゃうわけじゃない。
(常盤響)そうなんですよ。だからよく、「そういう場所で撮影できませんかね?」って言われて。「私が娼婦的な感じで……」って言われるけど、そういうところに行くと地回りの人にすっげー起こられそうだからって、結局……(笑)。
(都築響一)(笑)。本当ね、あっちの方が詳しいみたいなね。だから、たとえばね、本当にどこのビデオ屋に行ってもいまだに18禁コーナーの前にはピラピラがあって入りにくいみたいなことをやっていますけども。もっとうまい形でね、そういう大人の文化と子供の文化が交われば面白いことがいっぱいできるなと思いますね。
(常盤響)たしかにそうかもしれないですね。
小倉の素晴らしさ
(都築響一)で、九州はそういうのが本当にいっぱいあったでしょう? だから、ストリップ劇場だってね、たとえば別府のやつが潰れたとかあるし。小倉は、僕は実は九州で住むなら福岡市じゃなくて北九州市に住みたいんですけど。小倉がすごい好きで。小倉だって、まだ駅前にストリップ劇場があって。
(常盤響)小倉A級劇場が。
(都築響一)でしょう? で、その横には日本でいま3軒しかない薔薇族映画館っていうのがあるわけじゃないですか。それね、もう東京にもないんですよ。
(常盤響)あ、もう上野とかもなくなって?
(都築響一)上野はなくなったので、いま横浜と広島と小倉にあるっていうですね、その貴重さを君たちはわかっているのか?って思うんですけども(笑)。まあ、「別になくなってもいい」って言われりゃあ、それまでだけどさ。だけど、そういうのがどんどん潰れて、どうでもいい商業ビルになっていくっていうのは本当に悔しいですね。
(常盤響)僕はだから、最初福岡に来た時、ちょっとびっくりしたんです。あの中洲に、昔はロック座系のがありましたよね? で、もうないわけですよ。だからもう、そういうものとか、あと赤線とかも、いまは福岡市にはないんだっていうんのがちょっとびっくりしました。
(都築響一)そうですね。この間、若松に行ってキャバレーの話をいろいろ聞いていたんですけども。いま、グランドキャバレーみたいなのがもう皆無じゃないですか。福岡なんかいっぱいあったはずなのに。だから、もちろん北九州だってないわけですけども。東京にはチョロリと残っているわけですよ。だけど、福岡なんかはいっぱいあったのに全部ないっていうのがね、本当に……それを写真に撮って記録している人すらいないっていうのがすごいもったいない。
(常盤響)もったいないですね。
(都築響一)だからやっぱり、特に九州の北部っていうのは昭和の時代にすごい栄えたところですよね。本当に日本の産業の基盤を担ったわけだから。お金もいっぱい動いていたわけじゃないですか。だから昭和遺産みたいなのっていうのは日本有数にあるはずですよね。だけど、そういうのを調べる人も少なければ……たとえばレトロなものを求めて来る女子なんかはいっぱいいるわけですよ。そのためのガイドすら、あまりない。で、どんどん壊れていくっていうのは本当に悔しいなと思いますね。
(常盤響)たしかにそうですね。でも本当にいま、女性ですよね。昔、大牟田のふじとかのイベントでDJをやったんですけど。やっぱりそういう機会があると中を見たいっていう女の子のお客さんがいっぱいですもんね。
大牟田ふじ良いところ♪ pic.twitter.com/cAgyx8JxCQ
— えととヘンリリリー (@kamenoeto) 2016年5月2日
(都築響一)だってあそこだって大牟田の飲み屋街は完全に壊滅状態でしょう? 全部シャッター通りじゃないですか。そこの元キャバレーを(ふじは)ライブハウスにしているわけじゃない? で、ノイズとかなわけじゃないですか。僕も最初に行った時にノイズバンドの日で。夕方からやるわけじゃないですか。そうすると、女子高生とかがセーラー服で来て、モッシュとかをしているわけですね。それ、東京だったらやった瞬間にそこは閉店ですよ。そんなもん(笑)。
(常盤響)そうですね(笑)。
(都築響一)「えっ、これ女子高生がセーラー服で、パンツ見えてるんですけど……」みたいな感じで暴れていて。そのうち、赤ちゃんを抱えた若いお母さんとかが来るわけじゃない? 「それ、赤ちゃんに絶対悪いと思うんですけど……」って(笑)。そうするとまた、中学生みたいな子が「家庭科でチョコレートを作りました」みたいな感じでタッパーウェアとかを持ってきて、みんなに配っているわけですよ。
(常盤響)(笑)
(都築響一)で、もう音はダダ漏れ。だけど、他が全部閉店しているから大丈夫、みたいな。こういうのはさ、もう地方でしかできないことですよね。だからそういういまね、常盤さんなんかは本当にお分かりだと思うけど。東京ではすごいお金がかかってできないことが、地方だからこそできるっていうものはすごいいっぱいありますよね。だから、本当地元でどんどんいろんなものを作っていってほしいなって思いますね。
(常盤響)はい。でもなかなか、気がついてくれない部分なんですかね。そのお宝に。
(都築響一)そうなんだよね。
(常盤響)だからやっぱり、人とか場所とかも面白いところはいっぱいあるんですけど。やっぱりそれをチョイスする人っていうか。でも、都築さんがこうやって回られるようになって、やっぱりそれはずいぶん意識が変わったと思うんですよね。
(都築響一)うん。わからないけど、やっぱりいつも地元の人に「足元を見ろよ」って言っているんですけど、なかなか見れないと。でも、やっぱりそれはさ、外からの目を持たないとダメだと思うわけよ。だから、ずっといたらわからないじゃないですか。たとえば、一生唐津にいたら、それはわからないですよ。良さは。だから若い内にいろんなところに住むといいと思うんだよね。別に東京だけじゃなくて、外国に行ったりとかさ。で、自分のホームタウンなり何なりを外から見る目を持ったら、わかってくると思うんだよね。
(常盤響)ああー。
(都築響一)やっぱりずっと一所に暮らしていると、やっぱりね、水が腐るのと同じように人も腐りますよ。
(常盤響)たしかに、そうですね。
(都築響一)だから今回の展覧会も、もう本当に本当に九州のことしか出していないので。だって、たとえばみんなまずいちばん驚いてくれるのは小倉の成人式の衣装なわけですよ。
(常盤響)はいはいはい。みやびさんの。
(都築響一)だけどさ、この博多から小倉なんて、新幹線で15分ですよ。東京・横浜より近いくらいじゃないですか。けど、行かないでしょう? 毎年、あれをやっているのに。見たら、すっごい面白いのに。レイブみたいなもんじゃないですか。
(常盤響)そうですよね(笑)。
(都築響一)とてつもない。なんか、バーニングマンみたいな感じなわけですよ。だけど、(バーニングマンが開催される)ネバダの砂漠には行っても、小倉には行かないっていう。
(常盤響)たしかに。よっぽど近いのに。
(都築響一)いや、すっごい近い。日本語も通じるのに(笑)。だから、ねえ。本当に面白いものだらけなのにな!っていう気がすごくする。だから、逆にこっちが面白がってくれると、あちらもすごい協力的なんですよね。今回も本当に、ただ写真に撮るだけじゃなくて、実物の衣装を持ってきて、1日がかりで着付け師の人が3人着て、着付けてくれたし。僕たちは着付けられないですから。そういうことも含めて、いろんな方たちがすごい協力してくれましたね。一銭の得にもならないのに。
(常盤響)(笑)
(都築響一)だからそんだけ、普段評価がないっていうことですよね。
(常盤響)そうですよね。
(都築響一)だって、北九州なんか「弾丸が飛び交う」ぐらいしかみんな思っていないでしょう? だけど、すっごいクリエイティブなシーンがいっぱいあるのにね。もったいないな。本当に。
(常盤響)そうですね。というわけで、最後にLOVE FMのリスナーに展覧会の呼び込み的な話をちょっと……
(都築響一)ありがとうございます。本当にさっきも申し上げたように、みなさんの地元の話がすごい多いので。別に東京に来ても、パリに行くのも全然いいけども、同じような感じで地元も見直してくれたら絶対にいいなと思うのね。それから、いつもはどこか別の都会で働いていて、お盆と正月に嫌々実家に帰る人もいると思うわけよ。その時に、ちょっと視点を変えてくれたら面白い……今度帰るのが楽しみになったりするじゃない。それだけだってさ、やっぱり世界は違って見えるんだよね。だから、そういうことのひとつのキックスタートじゃないけど、ひとつの背中を押すような機会になってくれたらなと思います。
(常盤響)はい。わかりました。ぜひぜひ展覧会、見に行ってください。というわけで、本日のゲストは都築響一さんをお迎えしました。。ありがとうございました。
(都築響一)はい。ありがとう。はい。
<書き起こしおわり>