都築響一 取材活動のモチベーションを語る

都築響一が語る 演歌の歌詞のディープな魅力 TOKYO FM

都築響一さんがTOKYO FM『The Lifestyle MUSEUM』に2013年5月に出演された際の模様です。自身の多様な取材や活動のモチベーションはなにか?ピーター・バラカンさんに語っています。

(山内トモコ)TOKYO FM『The Lifestyle MUSEUM』。今夜は写真家で編集者の都築響一さんをお迎えしています。

(ピーター・バラカン)はい。さっきの紹介でね、大手のメディアが見向きもしないものに光を当てるっていう話もあったんですけども。僕が他局でお願いした番組で、いままさに毎週毎週そのようなことをやってらっしゃるんですね。

(都築響一)そうなんです。

(ピーター・バラカン)そういう人たちを、どこでどうやって見つけるんですか?

(都築響一)見つけられてるんでしょうね。僕がね。っていうことは変な言い方ですけど。

(ピーター・バラカン)向こうから、都築さんを見つける。

(都築響一)そう。やっぱりこのラジオの話だと音楽の話になるんですけど。よく、すごい音楽に詳しい人がラジオ番組を持って、『こんなのもあるんですよ』って非常に珍しいものをかけるケースってよくあるじゃないですか。たとえばバラカンさんの番組で、いままで聞いたことのない音源を聞かせるみたいな。僕の場合はね、そういうのとちょっと違うんですよね。そういうのと違って、本当はみんなは聞いているもの。だけど、テレビやラジオは他のものを聞かせたいっていうことはあるわけね。みんなが聞いているものと、業界がみんなに聞かせたいものって違うわけですよ。だから僕は、本当はみんなが聞いているものを聞かせたいわけ。

(ピーター・バラカン)うんうん。

本当はみんなが聞いているものを聞かせたい

(都築響一)だからたとえば、まあオリコンってありますよね。オリコンのシングルチャートっていま、ここんところあれですよね。ずーっとベストテンって5枚ずつ嵐とAKBですよね。

(ピーター・バラカン)だそうですね。

(都築響一)だそうでしょ?だけどたとえばいま、20歳の子がね、デートすると。車に乗ってね。嵐はかけないと思うわけですよ。AKBとか。もっと違うものを聞いていると。だけど、そういう違うものはかからない。でもそれは別にレアなんじゃなくて、本当はみんなはそっちを聞いてるんだけど、業界は違うものを聞かせたいと。だから、僕としてはたとえば音楽業界であれ、それはインテリアだってなんだってそうなんですけど。さっき、東京スタイルの話をしてくれましたけど、東京人の9割ぐらいは家賃10万円ぐらいのところに住んでると思うんですよ。たぶん。

(ピーター・バラカン)うん。

(都築響一)だけど、雑誌に出てくる家っていうのは家賃100万みたいな。そういうのは東京人の1割もいないでしょ?

(ピーター・バラカン)1割どころか・・・

(都築響一)でしょ?1%。だけど、メディアに出てくるのはその1%の例外の方なわけ。99%のマジョリティーっていうのはメディアが取り上げないわけですよ。だから僕はその99%の方をやっているだけなの。

(ピーター・バラカン)なるほどね。

(都築響一)だから無理して探してるんじゃなくて、いくらでもあるんですよ。そういうのって。ただ他の人がやらない。で、それを僕が・・・他の人がやらないのを探してるんじゃなくて、たとえば誰かがちゃんとやってくれれば僕は読者であったり、リスナーであればいいものを、誰もやってくれないから、しょうがないから自分でやっているわけ。やらないうちにどっかに行っちゃったりするから。

(ピーター・バラカン)うん。

(都築響一)だから僕のモチベーションっていうのは、好奇心とかね、いろいろありますけど。いちばんおっきいのは怒りの感情ですよね。

(ピーター・バラカン)怒りの感情?

(都築響一)怒りと焦りですよね。なんでこんなみんな好きなのにやんないの?とか。いまやんないと無くなっちゃうじゃない!みたいな。そういう、こう焦ったりとかですね。やむを得ずやっているってことがものすごく多いですね。

(ピーター・バラカン)じゃあ、具体例としてたとえば1つ。こういうもの、多くの人が好きで聞いているのにぜんぜん出てこないものって。

(都築響一)たとえばね、ここ2冊ぐらいスナックの本を出しているわけ。僕は。で、いろんな国にはそれぞれのいちばん和める飲み屋っていうのがあると思うんですよ。たとえばイギリスだとそれはパブだろうと。アメリカだとバーだし、フランスだったらカフェかもしれない。日本はスナックなわけ。『今日はワインバーに行こう』とか『スコッチのシングルモルトが』とか言ってられるのは東京とか、ちょっとした大都市だけなわけ。

(ピーター・バラカン)なるほどね。

(都築響一)日本の9割は、食べるっつったら居酒屋、飲むっていったらスナックしかない町がほとんどなわけ。

(ピーター・バラカン)本当、田舎に行くと。田舎っていうか地方都市に行くと、そんな感じですよね。

(都築響一)スナックだけでしょ?だけど、いまグルメの本って死ぬほどありますよね。立ち飲み屋からなにから。全部あるけど、スナックの本だけはないんですよ。それからみんなこう、『今日はどこ行こう?』っていう時に、なんか携帯で見るでしょ?食べログとかそういうのを。スナックだけは載ってないんですよ。

(ピーター・バラカン)うーん。誰も取材していない。

(都築響一)いまスナックって日本に15・6万軒あると思いますけど、そういう日本人がいちばん飲みに行く場所のことは1回も語られてこなかったっていう。だからそれを僕がこう、スナックの人がいなくなっちゃう前に記録だけはしておきたいって思っているだけのことですよね。だからすごく珍しい、なんて言うのかな?カクテルを出す店とか、ワインを揃えている店とか、そういうのはどうでもいいわけ。いろんな人がやっているから。だけど、みんなが本当に好きな場所って違うんじゃないの?っていう疑問とか、怒りとかっていうのが、やっぱり僕のドライビングフォースっていうか。そういう感じですね。

<書き起こしおわり>

続きます。

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