都築響一さんがTBSラジオ『荻上チキ Session22』にゲスト出演。雑誌や書籍の出版が落ち込んでいるというニュースについて、荻上チキさんと話していました。
(南部広美)以上、これまでに入ってきている主なニュースをまとめてお伝えしました。
(荻上チキ)ゲストの方と振り返っていくニュースリミックス。都築響一さん、気になったニュースはどちらでしょうか?
(都築響一)いや、野々村被告って言いたいところですけど(笑)。
(荻上チキ)はい。まあ気になりはしますけどね。
(都築響一)いやー、あの人、いいなと思いますけど。いや、でも今日の話的には書籍の、出版の落ち込みってやつですね。
(荻上チキ)出版不況の話ですね。雑誌が特に落ち込んでいて、書籍はそこそこ落ち込んでっていうものらしいですね。一方で、電子書籍はずいぶん伸びているっていうデータですけどね。どうご覧になりました?
出版不況はある意味当然
(都築響一)いや、これね、ある意味当然ですよね。だってつまんないもん。
(南部広美)バッサリ(笑)。
(荻上チキ)(笑)。まあ、『お金を出したくない』みたいな感じになっちゃうんですかね?
(都築響一)いや、結局面白けりゃ読むわけですよ。こういうのって大抵簡単に誰かのせいにするよね。たとえば、『シャッター商店街がシャッター化していくのはイオンタウンのせい』ってことになるわけじゃない?『本屋が潰れていくのはブックオフのせい』とかね。
(荻上チキ)まあ、amazonとかね。最近は。
(都築響一)amazonとかね。でも、違うわけよ。面白い本があれば、みんな買うわけじゃないですか。ねえ。だから、いま出版のいままでのシステムっていうのがもう完璧に自転車操業状態で。とにかく、出したら売れようが売れまいが、1回お金は入ってきて。取次から。それから、それでまた次の本を作って。最終的には半分ぐらいは返品されて、断裁されてゴミになるっていうですね、狂った状況になっていて。これは誰が見てもおかしい。
(荻上チキ)まあ、とにかく量を刷らなきゃいけないってなってますからね。
(都築響一)そう。量を刷って一度お金をもらって次に行くみたいな。
(荻上チキ)新書ブランドを立てて。
(都築響一)そう。もう、めちゃくちゃなわけですよ。で、こんなのは続いている方がおかしい。だから、本の見本市なんてのはどんどんどんどん客が減って。出てくる出版社も減っているわけ。けど、一方でアートブックフェアみたいな個人の制作物。自主制作物とかZINEとか。そういうのが・・・
(荻上チキ)ZINEっていうのはちっちゃなというか、とじ込みみたいな。
(都築響一)まあ、自主制作雑誌ですよね。そういうのも、爆発的に増えているわけですよ。そして、日本ではコミケっていうものもある。
(荻上チキ)コミックマーケット。
(都築響一)コミケなんて、とにかく数十万人の客が来て。出店者だけだって千とかじゃないですよ。万の単位ですよ。これ、だから・・・
(荻上チキ)みなさん、参加者ですから。
(都築響一)そうですよ。それでもう、夜中から並んで。みんな買いに来るわけでしょ?
(荻上チキ)まあ、それはいけないんですけどね(笑)。
(都築響一)そうね(笑)。だけど、そういう風にして、とにかく世界最強の自主制作マーケットが日本で確立されちゃって。それを買いたさに外国から来る人だっていっぱいいるわけよ。
(荻上チキ)います、います、います。
(都築響一)だから、日本では出版はめちゃくちゃ盛り上がっているんですよ。けど、出版業界が盛り上がっていないだけ。だから他の可能性はすごいあると思うのね。
(荻上チキ)メジャーがダウンしてるけど、インディーズはめっちゃ熱い!っていう。『熱い』って言っちゃった(笑)。
(都築響一)『熱い』(笑)。そう。でも、音楽とかと一緒だよね。既成のそういう、既得権益を持っている人たちがどんどん元気がなくなっているけど、読みたい気持ちはぜったいにあると思う。みんな。だって、世の中で歴史上いまほどみんなが筆まめになった時代ってないわけですよ。
歴史上、いまほど筆まめになった時代はない
(荻上チキ)そうですね。Twitterとか、Facebookとか、ブログとか、noteとか。
(都築響一)だって、なんでも書くでしょ?昔の手紙とは桁が違う。で、みんなTwitterとかやるからさ、140字で意見をまとめるとかってすごい上手いわけじゃない?
(荻上チキ)LINEとかでもやりますからね。
(都築響一)そうそうそう。だから、こんなにみんなが漢字を知ってですよ、みんな自分のことを表現できるのは、いまですよ。だから、ものすごくみんな文字には親しんでいると思うのね。だから、携帯で小説すら書く人がいるわけじゃないですか。だから、本当にこう若者が本を読まなくなったっていうのは嘘。中年がいちばん読んでないと思う。
(荻上チキ)中年が?
(都築響一)うん。若者たちはいっぱい読んでますよ。それが、既成の本の形じゃないかもしれないけど。誰かのブログとかそういうのかもしれないけども。文章はすごい読んでいるし、写真や絵だっていっぱい見てますよ。
(荻上チキ)活字のライバルが増えて、たまたま本というところが吸収しきれてないだけで、活字ファンはむしろ倍増しているぐらいの?
(都築響一)いや、倍増どころか10倍増みたいな感じ、しますね。だって僕は写真家でもありますけど。いま、みんながいちばん写真を見るフォーマットってInstagramだと思うんですよ。もう、ぜんぜんプリントとかじゃないですよね?で、Instagramでたぶんいま、毎日1億枚以上アップされていると思いますから。
(荻上チキ)Facebookとかもそうですよ。
(都築響一)はい。だからいまほどみんなが写真を撮っている時代なんか、ないわけ。
(荻上チキ)ないですね。
(都築響一)だから表現っていうのは、ものすごいいま、栄えているんですよね。いままでの表現業界が栄えていないだけにすぎないと僕は思います。
(荻上チキ)たしかにそうですね。だからそれで言うと、いまはとにかく電子書籍とかそうしたルートで、1ホップでお金を課金するっていうところまで上手く誘導すれば、たぶんもっとビジネスができる点もあるでしょうし。実際に電子書籍のユーザー、増えてますからね。
(都築響一)はい。ねえ。使うでしょ?電子書籍。
(荻上チキ)そう。電子書籍を買うようになってから、書店で本を買うとか、たしかにものすごく減っているんですけど。買う金額はすごく増えているんですよ。
(都築響一)ですよね?ついポチるじゃないですか。
(荻上チキ)つい買っちゃうっていう。
(都築響一)だからそれ、今度は本屋はそれをまたね、電子のせいにするわけ。でも、違うんだよね。
(荻上チキ)僕についてはそうですけどね(笑)。
(都築響一)いや、でも本屋の品揃えが悪いってことですよ。でも、電子書籍が本屋にぜったいに敵わないところっていうのがあるわけよ。本当は。電子書籍は、たとえばamazonでもなんでもいいけど。たとえば、荻上さんの本を読みたいと。買うと。そうすると、『この本を買った人はこういうのも好き』みたいなのが出てくるじゃないですか。
(荻上チキ)そうです。
(都築響一)だから、同じテーマとか同じ著者とか。そういうのを探すのにはすごい向いていると思う。でも、たとえば本屋に行って、あいうえお順になっていたとする。荻上さんの手前が大宅だとすると、そういうとてつもない並びとかっていうのは、電子媒体がもっとも不向きなものですよね?
(荻上チキ)まあ、大宅壮一だったら一応評論家つながりだから、あり得るとしても・・・
(都築響一)そうですよね(笑)。まあ、大江とかいろいろあるじゃないですか。
(荻上チキ)大江健三郎とかね。オーケンとか。
(都築響一)そういう風に、ランダムなサーチっていうのは電子媒体が非常に不向きですよね。だから、ブックカフェとかいま、流行るんですよ。すごく、自分の独自のサーチを使えるわけじゃないですか。『これが好きだったら、これも読んでみなよ』っていう時に、いかに意外なものを出してくるか?っていうのが勝負でしょ?
(荻上チキ)セレクションをするっていう。
(都築響一)選書みたいな。それってDJとかと一緒ですよね。だからそういうのは、書店じゃないとなかなかできない。逆に。だから可能性はいっぱいあると思うけど。ねえ。ベストセラーだけ扱っていたら、それは電子に負けるに決まってますよ。そんなの。
(荻上チキ)うーん。そうですね。そういえば僕、最近あんまり、チキチキ道場っつって本を紹介してないので。ちょっと反省してやろうと思った。うん。
(都築響一)書店で探したら、面白いですよ。やっぱり。
(荻上チキ)そうですよね。『今日買ってきた、まだ読んでないけど』みたいな。
(都築響一)そう。だってWebショップにさ、偶然の出会いはないもん。結局。
(荻上チキ)まあ、そうですよね。概ね統計的に買いそうな出会いはありますけどね。実際買っちゃうんだけど。
(都築響一)だから自分のサーチしたものしか、見えない。そっからのリンクしかできないけど。ねえ。あいうえお順とか、あり得ないじゃないですか(笑)。それか、別の棚に、一棚間違えて行っちゃうとか、別のフロアに行くっていうことがまずあり得ないわけ。そういう電子だと。でも、本屋はそれがあるから面白いんだよね。
(荻上チキ)新書もね、出版社が同じというだけで隣に並んでいたりしますからね。
(都築響一)でしょ?その適当さがやっぱり本屋の生命線ですよね。
(荻上チキ)そうですね。これからの出版について、また後ほどちょっと話しましょう。
(南部広美)ここまで、ニュースリミックスでした。
<書き起こしおわり>
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