鳥居咲子さんがDommune『ヒップホップコリア特集 Chapter2』の中で、著書『ヒップホップコリア』の中から注目ラッパーたちを紹介。ILLIONAIRE RECORDS、Jay Park、E Senseについて話していました。
(鳥居咲子)ちょっと前回とリピートになるんですけど、改めて初めてご覧になる方に向けて、いまの韓国の現状みたいなのを説明したいんですが。いま、韓国ではヒップホップがものすごく人気で。チャートのトップテンのうち半分以上ラップが占めるんだよっていう話を前回もしたんですが。トップアイドルの曲にラッパーがフィーチャーされるとかもすごく普通に起こっています。で、韓国のヒップホップはすごくサウンドに多様性があって、音楽ジャンルとして考えた時にはラップミュージックなんですけども、それでは括りきれないぐらい、様々な音楽ジャンルとクロスオーバーがすごく進んでいて。
あと、ラップに対する意識が他に国に比べてちょっと低いのかな?って思うところがあって。すごくいろんな多様性のあるものが楽しめるので、結構どんな音楽的嗜好をお持ちの方でも入り込みやすいのかな?って思っています。それと、ちょっと前置きが長くなったんですけど、韓国の面白いヒップホップについていろいろとご紹介できたらなと思うので、さっそく1曲目を紹介したいんですけども。前回の放送でも、『ヒップホップコリア』に掲載されている順番に忠実にやって。今回も最初の方で前回に紹介した人ともかぶるんですけども……『ヒップホップコリア』の12ページからDOK2(ドキ)さんっていうラッパーの紹介が載っているんですね。
で、このDOK2さん、その次のページにザ・クワイエット(The Quiett)さん。そして、その次のページにビンジノ(Beenzino)さんというこの3人が載っています。で、この3人が所属しているのがイリオネア・レコーズ(ILLIONAIRE RECORDS)といって。それが最初のDOK2さんとザ・クワイエットさんの2人が運営をしているレーベルになっています。
ILLIONAIRE RECORDS
で、そのレーベルが2014年にコンピレーションアルバムを出したんですけど、そこに収録されている曲がすごく韓国でヒットしたのでそれから紹介をしたいと思います。この曲は『ヨンギョルゴリ』っていう、韓国語の「つながり」っていう意味の曲なんですけども。曲を聞いた方が早いと思うので、ちょっと再生をしてみたいと思います。
ILLIONAIRE RECORDS『ヨンギョルゴリ』
はい。聞いていただいた感じでわかると思うんですが、この曲は「ノワ、ナエ、ヨンギョル、ゴリ。イゴン、ウリ、アネ、ソリ……」っていうフックだったと思うんですけども。いま私がやったように全て2音節でできているんですね。「ノワ」「ナエ」「ヨンギョル」「ゴリ」っていう。全て2音節でフックができていて、これがリリースされた2014年当時、結構新しい感じで、韓国ですごい人気に火が付きました。で、いま実際にフックをラップしていたのがMCメタ(MC Meta)っていう人で、イリオネア・レコーズの3人とはまた違うんですけども。このMCメタが韓国のヒップホップシーンでは神様みたいな位置づけの人で。最初にアンダーグラウンドでヒップホップを始めた人と言われています。
いま、40代半ばぐらいなんですが、超大御所でカリスマ感が半端なくて。で、若者から圧倒的な支持を得ているイリオネア・レコーズの3人と、ラッパーたちからすごく尊敬されているMCメタの4人のコラボが見れるっていうすごく特別な1曲でした。
(中略)
イリオネア・レコーズの紹介の次に、このジェイ・パーク(Jay Park)さん。この方の紹介ページが有るんですが。ジェイ・パークさんは前回も紹介したんですけどブレイクダンサーとしてもシンガーとしてもラッパーとしても一流で。もともとアイドル出身(2PM)でもあるので、パフォーマンスする際の表情とかモーションとか見せ方が抜群に上手いという人です。なので、ジェイ・パークの場合は音源を聞くよりもミュージックビデオを見た方が楽しさが何倍にもなるかな?って思うんですけど。あと、ジェイ・パークはアメリカ出身で母国語が英語なので、全て英語で歌った曲とかもあったりして、英語圏のファンにも強くアピールできるっていうところがすごく強みの人です。
あと、リリースペースがたぶん韓国のヒップホップシーンでいちばん早いんじゃないかな?って思います。月に1曲どころか、月にたぶん2曲、3曲とかいうペースで曲をリリースして。ミュージックビデオもほぼ毎回というレベルで作るので、かなりハードワーカーだなという風に思っています。いまから紹介したい曲はジェイ・パークがAOMGという名前のレーベルを運営しているんですけど、そこに所属しているラッパーのアグリー・ダック(Ugly Duck)っていう人とコラボした曲です。『ウリガパジミョン・パーティーガアニジ』っていう曲で。意味は「俺たちなしじゃパーティーにならないだろ?」みたいな。そんな感じのタイトルなんですけど。
ジェイ・パークらしい、世界の音楽シーンでたとえるとちょっとジャスティン・ティンバーレイク的な感じとか、ジャスティン違いでジャスティン・ビーバー的な、そういう大衆的でキュートでセクシーで。で、マッチョで……みたいな。そういうイメージの人なんですけども。で、アグリー・ダックが一方ですごい結構ハードなイメージで。そっちにこの曲は寄せている感じなので、ジェイ・パークらしいかっこいいダンスの見せ場なんかも楽しんで見ていただけるミュージックプレゼントです。じゃあ、ちょっとお聞きください。
Jay Park & Ugly Duck『Ain’t No Party Like an AOMG Party』
はい。なんかすごい興奮状態にこのへん(会場)がなっていますが(笑)。「すごいかっこいい!」っていうことで。あのですね、こんな感じのジェイ・パークさん。本当にかっこよくて。ミュージックビデオにも半端なくお金がかかっているんですよ。
(中略)
次の曲に行きたいと思います。次も、前回紹介した人とかぶるんですが、イーセンス(E Sense)っていう人で。『ヒップホップコリア』の最初の方、24ページに載っています。こういう人なんですけども。前回、この方の紹介をした時には、「いまドラッグにまつわる事情で刑務所に入っていて、そろそろ出てくる」なんていう話をしたんですが、無事、今月3日に出てきました。で、まだ活動の予定は未定なんですけども。そのイーセンスが今回、1回目の逮捕じゃなかったんですけども。数年前に1回目の逮捕後に、裁判も終わって復帰をしたんですね。その時に『毒』っていう曲を出したんですよ。ポイズン、毒を飲むの『毒』っていう曲を出したんですけど、この曲が自分の過ちを内省するようなものだったり、悩む若者たちに向けたものだったり。そういう歌詞で、とても素晴らしい歌詞なんですけども。
その曲が出たのが2012年で、その当時韓国のヒップホップの情報を日本語で検索しても、ほぼないという状態だったんですね。で、検索すれば2個、3個ぐらいは出てきたかもしれないですけど、ほとんどないに等しくて。私はその当時、韓国語が全くできなかったので、どうしても歌詞をちゃんと知りたくて。で、英語の翻訳はたくさん出回っていたんですよ。なので、それを読みながら元の韓国語をGoogle翻訳にかけつつ、英語を読みながら直しつつ……みたいな感じで、何日もかけて一生懸命日本語に訳し、しかもミュージックビデオに字幕をつけるっていう、なんかもうオタクの鑑みたいな行動をしたんですけど。その時に作った字幕付きミュージックビデオを紹介したいと思いますので。まあ、ミュージックビデオを見ながら、歌詞も見ながら、歌詞に込められた思いとかを感じながら見ていただけたらなと思います。『毒』、お聞きください。
E Sense『毒』
<書き起こしおわり>