毒蝮三太夫さんがTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』に出演。『笑点』と立川談志さんについて、爆笑問題のお二人と話していました。
(太田光)でも、そう考えるとさ、まあ僕らが見ているのは再放送だと思うんですけど。やっぱりマムシさんと言えば、『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の隊員で認識してるじゃないですか。だから、その後に『笑点』の座布団配りっていうのは、全く感覚とし手はないですね。
(田中裕二)感覚としてはないね。だって、もう言ってみりゃあ、三枚目役なのではあったけれども、ヒーローなわけですよ。アラシ隊員とかフルハシ隊員っていう。その人が、要は『笑点』みたいな番組に出るっていうのは……
(江藤愛)ああ、ちょっと結びつかない。
(太田光)結びつかないし、『笑点』も当時、見ていたはずなんだけど……俺らの時はやっぱり三波伸介さん。
(田中裕二)伸介さんだね。だから、松崎まことさんとかね。
(毒蝮三太夫)っていうかね、2人が言うのはね、正解ですよ。っていうのはね、いまの『笑点』。今日もあるよね。30%近いんじゃない? 視聴率が。もう日テレとしては、ジャイアンツ……今日もジャイアンツ、4点取られてるんだよ。2本、ホームランを打たれて。だからここに呼ばれて俺、よかったよ。途中で見るの嫌になっちゃったから。
(田中裕二)ここ、(モニターに)映りますよ。どっかで。
(毒蝮三太夫)いや、だから映さないで。5点取っていたら映して。でね、日テレとしてはジャイアンツの日テレだと思ったじゃない。それが、ジャイアンツがこうであっても『笑点』というのがね、30%近い……『ウルトラマン』だって当時、30%っていうのは大変な視聴率だよ。いまの時代に30%っつったら、(当時の)50%ぐらいの価値じゃない?
(太田光)そりゃそうですよ。うん。
(毒蝮三太夫)それもね、俺ね、こういう風に分析している人は少ないと思っているんだけどね。『笑点』ね、この間ちょっとゲストで呼ばれて出たんだよ。歌丸さんの最後っていうか、最後の前の前かなんかで。歌丸さんと俺が同い年なんだ。歌丸さんが昭和11年で8月生まれかなんかだから、まだ79才。俺は3月だから80才になっているわけ。でも、プロデューサーは同じところに座らせて、その違いを見せようとしたんじゃないの? あれ。座布団運びで俺が行ったんじゃないから。出題者の1人みたいな形で。
(太田光)うん。
(毒蝮三太夫)それで、歌さんが「まあ、久しぶり」っていうけど、まあ本当に老けてというかがんばっていて。
(田中裕二)いや、まあまあ、ねえ。
(毒蝮三太夫)っていうか、「生ミイラ」って言われてて。
(田中裕二)生ミイラ(笑)。やめてください! 我々には荷が重いですよ。
(太田光)たしかにいちばん堂々として映ってたもんね。マムシさんがね。
(毒蝮三太夫)そう。言われてた。で、「後の司会者ですか?」とかね。それから、「これからレギュラーで出るんですか?」とかいう投書も来たらしいんだけどね。だけど、プロデューサーとしては「こうも違っちゃった」っていうところを見せたかったんだと思うんだけど。
(田中裕二)(笑)。それを見せたかったかどうかはわからないですよ。
(毒蝮三太夫)いや、歌さんは歌さんで、素晴らしい……
(太田光)まあ、枯れてますからね。
(毒蝮三太夫)そう! 素晴らしい歳の取り方をしてらっしゃるのよ。古典も上手におやりになって。
(太田光)マムシさんはまだギラギラしてますもんね。まだこれから、なんか野心がもう……野心の塊みたいな。
(毒蝮三太夫)そうかい? そういえば俺、背中脱ぐと「野心」って書いてあるよ。
(太田・田中・江藤)(爆笑)
(毒蝮三太夫)それじゃ刺青だよ(笑)。
(太田光)これからまだ怪獣と戦えそうだもん。だって。
(毒蝮三太夫)いやいや、あのね、それでね、あの番組俺ね、縁があったわけですよ。だけどね、太田が言うようにあの時にはそんなに人気はない!
(太田光)談志師匠の時には。
談志師匠時代の『笑点』
(田中裕二)まだね、『笑点』っていう番組自体が国民的な番組になる前。
(毒蝮三太夫)なっていない。
(太田光)今回、歌丸さんが辞めるっつった時に歌丸さんが雑誌でインタビューに答えていたけど、「談志さんと自分たちは志向がちょっと違った」って。
(毒蝮三太夫)そうそう。
(太田光)ねえ。談志師匠はやっぱりブラックだから。もっとキツいネタをやりたがるんだけど。
(毒蝮三太夫)ブラックユーモアでありね、シックジョークっていうんですよ。ちょっと病んでいるようなね。非常に暗いというかね。ワーッと大歓声で笑う。だからいまのように客席が出てきただけでワーッていう雰囲気ではない。で、彼は変な話、笑うと怒る方ですよ。ウケると。
(太田光)(笑)。厄介ですよね。
(田中裕二)これ、厄介だよね。
(毒蝮三太夫)わかるだろ? 2人はな。「お前たち、ウケようとしてやってんだろ、お前。ウケようと思うんじゃなくて、お前たちの芸をやれよ。ウケないっていうのは、向こうがお前たちを理解しない。そう思えよ、お前」って。なあ、言われたろ?
(太田光)言われてましたね。ええ。
(毒蝮三太夫)ねえ。だからウケるとあいつは不機嫌になっちゃう。
(江藤愛)へー。
(太田光)だからわかりやすいネタをね、俺が談志師匠に「ちょっと師匠、イリュージョンはもうちょっと僕ら、理解できないんで。もうちょっと、古典でメジャーなのやってくれませんか?」っつったら、「俺にそれをやらせて、なにがしてえんだ?」って。本気でムッとしましたからね。もうそれ以来、二度と言いませんでしたよ。怖くて。
(田中裕二)うん、うん。
(毒蝮三太夫)そうだろ? だからウケると怖いよね。逆にね。お客さんにウケると。
(太田光)うん、うん。
(毒蝮三太夫)で、彼が「お前たちみたいなレベルで客にウケやがって。客も悪いけど、お前たちも悪い」って、こういう言い方だから。
(太田光)面倒くさいよ、それ(笑)。どうしたらいいのかわかんないよ(笑)。
(毒蝮三太夫)逆に言うと、客がウケないと喜ぶんだよ。「上手い! いいねえ! いい。小痴楽さん、いいよ、いま。座布団3枚」とか。ウケないと3枚なの。
(江藤愛)ウケなかったら?
(毒蝮三太夫)ウケると、「座布団取れ!」って言うんだよ。いや、そういうやり方はいまはわかる人はいるかもしれないけど、当時はわかりにくいよ。
(太田光)しかも、テレビ的ではないですからね。それは。
(毒蝮三太夫)ないない。それで、だけど彼は……で、俺も答えてたのよ。最初は。
(太田光)ああ、そうですか。座布団配りながら?
(毒蝮三太夫)だって、やっててバカバカしくって。
(太田光)(笑)
(毒蝮三太夫)「なんで宇宙の平和を守ったウルトラ警備隊が、なんで座布団を運んで。それで、『持って来い』っつったら持って行かなくちゃならない。俺は日大芸術学部出身だ。学士だ」って。そういうのがあるじゃない? 「俺はお役者様だ」っていう。だから、「座布団1枚」っつったら、バーンと円楽さんのところに放り投げたのよ。
(田中裕二)(笑)
(毒蝮三太夫)「おい、飛んできたな!」なんて。「空飛ぶ座布団だ」なんて言ったりして。だって、面白くないんだから。俺は。で、1回答えさせろって言うわけよ。3問あるうちの1問ぐらい。で、やるんだよ。ウケないんだよ。
(田中裕二)ウケない。ああ、そうなんですね。
(毒蝮三太夫)ウケないんだよ。
(太田光)すると、師匠は喜ぶ?
(田中裕二)師匠は喜ぶでしょ?
(毒蝮三太夫)そうそう。「(拍手)。素人はこれだよ。なあ。これだよ、お前。おい、円楽。玄人はこうだよ」ってやると、円楽さんウケないんだよ。
(田中裕二)(笑)
(毒蝮三太夫)「ほら、玄人も素人もウケねえ番組だ! じゃあ来週!」って終わっちゃう(笑)。
(太田・田中)(爆笑)
(江藤愛)へー!
(田中裕二)すげー嫌だ、その番組(笑)。
(太田光)それは絶対長寿にはなってないね。
(毒蝮三太夫)そうだね。あいつは3年ぐらいで辞めたけど、ちょうどよかったね。で、考えてみりゃあ、その後の連中が、三波伸介さんにしても、マエタケ(前田武彦)さんにしても、それから辞めた歌さんとかね。
(太田光)先代の円楽師匠とか。
(毒蝮三太夫)先代の円楽さん。が、よくああいう風にしたよ。
(太田光)そうですね。みんながわかる、安心して見られる。
(毒蝮三太夫)テレビ的に。それは、したというか、せざるを得なかったという。それで28%とか29%とか、よく取っているよ。
(太田光)いや、すごいですよね。
(毒蝮三太夫)それでね、平均年齢はね、(春風亭)昇太が今度、(司会者に)なりましたね。昇太は56だよ。(三遊亭)小遊三は69だよ。(三遊亭)好楽さんは69才。(林家)木久扇さん。もう死にかけているよ。
(太田・田中)(笑)
(毒蝮三太夫)78才だよ。で、三平。息子。新・三平ね。45才だよ。若いと言ったって。
(田中裕二)もう45だもんね。
(太田光)三平、45?
(田中裕二)45だよ。もうハタチぐらいのイメージだったよ。ずっと。
(毒蝮三太夫)で、まだ坊っちゃんみたいな顔してるんだけど、45だよな。それから(三遊亭)円楽。六代目。66才。で、(林家)たい平が51才。で、山田。座布団運び。59才。平均年齢が61.625才。これはおじさん番組だよ。おじいさん番組じゃない?
(太田光)ないよ、そんな番組はね。
(毒蝮三太夫)そうだろう? それと、不思議ことにこれは女が出ていない。ギャルが出ていない。
(太田光)ギャルってこともないよ(笑)。急にギャルが出てきたら、そりゃ大変ですよ。
(田中裕二)そうですよね。講談とかでたまに出てくるぐらいでね。神田さんとかが出てきたりね。
(毒蝮三太夫)だけどそれ、ギャルじゃないじゃない。
(太田光)ギャルではないですね。
(毒蝮三太夫)AKBが出てくるわけじゃないじゃない。
(田中裕二)たまーに日テレの女子アナがね。
(太田光)女子アナ大喜利みたいな。
(毒蝮三太夫)だから、これが映えるよね。年に1回とか2回。
(江藤愛)お着物を着てね。
(毒蝮三太夫)だから、平均年齢61才で、昔で言えばおじいさん番組ですよ。ジジイ番組だよ。それで女性も出ていなくて、それであれだけの視聴率をあげているって、驚きじゃない?
(太田光)いや、だからわかんなくなりましたよ。テレビが。
(毒蝮三太夫)あ、そうか。お前たちはテレビの生まれで育ちだから。テレビっていうの、よく知っているわけだろ?
(太田光)いや、まあよく知っているっていうわけでもないけど……
(毒蝮三太夫)まあ、作ったわけだから。お前たちが。
(太田光)まあ、俺たちが作ってきたものは……
(田中裕二)そうじゃねえよ。別に俺たちが作ったわけじゃないですよ(笑)。
(太田光)(笑)
(毒蝮三太夫)いや、作ったのはメーカーだけどね(笑)。
(太田光)(笑)
(田中裕二)そういう意味じゃない。そういうことでもないですけどね。
(毒蝮三太夫)いや、だけどそういう意味でこれ、バケモノじゃない?
(太田光)バケモノ。っていうのは、若い子も見てるから。それも不思議。
(田中裕二)そうそう。若い人。子供も。あのね、子供が見てるんですね。割と。
(江藤愛)子供、好きみたいですね。なんかね。
(毒蝮三太夫)それで、カラーがいいじゃないですか。緑があったり、白があったり。あれは最初、あんなにカラフルじゃないもん。それで、5人しか座ってないし。それと、談志が客を冷ますようなことをわざと言いますよ。これはウケる人はウケるんだけどね。それで、5人を横に並べて、で、司会者がいて。座布団を取るとか重ねるっていうのは非常にテレビ的じゃない?横に広くて。
(田中裕二)そうですね。アップダウンクイズみたいな。
(太田光)本来はあれ、寄席でやっていた余興みたいなことですよね?
(毒蝮三太夫)だって、寄席なんて座布団1枚で。あれ、縦に並んだら面白くないよ。
(太田・田中・江藤)(笑)
(太田光)EXILEになっちゃう(笑)。
(田中裕二)EXILE。後ろでこう……縦で(笑)。
(毒蝮三太夫)面白くないだろ? あれ、横で。テレビ的じゃない。シネマスコープだよ。俺たち、映画学科だからわかるだろ?
(田中裕二)いや、俺らは演劇学科なんですけど(笑)。
(毒蝮三太夫)ああ、そうなの? 俺は映画学科だったから。1:2.55とかいって。縦と横が。だからあのね、テレビ的に作った立川談志がやっぱりすごい。それで、牢名主の発想だから。それであの座布団運びをどうにかキャラクターにしちゃおうという発想だよね。最初は二つ目がやったんだけど、「お前がやれよ」っていうんで。で、俺も答えさせてもらったりなんかして。それで、まあ談志が衆議院に立候補したんで辞めたんだけどね。
(太田光)一緒に辞めたんですか?
(毒蝮三太夫)一緒に辞めたの。だけど、彼は「残ってもいいよ」っつったの。ねえ。「俺が辞めたって……」って。
(太田光)残っておけばよかったですね。
談志師匠と一緒に『笑点』を辞める
(毒蝮三太夫)いや、残っても俺ね、やりようがないよ。だって、彼がいたから、「おい、座布団持ってこい」とか、「マムシ!」とか「ヨシ!」とか言ったわけでしょ。
(太田光)三波さんとはできなかった?
(毒蝮三太夫)うん。三波さんじゃあ、言い難いでしょうし。また向こうも。役者同士だから。
(太田光)ああー、そうか。
(毒蝮三太夫)うん。それでだから、といってなんかストレスが溜まるじゃないですか。だから、いい時に辞めたと思う。それで、「お前、辞めなくていいよ」って言ったんだけど。美弥でね……
(田中裕二)銀座のね(笑)。
(太田光)あん時から美弥に行っていたんですか?
(毒蝮三太夫)うん。そうそうそう。
(田中裕二)美弥ってそんな昔から行ってたんですか?
(毒蝮三太夫)50年前から行ってんだよ。
(田中裕二)あの、談志師匠によく連れて行かれる。
(太田光)もう世界遺産にした方がいいね。
(毒蝮三太夫)いい思い出も、嫌な思い出もあるんだろ?
(田中裕二)はい。喪黒福造が出てきそうな(笑)。
(江藤愛)へー! 『笑ゥせぇるすまん』の。
(太田光)ひっどいところなんだから。
(田中裕二)そう。地下のバーみたいなのがあるんですよ。
(毒蝮三太夫)あの階段が13階段みたいな感じなのな(笑)。
(田中裕二)本当に。もう、すごい憂鬱な階段があるんですよ。
(太田光)憂鬱な。暗闇に沈んでいく階段な(笑)。
(田中裕二)もうね、なんとも言えない独特な、古いね。
(太田光)もう日本の裏社会の人が全部集まっているような店だから。
(田中裕二)で、もうそこに来ている談志さんの隣とかに座っている人たちも、どこの誰だかわからない、なんか怪しげな人が。
(太田光)偉そうなんだよな(笑)。
(田中裕二)そうそう。座っていて。
(毒蝮三太夫)で、途中で帰りたくても帰れないんだろ?(笑)。
(太田光)帰れない(笑)。
(毒蝮三太夫)「おい、帰るのか?」って言われそうで。
(田中裕二)話の9割が意味がわかんないっていう(笑)。
(太田光)(笑)。
(毒蝮三太夫)それでたまに、「おい、そうだろ?」っていうと、「はい!」って言わなきゃなんないんだろ? それであそこで、「お前、残れよ」って言ったけど、やっぱり彼がいない『笑点』に俺が残ったって、生きられないから。仕事がない、あるなんて関係なくね。で、日テレからは「お前ね、辞めたら仕事、ないよ。日テレで決めた芸名なんだから、仕事がないぞ」ってまあ、脅かされたようなもんだよ。
(太田光)ああ、他の局で使うなと?
(毒蝮三太夫)使わないって。使わないだろうっていうのよ。だけど、でも、辞めるっていう気持ちの方が強かったから。で、辞めちゃうと。うちのカミさん、まあ勤めていたから。どうにか食えなくはないだろうから。それで辞めて。しばらくして談志にまた美弥で会ったら、談志が「お前、辞めたんだな」って。うれしそうな顔をして。
(田中裕二)ああ、うれしそうなんだ。
(太田光)やっぱり辞めてくれてうれしかったんだ。
(毒蝮三太夫)辞めなくてもあいつは許したんだけども。俺が「辞めた」っつったら、「お前、辞めたんだな」って。それがやっぱりね、なんて言うの? 男同士の美学だった。辞めてよかったなって。
(太田光)でも、その談志師匠をよく電車に突き飛ばそうとしましたね。
(毒蝮三太夫)(笑)。「電車に」じゃないよ。ホームで突き飛ばしたの!
(田中裕二)いやいや、おんなじことだよ(笑)。
(毒蝮三太夫)ただ、電車がその時に来ただけなんだ。
(太田・田中)(爆笑)
(毒蝮三太夫)だけどあいつがグルッと回って落っこちなかった。だけどね、それでね……
(田中裕二)一旦コマーシャル。その後,交通情報でございます!
<書き起こしおわり>