毒蝮三太夫 立川談志を駅のホームから突き落とそうとした話を語る

毒蝮三太夫とピエール瀧 たまむすびで大いに語る たまむすび

毒蝮三太夫さんが2012年4月にTBSラジオ『たまむすび』にゲスト出演した際の模様です。マムシさんが昔、立川談志さんに腹を立てて駅のホームから突き落とそうとした話について語っていました。

(赤江珠緒)いや、ちゃんと伺ってますけどもね。そんなマムシさん、今日ね、メッセージテーマが『死にかけた話』なんですけども。リスナーの方から、メールをいただきました。ちょっとご紹介しますね。(メールを読む)『赤江さん、瀧さん、マムシさん、こんにちは。今日のメールテーマ 死にかけた話とゲストの毒蝮三太夫さんで思い出した話があり、マムシさんに質問したくメールしました。以前読んだ本の中に、マムシさんと談志師匠のエピソードが書いてありました。お二人がホームで電車を待っていた時、電車が入ってきたタイミングで談志さんの背中をマムシさんがドン!と押したらしいのです。談志さんはよろけて落ちそうになりながらもグイッ!っと踏みとどまり、烈火の如くマムシさんに怒鳴りました。「あぶねーじゃねーか!この野郎!」「シャレだよ」「シャレだと?この野郎!もし落ちて死んだらどうすんだ!?」「シャレのわからねえヤツだって言うさ」というやり取りだったのですが、マムシさん、これは本当のエピソードなんでしょうか?10数年間、ずーっと気になっていることなのです。どうぞよろしくお願いします』。

(毒蝮三太夫)これはね、六法全書に書いてある。

(赤江・瀧)(笑)

(ピエール瀧)あれ?六法全書ってそんな最近でしたっけ?出たの。

(毒蝮三太夫)刑事訴訟法に書いてある。いや、あのね、事実ですよ。俺は立川談志、そんなことしなくても去年の11月にあの世へ、鬼籍に入りましたけどね。俺は3回、あいつを殺そうと思ったね。死にかけた話なのに、なんで殺そうという話?

(ピエール瀧)そうですね(笑)。

(毒蝮三太夫)それでもいいの?そんでね、だってあんなに腹の立つヤツはいないよ。あなた、会ったことある?

(ピエール瀧)談志師匠はないですね。

(毒蝮三太夫)あなた、こんだけね、ここでのうのうとしているのはあいつに会わなかったからだよ。

(赤江・瀧)(笑)

(毒蝮三太夫)珠さんも会ったこと、ない?

(赤江珠緒)ないです。お会いできなかった。

(毒蝮三太夫)ああ、そう。あなた、神戸の出身でね。談志もよく大阪へ行ったりなんかしてね。俺も行くけども。あいつに会ったヤツは大抵どっかね、通じが悪くなったり、いろんな病気が出るんですよ。

(ピエール瀧)(笑)。そんな負のパワースポットみたいになってるんすか?

(毒蝮三太夫)だからね、意地が悪くなったりね。それから世の中に拗ねたり。だけどね、いま考えれば、俺は談志にお世話になった。毒蝮になったのも談志のおかげだし、いまこうやって呼ばれて、こういう美女の前でね、こういう野獣の前で話ができるのも。

(ピエール瀧)ずいぶん落差がでちゃった(笑)。

(毒蝮三太夫)そうか?そういうのも、談志のおかげだと思うよね。それで、思うけどもね、あんなに腹の立つヤツはいないよ。それはね、鋭いし。それから人よりものができるから、腹が立つんですよ。で、言ってることは本当だから。

あんなに腹の立つヤツはいない

(ピエール瀧)本当のことを言っちゃうんでしょうね。なんでもね。

(毒蝮三太夫)そうそう。あのね、こういう話があるよ。あのね、たとえばあなたがね、ピビール?

(赤江珠緒)ピエールです、ピエール。

(毒蝮三太夫)あ、ピエール。

(ピエール瀧)マムシさん、いい加減覚えてください!

(毒蝮三太夫)なんて言うんだよ?

(ピエール瀧)『ピエール瀧』です。

(毒蝮三太夫)瀧さんは知ってるんだよ、俺はね。たきさん言ったから。

(ピエール瀧)上と下、わかれてたんですか?僕。

(毒蝮三太夫)それでね、ある人がね、宴会場で座ろうと思って、席を探してたらしいんだよね。そしたら、談志に『すいません。私の座るところはどこでしょうか?』っつったら、『こっちへどうぞ』『いや、そこは上座だから』って。遠慮をして。『下座はどこでしょうね?』って言ったら、『あんたが座ったとこだよ』ってこういう風に言ったの。このアイロニー、わかりますか?『あんたが座ったところが下座なんだよ』という。こういう深い、皮肉ですよ。

(赤江珠緒)ああー・・・

(毒蝮三太夫)上座じゃ悪いからって、あんたが座ったところが下座になるんだよ。あんた以外はみんな上座だよって。要するに、バカにしてるわけよね。だからこういうことを、彼は非常にアイロニーとして素晴らしい。だから言われた方はカチンと来ますよ、

(ピエール瀧)まあ、そうですね。

(毒蝮三太夫)だから俺もその1人だよ。それで、それは品川の駅ですよ。まだ覚えてるよ。山手線の。品川の駅で、俺は五反田で降りる。あいつは、蒲田へ行くんですよ。だから、山手線で別れるわけね。ホームが。電車に乗り換えるから。で、あいつがなんだかんだっつって憎たらしいことを言うんだよ。『俺は寄席を抜く』とかなんとか言うから。『抜いちゃダメだよ、仕事抜くやつがあるか』っつったら、『いいんだよ、俺は抜いたっていいんだ』みたいな。落語家ってそういうところ、あったらしいんだよ。

(赤江珠緒)うん。

(毒蝮三太夫)だから俺がさ、憎たらしいし、バーン!って押したんだよ。そしたらあいつが、腕をちょうどポールみたいなところへ回してたから、電車が来る寸前、クルッと回って元に戻っちゃった(笑)。

(ピエール瀧)なるほど(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(毒蝮三太夫)だから俺も押し方が悪かったな。

(ピエール瀧)クルンッ!ってなっちゃった(笑)。

(毒蝮三太夫)そう。クルン!と回ってきて。『あぶねーじゃねーか!バカ野郎!落ちるじゃねーか!落ちたらどうする!?』って。『死ぬだけだよ。シャレがわからねーな』っつったんだけど。

(赤江珠緒)なんつー大人2人ですか。もう(笑)。

(ピエール瀧)そうですね(笑)。ものすごいレベルのギャグの応酬をしてるんですね。命がけの。

(毒蝮三太夫)だけど命がけだよ、あいつと付き合うのは。あと2回あったのよ、殺そうと思ったのは。麻雀やってて、『やめよう』って言うから、『ここに猟銃あったら、お前を撃っちゃう』っつったら、『お前は殺人罪だ』っつーから。『だって猟銃がねえじゃねえか』ったら、『あったら撃つだろ?』『撃ったよ』『それはお前、刑法で引っかかる』って。引っかからないよね?

(ピエール瀧)『殺意の意志があるから。お前、それは』って。

(毒蝮三太夫)そう。ロジックじゃ敵わないんだよ。あいつには。だけど、全部未遂だったの(笑)。

(赤江珠緒)そりゃそうですよ!そんなことを・・・(笑)。

(毒蝮三太夫)だけどね、去年のね、6月5日にね、お母さんのいる施設のところで彼と会ったのが最後だったの。その時には、彼が車いすに乗ってたの。その時に、俺に会った時に『おう、久しぶりだな』って言ったらね、『おう、おう』って言った時に表情がないんですよ。ね。体もずいぶん悪くなってたし。それから足がちょっと萎えてきたから、車いすに乗っけてたわけだよ。で、その時に、ああ俺は『ダメだな、これからよくなる可能性は薄いな』と思ったの。それから、いつ電話がかかってくるか、いつ亡くなったっていう電話が・・・それが恐ろしかったね。

(赤江珠緒)はー・・・

(毒蝮三太夫)だから彼が死にかけた時っていうかね。で、家族にも、もうみんなに見せないように家族が守ったわけですよ。彼が、それからどんどん衰弱して、それで弟子にも見せない。志の輔にも見せない。談春にも見せない。ねえ。里う馬にも見せない。誰にも見せない。家族だけでもって、そいで素晴らしい家族になったんだよ。

(赤江珠緒)ああ、そうだったんですか。

(毒蝮三太夫)うん。だから彼が病んだために、家族が結束したの。それを、娘のゆみこっていうのが日記を本に出して。もう涙ながらにしか読めないような日誌でしたよ。ほいで、家族が。彼は病気になったんで、家族が固まったのよ。で、いいパパになったの。

(ピエール瀧)でも、その固まった時は、もう終わりが見えている段階でしかなかったっていう。

(毒蝮三太夫)そうそう。だから誰にも見せない。で、俺も会った時にね、すごく、だから俺は笑い話でね、さっきの品川駅で突き落とそうとしたっていうのは笑い話でできるからいいけども。やっぱり、彼が本当に弱った時には、笑えなかったよね。

(赤江珠緒)そうでしょうね。

(毒蝮三太夫)で、誰にも言わなかった。で、『談志師匠はどうですか?』って聞かれるから『元気だよ』って言うしかなかったね。でも、辛かったですよ。元気じゃないんだもん。お母さんはいまでも存命なんですよ。お母さんは、まだ元気でいらっしゃるんだけども。逆縁になっちゃった。いま考えれば、1日も長生きしてもらいたかったけど。あの病だったら、ガンもあったしね。それから、食えないから衰弱もしてたし。で、声が出ない落語家っていうのは、それは死んだと同じですよ。

(ピエール瀧)マムシさんにしてみたら、元気な、クソ生意気な時代を知っているわけですから。

(赤江珠緒)ねえ。

(毒蝮三太夫)ショックっていうか、ねえ。

(赤江珠緒)でも強烈な思い出をね、みなさんにも残して。

(毒蝮三太夫)そういう意味でね、親友ってよく言うけども。『深友』っていう字を書きたいって。

(ピエール瀧)なるほど。

(赤江珠緒)そうですか。

(ピエール瀧)頂戴しました。深友。

<書き起こしおわり>

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