町山智浩 ドラマ『ミスター・ロボット』を語る

町山智浩 ドラマ『ミスター・ロボット』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、天才ハッカーを描いた人気のテレビドラマ『ミスター・ロボット』を紹介していました。

(町山智浩)ええと、相変わらずですね、アメリカは映画がない(笑)。

(赤江珠緒)いま、この時期はね。

(町山智浩)この時期はない(笑)。はい。来週からあります。

(赤江珠緒)おっ!

(町山智浩)今週、最後です。映画がない時期の。

(赤江珠緒)来週からはアカデミー向けの。

(町山智浩)そうです。いい映画がどんどん。だから、来週からはどんどんどんどんですね、来年3月のアカデミー賞に向けて賞をとりそうな、本当に重厚なですね、見応えのある映画が続いてくんですが。いまはちょうど、谷間なんで。ちょっと、またすいませんがアメリカのテレビ番組について話します。

(赤江珠緒)お願いします。

(山里亮太)アメリカのテレビ番組ね、面白いやつ多いですからね。

(赤江珠緒)ちょっといまのアメリカが見えたりしますから。

(町山智浩)はいはい。まあ、見れるようになりますからね。すぐにね。はい。今回紹介するのはですね、USAネットワークっていうケーブルテレビ局の人気テレビドラマでですね、『ミスター・ロボット(Mr.Robot)』というドラマなんですけども。ちょっとそのミスター・ロボットっていう歌を聞いてもらえますか?

Styx『Mr. Roboto』

(山里亮太)おおっ!よく聞く!バラエティーとかでもよく使われる。

(赤江珠緒)たしかに。

(町山智浩)はい。これ、聞いたことあります?

(山里亮太)いや、しょっちゅう聞くことあります。

(町山智浩)ミスター・ロボット。これはね、1982年にスティックス(Styx)というアメリカのロックグループが作った歌なんですけども。これ、日本語を言ってるんですよ。

(山里亮太)へっ?

(町山智浩)『ドモアリガト、ミスターロボット』って。

(赤江珠緒)『ドモアリガト』って言ってる。

(町山智浩)最初は『ドモアリガト』。

(山里亮太)あ、そうだったんだ、あれ。

(町山智浩)そうなんですよ。で、これはアメリカが全体主義になって、自由とかロックとかが禁じられている世界の中での話なんですね。で、この歌の中に出てくるミスター・ロボットっていうのは、まあ金属でできているんですけど。ちょんまげを結ってるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、メガネに出っ歯に吊り目なんですよ。

(赤江珠緒)もう、ザ・日本人みたいな(笑)。

(町山智浩)ザ・日本人なんですよ。もう、ひどいですね。いまやったら許されないんですけど。この当時、1980年代っていうのは日本がもう大ブームになったんですよ。アメリカで。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)80年代、『SHOGUN(将軍)』っていうテレビドラマがアメリカで大当たりして。で、お寿司屋さんが増えたんですよ。そこから。そう。お寿司ブームっていうのは1980年代入ってからですよ。アメリカは。それまではみんな、生魚を食べられないんで。アメリカでは。で、その『SHOGUN』で寿司ブームがあったのと同時に、アメリカのいろんな不動産を日本の企業がバンバン買っちゃうという状況があったんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、マンハッタンのだから有名なエンパイアステートビルとか。あれ、三菱が買ったりとかですね。で、日本企業が電機会社からですね、自動車会社から、片っ端からアメリカでシェアナンバーワンになっちゃって。で、アメリカが日本に乗っ取られるんじゃないか?と思っていた時にですね、この歌がそういう話になって。日本的な、日本によって作られたロボットがアメリカを支配している世界の話なんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)今回の紹介する『ミスター・ロボット』っていうテレビ番組は、タイトルだけ引っ張ってますが、直接は関係ありません(笑)。

(赤江珠緒)あ、違うんですね。

(町山智浩)その歌と。これはですね、ハッカーについてのドラマなんですね。で、主人公はエリオット君というですね、20代の青年なんですけど。この写真にいるその、パーカーっていうの?これ、フード・・・

(山里亮太)フード付きのパーカーですね。

(町山智浩)パーカーを着てるんですけども。この彼が、セキュリティー会社に勤めているんです。コンピューターセキュリティーの会社。いろんな企業のコンピューターのハッカー対策っていうのは、企業の中にあるというよりは、ハッカー対策をやっているプロの人たちに外注してるんですね。

(赤江珠緒)はー。

夜はハッカー活動

(町山智浩)で、そこに勤めているハッカーセキュリティーの技術者が主人公でエリオット君なんですけど。実は夜は、ハッカーやってるんですよ。彼は。

(赤江珠緒)自分も!?

(町山智浩)そう(笑)。

(赤江珠緒)ああ、そう。ああー。

(町山智浩)だから金庫破りが金庫を作っているみたいな感じ(笑)。でも、実際そうですよ。金庫破りの人の再就職先が金庫会社。

(赤江珠緒)とかね。あと、警察に協力を要請されたりしてますよね。

(町山智浩)協力したり。そう。

(山里亮太)いちばんわかるわけですもんね。状況が、全て。

(町山智浩)そう。だからFBIとかも、ハッカー対策やっていますけども。あれ、元ハッカーの人たちをスカウトして使ってるんですよね。で、まあ彼は夜、ハッカーをやっていることをエリオット君は秘密にしてるんですよ。

(赤江珠緒)まあ、そりゃそうね。

(町山智浩)で、このエリオット君のしゃべり方っていうか、キャラクターがもうロボットみたいなんで面白いんですよね。主人公の。で、全くまばたきをほとんどしない。で、写真を見るとわかるんですけど、目がすごく大きくて、いつも目をむいているんですけど。無表情なんですよ。表情が、まるでない。悲しみも怒りも、ほとんどないんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、彼自身はたぶんそういった軽度の自閉症なんですけども。高機能自閉症っていうやつで、ものすごい天才なんですよ。で、しゃべり方も、『ボクハ、ソウ、オモイマス』みたいな。抑揚のないロボットみたいなしゃべり方なんですけども。で、精神病のカウンセラーのところに通っているんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、カウンセラーは『あなたは本当に心を開かないのね』って。女性なんですけど。すごく美人のカウンセラーが『あなたを見ていると、気持ちもわからないし、友達もいないし。本当は心を開かないと、辛くないの?大変よね』とか言ってると、そのエリオット君が『はい。僕は心を開きません。感情もありません。でも、カウンセラーの先生。あなたのことは何でも知ってます。あなた、昨日、エロサイトを見て、オナニーしたでしょ?』って言うんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)なんでもハッキングしてるから、全ての人の、自分の周りの人の、コンピューターを使って何をしたか?全部知ってるんですよ。

(赤江珠緒)ありゃー!

(町山智浩)もう、恐ろしいやつなんですよ。こいつは。近所の人のとか、全部知ってるんですよ!

(赤江珠緒)うわー・・・筒抜けなんだ。そこは。

(町山智浩)たまらないですね!

(山里亮太)たまらない!引っ越してきたら、終わりだ、俺!

(町山智浩)ねえ!

(赤江珠緒)(笑)。何を見てるの?

(町山智浩)だいたいいちばん怖いのは、『何で検索したか?』とかね。で、この精神科医の人はこう言われるんです。『「アナル」で検索しましたね?』って。

(山里亮太)よりによって!

(赤江珠緒)うわー・・・(笑)。

(町山智浩)それはマズいよ!っていうね。

(山里亮太)ねえ。ちょっと変化球の方出。

(町山智浩)まだ、アナルならいいけど。もっとひどい人もいますから。はい(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)ねえ。山里さんは何ですか?

(山里亮太)言えませんよ!いや、この後に『言えません』って言ったら、何を検索してるんだ?ってなっちゃいますから。

(町山智浩)ねえ。とにかく彼のやっているハッキングのテクニックっていうのはまあ、いろいろあるんですけど。だいたい、パスワードを見抜くんですよ。で、その人に関するデータっていま、アメリカはもう簡単に出てきちゃうんですよ。住所から、電話番号から、もう全部出て来るんですよ。名前を入れるだけで、かなり。で、まあ犯罪歴が出てきたりとかするんですけども。ある程度、出てきたら、まあストックを作るんですね。その人に関する個人情報の。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)で、それをたくさん作っておいて。たとえば出身学校であるとか、そういうのが全部出てきます。だって、学校卒業すると、卒業者名簿に名前、残るじゃないですか。もうすごい量の個人データが実はコンピューターで簡単に出て来るんですよ。探ると。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、今度その人の個人データリスト。犬の名前であるとか、兄弟の名前。いままで住んでいた住所。学校。学校の校長先生の名前。そういうのを全部検索するデータベースを作るソフトがあって。それを作った後、今度はパスワードにそれをアタックかけるんですよ。

(山里亮太)うん。

(町山智浩)で、その時に、『ブルートフォース』っていうアタックをかけるんですけど。『ブルートフォース』っていうのは『力ずく』っていう意味なんですよ。全ての、そのパスワードの組み合わせを全部ブチ込むんです。そこに。生年月日だの何だの。バーッ!と。それでものすごい数の、コンピューターで自動的に何万という数の、その人の個人データから作ったパスワードの組み合わせをブチ込んで行くんですよ。すると、開くんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)たしかに、自分に関係あるものからなにか、作っちゃいますよね。パスワード。

(町山智浩)そう。昔の恋人の名前だったりとかね。で、1回そこで入っちゃうと、もう後は何でもできるんですよ。で、ネットのメールのやり取りとか、全部見ちゃうんですよ。彼は、主人公のエリオット君っていうのは人と全く話ができないにもかかわらず、自分の身の回りの人たちの、もう全てを知り尽くしている。気持ち悪い男ですよ、これ!

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)ヤバいやつが主人公ですね、これ。

(町山智浩)すっごいヤバいんですよ。クレジットカードで何を買ったかも全部出てくるから。全てのことを知っている。データベース化して、パックにしてCDロムにして、大量のファイルを持っているんですよ。彼は。あらゆる人間の。自分の周りにいる。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)それがエリオット君なんです。主人公。ミスター・ロボット。

(赤江珠緒)エリオットくーん!

(町山智浩)エリオット。赤江さん、別に困らないでしょ?(笑)。

(赤江珠緒)いやいや、だって・・・弱み。たしかに・・・

(山里亮太)検索もしないでしょ?

(町山智浩)何にもしてないでしょ?別にね。山里君、困るね?

(山里亮太)困るねー!町山さん。

(町山智浩)でも、あんまり困らないような気もするね。でもね(笑)。

(赤江珠緒)山ちゃん、もう大丈夫じゃない?何が出てもイメージ、そんなに変わらないんじゃない?

(山里亮太)案の定かな?

(町山智浩)案の定かな?って。ねえ。でもこれ怖いのは、彼に勝てる人ってほとんどいないんですよ。誰でも何か持っているから。秘密を。で、もう道端で絡まれても、全部潰しちゃうんですよ。彼は。最強の男なんですね。

(赤江珠緒)はー!情報によって。

(山里亮太)全く新しい戦い方ですよね。

(町山智浩)情報によって。そうなんですよ。だからね、彼がね、人を潰すやり方っていうのは、自分の幼馴染の女の子がいて、その女の子のことを大事に思っているんです。恋人じゃないんだけど、自分にやさしくしてくれる唯一の人間なんですね。彼はまあ、一種人と友達がいないわけだから。で、その女の子を騙している悪い男がいるんですよ。同僚なんですけども。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それで、そいつが実はヤリチン男で、そこら中でヤリまくっているのに、その自分の幼馴染にはいい男のふりをしてるんで、その男のデータを全部取って来るんですよ。で、出会い系とかに入っているのを全部バラしちゃって潰していくんですけども。これ、最近アメリカで本当にあった事件ですね。

(山里亮太)えっ!?

(町山智浩)ほら。アシュレイ・マディソン事件があったじゃないですか。

(赤江珠緒)ああ、はいはい。

(町山智浩)あれはハッカーがやったんですよ。だからあれがなんだっけ?要するに不倫仲介サイト。不倫相手を探してくれて、『不倫をしたい』って言っている人同士を結びつけるサイトがあって、アシュレイ・マディソンっていうんですけども。そこにハッカーが入って、データベースから利用客の顧客リスト。4千万人を抜いて、4千万人のリストをブチまけたんですよね。

(赤江珠緒)うーわー!

アシュレイ・マディソン事件

(町山智浩)で、4千万人っていう数がすごい。アメリカ・・・全世界なんですけども、アメリカでなんか6人に1人が入っていたっていうんですよね。

(赤江珠緒)ええっ?そんなに!?

(町山智浩)だからそういう、とんでもないことになっていて。で、自殺者も出てます。

(山里亮太)それでなんかいろいろバレちゃってですか?

(町山智浩)神父さんか牧師さんがやられて。で、すごいのが、ハッカーたちが、要するにメールアドレスも持っているわけですよ。顧客の。そのメールにコンピューターで自動的に脅迫メールをバーッ!ってブチまけてるんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)死にましたよ。何人か。自殺した。

(赤江珠緒)いやー、怖っ!

(町山智浩)怖いでしょ?で、もっと怖いのが、彼らがじゃあそれで浮気してたのか?っていうと、ほとんど誰もしていなかったこともわかっているんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)圧倒的に男の利用客が多くて、女性はほとんど入ってなかった(笑)。

(赤江珠緒)あちゃー!(笑)。なるほど。はー!物理的に無理だという。

(町山智浩)物理的に無理なんです。絶対に無理なんですよ。ものすごい格差があるらしいんですよ。倍率が。

(山里亮太)4千万人のうち、どれぐらい?何対何ぐらいだったんでしょうね?

(町山智浩)本当に、万分の一とかそんなもんだったみたいですよ(笑)。彼ら、悪くないんだけどそういう願望があることはバレちゃったんです。でも、実際に悪いことをした人はほとんどいなかっただろうと言われていて。で、最初の入会金が月6千円ぐらいだったのかな?60ドルかなんか。で、最高のパッケージっていうのはすごく高くなるのは、3万円ぐらい出すと確実に紹介しますよみたいな感じで、段階がついているんですよ。汚い商売をしていて。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、最初は要するに誰とも会えないようになっているんですよ。で、『会えないのはお金をあなたがあんまり払ってないからですよ』って言われて。それでお金をだんだん積んでいくというシステムになっているんですけど。ここにハッカーが入っていって、全てのデータとかをパクッて調べた結果、要するにメールとかチャットとかで女の子と話しているような気になるわけですね。利用客は。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)ほとんど、ボット(Bot)だった。

(赤江・山里)ああーっ!

(町山智浩)ロボットだった。要するに人間じゃなくて、コンピュータープログラムが、人工知能が返事していたんですよ。ねえ。『私、寂しいの』とか『あなた、おいくつ?』とか。『こういう仕事をしてるんだよ』とか言うと、『それってすごいのね』とか。全部実在しないコンピューターが勝手にピコピコピコって言ってたんですよ。

(山里亮太)地獄・・・

(赤江珠緒)でもそれのことで弱みを握られたとなって、人生を狂わされたと。ひどいなー!

(町山智浩)狂わされたと。死んでいる人も出てきて。相手、ミス・ロボットだったんです。『ドモアリガト』みたいな。これはひどい事件ですね。これはひどい。だからもう、本当に彼らは金儲けのためにやっていて。

(山里亮太)ハッカーっていうのはすごいですね。もう。

(町山智浩)ハッカーはいま、すごい。だからソニーのハッキング事件、あったでしょ?あれ、北朝鮮がやったとか言われているけど、未だにわからないけど。それで、『インタビュー』っていう映画が金正恩を暗殺するバカ映画で。それを作ったっていうことでもって北朝鮮がハッキングをソニーに仕掛けたって言われているんだけども、実際に劇場公開をしてみたら何もなかったんで、北朝鮮じゃないんじゃないかという説も大きいんですけど。

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(山里亮太)うんうん。

(町山智浩)いま、内部犯行説がありますね。ソニーの内部犯行説がね。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)だからいま、本当にハッカーはすごいんですよ。何をやるかわからない。

(赤江珠緒)いやー、ちょっと大丈夫?

(山里亮太)でもこれ、そのハッカーを主人公にしてるわけじゃないですか。

(町山智浩)これがね、その主人公のエリオット君っていうのはそういうハッカーで。まあ近所の自分の友達に悪いことをしている男とかをやっつけるのが仕事だったんですけども。

(山里亮太)仕置人みたいでね。いい方で。

(町山智浩)そうそう。仕置人みたいな感じだった。でも、自分の勤めている会社自体がやられちゃうんですよ。自分が勤めているセキュリティー会社で契約しているイー・コープ(E Corp)っていう巨大企業がありまして。そこのデータベースがやられちゃうんですよ。DoS攻撃っていうんですけども。ものすごい数の量のアクセスをブチ込まれて。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)いっぱいいっぱいになっちゃって。動かなくなっちゃうっていうやつなんですけど。これもどうやって、ものすごい数のアクセスをすると思います?何万とか何十万のコンピューターを。

(赤江珠緒)自動でずっと打ち込むように・・・

(山里亮太)あっ、他のパソコンもコントロールできるんですか?ハックとかで。

(町山智浩)全然関係ない、知らない人たちのパソコンを自動的にコントロールして。ハッキングされているんですよ。僕らのコンピューターが。いろんな企業のコンピューターが。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)ゾンビコンピューターって言うんですけど、ゾンビと同じように操られているんですけど。ただ、コンピューターを、たとえば僕たちがコンピューターをいじってないのに、コンピューターが勝手に動いている時ってあるんですよ。パフォーマンスを見ると。で、CPUとかそういうのを見るとわかるんですけど、コンピューターっていうのは脳とおんなじで、全体の何割かしか実は動かしてないんですよ。我々は。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、知らないところで、別のプログラムが動いていても、わからないわけです。勝手に、そのハッカーによってゾンビ化されていて。自分たちのコンピューターが。我々のコンピューターとか企業のコンピューターとか。

(赤江珠緒)片棒を担いでいる?

(町山智浩)片棒を担いでいて、そのものすごいアクセス攻撃の手伝いをやらされているんですよ。

(山里亮太)ええっ!?

(赤江珠緒)もう想像を超えているから。もうすごい世界に・・・

(町山智浩)山里さんはこうやって働いているけども、夜、寝ている間に、知らない間に夢遊病のように誰かに操られて。どっかで営業をやってるんです。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)ちょっと!その営業ギャラ、ちゃんと振り込んでよ!

(町山智浩)そう。だから振り込まれない。取られちゃうんですよ。それを。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、『知らねえ!こんな仕事、してねえ!こんな営業、してねえ!』とかいう・・・

(赤江珠緒)ええーっ!?

(山里亮太)逆はよくありますけどね。『仕事したのに、ギャラ入ってねえ!』みたいな。いっぱいありますけど。

(町山智浩)そう(笑)。そういうことをやられちゃうんですね。このエリオット君のやっている会社が。で、そのイー・コープっていうやられた会社は、コンピューターだけじゃなくて、携帯だとか銀行から不動産から証券会社からクレジットカードから、何から何までやっている巨大企業なんですけども。そこがまあ、攻撃されてメチャクチャになるんですよ。で、それのハッカーとして出て来るのが、ミスター・ロボットって名乗る男なんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、このエリオット君に『我々の仲間に入れ』と。

(山里亮太)優秀だから。

ミスター・ロボットの目的

(町山智浩)そう。優秀だから。『いまのアメリカの社会っていうのは一部の大企業によって支配されている。アメリカのトップのわずか1%の金持ちが残りの99%の中産階級とか貧乏人たちを騙して金をふんだくってるんだ。彼ら1%の金持ちを潰すんだ!大企業を潰すんだ!一緒にやろう!』っていう風に誘われるっていう話がこの『ミスター・ロボット』なんですよ。

(赤江珠緒)ひえーっ!いや、でもちょっと町山さん、いまちょうどね、日本もマイナンバー制が・・・とか言ってますけども。大丈夫?そのへんは?

(町山智浩)はいはいはい。アメリカはね、ソーシャルセキュリティー番号っていうのがあって。全てその番号によってコントロールしてるんですけど。その番号が知られちゃうと、全部わかっちゃうんですよ。

(山里亮太)そうですよね。こっちもそうですもんね。全部バレちゃう。

(町山智浩)そう。だからやっぱり結構怖いんですよ。

(赤江珠緒)結構ね。そんな、そこまでの技術を持っている人がいると・・・

(町山智浩)でも、しょっちゅうクレジットカード・・・だからアメリカの詐欺がすごくて。日本ではやられてないけど。スーパーのレジにクレジットカードを入れるじゃないですか。アメリカ人ってクレジットカードで払うじゃないですか。そこに、スーパーの社員として入ったりしてるやつがレジのマシーンの中にカード読み取り機を中に忍ばせておくんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)すると、クレジットカードのデータを取られちゃうわけです。そこで、客が。で、それでものすごいパクリ事件が次々と起こって。スーパー。うちの近所のスーパーのターゲットであるとか、もう、しょっちゅうやられてますよ。

(赤江珠緒)あーらー!

(町山智浩)そのレジをパカッと外して中を探るとチップが入ってるんですよ。『これでやられたんだ!』って。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)そういう時代の話で。いま、いろんなドラマがありますけど、それをもう本当にいまの危険な状況っていうのをはっきりと出したのはこの『ミスター・ロボット』っていうドラマが最初だろうと言われてるんですけど。ただこれ、すごいドラマで。テレビシリーズにもかかわらず、実在の企業名がバンバン出てくるんですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、これ、たとえばこのエリオット君はこう言うんですよ。『スティーブ・ジョブズは偉人だと思われているけども、スマホは中国で貧乏な女の子を騙して働かせて作られてるんだよな!』とか言うんですよ。はっきりと、『スティーブ・ジョブズ』って言うんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)じゃあ、結構クレームみたいなのはないんですか?そういう、企業とか・・・

(町山智浩)だからね、これね、アメリカのケーブルテレビっていうのは、ケーブルへの契約料を分配する形で運営してるんですね。だから、コマーシャルにたよってないんですよ。

(山里亮太)はー!だからそうか。結構攻めた内容でも大丈夫なんですね。

(町山智浩)そう。もう本当にストレートに企業名がバンバンバンバン出てくるんですけど。たとえばね、こう言うんですよ。『人間っていうのは本当にリアリティーがない』って言われるんですね。このエリオット君は。『君の人間性っていうのはリアリティーがないんだ』と。要するに、コンピューターの中でしか生きてないから。バーチャルリアリティーの中にしか生きてなくて、普段は全くまともに物も食べないし、人とも付き合いもないんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)って言われたら、そのエリオットはこう言い返すんですよ。『僕はマクドナルドのハンバーガーよりはリアルだよ』って。

(赤江珠緒)うーわっ!

(町山智浩)あと、だからスターバックスも大嫌いだったりね。すごいんですよ。それで、彼らの目的は一体なんなのか?っていうと、これもすごいんですけど、クレジットカードとかローン会社のデータを全部消すことなんですよ。

(山里亮太)消す?あっ・・・

(赤江珠緒)もう、ローンを?

(山里亮太)徳政令?

(町山智浩)そうそう!徳政令。

(赤江珠緒)かーっ!

借金漬けのアメリカ社会

(町山智浩)そう。要するにね、アメリカっていうのは日本人と違ってアメリカ人は貯蓄率っていうのがすごく低いんですよ。で、クレジットカード社会でしょ?アメリカって。だからみんなクレジットカードでやっているから、借金がすごいんです。

(赤江珠緒)あー!

(町山智浩)だからここにデータがありますけど。アメリカでのクレジットカードの負債額っていうのは、国民1人あたりですね、約19万円あるんですよ。

(赤江珠緒)みんな借金抱えている?

(町山智浩)全員が借金を抱えている。だから、貯蓄率がマイナスになっちゃうんですよ。アメリカって平均貯金額がマイナスの国なんです。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)でね、また住宅ローンがすごい、みんな抱えていて。これがまた、1800万円ぐらい。平均で。各家庭の世帯平均。で、これは日本にはあんまりないですけど、学費ローン。学費ローンの負債額っていうのは、まあ学校を出た人で平均400万円。

(山里亮太)卒業して400万の借金を背負うと。

(町山智浩)そう。で、卒業して会社に入ってしばらく、400万円の借金を抱えているんだけど。だいたい最初の初任給っていうのがまあ、1年間で年収400万、行かないじゃないですか。だから、赤字なんですよ。で、食えなくなっちゃう。それで、もしクビになったり就職浪人したら、その場でもって破産しちゃうんです。

(赤江珠緒)ちょっと!アメリカ全然うらやましくない状況ですね。

(町山智浩)アメリカ、うらやましくない。いま。でも、昔はそんなことなかったんだけども、そういう社会になっちゃったんですね。だから、それをぶっ潰すんだ!っていうことで、このミスター・ロボットたちはクレジットカード会社を襲って、クレジットカードとかローンのデータを全部消そうとするんですよ。

(山里亮太)はー!

(町山智浩)(笑)

(赤江珠緒)なんていうか、極端な考え方ですけども。

(山里亮太)ねずみ小僧的な。

(町山智浩)でもこれをもし、日本のテレビ局とかアメリカの普通のテレビ局が放送したならば、『そういうことはやっぱりよくないんだよ』っていう方に振るんですよね

(赤江珠緒)まあ、そうでしょうね。

(町山智浩)ねえ。やっぱりそういうテロだから、そういうのはよくないんだよっていう風に振るじゃないですか。全然そっちに振らないんですよ。それは正しい。やっちまえ!っていう感じでこのドラマが作られてるんですよ(笑)。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そこがまた、すごいなと。

(赤江珠緒)ああ、そう。だってヘタしたら国家転覆みたいな感じですよ。

(町山智浩)国家転覆ギリギリですよ。それは。はい。だからそこがすごいんです。ただ、これね、『ファイト・クラブ』がこういう話でしたね。

(山里亮太)あっ、はー!そうでしたっけ?

(町山智浩)はい。『ファイト・クラブ』っていう映画は最後にそのクレジットカード会社のビルを爆破するんですよ。

(山里亮太)あ、そうだそうだ。

(町山智浩)ただ、その頃は爆破しかなかったんですよ。1999年だから爆破以外に方法はなかったんだけど、いまはハッキングでできるっていう話なんですよね。

(赤江珠緒)いや、ちょっとこのエリオット君とどう付き合っていいかわかんないわ。本当にね。

(町山智浩)いや、いいやつですよ。でも(笑)。

(赤江珠緒)いい?

(町山智浩)で、ただね、これ面白いのはね、このエリオット君を演じている人も、この番組自体を作っているサム・エスメイルっていう人もね、エジプト系なんですよ。エジプト系アメリカ人なんですよ。作っている人たち、主演もスタッフもエジプト系で。で、なんで彼らが作っているのか?ってインタビューで答えていて。2つ、理由があると。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)1つは、『エジプトの春』っていうのがありましたね。エジプトで学生たちがインターネットによって革命を起こした。

(赤江珠緒)アラブ全体がね。

(山里亮太)アラブの春だ。

(町山智浩)アラブの春。を、見て、『なぜこれがアメリカで起きないんだろう?』って思ったのと、この番組を考えたそのサム・エスメイルっていう人はこの『ミスター・ロボット』放送直前まで、学費ローンを抱えていて死にそうだったんですって(笑)。

(山里亮太)ええーっ!?

(町山智浩)で、『なんでこんなに一生懸命勉強してて、借金抱えていて。ひどいじゃないか?と。学費、高すぎるだろう?こんなもん、ぶっ潰せ!』って思って。つまり、『勉強したら偉くなれる。勉強したらお金持ちになれる』って思って勉強しようとしても、勉強して貧乏になっちゃうんですよ。アメリカは。借金抱えて。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)『これはおかしい!アメリカっていうのはエジプトよりも自由な国だと思って来たのに、おかしい!』ということで、この『ミスター・ロボット』っていう話を考えたと。まあ、そういうことを、ハッカーの人たち、狙っている人はやってくれてもいいんですが、近所の人のサイトの検索とかは、まあやっぱり知らないでくれないかな?と。

(赤江珠緒)そうですね(笑)。そこは手を付けないでくれないかな?と。

(町山智浩)くれないかな?と。それは、人の自由だからさ!

(赤江珠緒)なんちゅう個人的なメッセージを送るんですか。最後に(笑)。

(町山智浩)お願いします!って何をお願いしているのか、よくわからないですが(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)はい。という話が『ミスター・ロボット』でした。はい。日本でもたぶん放送されると思います。

(赤江珠緒)今日はアメリカの人気ドラマ、『ミスター・ロボット』についてお話いただきました。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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