吉田豪さんがニッポン放送『上柳昌彦・松本秀夫 今夜もオトパラ!』に出演。樹木希林さんの取材時の模様や、その刺激的な魅力について語っていました。
(松本秀夫)さあ、今日は樹木希林さんの細部に迫るということで。まあちょっと荒書きの原稿を見させていただいただけでも修羅場が浮かんでくるようなお話だったんですが。
(上柳昌彦)まずもって、なかなかインタビューを受けない方ですよね。ニッポン放送で言うと、高田文夫先生が唯一に近いんじゃないですかね?
(吉田豪)基本、『インタビューとか嫌いだし』っていう人ですよね。
(上柳昌彦)僕もなんか番組で何回かお願いしてるんですが、もう全く、ダメなんですけども。まあ、どう?・・・
煩わしいことが大嫌い
(吉田豪)あのキャリアで本を出してない理由もそういうことですからね。『そういう煩わしい事、私は大っ嫌いなのよ!』っていう(笑)。
(上柳・松本)ああー。
(吉田豪)(笑)。『面倒くさい!』っていう。
(上柳昌彦)取材を受けたりっていうのは嫌だと。
(吉田豪)あのー、事務所に入ってないんですよね。全部自分でやってるんで。『請求書とか書くのが本当に嫌いだから、ギャラ払うとか言わないでね!』っていう。
(上柳昌彦)インタビュー受けた後とかに?
(吉田豪)だから、ノーギャラで受けてくれるいい人ではあるんですよ。ただ、それで、『そういう煩わしいことは嫌いだから。これを本に載せるとかも絶対に嫌だから!私は。残したくないの』って。
(松本秀夫)そういう口調で?
(吉田豪)もう、ガンガンきますよ。だから最近、あれじゃないですか。秋の叙勲でしたっけ?受賞して。僕、もうすぐに言ったんですよ。『気をつけなきゃダメだよ!希林さんに賞を渡すっていうのは本当恐ろしいことだっていうことを、みんなわかってない!』っていうね。
(松本秀夫)誰に言いにいったんですか?(笑)。
(吉田豪)いや、ちょっとテレビで言ったんですよ。『みんなわかってないですよ!希林さんに賞なんか渡したら、何か言いますよ』って。だから案の定、裏でね、『この賞もらってなんかメリットあるの?』って言ってたっていう(笑)。
(上柳・松本)(笑)
(吉田豪)裕也さんが怒ったっていうね。『お前、いいからもらっとけばいいんだ!』って(笑)。そういう人なんですよ。
(松本秀夫)一言、言ってしまうわけですね。
(吉田豪)余計なことを言いますよ。そりゃあ。だから僕が取材したのが、2008年に『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』っていう、リリー(・フランキー)さんの原作で。その直後だったんですよ。それに出演した。で、日本アカデミー賞で問題を起こした直後ですよ、つまり。東京タワーが、あんまり他の邦画のやつでは賞をとらなかったのに、日本アカデミーだけ結構賞をとったんですね。それがなんか局の絡みとかもあったんじゃないか?とかいろんな説があるんですけど。
(上柳昌彦)あー、はいはい。
『東京タワー』日本アカデミー賞事件
(吉田豪)で、その最優秀主演女優賞を受賞した希林さんが受賞の席で『東京タワーは大した作品じゃない』って言ってのけて。『私なら、違う作品を選ぶ。特に監督賞は余計だ』とかどんどん言って。で、本来なら出る予定がなかった、脚本が松尾スズキさんだったんですけど、松尾さんも壇上にあげて、『ちょっと、アンタもなんか言いなさいよ!』みたいな感じで(笑)。ひどい目にみんなあっていくっていう(笑)。
(上柳昌彦)それで松尾さん、鬱になっちゃったんだ(笑)。
(吉田豪)大変だったっていう。みんな。で、その直後だったんで、『あれが最高だった』っていう話をしに行ったような感じだったんですけど。まず、だから取材が自宅で。自宅あげてくれるっていうだけでも、まあいい人ではあるんですよ。
(上柳昌彦)よくワイドショーでなんか・・・
(吉田豪)そうです。そうです。
(上柳昌彦)自宅でピンポーンって中に入れる映像とかあるんだけど・・・
(吉田豪)1階になんかガレージみたいなところにあるんですよ。ちょっと個室みたいなところが。そこでだいたい取材を受けてるみたいなんですけど。そこに入れてくれて。で、有名な建築家がデザインした、家の中にエレベーターがあるような大豪邸で。で、その表で最初写真撮影から始まって。カメラマンが寄りでアップを撮ってたんですよ。そしたら希林さんがすごい不機嫌そうな表情で、『私、寄りの写真って大っ嫌いなのよね』とか言ってたんで、当然、フォローするじゃないですか。『希林さん、やっぱりね、近寄りたくなる魅力があるんですよ』とか言ったら、一切表情を変えないで、『あのね・・・私、冗談で言ってるんじゃないの』って。
(上柳昌彦)うわー・・・凍りつきますね。
(吉田豪)最初がそれですからね。これは大変なことになったぞと。で、インタビューを始めようと思ったら、さっき言った『請求書を書くのが大っ嫌いだから、ギャラとかいらない』とか、お茶を持って行ったら、『こうやってペットボトルのお茶とか持って来られて置いてかれるのが私、いちばん嫌いなのよ。飲みかけのとか。絶っ対に持って帰ってね、これ!』とか。次々とそういうものがきて。大変だぞ!っていう(笑)。
(松本秀夫)大変ですね。なかなか本題に入れないですよね。で、ひとつめの質問をどうするんだ?っていう話ですよね。これね。
(吉田豪)そしたら、よりによって僕の過去の本とかをたぶん編集が持って行ってたんですよね。そしたらそれの帯に『相手のことを相手より知っている』という風に書いてあるわけですよ。
(上柳昌彦)相手のことを相手より知っている。吉田豪ね。
(吉田豪)『あなた、なんかね、私のことを私より知っているそうだから。ね、今日はね、楽しみにしてます。私が知らない話が出てくるのを』って(笑)。
(上柳・松本)(笑)
(上柳昌彦)あー、いやだ!もう、やだ!(笑)。
(吉田豪)イジメですよ(笑)。
(上柳昌彦)もうこんなの言われたら、脇の下とか汗、ダクダクだね。これね。きっと。
(松本秀夫)そういう時はさすがに、吉田さんも・・・
(上柳昌彦)心理的にはどうなんですか?
『楽しみにしてます。私が知らない話が出てくるのを』
(吉田豪)いや、『大変なことになったな』とは思いながらも、でも、本当にだからキャリアがあってよかったなって言ってるんですけど。だから、キャリア10年なかったら泣いてますよ。本当に(笑)。のらりくらりかわす技術があるわけですよ。こっちは。『まあまあ、そんなこと言わないで・・・』みたいな感じで。
(上柳昌彦)そのあいまいなほほ笑みですよ。吉田豪のあいまいな笑みで(笑)。
(吉田豪)で、いろいろ話していても、一時間ぐらいたった頃に、『えーと、なんかまだ私の知らない話が出てないんですけど・・・』って。
(上柳・松本)うーわーっ!!
(吉田豪)『ちょっと休憩しましょうか。まだ佳境にも入ってないですから』って。ただ、またその前フリでも言ってたんですよ。お中元について、『本当、礼状とかを書くのが大っ嫌いだから送るな!って言ってるのに、送ってくるバカがいる!』っていう(笑)。『もう、いらない!って言ってるのにね』って言って、ぼやいてたそのフリが効いてるんですよ。お中元でもらったトコロテンとかを食べさせてくれるんですよ(笑)。
(上柳・松本)(笑)
(吉田豪)『もう、いいからこれ、片付けて!困ってるから』っていう。
(上柳昌彦)ちゃんと伏線がある。
(吉田豪)そうそう。いい人だなっていう。
(上柳昌彦)そういう言い方で、一応でもやっぱりちゃんとね、もてなしはしてるんですよね。
(吉田豪)なんでだからこういう風に、みんな何で冗談だと思うってどういうことか?っていうと、その東京タワーの話で。『あれ本当に面白かったんですけど。僕、見てて爆笑したんですけど。本音なのはわかるんですけど、どこかちょっとね、エンターテイメント的な意味もあったんですか?』っつったら、『私が冗談とかを言うタイプだと思いますか?』『・・・全く思いません!ガチです、はい!』(笑)。
(上柳・松本)(笑)
(吉田豪)そんな感じのやり取りがずっと続いたんですけど。ただ、実は僕も東京タワー、リリーさんの関係でエキストラで出てるんですよ。それで、『僕もひどい目にあいまして・・・』って言ったら、希林さんがだんだん食いついてくるんですよ。だから要は僕、実は脚本の段階。最初の段階から見てて。松尾さんの。ものすごい長かったのを半分くらいにしてるんですよ。
で、『あれ、脚本は面白かったんですよ』『そうなのよ!すごいいい脚本だったのを、監督が台無しにしたの』みたいな感じで(笑)。監督ディスがどんどん始まって。で、僕が東京タワーのエキストラで、リリーさんが大学生だった年齢、わかるじゃないですか。完全に僕、作りこんだんですよ。リリーさんの美大の同級生っていう設定で、だとしたら、当時80何年ぐらいだから、その時のTシャツを着て、みたいな感じで。
(上柳昌彦)あー。
(吉田豪)その時代の新日本プロレスのTシャツを着て。その時代のジーンズはこんなだろうって。かなり計算して行ったんですよ。そうしたら、『全部ダメだ!』って言って、バカボンパパみたいな格好をさせられて。昭和すぎるんですよ。もう、明らかに時代設定がおかしくて。
(上柳昌彦)80年代じゃないと。
(吉田豪)ぜんぜん、ぜんぜん。あの、戦後間もないぐらいな感じの格好で、雀荘のシーンだったんですけど。みんなその、クビにタオル巻いて、バカボンパパみたいな格好になっていて。
(上柳昌彦)80年代、そのまま雀荘にはいないわ。
(吉田豪)ぜんぜん違うでしょ、これ?みたいな。リリーさんの美大の人なんだからっていうような。で、他にもだからそこに行った僕の知り合いとかは、やっぱり美大設定だからモッズっぽい格好を、モッズっぽい髪型だったんですよ。『そんな髪もない!』って言ってモミアゲを切られたりとか。で、さらに当時、一緒に麻雀をやっていた仲間もいたんですよ。リリーさんの。その人も、その当時の服を着てきたんですよ。『その服はおかしい』って言われて、『いや、おかしいじゃなくて、これ本物なんですよ!』っていう。みたいな話をしたら、希林さんが『わかる!本当、そう!』って(笑)。
(上柳・松本)(爆笑)
共通の敵を見つける
(吉田豪)『もう、万事がその調子!』みたいな感じで。あの、共通の敵ができたことで味方になったんですよ(笑)。
(上柳昌彦)なるほど。同じ風景を見だして。そこに向かって突っ込んでいくんですね。
(吉田豪)やった!っていう(笑)。
(上柳昌彦)ガッツポーズだよな(笑)。
(吉田豪)出といてよかった!っていう(笑)。
(松本秀夫)そうかー。そういうことですね。
(吉田豪)そっから監督ディスがさらに強まっていって。『私、実はあの時に監督にもハッキリ言ったのよ。「あなたがもし刺されて死んだら、犯人は私だから」』って(笑)。
(上柳・松本)(笑)
(吉田豪)殺害予告ですよ、もう(笑)。
(上柳昌彦)言い方もすごい・・・
(吉田豪)すごいですよ。ただ、本当希林さんはそういう人なんですけど。で、裕也さんがまたちょっといい話で。裕也さんはそんな希林さんに怒ってるんですよね。希林さんがそこまで言うから、『あいつがそんなことを言うせいで、あの監督はその後、ロクに作品を撮れないでいるじゃないか。かわいそうだろ!』みたいな感じで。
(松本秀夫)裕也さんが『かわいそうだろ!』って言うんですか?
(吉田豪)裕也さん、実はちゃんとそういう(笑)。フォローする人なんですよ。『今度という今度は許さねえ!』みたいな感じで、希林さんに怒ったりするんですよね。だから、イメージが逆じゃないですか。
(上柳昌彦)希林さんが、裕也さんが突っ込んでいくのを抑えている感じで。
(吉田豪)で、希林さんが常識人でサポートする人っていう。そうでもないっぽいっていう(笑)。
(上柳昌彦)はー!会ってみなきゃわかんないところだけど、これは吉田豪ならではですね。しか、できないね。これね。
(吉田豪)そうやってやってみて思ったのは、希林さん、ねえ。よく、若手女優をいびるみたいなことを書かれたりするんですけど。まあ、誤解っていうか、まあ同じような目にあっているだけだと思うんですよ。基本、『あんた、どこまで出来んの?』っていうのを試して追い込んで、認めたらちゃんと懐に入れてあげるみたいな人なんだと思いますね。
(上柳昌彦)懐に入ると、またきっと違う世界があるんだろうね。
相手を認めると懐に入れる
(吉田豪)だって、オープンですよ。その、自宅にあげて、休んでいる時。完全に上まであげてくれたんですよ。ガレージだけじゃなくて。『中も見ていい』って言って、寝室とかまで。
(上柳昌彦)うわー、懐も懐ですね。
(吉田豪)裕也さん用に作っているけど、裕也さんが戻ってこないから作られているだけの寝室とか。裕也さんのパネルとか飾ってあるんですよ。いつ来てもいいように。みたいなのを見せてくれたりとか。
(上柳昌彦)いまね、お体が本当心配なね、感じですけどもね。
(吉田豪)夫婦ともに体悪くなってね。それで夫婦が分かり合えるようになったっていう説があったんですけどね。ねえ。Twitterで裕也さんが希林さんの悪口を書いて削除したりとか(笑)。なんかこう、まだ波風が立っている感じも含めて面白い夫婦ですよね。
(上柳昌彦)パワーがね、みなぎってるんですね。お二方とも(笑)。
(吉田豪)希林さん、やっぱりその刺激がほしいんですよね。最初の旦那さんね、岸田森さんもかなり刺激的な人だったと思うんですけど。物足りなかったっぽいですよね(笑)。もっと!ってことで来たのが裕也さんっていう。
(上柳昌彦)インタビュアーの質問の中にも、刺激を求めるんですよね。通りいっぺんのウィキペディアを見てきたようなものを触るような・・・
(松本秀夫)いや、もうそんな質問は・・・
(吉田豪)『戦いがしたい』っていう感じなんですよ(笑)。
(上柳昌彦)そういうことなんでしょうね。
(松本秀夫)決してインタビューはしたくないですけど、そのされているところを俯瞰で見てみたいなっていう・・・おっ、行ってるよ、行ってる!みたいなね。
(吉田豪)最近、ちょこちょこバラエティーで言うようになったのは、やっぱりいろいろ事故は起こしてるみたいですね。やっぱりそういう戦いモードで(笑)。
(上柳昌彦)そうか。戦う人なんだね。
(吉田豪)だって、新婚時代の記事とか結構漁ってたんです。昔。裕也さんのあだ名『マンソン』って呼んでましたからね。
(上柳昌彦)なんですか?マンソンって?
(吉田豪)チャールズ・マンソンです。
(松本秀夫)(笑)
(上柳昌彦)チャールズ・マンソン・・・
(吉田豪)アウト!っていうね(笑)。説明するのも・・・っていうね(笑)。
<書き起こしおわり>